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ドリームクルーズ、新造客船「ワールド ドリーム」命名式を香港で実施
船内の「上級レストラン&バー」も全ガイド
2017年11月24日 17:24
- 2017年11月16~17日 実施
アジアを中心にクルーズ客船を運航しているゲンティン香港は、配下にあるクルーズ客船企業の1つであるドリームクルーズに「ワールド ドリーム」を配船し、11月17日、香港を起点とするクルーズ航路に就航させた。また、ワールド ドリームの就航に伴い、それまで、香港起点航路で運航していた「ゲンティン ドリーム」は、ドリームクルーズとしては新しい航路となるシンガポール起点のクルーズ航路に異動した。
ドリームクルーズは11月16日、シンガポール起点のクルーズ航路開設とゲンティン ドリーム就航を記念する式典をマリーナベイ・クルーズセンター・シンガポールに接岸したゲンティン ドリーム内部の「ZODIAC THEATER」で実施。
また、翌11月17日には、香港起点クルーズ航路就航記念式典と新造船であるワールド ドリームの命名式を、香港のカイタック・クルーズターミナルに接岸したワールド ドリーム内部の「ZODIAC THEATER」で実施した。
2019年開港の「ジュエル・チャンギ・エアポート」でシームレスなフライ&クルーズが可能に
ゲンティン ドリームの式典では、ゲンティン香港のクルーズ事業を担うゲンティンクルーズライン社長のKent Zhu氏が、2016年11月から開始したゲンティン ドリームによる香港起点クルーズの成果を紹介した。ゲンティン ドリームは、アジアにおける“ハイエンドクルーズ市場”において高い評価を得ており、その証として、業界向け専門媒体「Travel Weekly Asia」のベスト新造船部門で2017年リーダーズチョイスを受賞、ベストクルーズエンタテイメント部門ではドリームクルーズが2017年リーダーズチョイスを受賞している。さらに、客船愛好家向けのガイドブック「Berlitz Cruising&Cruise Ships」の2018年版では、ゲンティン ドリームが大規模リゾート部門のトップテンに選ばれた。
Zhu氏は、ゲンティン ドリームを「アジアの船客に最適化した上質な“浮かぶ総合リゾート施設”」と表現するとともに「(母港となる)マリーナベイ・クルーズセンター・シンガポールに係留するこの客船は最新のランドマークになる」とシンガポールとゲンティン ドリームの一体感をアピールした。
Zhu氏は、「この地は24年前にゲンティングループの会長が自分の夢をかなえてクルーズ客船事業を始めた場所で、そのときから今に至るまでゲンティンクルーズラインは、シンガポールに根付いて活動してきた」とゲンティングループにとってシンガポールが特別な地であることを紹介したうえで、「この事業を開始してから今に至るまで、ゲンティンクルーズラインは、アジアにおける高付加価値クルーズ事業においてシンガポールの位置付けを高めるために最前線に立ち続け、それが、シンガポールの発展に貢献できた。これは、ほかのクルーズ企業にはできない、シンガポールに根付いているゲンティンクルーズラインの誇り」とシンガポールとの強い結び付きを紹介した。
加えて、今後予定しているゲンティンクルーズラインとシンガポール政府、そして、シンガポール・チャンギ国際空港による協力事業について言及し、シンガポールをアジア海域へのクルーズハブとして機能させ、フライ&クルーズに適したアクセスを可能にするゲートウェイを構築する戦略的な投資として2800万シンガポールドル(日本円にして約23億円)を用意することを明らかにした。
式典にゲストとして招かれたシンガポール政府観光局 チーフエグゼクティブのLionel Yeo氏は、「シンガポールがゲンティン ドリームの東南アジアにおける最初の母港として選ばれたことをうれしく思う」と歓迎の言葉に続いて、「シンガポールが東南アジア有数のクルージングハブになるには、3者による継続した取り組みが不可欠」と3者の協力関係が重要であることを強調した。
