ニュース
ANA、2019年度ANAグループ合同入社式を開催。史上最多の新入社員3463名が未来への飛躍を誓う
2019年4月1日 20:55
- 2019年4月1日実施
ANAHD(ANAホールディングス)は4月1日、ANA(全日本空輸)グループの2019年度合同入社式を、羽田空港内にあるANAエアフレームメンテナンスビル 東京新第2格納庫において実施した。
ANAグループ35社、総勢3463名(男性853名、女性2610名、数字は2019年3月29日現在。合同入社式への出席者数は3427名)という、史上最多の新入社員が入社する2019年度は、平成最後の合同入社式でもあり、集まった新入社員も神妙な面持ちで入社式を向かえていた。
入社式の壇上には、ANAHD 代表取締役社長の片野坂真哉氏、同代表取締役副社長の長峯豊之氏、ANA 代表取締役社長の平子裕志氏、同代表取締役副社長の志岐隆史氏、同代表取締役専務の清水信三氏、同取締役執行役員の山本ひとみ氏が列席。そして、片野坂氏が代表して新入社員の入社を歓迎するとともに、新入社員に向けた講和を行なった。
片野坂氏は冒頭、「本日、この場において、深く胸に刻み込んでほしいことがあります。それは、ANAグループにおいては、『安全が全て』、この一点です。安全は経営の基盤、社会への責務であり、ANAグループの役員、社員が片時も忘れてはならない『安全の理念』です」と述べ、なによりも安全を優先した姿勢が重要であることを新入社員に説いた。
同時に、過去にANAグループが関わった航空機事故についても言及。片野坂氏は、毎年4月1日に行なわれているANAグループ合同入社式の冒頭に、必ず過去の航空機事故の話をしている。今年はそれに加え、2018年10月のインドネシアと2019年3月のエチオピアで相次いで墜落したボーイング 737MAXについても言及しつつ、「私を含めて、すでにお客さまが犠牲となる航空機事故を体験した役員や社員は、もうほとんど残っていません。よく人間は、経験をしたほうがいいと言われますが、航空機事故だけは、経験をしないで、事故の悲惨さ、恐ろしさを、現在の社員や後輩の社員にも伝えていかなければなりません」と語った。
あわせて、東京都大田区にあるANAグループ安全教育センターにある航空機事故の記録について、研修の時にはしっかり学んでほしいと述べるとともに、片野坂氏自身が2018年に羽田空港内にある日本航空の安全啓発センターを訪れたことにも触れ、「航空機事故に対して、安全を願う気持ちに、航空会社の違いはありません」と述べた。
また、「昨年から今年にかけて、私たちANAグループで、安全においてお客さまの信頼を大きく損ねる事態を引き起こしてしまいました」と、パイロットの飲酒問題も取り上げた。航空機の運航に携わるものは、酒気帯び状態での業務が禁止されており、ほとんど全ての社員がしっかり基準を守って万全のコンディションで業務に臨んでいるとしつつも、ANAグループで5件の違反事象が発生。当該社員が厳しい処分を受けたことや、会社としても国土交通省から行政処分・指導を受けたことも指摘しつつ「二度と違反を起こさないという決意のもと、しっかり取り組んでいかなければいけません。おそらくここにいる皆さんは、自分に限ってはそんなことはない、と思うかも知れません。しかし、実際に起こった事例を見ると、誰にでも油断や心のすきまにアルコールが入り込んだケースがほとんどです。自分だけでなく、仲間にも親身になって、厳しく注意していくことを心がけていただきたい」と説いた。
続いて片野坂氏の講話は、未来の話へと移った。ここで片野坂氏は「ビッグニュースがあります」と切り出し、英国SKYTRAX社が運営する「ワールド・エアライン・スター・レイティング」において、2013年から7年連続となる「5スターエアライン」に認定されたことを報告した。そして、「私たちは、お客さまの満足度を高めるためのさまざまな取り組みを行なっています。そして、働いている仲間は、今やダイバーシティの時代。女性、男性、シニア、多国籍、LGBT、障がいのある方々など、多岐な人材にあふれています。すべての場面においてお客さまが満足されるかどうかは、ここにいる皆さんの会社の社員の賢明な仕事の成果が鍵を握っています。SKYTRAX社の7連連続5スターの偉業は、ここにいる全社員のチームスピリットのたまものであると言えます。皆さんも本日からこの仲間入りです」と新入社員を激励した。
また、「2020年の東京オリンピック・パラリンピックの1年前となる今年度は、イベントが目白押しです」とし、6月に開催予定のG20大阪サミット、9月のラグビーワールドカップの開催などを取り上げつつ、「こうした国際的なイベントは、我々航空会社にとりまして、人やモノの動きが活発になる大きな追い風であります」と述べた。そして、世界最大の旅客機エアバス A380型機「FLYING HONU」の5月からのハワイ便就航や、ボーイング 787-10型機の投入、オーストラリアのパースやインドのチェンナイへの国際線新規就航、貨物専用機ボーイング 777F型機の就航、2019年4月1日より任務運航を開始したボーイング 777型機を利用した政府専用機の訓練運航サポートや機内食などのグランドハンドリングをANAグループが担うことなどを紹介し、「2020年度に向けて、羽田空港や成田空港の発着枠の拡大が期待されています。政府目標である2020年訪日外国人旅行者4000万人の実現に向けてANAグループもさまざまな取り組みを進めています。また、ANAブランドだけでなく、LCC(格安航空会社)のピーチ(Peach Aviation)、バニラエアをピーチ1社に統合し、アジアの中距離マーケットに進出していきます」と、今後のビジネス拡大についても紹介。
