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ANA、シフト勤務対応や「手ぶらサービス」で社員の育児をサポート。羽田空港に「‘OHANAほいくえん はねだ」開園

社内提案制度から生まれたANA役職員対象の企業内保育所

2018年4月1日 実施

ANAグループの企業内保育所「‘OHANAほいくえん はねだ」が4月1日に開園

 ANA(全日本空輸)グループは4月1日、羽田空港エリア内のユーティリティーセンタービル2階に、ANAグループの役職員を対象とした企業内保育所「‘OHANAほいくえん はねだ」を開園。同日、開園式を行ない、園児の入園を祝った。

 ANAグループには、「ANAバーチャルハリウッドプログラム」という社員提案制度があり、これまで当誌でも愛媛県が開発したデルフィニウムの新種「さくらひめ」の活用や、機内で結婚式を挙げる「空の上の結婚式」、ウインドサーフィンワールドカップ横須賀大会への協賛活動など、実現に至った企画を紹介してきた。

 この‘OHANAほいくえん はねだは2016年度に提案されたもの。メンバーは、男性6名、女性11名の17名で提案。ANAによる保育所の設置は、10年以上前にCA(客室乗務員)が提案したことがあったそうだが実現に至らなかったという。しかしながら、昨今は待機児童の問題が社会的に課題になっており、提案当時のANA社長であった篠辺修氏以下、会社として設置の決断が出たという。内閣府による「企業主導型保育事業」による助成も受けている。

 その代表として開園式に臨席したANAエアポートサービス AMC オペレーションマネジメント部の前田顕郎氏は、「ANAグループは女性が多い職場だと思うが、先輩でも保育環境が整わずに退職される方も見てきた。こういう保育園ができることで、周囲の預けない社員にとっても、会社としても、預けられる保護者の方が復職できることでメリットがある。提案メンバーにも認可保育所に入れなかった人がいる。後輩の方々にそういう思いをさせたくないという気持ちがあり、高校生のお子さんがいるメンバーなども協力して実現に至った」ときっかけを紹介。

 同じく代表として臨席した、ANA フライトオペレーションセンターB777部の伊沢友博氏は、「職場でCAらと話すなかで、辞めざるを得ない方が結構いらっしゃった。なんとか救う方法はないか考え、ちょうど社内提案程度があったので一念発起のような気持ちで提案した。私の育児はもう保育園世代ではないが、当事者ではない我々が声を上げて、間接的に入った方が問題が解決できるのでは」との考えを述べた。

 また、伊沢氏は「保育園を設立するのは当然ながら素人だったので、例えば空港は燃料タンクなどの危険物が多く、道幅、非常口などの法的要件を満たすため一つ一つ解決していくのが大変だった」と苦労を明かしたほか、実際に設立された‘OHANAほいくえん はねだについて、「(ANAは)人命を預かる企業でもあるので、ここでも安全面では強く注視する必要があると思う。会社も保育園もそう求められる」と話した。

ANAエアポートサービス株式会社 AMC オペレーションマネジメント部 前田顕郎氏(左)と全日本空輸株式会社 フライトオペレーションセンターB777部 伊沢友博氏

 ‘OHANAほいくえん はねだの「‘OHANA」はハワイ語で「家族」「絆」を意味する言葉。グループ社員のコミュニケーションの場となり、社員みんなで子育てに関われる保育園にしたいという思いが込められている。また、ロゴマークはグループ内で公募。19件から、明るい未来へ成長するイメージの虹や、ANAのシンボルでもある2輪のひまわりが描かれたロゴが採用された。

 保育所としての特徴は、シフト勤務が多いANAグループ社員の事情を鑑み、基本保育が8時~21時に加え、7時~8時と21時~22時の延長保育にも対応と、長めの開園時間になっているうえ、延長保育に対する追加の保育料はかからない。また、おむつを保育園で用意するほか、洋服や布団などを保育園で洗濯することで利用者の負担を減らす「手ぶらサービス」を導入した。

 スタッフは園長、保育士合わせて15名の体制。保育料は月額4万円で、東京都大田区の保育所の相場に合わせたという。

 エントランスには、ANAが宮城県南三陸町で行なっている森林保全活動「ANAこころの森」の木材を使用。廊下は滑走路、トイレは格納庫をイメージしたデザインを採用している。組の名前も、0歳児は「ほし」組、1歳児は「にじ」組、2歳児は「そら」組と、航空会社グループらしい空を連想させるものになっている。

