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ハワイ州観光局、「ハワイフェスタ広島」開催。日系二世の歴史を伝える映画の上映と監督のトークショーも

局次長ミツエ・ヴァーレイ氏は、ハワイ島の情報提供について紹介

2018年6月16日 開催

ハワイ州観光局が「ハワイフェスタ広島」を開催した

 ハワイ州観光局は6月16日、中国新聞ホール(広島県広島市中区)で「ハワイフェスタ広島」を開催した。

 イベントは13時~15時の1部と、18時~20時20分の2部に分かれており、1部はドキュメンタリー映画「Go for Broke! ハワイ日系二世の記憶」上映会と、監督の松元裕之氏を迎えてトークショーを実施。

 会の冒頭で登壇したハワイ州観光局 局次長のミツエ・ヴァーレイ氏は、今日1日楽しんでほしいというあいさつとともに、キラウエア火山が噴火したハワイ島について言及。「我々(ハワイ州観光局)のWebサイトでは詳細な情報を提供しているが、ニュースではドラスティックに取り上げがち。被害が出ているのは広大なハワイ島の南東のほんの1%で、観光地のコナまでは110km、ヒロまで35km、オアフ島なら300kmもある。現地では通常どおりツアーを催行しているということなので、ぜひ皆さんハワイを盛り立てて」と、ハワイ島の現状についての情報提供を行なった。

ハワイ州観光局 局次長 ミツエ・ヴァーレイ氏

 続いて、映画の上映と松元監督のトークショーを行なった。映画は、ハワイ移民の日系二世の退役軍人と妻へのインタビューを通じて、彼らの親(移民した一世)の苦労や二世たちが直面した太平洋戦争、その後のハワイ社会での貢献などを描き出す内容で、Honolulu Film Awards 2012で「Best of Hawaii」を受賞している。

 1868年(明治元年)、最初の日系移民(明治元年に渡航したため「元年者」と呼ばれている)約150人がハワイに渡り、プランテーションの苦しい時代を経て、ハワイで日系社会が根付き始めるが、太平洋戦争の真珠湾攻撃で状況が一転、日系移民は疑惑の目を向けられるようになる。そこで日系二世たちは軍に志願し、ほぼ日系人のみで構成された第442連隊が結成される。ヨーロッパ戦線でドイツ軍と激戦を繰り広げた彼らの信念が「Go for Broke!(当たって砕けろ/徹底的にやれ)」だった。作中では、連隊に所属した退役軍人らが生々しい戦場での様子や友人の死などを語り、“ハワイに残る日本史”が明らかになる。

 上映後、松元監督がステージに招かれ、司会の質問に答える形でトークショーを展開した。アロハシャツの原型になったといわれている「パラカシャツ」で登壇した松元監督は、こうした場にはパラカシャツかアロハシャツで出席するようにしている、と説明。

「Go for Broke!」制作のきっかけを問われると、「2008年に亡くなった書家の友人の遺作展を開きたいと考えて、生前の本人の希望に沿ってマウイ島で展示を行なおうと、現地の熊本県人会に接触したことが発端だった。その相手は日系二世の夫婦で、話をするうちに『今の日系人のハワイでの社会的地位があるのは、日系二世たちの戦争での苦労や一世の移民の苦労があってこそ』ということを、Kansha Preschool(感謝幼稚園)を作って、小さい子供たちにも伝えていこうとしていると知った。遺作展でお世話になった日系社会への恩返しに何ができるかと考えたときに、NPO法人を立ち上げてその幼稚園をサポートすること、映画の制作を通じてハワイの日系二世たちのことを世に知らせる必要があると決めた」と松元監督。

 撮影はハワイ島、マウイ島、オアフ島をおよそ1カ月かけてまわり、日系二世の退役軍人31名と妻3名へ話を聞いた。その映像は60時間にもなるという。「撮影は思い出だらけ。最初は断わられたり警戒されたりしたが、『日本では移民一世の苦労はおおまかに知られているが、あなた方移民二世のことは知られていない。同じルーツを持つ日本人として、それを恥ずかしく思う。だから日本人に(日系移民のことを)知らせたい』と伝えると、次第に話してくれるようになった」と撮影当初の困難を明かした。撮影を通じて笑顔で話せるようになり、その結果、今でもその日系二世たちと親交があるという。

 また、松元監督は4月から新作に取りかかっており、次は日本から渡った女性、ハワイで生まれた日系女性について記録するドキュメンタリー映画「Okagesama de ~ハワイ日系女性の軌跡~」を制作している。そのエピソードの1つとして、「アメリカを代表するコーヒーにコナコーヒーがあるが、その発展には日系女性が大きく関わっていた。移民時代、大きなコーヒーファームが手を引いたあと、その農園を切り盛りしたのが日系移民だった。戦後、人手の足りない農園に日本から嫁いできた女性が多くいて、持ち直すことができた」と語り、これは現地の人間にもあまり知られていない過去だと説明した。

ドキュメンタリー映画「Go for Broke! ハワイ日系二世の記憶」監督 松元裕之氏

 一方、会場にはハワイ州観光局はもちろん、ハワイ線を就航するハワイアン航空とデルタ航空のほか、JTB、近畿日本ツーリスト、ポリネシア・カルチャー・センターがブースを出展。また、2018年は最初の日系移民がハワイに渡って150年周年ということもあり、二世ベテランレガシーセンターが「ハワイ日系人の歩み」と題したパネル展示を行なっていた。上映した映画の内容とまさにリンクしたもので、多くの来場者が熱心に読み込んでいる姿が印象的だった

 13時から並行して、ハワイ州観光局の公式キャラクター「Shakaちゃん」のクレイ人形を作るワークショップも開催していた。事前申し込みで集まった参加者は講師の手ほどきを受けながらShakaちゃん作りに励んでおり、どれも高い完成度だった。

二世ベテランレガシーセンターによる「ハワイ日系人の歩み」展示
パネルの一部
ハワイ州観光局のブースと写真展示
ポリネシア・カルチャー・センター
JTBと近畿日本ツーリスト
ハワイアン航空
デルタ航空
ハワイカメラガールズによる写真展示
受付周辺にはスタンドポスターの展示も
Shakaちゃんのクレイ人形ワークショップ