第5回 鉄道技術展2017に出展する保線機器整備の「こ太郎(道床堀削機)」を間近に見る 大規模鉄道技術展では国内唯一となる「第5回 鉄道技術展2017」が、幕張メッセの5~8ホールを使って11月29日から12月1日まで開催された。また、同会場の8ホールの一部スペースと国際会議場を使って、社会インフラ構造物、モニタリング、維持管理技術の展示会「第2回 橋梁・トンネル技術展」も同時開催された。
どちらの技術展も、業界関係者の商談会の色が濃いが、普段はあまり目にすることがない鉄道業界の裏側の技術が垣間見れる貴重な場となっている。細かな技術で多くの展示があるので、目に留まったものを順不同に紹介していく。
今回は、屋外を使って展示や実現もあり、レール長約25mの軌道を設置して幕張メッセ初となる実演デモも行なわれていた。
「第5回 鉄道技術展2017」と「第2回 橋梁・トンネル技術展」が、幕張メッセで開催された まずは車両メーカーから紹介するが、一般向けではないので実物大の車両やカットモデルが展示されていることはなく、部分的な技術やソリューション展示なので、やや地味に見えるかもしれない。ただし、技術の展示は多岐に渡っているので、個々を理解しながら見ていくのは、鉄道ファンなら見応えがあるはずだ。
三菱重工業のAGTの模型。都市内や空港向けなど、規模や用途に合わせてラインアップする 三菱重工業。AGT向けセミハイバックのバケットシート「G-fit」 三菱重工業の新型電車線。手前がアルミとステンレス複合剛体、奥が銅とアルミ複合剛体 日立ハイテクファインシステムズが製作する車両のパネル展示 日立ハイテクファインシステムズの慣性正矢軌道検測装置。レールのゆがみをレーザーとジャイロを使って検測する この装置を車両下に設置する。検測専用車両ではなく、一般車両に設置できるのも特徴 検測した記録を表示する。これらは通信でクラウド経由にて確認する 川崎重工業の鉄道規格に適合した間接型LED灯。柔らかな光で調光、調色も可能 川崎重工業が提供するシャープの技術を使った鉄道車両用プラズマクラスター 川崎重工業では最新計測技術を使って提供するメソッドを「efARM」としている 川崎重工業の「efARM」で使われる最新の計測器やコントローラ類 総合車両製作所の次世代ステンレス車両「sustina」シリーズのモックアップ。JR東日本(東日本旅客鉄道)のE235系などに採用されている 溶接部分を研磨により目立たないようデザイン化している ドア周囲の仕上げ。スリムなデザインになる傾向にある CRRC(中国中車)は、国有企業で世界最大の鉄道車両メーカー。ニュージーランドのディーゼル機関車とウズベキスタンの電機機関車模型 CRRCのフィリピンのマニラ3号線を走る電車の模型 日本車輌のボスタレス式台車「NSシリーズ台車(NS-101TA)」。設計速度は120km/h。省メンテナンス性を追求している 中村自工のディーゼルパワーユニット「DPU」。ディーゼルをコンパクトにパッケージング 東京メトロ車両。輪軸装置の仕組みが分かる模型。教育用途に提供 保守に使われる機器の展示も多く、通常近くで目にすることはない機器なので大変興味深い。今回は屋外も使って、大型の機材も展示されている。屋外で行なわれた実演デモは、この項目に続けて紹介していく。
長野電鉄の小型マルチプルタイタンパー「UNIMA 4」。製造元はプラッサー&トイラー UNIMA 4を後部から見ている。中央のタンピングユニットが見える UNIMA 4のタンピングユニットは2基。セルフローダージャッキも備える UNIMA 4の運転席。自動線形コンピュータ(ALC)を備え自動で最適化される 保線機器整備の道床堀削機「こ太郎」。重量17トン。掘削量は26.4m2/h 保線機器整備の「分割式ATカート」と手前は「レール踏面清掃装置」 保線機器整備の自走式波状摩耗削正器の編成。レール面を削る 東鉄工業(TOTETSU)は、新幹線レール更新システム「REXS」を展示。REXSの一部「多頭式ボルト緊解機(i-CUTE)」 i-CUTEのボルト締結部分。更新の最終作業にあたる レンタルのニッケンの「鉄道用3トン3転ダンプ5形」低床仕様、転車台なし。