ニュース

ハワイ島から火山博士が来日。ハワイ島キラウエア火山の噴火について、ハワイ州観光局とJALが共同会見

35年間ずっと火山活動があった。将来的な観光資源に

2018年7月19日 発表

ハワイ州観光局、JAL、ハワイアン航空は共同でハワイ島プロモーションを開始すると発表した

 ハワイ州観光局、JAL(日本航空)、ハワイアン航空は7月19日、共同でハワイ島プロモーションを開始すると発表した。同日、JATA(日本旅行業協会)内で記者会見を行なった。

 記者会見では、ハワイ島観光局 局長 ロス・バーチ氏、ハワイ州観光局 局次長 ミツエ・ヴァーレイ氏、ハワイ大学ヒロ校 地質学科 客員教員および米国地質観測所ハワイ火山観測所准研究員 リック・ハズレット氏、JAL 767 運航乗員部 第一路線室 主席機長 板垣英樹氏、ハワイ・ツーリズム・オーソリティ ハワイアン・カルチャー・ディレクター カラニ・カアナアナ氏が登壇。それぞれの観点から、今ハワイ島で起きていることを紹介した。

東京・霞が関にあるJATA(日本旅行業協会)本部内で記者会見を行なった

 インストラクションとして、ハワイ州観光局 局次長 ミツエ・ヴァーレイ氏が概要を説明。現在起きている噴火は、ハワイ島の0.2%の面積であり、主なリゾート地となっている場所からは120kmほど離れており、東京から群馬の距離に相当するという。また、日本では「大気汚染が~」というニュースが出たが、それがどのような意味をもっているかが報道されておらず、噴火口から近いヒロにおいても、世界で一番空気がきれいなことには変わりないという。「『噴火しました』だけであると、ブッキングペース(予約状況)に影響がでてしまう」とし、正確な情報を伝えるために記者会見の場を設け、ハワイ島から火山博士も来日した。

ハワイ州観光局 局次長 ミツエ・ヴァーレイ氏

 火山博士のリック・ハズレット氏は、そのヒロに住んでおり、毎日2回~3回噴火の状況を観測しに行っているという。今回のキラウエア火山の噴火は、日本の桜島や雲仙などの噴火と似ている部分もあるが、違うところもあるといい、その主に異なるところは、火山灰でなく溶岩が出続ける噴火であること。

 もともとハワイ島では溶岩は噴出しており、今回の噴火ではその近くの異なる場所(レイラニエステート)から噴出している。しかも、その溶岩は地下1.5kmのマグマだまりから出ており、その一部は地下鉄のトンネルを通るような形で海岸へと噴出。そのマグマが海に落ち、水蒸気を巻き込むような形で溶岩となり、水蒸気の膨張による爆発で岩が飛び散っている。

「マグマの開口部は24カ所あり、今も活動しているのは2つ。自分はそのうちの1つであるフィッシャー8で溶岩の研究をしている。溶岩の流れは2km/hくらいで、幅は日本橋の川くらい。そこで研究していて、私も安全です」と語り、溶岩によって400エーカーほどの新しい土地が作られているという。

 また、先日ツアーボートに溶岩が飛んでくるという不幸な事故があったが、「マグマが海に入るときに爆発が起きるが、300mほど離れるように注意が出ている(300mほど離れる必要がある)」といい、これはボートもヘリコプターも同様だとのこと。近づきすぎず、十分な距離を取ることが大切だとした。

 また、噴火口から噴出するガスに関しても言及。「もう1つ大きなリスクはガスです。ガスによってできた雲、50ppmの二酸化硫黄が含まれています」といい、この中に入ったこともあり、それには二重のフィルターを持つガスマスクが必要だという。ただ、噴出したガスについては、「数十万トンになるが、それは飛散していく。そのなかには、リゾートのあるカイルア・コナに到達するものもあるが、有害となるほどの量とはならない。これらは分解されて、硫酸アンモニアになり、これは農業で使われている肥料と同様です。空気の質を見ても、濃度が低いのです」とし、噴火口のすぐ近くに行くのでなければ問題ないようだ。

