ニュース

新型コロナウイルス感染者ゼロのパラオ、観光局へオンラインインタビュー。サンゴの回復など「自然にとっては好都合」ととらえ取り組んでいく

パラオ政府観光局 日本事務所 代表の芝村剛氏にオンラインインタビューを行なった

 パラオ政府観光局 日本事務所 代表の芝村剛氏へ、新型コロナウイルス感染症の影響下にあるパラオ共和国や観光市場について、ネットミーティングシステムを使い話を聞いた。

 パラオは日本から南へ約3000kmの位置にあり、時差はなし。日本からの直行便はないが、繁忙期にはANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)がチャーター便による直行便を運航(直行便の所要時間は約4時間30分)。定期便ではグアム経由のユナイテッド航空、仁川経由のアシアナ航空、台北経由のチャイナエアラインなどがある。かつて日本が統治していた名残もあり、日本人のリピート率が高いのも特徴だ。3月にはスカイマークが成田国際空港~コロール(パラオ国際空港)のチャーター便を運航している(関連記事「スカイマーク、成田~パラオの国際線チャーター運航開始。親善大使の田中美奈子『感無量』」)。

パラオは日本から南へ約3000kmにある(2019年実施のパラオセミナー資料から)

 現在パラオではすべての旅客国際線が運休。ホテルや旅行関連業者も休業しており、従業員は自宅待機となっている。コロナ前の2020年1月~2月は、特にスカイマークやティーウェイ航空のチャーター便などにより日本人観光客数は対前年を上回り、1月12%増、2月10%増と推移していたが、3月は50%減。その後入域者がゼロとなり、「パラオ政府観光局のキャッチコピー『Pristine Paradise 手付かずの楽園』そのもの」になっている。

 パラオには豊かな海があり、住民は基本的に自分たちが食べる魚は自ら漁に出て手に入れ、タロイモ、ヤムイモ、タピオカなどの芋類も自給自足。人口約2万人で人口密度も低く、助け合いながら生活している。

 現在、パラオでの新型コロナウイルス感染者はゼロ。日本の援助で設立された国立病院があるが、他国のような高度医療は提供できないため、万一の場合はグアムや台湾に移送される。感染チェックの医療キットなどは台湾から輸入しており、検査も可能だが、「罹患者を出さない」ことが基本だ。

 50人以上の集会は禁止され、ナイトマーケットなども中止。観光関連業者はほぼ休業状態。そこで業者の枠を越えて見学し合う、ガイドツアーに参加し合う動きが活発になっているという。パラオの豊かな自然、食・踊り・建物などの文化について「せっかくの機会ととらえ、知識を共有してスキルアップできるように」とのことだ。

パラオ政府観光局「Happy Earth Day」
ダイバーの聖地「ロックアイランド」。「南ラグーン・ロックアイランド群」として2012年にユネスコの世界複合遺産に登録され、400以上のサンゴ礁由来の島々、淡水湖と海水湖の52個のマリンレイクがある
外敵がいない湖で毒や刺す機能が退化したクラゲとともに水中を漂う体験ができる「ジェリーフィッシュレイク」
アイライには200年近く昔にクギを使わずに建造された建物があり、パラオ歴史登録財にも登録されている

 パラオのパスポートスタンプは、パラオの自然を守ることを宣誓する文章になっており、署名することで来訪者一人一人の意識へ働きかける「パラオ・プレッジ」と呼ばれる環境保護誓約があることからも、パラオの自然環境への姿勢がうかがえる。

 キャッチコピー「Pristine Paradise 手付かずの楽園」は、2014年10月・建国20周年記念のタイミングで打ち出されたもので、パラオでの観光体験のすべてに通じるスローガンとなっている。アクティビティだけでなく今後のホテル開発やサービス、土産品にいたるまで、すべてのタッチポイントにおいて「心に訴えかける体験」を目標としており、数の多さを追求するのではなく、質的に満足度の高い滞在を提供し、通年で楽しめるデステネーションであることを強くアピールしていく考えだ。

 この新型コロナウイルス感染症の影響により渡航者はゼロになり、スカイマークと調整を進めていた定期便就航もペンディングとなってしまったが、サンゴの回復など「自然にとっては好都合」ととらえ、「パラオの生まれ変わった新しい自然を、よりよい環境で体験していただけるよう準備し、もっとよい形で皆さまに楽しんで感動できるように取り組んでいきたい」という。

 そしていつかコロナウイルスの収束、段階的な緩和となったときには、単なる割引などのリカバリープランだけでなく、「中長期目線での種まき、パラオが好きな人に来ていただけるような取り組みとして、自然や季節ごとの特徴など、パラオならではのメッセージをSNSや動画コンテンツなども駆使して発信していかなければならない」と今後への意欲を述べてくれた。

パスポートスタンプがパラオの自然を守ることを宣誓する文章になっている「パラオ・プレッジ」
パラオ政府観光局 日本事務所 代表 芝村剛氏(2019年実施のパラオセミナーで撮影)