新規導入機材 レンタルのニッケンの「地下鉄用ホームステージ&タワー」 脚立で馴染みのある長谷川工業の避難タラップやメンテナンス用の作業台など特注ができる「特注職人」。車両昇降用のタラップ 長谷川工業の電気工事用FRP製高所作業台。耐電圧構造になっている ねじくぎの再穿孔をせずに最大16mmの調整ができ、手間が大幅に減らせる 鉄道機器の省力化床板は目的やコストによって3種用意されている 鉄道機器の「可動式横取り装置」の模型。分岐器を用いずに保守車両をほかの軌道上に移動させる IHIの「三次元レーザーレーダー式踏切障害物検知装置」 三次元レーザーレーダー式踏切障害物検知装置の本体部分 三次元レーザーレーダー式踏切障害物検知装置が異物を検知している画面 伊岳商事はRAWIE製「高性能バッファーストップ」エレメントを滑らせ車両を停止させるタイプを展示 日本プラッサーはプラッサー&トイラー製マルチプルタイタンパーのタンピングユニットを展示 日本プラッサーが輸入元のドイツROBEL社製バッテリーツール。手前がバッテリーレール切断機MSB「12.20」。奥はドリルマシン「10.20」 バッテリードリルマシン「10.20」はレール穿孔機 10.20のドリル刃は複雑な形状。軽い力で穴が開く これらバッテリーツールはすべて共通のリチウムイオン電池が使われる イタリアCembre製のレール穿孔機。手前がエンジン式「LD-411P」で奥がバッテリー式「LD-2E」 東進産業のラジコン式草刈り機。チェコDVORAK社製スパイダー「OLD01」 屋外では展示のほか、レール長約25mの軌道を設置しての実演デモも行なわれていた。実演のなかから、保線機器整備の「ATカート大集合! 試乗会」と「自走式波錠摩耗削正器(砥石式、ベルト式)実演会」を紹介する。
保線機器整備の軽量カート「軽々君」2人乗りで牽引不可だが、自重48kgと軽量 スロットルを前に倒すと動き出し、戻すとブレーキが自動でかかる 保線機器整備の「電動アシストレールサイクル(4人乗り)」自転車は外せば通常道路の走行も可能 走行感覚はまさに自転車。軽々と走行できたが、線路の上なので不思議な感覚 保線機器整備の「No-Le(跡確認用移動装置)」。作業終了時の跡確認用移動に使う。最大2名まで乗ることができ、最大7km/hで移動、30kgと軽量 ここから保線機器整備の「自走式波錠摩耗削正器 実演会」だ。手前が砥石式で、奥がベルト式 3パスして削ったあとのレール面。パスのたびに角度を調整している ここからは駅やホームといった鉄道の施設関連での展示を紹介する。現在ホームではホームドアの設置が進行中ということもあってか、工夫を凝らしたホームドア関連の出展が多く感じられた。また、新テクノロジを駆使したサイン関連も目を引いた。
竹中工務店、竹中土木の共同ブースでの現在工事が進む「横浜駅西口開発ビル(仮称)」模型 模型を線路側から見ると、建物が線路にはみ出しているのが分かる。跳ね出し建物と呼んでいる 横浜駅西口開発ビルの線路への跳ね出し建物部分詳細模型 この線路上跳ね出し建物は、竹中工務店とJR東日本(東日本旅客鉄道)との共同研究にて行なわれている。各ステップの手順図解 竹中工務店の木造の美しさを保ちながら燃えにくくする燃え止まり層のある柱「1時間耐火燃エンウッド柱」 京三製作所の「大開口可動式ホーム柵」二段扉式で最大4mの開口幅に対応。ドア位置のズレもカバーできる 車両間のカバーが完全に閉じたところ。手前側が車両のイメージ 「シカ踏切システム(U-SONIC K2M)」超音波を発して線路内に動物の侵入を抑制。運行時間外には止めて行き来できるようにし、動物に対しての遮断機の役割を果たす JR東日本テクノロジーと音楽館の共同ブースの乗務員区所シミュレータ。運転士と車掌の連係訓練ができる 乗務員区所シミュレータ。スペース上通常別にある運転士用と車掌用の教諭卓を合体させている 「教育訓練用車両モックアップ」。清掃や検修などの訓練用途で社員研修施設に使われる 東急テクノシステムの「小型運転シミュレータ」。写真では装着していないがVRを使う省スペースシステム 東急テクノシステムの「列車防護訓練シミュレータ」。