そして、合同入社式開催中に発表となった新元号(片野坂氏の講話中はまだ未発表だった)について言及しつつ、「皆さんは、これから昭和、平成の時代では想像もつかない未体験の世界が待っていると思います。AI、ロボット、IoT、ドローン、自動運転、デジタルイノベーション、そういった言葉が新聞に載らない日はありません。ANAグループでも、空港内バスの自動運転や貨物トーイングトラクター自動走行の実証実験が始まっています。空港の出入国や保安検査場に顔認証がフル装備される日も近いでしょう」と述べるとともに、お客さまの多様なニーズに応え、よりよいサービスを提供すると同時に、労働力不足や働きやすい労働環境の改善を図るために、新しいテクノロジーを積極的に導入していく考えを示した。その一方で「どんなにAIが進歩しても、人がAIに使われたり支配されてはいけません。ANAグループは、人の力で成り立っています」とも述べ、2019年春に羽田空港近くに完成した総合トレーニングセンター「ANAブルーベース」において、全てのグループ社員が自分の技量を磨いてほしいとした。
最後に片野坂氏は、「私は入社して40年目になります。当時の社内報に『全日空は、今は国内線しか飛んでいない会社だけれど、いずれ国際線に出て、いつか宇宙旅行に進出している』という夢を書きました。夢は必ず叶う。ANAグループの経営理念は、『安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で、夢にあふれる未来に貢献します』といったものです。この経営理念を達成するための行動指針は、『安全(Safety)』『お客さま視点(Customer Orientation)』『社会への貢献(Social Responibility)』『チームスピリット(Team Spirit)』『努力と挑戦(Endeavor)』の5つです。この5つを身につければ、『あんしん、あったか、あかるく元気!』なANAグループの社員の仲間入りです。みなさん、夢は必ず叶います。努力すれば必ず夢は叶います。本日は入社おめでとうございます」と述べ、新入社員の入社を歓迎し講話を締めくくった。
続いて、先輩社員が新入社員の入社を祝福するメッセージが添えられたANAグループ会社の紹介ビデオが流されるとともに、ANAHDが取り組む「ANA AVATAR」について紹介された。ANA AVATARは、遠隔地にロボットを置いて、「見て」「聞いて」「感じて」あたかもそこに自分自身が存在しているかのようにコミュニケーションや作業を行なえるようにすることで、距離、身体、文化、時間、あらゆる制限を超える「瞬間移動」を、現在あるさまざまな技術を使って実現しようと、ANAHDが取り組んでいるものだ。そして、2019年度合同入社式では、コミュニケーションに特化したAVATARを用意し、アメリカ・ホノルル空港と、オーストラリア・シドニーの新入社員がAVATARを通じて合同入社式に参加している様子が紹介された。
最後に、新入社員を代表してANAの田中裕貴氏が誓いの言葉を述べた。田中氏は、「私たちは、これまで支えていただいた多くの方々への感謝の気持ちを胸に、社会人としての第一歩を踏み出します。そして、今日からANAグループの一員として、安全、お客さま視点、社会への責任、チームスピリット、努力と挑戦を心に刻み、ANAグループにお寄せいただく信頼と期待に応えてまいります。とりわけANAグループにとって、安全こそ全ての事業に共通する絶対的な使命であることを胸に刻み、努力と挑戦を続けてまいります。未来のANAグループを作るのは、私たち一人一人です。ともに働く仲間たちを、感謝を忘れず互いを尊重する信頼関係を今日から築き上げていきます。新しい社会に正面から向き合い、一人一人が当事者となって、自身で考え議論し、実際にやってみる。自分たちが活躍する舞台を自分たちで作り、常に挑戦を続けていきます。グローバルに広がる事業環境のなか、社会の発展とともに歩み、多様性を力に変えられる世界のリーディングエアライングループへの飛躍を目指し、私たちがANAグループに新しい風を吹き込みます。本日新しい元号が発表されますが、私たち新入社員は、諸先輩方、関係者の皆さまとともに、世界の夢にあふれる未来に貢献することを誓います」と力強く述べ、今後の貢献を誓った。
この後、ANAグループ合同入社式で毎年恒例となっている、メッセージが記されたタオルを新入社員全員が掲げて記念撮影を実施。今年のメッセージは「The future starts today!!」。そして、「2019」という数字と滑走路をイメージした人文字が作られ、未来への飛躍を新入社員全員が誓った。
記念撮影後には新入社員代表が囲み取材に応じ、それぞれに今年の抱負が聞かれた。ANAグローバルスタッフ職(事務)の本田夢歩氏は「来年オリンピックを控えていますので、新入社員として謙虚な気持ちをもちつつ、一人のプロフェッショナルとなれるように成長したい」、ANAグローバルスタッフ職(技術)の高橋丈二氏は「まずは基礎を学んで技術職のプロフェッショナルになれるように日々努力したい」、ANA運航乗務職の田中裕貴氏は「グループ一丸となってお客さま視点を忘れず、どんなときでも自分のベストを尽くせるように努力と挑戦を続けていきたい」、ANA客室乗務職の萩尾優衣氏は「先輩が築いてきた安心と信頼を守りながら、チームANAでお客さまの空の旅を彩れるような客室乗務員になりたい」、ANAエキスパートスタッフ職の宮澤初奈氏は「聴覚障害があるので、できることは狭くなりますが、聴覚障害だからこそできる仕事もありますので、それを積極的にやっていきたい」と、それぞれが初々しく、力強く抱負を述べた。