ハワイ大学ヒロ校 地質学科 客員教員および米国地質観測所ハワイ火山観測所准研究員 リック・ハズレット氏

 JALのパイロットである板垣英樹氏は、コナ線に就航するボーイング 767型機のパイロットとしての視点で、今回の噴火を紹介。実はハワイ島のコナ空港に着陸する機体からは、ハワイ島の4000mを超える山がじゃまをして噴火口などは見えないのだという。噴火口は4000mを超える山の向こうにあるため、コナ線乗務の際にコナ近辺に宿泊しても、臭いなども感じないという。

 ただ、最も警戒しているのは火山灰で、火山灰が噴出するとエンジンなどに影響が出るため、現在のJALの運航ではハワイ島のコナ空港に着陸できなかった際にも、安全にオアフ島のダニエル・K・イノウエ空港(ホノルル空港)に着陸できるだけの燃料は残してあるという。

日本航空株式会社 767 運航乗員部 第一路線室 主席機長 板垣英樹氏
ハワイ島のコナ空港に着陸する機体からは、ハワイ島の4000mを超える山がじゃまをして噴火口などは見えず、コナ近辺に宿泊しても、臭いなども感じないという

 火山博士のハズレット氏によれば、日本の火山噴火と異なるタイプのため火山灰爆発などの可能性は低いようだが、JALとしては、お客さまの安全が最優先のため、万が一の事態にも備えているとのことだった。

 ハワイ島観光局 局長 ロス・バーチ氏は、「ハワイ島では35年間噴火しています。今回の噴火は、住宅地があったと場所ということもあって、避難された方へのサポート活動が行なわれています。ただ、観光という観点からは、コハラエリア、コナ空港の北側のエリアは火山の影響がないエリア」「博士が住んでいるヒロ、そしてその北のワイピオについては、世界でも空気がすんでいる場所で、そのため各国の望遠鏡もある」といい、ハワイ島 キラウエア火山 レイラニエステート噴火の影響は、ハワイ火山国立公園閉鎖程度にとどまるとのことだ。

ハワイ島観光局 局長 ロス・バーチ氏

 最後にヴァーレイ氏は、「ハワイ島は火山国立公園があるということで、火山のイメージも強いのですが、ハワイ島にはそれ以外の観光・アクティビティもたくさんあります」とし、数カ月後には今回の噴火を安全に見られるような場所も探しており、「火山活動の壮大さというものを見てほしいと思っています」と語り、現時点ではハワイ州観光局のWebサイトでリアルタイムに情報を発信しつつ、新しい観光資源となることに期待をみせた。

ハワイ島のミスハワイにあたる「ミスアロハハワイ 2018」のテヒナ・スレイドさんもセミナーに登場

 もともとハワイ島は、火山が活動中であるからこそパワースポットとして有名になった場所だ。その噴出口はホットスポットとして知られており、地球マントル活動によって太平洋プレートが長い年月をかけて西へ移動する間に、カウアイ島やオアフ島、マウイ島、そしてハワイ諸島最大のハワイ島を生み出してきた(ちなみに太平洋プレートが沈む場所が日本の近くにある日本海溝)。

 キラウエア火山の活動が活発化したことによってハワイ火山国立公園が閉鎖となっているのは残念だが、活動状態をしっかり見極めていただき、新たなパワースポットとしてハワイ火山国立公園が再オープンすることに期待したい。

ハワイ・ツーリズム・オーソリティ ハワイアン・カルチャー・ディレクター カラニ・カアナアナ氏は、ハワイ島のペレ神話について説明
ハワイ・ツーリズム・オーソリティ ハワイアン・カルチャー・ディレクター カラニ・カアナアナ氏が歌声を披露