省スペースで訓練できる 東京メトロ(東京地下鉄)ブースの東西線九段下駅に設置されていたサイネージ付きの大開口ホームドア。ナブテスコ製 東京メトロで使われている富士商会製の軽量アルミ止水板 ナブテスコの「サイネージ組込式透過型ホームドア」。プラットホームで開放感を演出する ナブテスコの「大型サイネージ組み込み式ホームドア」。55インチ有機EL採用で屋外設置も可能 ナブテスコの「戸挟み防止システム」エアーを使った方式で圧力を減圧して脱出できるようになる ナブテスコの「電気式側引戸システム Rock☆Star」。こちらも戸挟み防止システムを内蔵する 電気式の側引戸駆動部分。必要なものをユニット化して世界最小最軽量 ナブテスコの「オイルフリーコンプレッサ」油を一切使わないスクロール式で世界最小 日本信号の参考出品となる改札機に組み込まれたプロジェクタ式ディスプレイ もちろん前側も連動して表示。広告などを表示することも可能 日本信号の床掃除ロボット「CLINABO」記憶させたルートを自動走行する 日本信号の「マルチユース端末」。24インチの大画面で8カ国語に対応 日本信号の「大画面券売機」8言語に対応し主に訪日外国人向け。32インチのタッチパネルディスプレイ。六本木駅にすでに導入済 日本信号の「手荷物自動検査装置」。検知対象物は空港以外のイベント会場での利用を想定している。3秒以内で判定する 日本信号の「軽量型ホームドア」。導入コストを削減できる構造。音楽館の考案した特許にて商品化 ホームドア上部に日本信号の「列車扉開閉連動システム」がある。3Dセンサを設置するだけで、列車扉の開閉にホームドア開閉が連動する フロアビジョンは、シーンに応じてホーム上にさまざまなディスプレイが可能 富士フイルム イメージング システムズの「RFIDサイン」。サインの一部分にRFIDを埋め込み、張り替え時期を把握しやすくする。参考出品 富士フイルム イメージング システムズの「広角度反射シート」。直射以外の光にも広角度で反射するフィルム。街中の照明で明るく反射する。右が広角度反射シート使用 カシイの各種自照式のサインラインナップ。LED内照式 東レの高視認性安全ユニフォーム素材「ブリアンスター」と「接客ユニフォーム用テキスタイル」 続けて、施設関連と重なるが電気関連メーカーの出展製品を紹介する。
パナソニック コネクテッドソリューションズの多言語音声翻訳サービス「メガホンヤク(左)」と「対面ホンヤク(右)」 メガホンヤクは、4カ国語の定型文に対応。公共の場でのアナウンス向け パナソニックの頑丈なIT機器シリーズ。「タフパッド」や「タフブック」。過酷な現場での使用にも耐える パナソニック システムネットワークスの「光ID」ソリューション「LinkRay」。バックライトなどLEDを点滅させて信号を認識する。ここではLEDの自照式広告にスマホをかざし、AR画像を表示している 光IDのスタンプラリーへの応用。LED光であればなんでも応用できる。点滅が感じられることはない 三菱電機の「TCMS次世代列車統合管理装置 地車間連携保守支援システム」の一部機能のデモで、東京メトロ銀座線の列車のリアルタイムの運転台画面が表示されていた 同じシステムではタブレットで表示もできる。現場では主にこちらを活用する 三菱電機の「アニメーション誘導ライティング」。専用ICカードを使って人を誘導する。ICカードを持っていると青いラインで導く ICカードを持たず不正に侵入した侵入者の特定も含め、人の位置をリアルタイムで把握できる 三菱電機の「無線式列車制御システム(ATACS)」の模型デモ。列車同士が近いのがポイント ATACSのイメージ図。無線制御ではない装置の決まった区間での運用よりも柔軟度が高く、列車の間隔を狭めて運行することができる 三菱電機のATACSユニット。JR東日本の埼京線などで稼動。今後さらに小型化される予定 三菱電機のスマートグラスへAR表示し、点検の手順や確認値を把握するシステム 三菱電機の三菱インフラモニタリングシステム「MMSD」。8Kラインカメラとレーザースキャナを搭載した計測車両によってトンネル壁面全体を検査 オムロン ソーシアルソリューションズの「自動走行し手荷物搬送支援・誘導するロボット」。