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京成、16年ぶりの新型車両「3100形」公開。成田スカイアクセス線に10月26日から投入

2019年10月10日 公開

京成電鉄16年ぶりの新形式車両となる3100形

 京成電鉄は10月10日、宗吾車両基地(千葉県酒々井町)において、16年ぶりとなる新形式車両「3100形」の発表会を行なった。

 3100形は京成グループにおける次世代の標準車両として、「受け継ぐ伝統と新たな価値の創造」をコンセプトに開発されたもの。同車両は新京成電鉄との共同設計となっており、新京成電鉄からは「80000形」としてシート配置など一部仕様が異なるモデルがデビューする予定となっている。製造は編成ごとに異なり、日本車輌製造および総合車両製作所が担当する。

 同形式は成田スカイアクセス線でアクセス特急としての運用が予定されており、現行の「3000形7次車(3050形)」を順次置き換えていく。2019年度は8両2編成が導入され、10月26日に予定しているダイヤ改正にあわせて営業運転を開始する。運用区間は成田空港と京成上野、羽田空港、西馬込の3区間が中心となる。なお、3050形については、成田スカイアクセス線で運用される車両は3100形と同様に順次オレンジを基調としたデザインに、本線に転用される車両は本線仕様のカラーリングに変更されるため、現状のカラーリングは見られなくなるという。

3100形の外観と内部を写真で紹介

3100形の仕様

車体寸法(全長×全幅×全高): 18000×2845×4050mm(パンタ折りたたみ時)
主電動機: 三相かご形誘導電動機 140kW 1100V 96A 80Hz 2375rpm(1時間)
制御装置: 回生ブレーキ付VVVFパルス幅変調インバータ制御
ATS装置: C-ATS
性能:
加速度:200%定員まで3.5km/h/s(積載条件:55kg/人)
減速度:200%定員まで初速70km/h、常用4.0km/h/s、非常4.5km/h/s
運転最高速度:120km/h

日本車輌製造 豊川製作所による3151編成。成田スカイアクセス線で使用されている3000形7次車(3050形)の後継のため、こちらも3150形となっている
シャープな造形のフロント
上部
LEDを採用した一体形の急行灯と尾灯(後部標識灯)
スカートまわり
8号車。こちらは上野・押上側になる
7号車
6号車
5号車
4号車
3号車
2号車
1号車
側面に描かれるイラスト。成田山新勝寺
浅草雷門と東京スカイツリー
千葉県側からの富士山遠景
側面行先表示器は3000形の縦128×横576mmから縦192×横768mmへと大型化。4か国語と駅ナンバリング表示にも対応
電動台車と付随台車。3000形と同様ながら台車枠の一部にパイプ材を使用することで溶接箇所を削減、製作信頼性の向上を図っている。軸ばねにはテーパーコイルバネを採用し、乗り心地と軌道追従性を向上している
パンタグラフ
3000形と同じく集中型クーラーを各号車に装備。厳冬期の初期暖房用ヒーターも内蔵
6号車は弱冷房車になる
一部ドアにQRコードが貼られる。これは乗り入れ先となる京浜急行および都営浅草線のホームドア検知で使われるもの
運転台。ワンハンドルマスコンを採用するが、ブレーキは5段階から7段階へと細分化している
1号車
運転席側のシートは2名掛け
3-2-3の8名掛けシート。背もたれを170mm長くしたハイバック仕様とすることで快適性を向上
中央部は車掌の操作でロック、解除が可能
ロック解除時。座面を手で押し下げることで座ることもできる
背もたれ上のランプでロック状態が確認できる
シート表皮は桜と菜の花
中間車
車端部にフリースペースを用意
手すりは腰当て部との2段構成
シートは片持ち式で下部にヒーターを装備
優先席はシート表皮が青系になるとともに手すりやつり革が黄色に
ドアまわり。シート端の袖仕切りをスリガラスにするとともに手すりも指紋が付きにくい表面仕上げとなっている
ドア上には17インチ液晶を2枚使った車内案内表示器を装備
京成パンダも登場。このほか客室内にも京成パンダが隠されている
防犯カメラは1両に3台装備
荷棚はスリット式を採用
プラズマクラスターイオン発生装置を1両に4台装備
車端ドアはガラス製