‘OHANA ほいくえん はねだ

設置場所:東京都大田区羽田空港3-5-10ユーティリティーセンタービル2階
利用対象者:父母のどちらかがANAグループの役職員であること
保育時間:基本保育8時~21時(延長保育7時~8時および21時~22時)
保育対象年齢:生後57日~2歳(3歳になる年度末まで)
定員:25名(0歳6名、1歳8名、2歳11名)
運営委託会社:HITOWAキッズライフ株式会社

ANAが宮城県南三陸町で行なっている森林保全活動「ANAこころの森」の木材を使ったエントランス
ひまわりや飛行機が描かれた園児室。広さは20.15~26.43m2の3部屋を設ける
格納庫をイメージしたという子供用トイレ
0歳児は「ほし」組
1歳児は「にじ」組
2歳児は「そら」組
滑走路をイメージした廊下

 4月1日に行なわれた開園式には、ANAHD(ANAホールディングス) 代表取締役社長の片野坂真哉氏、ANA代表取締役社長の平子裕志氏が列席。あいさつに立った片野坂氏は、「大切なお子さまを責任を持って預かり、お父さん、お母さんが働いているときにしっかりサポートできるように取り組んでほしい」とコメント。また、夏には那覇にも同様の保育所を開園することを明らかにした。

 開園のあいさつを行なった‘OHANAほいくえん はねだ園長は「子供たちがのびのび、すくすく、にこにこ過ごせるように、保護者の皆さまが安心してお預けいただけるよう、一人一人の心に寄り添い、居心地のよいアットホームな保育園を作っていきたい」と決意を述べた。

ANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 片野坂真哉氏
園長や保育士の紹介
いつの間にか片野坂氏に近づく園児

 このあと、入園する園児を一人一人紹介。この日入園したのは0歳児5名、1歳児9名、2歳児1名の計15名。入園式にはこのうち14名と保護者が出席している。ちなみに、‘OHANAほいくえん はねだの定員は25名で、今回50名ほどが応募。最終的にほかの認可保育所などに入園できたなどの理由で辞退があり、希望者全員が入園できることになったという。

 園児の紹介後は、代表者として2歳児の築澤碩人さんがANA代表取締役社長の平子氏に、飛行機のイラストが描かれたという色紙をプレゼント。平子氏から築澤碩人さんへも記念品が贈られた。

 閉会のあいさつは、ANA人材戦略室 労政部部長の勝岡陽一氏が務め、「いろんなこと、いろんなものに興味を持って、大きく成長するとても大事な時期だと思う。そういう時期をこの‘OHANAほいくえん はねだで過ごして、よい刺激をたくさん受けていただいて、すくすくと元気に育っていただければ」と話し、会を閉めた。

園児代表が、ANAのカレンダーに載っている飛行機を描いたという色紙を、全日本空輸株式会社 代表取締役社長の平子裕志氏にプレゼント。平子氏から園児へも記念品が渡された
ロゴ発案者への記念品贈呈
全日本空輸株式会社 人材戦略室 労政部部長 勝岡陽一氏

 保護者の代表としてお父さんが事務職、お母さんがCAという築澤さん、伊藤さんの夫妻が報道関係者の取材に対応。事務職でもシフト勤務があるほか、CAは乗務する便の出発地に合わせて、羽田だけでなく、成田へ出社する日もあるという事情がある。

 築澤さんのお母さんは「(昨年の)10月から復帰したが、認可保育所には入園できない条件だった。一時保育では時間が制限されてしまいシフト勤務でもどうしても対応してもらえず、ベビーシッターや自治体のファミリーサポートの力をいただいてなんとか半年間やってきたが、4月からは365日、7時~22時のこちらで、シフト勤務にも対応してもらえるので心強い」とコメント。

 伊藤さんのお母さんは、「4月1日付けで職場復帰。これまではずっと自分で見ていられたので苦労はなかったが、復帰するにあたって私も主人もシフト勤務のため、今回保育園ができたことで、シフト勤務に対応してお力添えをいただける」と同様にシフト勤務に対応できる保育所であることを重要なポイントとして挙げた。

 また、実際に‘OHANAほいくえん はねだを見て、「新設なので新しくてきれいなので安心感がある。室内が狭い保育園が多かったので、広いフロアがあると子供も走れまわれてよいと思う」(築澤さん)、「入った瞬間、明るいと思った。すごく光りも入るしよい環境。おもちゃや本も多く、遊びやすい環境が整っている」(伊藤さん)と、それぞれに感じた魅力を語った。