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セブ・パシフィック航空が日本支社開設。訪日利用者が多いなか日本人旅客増を目指す

2018年5月16日 発表

セブ・パシフィック航空が日本支社を開設。日本人向け販売、マーケティングを強化する

 セブ・パシフィック航空は5月16日、アジア・太平洋地域における事業拡大戦略の一環として、マーケティングやプロモーションを含めた事業活動を行なう日本支社を開設。日本支社長らによる記者会見が行なわれた。

 これまで日本国内では総代理店を通じて販売を行なってきた同社だが、日本全体の海外旅行客が伸び悩むなか、フィリピンへの渡航者数は5年連続で成長している現状を踏まえ、日本での販売、マーケティングを強化する目的。フィリピン以外の拠点としては3カ所目の開設となる。日本支社長には、外資系航空会社で管理職を歴任してきた松本知彦氏が就任した。

セブ・パシフィック航空 日本支社長 松本知彦氏

 同社は2008年に関空(関西国際空港)~マニラ線に就航後、2014年には成田国際空港~マニラ線とセントレア(中部国際空港)~マニラ線、2015年に成田~セブ線、福岡~マニラ線を順次開設。現在は成田~マニラ線が1日2便でうち1便は436席仕様のエアバス A330-300型機を使用。ほか、成田~セブ線を週4便、関空~マニラ線とセントレア~マニラ線を毎日、福岡~マニラ線を週3便、合わせて週35便を運航している。

 2017年の旅客数は約43万人。特に成田線開設による利用者増が大きく、開設前の2013年は約3万人だったが、開設後の2014年には約20万2000人に急増。うち約11万5000人が成田便の旅客。2017年の約43万人のうち、成田便旅客数は約26万5000人。2016年の成田便旅客数は約16万人に対して、約66%増という成長率となっている。

セブ・パシフィック航空の日本路線
セブ・パシフィック航空の日本路線の旅客数

 日本とフィリピンの交流人口については、先述のとおり日本からのアウトバウンドは成長を続けており、5年間で35%増加。直近1年間でも、2016年の渡航者数約53万人に対して、2017年は約58万4180人と、9.1%増。2010年から毎年5~10%の成長を続けているという。

 フィリピンへの渡航者国別ランクでは、日本は4位。1位は韓国で160万人超と大きな開きがある。松本氏は「素晴らしいデスティネーションがたくさんある。日本でも需要が高まればと思っている」と話し、セブ島について「なんといっても近い。東南アジアの雰囲気を味わえるリゾートに4時間半程度で行ける。私の見方だがフィリピン人にはラテン系のノリがあり、明るく、ホスピタリティが素晴らしい」と魅力を語った。

 一方、訪日旅客(インバウンド)はさらに勢いよく伸びており、2014年に約18万4000人だったが、毎年約8万人ペースで増加。2017年には約42万4000人となっており、松本氏は「ほかの国でも起きているように、日本人渡航者とインバウンドが近い将来に逆転するのではないか」との観測を述べた。

日本からフィリピンへの渡航者。毎年5~10%増とコンスタントに成長している

 ちなみに、2017年の旅客約43万人のうち、日本からのアウトバウンドが約2割、フィリピンからのインバウンドが約8割になっているという。松本氏はこの状況も日本支社開設の理由の1つに挙げており、まずは、約8万人というアウトバウンドの数字の20%増、10万人を目指す考えを示した。

 セブ・パシフィック航空は約10年間の日本路線の運航実績があるが、販売は約6割がWebサイトを通じた直接販売となっている。松本氏は「Web販売、旅行代理店経由の販売ともに伸ばす余地がある。日本語のWebサイトも改善の余地があると考えている。日本支社では4名の営業スタッフを採用しているが、新たな旅行代理店も含めたお付き合いを進めたい」としている。

 また、今後の日本路線について、松本氏は「新千歳(札幌)線の開設を視野に入れている」とコメント。フィリピン側の就航都市としては、マニラ以外との接続なども検討しているが、具体的な路線や時期には言及しなかった。

セブ・パシフィック航空 日本支社のスタッフ。6月に2名が入社し、9名体制で運営する

42機の新機材導入計画、LCCにも成長の余地あり

セブ・パシフィック航空 貨物担当バイスプレジデント 兼 公式スポークスパーソン アレックス・レイエス氏

 セブ・パシフィック航空は、1996年にマニラ~セブ線に就航したのがはじまり。2017年に通算乗客1億5000万人を達成した。現在はフィリピン国内線37都市、国際線26都市を結ぶ108路線、週2700便を運航。フィリピンにおける旅客シェアは55%と、フィリピン最大の航空会社と呼べる規模となる。

 フィリピン国内のハブ空港は、マニラ、クラーク(以上ルソン島)、セブ島、カリボ、イロイロ(以上ビサヤ諸島)、ダバオ、カガヤン・デ・オロ(以上ミンダナオ島)の計7空港。

 フリートは現在65機で、エアバス A321ceo型機(4機)、エアバス A320型機(36機)、エアバス A330-300型機(8機)、ATR 72-500型機(8機)、ATR 72-600型機(9機)の構成となっている。

 さらに、2018年から5年間をかけて新機材も導入。エアバス A321ceo型機(3機)、エアバス A321neo型機(32機)、ATR 72-600型機(7機)の42機を導入予定となっている。燃費効率がよく、より航続距離を伸ばせるエアバス A321neo型機の導入により、新しい国への乗り入れも検討。オーストラリア・メルボルン線の開設が決まっているほか、人口増加著しいがフィリピンとの直行便がないインドへの乗り入れを検討しているという。

セブ・パシフィック航空のマイルストン
フィリピンの地政学的な特徴。日本から見ると、オーストラリアとの間に位置する
セブ・パシフィック航空のネットワーク
セブ・パシフィック航空の現在のフリート
2018年~2022年に42機を導入。北海道、オーストラリアのパース、インドのニューデリーが新規就航先の候補として点線で示されている
セブ・パシフィック航空 事業企画担当バイスプレジデント 兼 セブゴー社長兼CEO アレクサンダー・ラオ氏

 一方、東南アジアではLCCの増加により飽和状態にあるのではないかとの指摘に対して、同社事業企画担当バイスプレジデントのアレクサンダー・ラオ氏は「一部でキャリアの統合が起き、5~6社が3社になっている。東南アジアではLCCが浸透しているが、日本を含む北アジアではさらに浸透させることができる。まだまだ拡大の余地はある」とコメント。

 加えて、同社公式スポークスパーソンのアレックス・レイエス氏は「空港の発着枠の制約で成長が抑制されている面はあるが、フィリピン政府は全空港で離着陸キャパシティ拡大を進めているので徐々に改善されるだろう。東南アジアのほかの主要都市でも同じことがいえる」と、短期的にはインフラ面の課題があると指摘する一方で、改善の見込みがある課題であるとのこと。

 さらに「フィリピンでは人口1人あたりの飛行機搭乗回数は0.4回というデータがある。人口が1億600万人ぐらいなので、4000万人しか飛行機に乗っていないことになる。ここが上昇するのもポテンシャルで、長期的に見れば成長見込みは大きい」と、旅行をする人そのものの潜在需要を長期的な成長拡大の理由の1つに挙げた。