人混みでも人を避け、設定した目的地へ案内したり荷物を運んだりする。海外では導入事例がある 設定したゴールに対して、常に変化する周囲の状況に対応してルートを導き出す オムロン ソーシアルソリューションズの同じ自動走行ロボット技術を応用した清掃とサイネージ表示機能を持ったロボット オムロン ソーシアルソリューションズ。生体認証を使ったチケットレス改札機。IDを登録しておけば、顔もしくは指紋の生体認証でICカードと同じように改札を利用可能 オムロン ソーシアルソリューションズの「自動接客ソリューション」。切符販売を対面販売のように会話により行なう。ここではQRコードを印刷し、スマートフォン連動券売機にて切符を実際に購入 オムロン ソーシアルソリューションズの「スマートフォン連動券売機」。アプリや自動接客ソリューションで印刷したQRコードで切符の購入画面を掲示する オムロン ソーシアルソリューションズ。参考出品の「運転士の集中度モニタリングシステム」。赤外線を使ってマスクやサングラス装着でも関知する。時系列ディープラーニングを使って集中度をレベル分けしている 居眠りやスマホ操作など、おかしな挙動を感知すると「Readiness」レベルが下がる 日本無線(JRC)の「高精度GNSS受信機(JS11)」は、準天頂衛星4基体制に対応し、cm単位での把握が可能になる測位衛星受信機 精度の比較。「RTK測位」は地上基準点からの補足データを追加した場合 JRCの「高速大容量通信60GHz帯アクセスソリューション」受信機。1対1通信で安定した高速通信をする。実効速度6.1Gbps JRCの60GHz帯アクセスソリューションを活用した「大容量・瞬時接続スポット」の参考出品デモ。自動改札機のように瞬間的な近接でデータを転送する。リンクは2msecで確率し、1秒で800MB弱程度を転送。NFCの性能が格段に上がったもの JRCの60GHz帯アクセスソリューションを活用した「無線給電・通信融合」の参考出品。2ユニットを接触させるだけで、給電と高速通信ができる。無電源台車への電力供給と通信などに応用できる EIZOのIPモニタ。LANケーブルのみで映像を転送。列車運行司令室をイメージした展示 IPカメラを直接接続して操作する機能がモニタに内蔵されている HDカメラを直結でき、明るい場所でも見やすい高輝度モニタ。参考出品 車掌用ITVモニタ。東急電鉄ホームに監視用として採用されている 七星科学開発センターの「USB 3.0光通信機器」。光ファイバで最大10kmまで延長できる新製品 同会場の一部では、社会インフラ構造物、モニタリング、維持管理技術の展示会「第2回 橋梁・トンネル技術展」も同時開催された。ここは、主にドローンを使った技術を中心に見てみた。橋梁など構造物の点検にドローンが活用されることが多い。
フェーズワン ジャパン、Sky Link Japan、ジェピコの共同ブースでのPhase One「iXUカメラシステム」を搭載した「Matrice 600」。ドローンはDJI製 ドローンに搭載された中判デジカメのPhase One iXU。軽量な空撮用カメラ ジェピコの「ひび割れ図化システム」。日本システムウエア社製。Phase One iXUとドローンを組み合わせ、0.1mmのクラックも見つけることができるとしている エンルートの橋梁点検モデルのドローン「PG700」 エンルートの超音波を使ったドローン用衝突防止システム。左端と中央に装着されている 秋葉原に店舗やショールームを持つ田中電機の有線ドローン「PARC」。122mの高さまで飛行可能。全天候型で定点観測に向く 三信建材工業の「PF1-Inspection」。レーザーを使用し、橋梁下など測位衛星データが届かない場所でも自律飛行する。0.1mmレベルのクラックを診断できる 日綜産業の熟練工でなくても簡単に組み立てが可能なシステム吊足場「クイックデッキ」 日綜産業の「法面作業構台マルチアングル工法」のデモ。法面(のりめん)は、人工的に作られた斜面のこと。斜面に安定した作業台を作る 日本ビソーの橋梁点検車にゴンドラ機能を搭載した「ゴンドラ車」。実際には橋梁の上から路面裏の下に向けて下げて使う。56.2mまで下げられる