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フェルメール展開幕でアムステルダム国立美術館 主席学芸員が解説。「フェルメールは日常生活を特別に変えた」

2018年10月5日 実施

2018年10月5日~2019年2月3日 開催

オランダ政府観光局が「フェルメール展」に合わせてセミナーを実施した

 オランダ政府観光局は、10月5日から2019年2月3日まで上野の森美術館で開催している「フェルメール展」に合わせてセミナーを実施した。

 会にはオランダ 教育・文化・科学大臣のイングリット・ファン・エンゲルスホーフェン(Ingrid van Engelshoven)氏が臨席してあいさつしたほか、アムステルダム国立美術館 絵画彫刻担当主席学芸員のピーター・ルーロフス(Pieter Roelofs)氏がフェルメール展やオランダ本国で行なわれるレンブラント展などの見どころを解説。オランダ政府観光局のWebサイトで事前に募集した聴講者が耳を傾けた。

 今回のフェルメール展は、16~17世紀のオランダ絵画黄金時代に活動したヨハネス・フェルメールが残した35点の絵画のうち、9点が集まるという日本国内では過去最多の展示会。当初、「牛乳を注ぐ女」「手紙を書く婦人と召使い」「赤い帽子の娘」「手紙を書く女」「真珠の首飾りの女」「マルタとマリアの家のキリスト」「リュートを調弦する女」「ワイングラス」の8点とされていたが、急遽追加展示が発表された「取り持ち女」を加えた計9点が集う(「取り持ち女」は2019年1月9日から展示)。

 エンゲルスホーフェン大臣は今回のフェルメール展を「歴史的なイベント。またとない体験になる」と評し、オランダのデルフト焼は日本の伊万里焼に、フィンセント・ファン・ゴッホは浮世絵に影響を受けたとして、16世紀以降日本とオランダ両国が互いに文化・科学・芸術などの分野で影響を与え合ってきたと紹介。「この展示会が両国の盛んな交流のさらなる後押しになることを祈念する」とあいさつした。

オランダ 教育・文化・科学大臣 イングリット・ファン・エンゲルスホーフェン(Ingrid van Engelshoven)氏

 ルーロフス主席学芸員は、「かつて日本とオランダは船で11か月かけなければたどり着かなかったが、今は飛行機に乗って11時間で着く。オランダに来ない理由はありませんね?」と切り出し、フェルメールらが活動した当時、オランダでは貿易で財を築いた市民が画家に依頼して肖像を描いてもらうのは珍しいことではなく、100年の間に600~1000もの絵画が生まれたという。こうした文化的土壌がオランダの絵画黄金時代を支えたと説明。

 フェルメールの作品については、「16~17世紀当時、イタリアやスペイン、イギリスなどでも著名な画家を輩出しているが、オランダの画家は何気ない日常の風景を多く描いた。外国からは、フェルメールらがなぜ日常の風景を絵画にするのかと思われていたが、彼は日常生活を特別なものに変えた。

『牛乳を注ぐ女』はフェルメールが26歳のときに描いた作品だが、窓から入った光があらゆるものを照らしている。彼はカメラが発明されるずっと前に映画のような絵作りをしており、光の効果と構図の妙を十分に理解していた。静けさの中にバランスの取れた空間、そして我々鑑賞者の視点を設けた」と述べ、時代背景や技法について紹介した。

アムステルダム国立美術館 絵画彫刻担当主席学芸員 ピーター・ルーロフス(Pieter Roelofs)氏
当時、市民が自画像を描いてもらうことが珍しくなかった
ごく日常的な様子が多く絵に残された
ヨハネス・フェルメール「牛乳を注ぐ女」。これもごく日常的な風景
光の回り方や構図など、映画的な絵作りをしたフェルメール
レンブラントは自画像を多く残したことでも知られている
レンブラントの代表作で、アムステルダム国立美術館から門外不出とされている「夜警」

 オランダ政府観光局 日本地区局長の中川晴恵氏は、2019年以降にオランダで開催される展覧会について補足し、来年はレンブラントの死後350年であることから「2019年 レンブラント没後350年とオランダ黄金時代」と名付けたキャンペーンを展開しており、さまざまなイベントを開催する。

 その最大のものがアムステルダム国立美術館で2019年2月15日から6月10日まで行なう「レンブラントのすべて展」で、絵画22点、素描60点、版画300点という所蔵するレンブラント作品のすべてを展示するという大規模なもの。

 2019年10月11日から2020年1月19日には、スペイン・プラド美術館との共催で、アムステルダム国立美術館にて「レンブラントとベラスケス展」を開催。

 フェルメール作品のうち、日本人にもっとも知られているのは青いターバンを巻いた女性が振り向いた様子を描く「真珠の耳飾りの少女」と思われるが、その作品を所蔵するハーグのマウリッツハウス美術館では、所蔵するレンブラント関連作品全18点の展示を行なう「マウリッツハウスのレンブラント展」を2019年1月31日から9月15日まで開催する。

 このほか、レンブラントの弟子ニコラス・マースの企画展やレンブラントの若手時代の企画展など、2019年はさまざまな取り組みが予定されている。

オランダ政府観光局 日本地区局長 中川晴恵氏
オランダの絵画黄金時代を追体験する観光ルート
レンブラントの故郷ライデン
2019年はレンブラント没後350年
アムステルダム国立美術館で開催する「レンブラントのすべて展」
「レンブラントとベラスケス展」
レンブラントゆかりの地
レンブラントの家「レンブラントのソーシャルネットワーク展」
「真珠の耳飾りの少女」を所蔵するマウリッツハウス美術館
マウリッツハウス美術館「マウリッツハウスのレンブラント展」
マウリッツハウス美術館「ニコラス・マース展」
ラーケンハル美術館「若き日のレンブラント展」
フリース博物館「レンブラントとサスキア展」

 フェルメール展はJR上野駅 公園口から徒歩3分の上野の森美術館で10月5日から2019年2月3日まで開催している。入場は時間指定制で、1日を6つの入場枠に区切って案内している。日時指定券はWebサイト、電話、コンビニなどで購入でき、該当枠の前売り分に余裕があった場合のみ当日券を販売する。料金は一般2500円、大学生/高校生1800円、中学生/小学生1000円(当日券は各+200円)。

フェルメール展

会期:2018年10月5日~2019年2月3日
会場:上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)
開館時間:9時30分~20時30分(最終入場は閉館の30分前)
料金(前売り):一般2500円、大学生/高校生1800円、中学生/小学生1000円(当日券は各+200円)
Webサイト:フジテレビダイレクト
Webサイト:チケットぴあ