次世代京成グループの標準車両の位置づけ

 発表会では、京成電鉄 鉄道本部車両部長 松尾隆氏が「通勤形の主力として使用している3000形をモデルチェンジして、3100形を約16年ぶりに製作しました」とあいさつ。「グループの新京成電鉄と共同で設計して、従来の3000形に続く次世代京成グループの標準車両として位置づけています」と概要を述べた。

京成電鉄株式会社 鉄道本部車両部長 松尾隆氏

 同社では10月26日にダイヤ改正を実施する予定となっており、その目玉の1つがスカイライナー車両を1本増備し、上野~成田空港間の運転本数を従来比40%増の終日ほぼ20分間隔で運転すること。そしてもう1つが、この3100形の導入だとコメント。

 2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック大会に向け訪日外国人客への対応、バリアフリーへのさらなる対応を図るべく、成田スカイアクセス線のアクセス特急として運用するものとして製作したと導入経緯を述べた。

 車両に関しては「受け継ぐ伝統と新たな価値の創造」をコンセプトに、「質実さ、実用本位という(京成電鉄の)基本思想に重きを置きつつ、都内と成田空港間のアクセスを担う車両として、より便利で快適な移動空間を提供する」べく、同社において初めて設計したデザインや設備を導入。現在、アクセス特急として使用している3050形と比べ、「客室内に折りたたみ座席、防犯カメラ、プラズマクラスターイオン発生装置などを新たに採用」することで、「多様化するお客さまのニーズを取り入れた車両」としていると説明した。

 続いて京成電鉄 鉄道本部車両部計画課長 吉原祐一氏が車両概要を説明した。まず、外観については先頭車両に「折り」や「絞り」を採り入れたほか、急行灯・尾灯をシャープなデザインとして空港への速達輸送を担う車両としてスピード感を演出。

 カラーリングは「別ルートである京成本線への誤乗車防止を図る」ことを目的に、成田スカイアクセス線の駅などで用いている案内カラーを同社で初めて採用。乗客が旅の高揚感を感じられるよう「京成沿線各所のイメージイラストを、従来の京成カラーである赤と青を用いて描いている」と、アクセントについてもコメントした。

 また、側面行先表示器は3000形の約2倍の大きさとすることで視認性の向上を図ったほか、駅ナンバリングを初めて採用。加えてフルカラーで日本語、英語、中国語、韓国語の4か国語表示が可能となっているとした。

京成電鉄株式会社 鉄道本部車両部計画課長 吉原祐一氏

 インテリアのポイントとして採り上げたのが、8名掛け座席中央2席分に折りたたみ機能を設けた点。1両あたり4か所(中間車両)設定されており、スーツケースを3つ程度置くことが可能となっている。車端に荷物置場を作るのではなく、あえて着席数が減るレイアウトにしたのは、「自分の横に荷物を置きたい」という乗客の心理をくんだものだとコメント。また、バリアフリー化への対応として、中間車にフリースペースを新たに設けている点についても3100形の特徴だとした。

 シートについては外観デザインと同様、成田スカイアクセス線と分かるよう座席の生地にもオレンジを採用。背もたれを170mm高くして座り心地を改善するとともに、表皮には日本を代表する桜と、千葉県の県花である菜の花をアレンジしていると説明。そのほか「プラズマクラスターイオン発生装置」による車内環境改善、「防犯カメラ」によるセキュリティの向上、17インチワイドLCDの2画面一体型の「車内案内装置」など同社の一般車では初となる装備についても説明。さらに暖房装置を2系統にするとともに編成全体で暖房の容量を1.3倍程度アップすることで、寒さについても対策をしていると述べた。

 メカニズム面では「VVVF制御装置にハイブリッドSiC素子を採用し装置の小型化、軽量化」を図ったほか、高効率の主電動機を採用することで「回生電力を最大限に活用し、3000形に使われているIGBT-VVVF制御装置より15%電力を削減」していると省エネ化にも言及した。