同じく式典にゲストとして登場したチャンギ空港グループ 空路ハブ開発マネージングディレクターのLim Ching Kiat氏は、「チャンギ国際空港は、世界380都市からアクセスできる。3者共同事業の投資によってこれまで以上にフライ&クルーズ利用客を生み出し、シンガポールはアジア海域におけるクルージングのハブとなるだろう」と期待を述べるとともに、この投資でフライ&クルーズ事業が成長するために拡張するサービスの具体的な内容として、2019年に開港する予定の「ジュエル・チャンギ・エアポート(Jewel Changi Airport)」では、異なる輸送手段への乗り継ぎに対応したラウンジを設けて、フライ&クルーズの利用者は旅客機と客船を“シームレス”に利用できるようになることをアピールした。
命名式恒例「シャンパンクラッシュ」の演出に驚く
ワールド ドリーム就航記念式典では、ゲンティン香港 会長兼CEOを務めるTan Sri Lim Kok Thay氏から、ゲンティン ドリームが2016年11月から1年間にわたって香港発着クルーズで運航してきた成果として、「30万人以上の船客が利用しただけでなく、この地域において数百人規模の雇用を生み出し、地域のホテルや航空会社、そして、香港行政府など観光関連収入が大幅に伸びた」と述べたほか、乗組員の努力によって数多くの賞を受賞したことを紹介したうえで「ワールド ドリームでも同様にBerlitz Cruising&Cruise Shipsの2019年版に選ばれるように期待する」とワールド ドリーム乗員を励ました。
Thay氏は、業界専門誌から高い評価を受けた理由として、専属の客室担当や専用レストラン、プールなどを利用できる上級船客限定のサービス「Dream Palace」とドリームクルーズが提供している多彩なクルーズ航路を取り上げ、ワールド ドリームでは、これまでの香港起点航路と同様に、ベトナム沿岸(ニャンチャン、ホーチミン)、フィリピン諸島(マニラ、ボラカイ)を巡航する予定であること示した。なお、現時点におけるドリームクルーズの予定に記載はないが、式典では沖縄の那覇と宮古島に寄港する航路も挙がっていた。現時点では推測になるが、ゲンティン ドリーム同様に沖縄海域を巡航するプランの可能性も期待できる。シンガポール起点では、マレー半島海域(クアラルンプール、ペナン、プーケット)を巡る航路とインドネシア諸島(スラバヤ、北部バリ)を巡る航路を予定している。
式典にゲストとして登場した香港特別行政区 行政長官のCarrie Lam Cheng Yuet-ngor氏は、ワールド ドリームの就航に対して「香港がクルージングのハブとして成長する大きなきっかけとなるだろう。ゲンティンクルーズラインの存在によって、世界の客船愛好家に向けて香港の魅力を訴求できることに香港のみんなが期待している」と歓迎の言葉を述べ、「2017年における香港発着客船の数は過去最高の250隻となり、利用した船客は85万人に達した。この成果は、ゲンティンクルーズラインをはじめとするクルーズ企業各社と寄港先の国々、そして、香港観光局の協力があってこそ実現した」とクルージング拠点としてみた香港の優位性を訴求した。
また、2016年11月のゲンティン ドリームに引き続いてワールド ドリームでも「名付け親(World Dream's Official Godmother)」となったPuan Sri Cecilia Lim氏(ゲンティン香港 会長夫人)は、「ワールド ドリームの名付け親となってここにいますが、1年前のゲンティン ドリームの命名式の興奮を思い出しました。あれからの1年間で幾多の困難を乗り越えたゲンティン ドリーム乗員のおかげで今の成功が実現しました。このたび再びワールド ドリームの名付け親となりましたが、今回も乗員によって私の願いは実現するでしょう。この船を命名する私の責任は重大ですが、ワールド ドリームの祝福を約束します」とゲンティン ドリーム乗員の労をねぎらい、ワールド ドリームの安航を願った。
式典に続く命名式では、ステージに立つ名付け親のLim氏にワールド ドリームの「鍵」を渡し、Lim氏がステージ上につり下がった“巨大な球体”に鍵を触れさせると、劇場のスクリーンにワールド ドリームが接岸している岸壁に設置したカメラからの映像が現われた。そこには、今まさにワールド ドリームに向かって飛び出そうとしている巨大なシャンパンボトルが映し出されていて、次の瞬間、接岸しているワールド ドリームの船体に向かってシャンパンボトルが空中ブランコのように放物線を描いて舷側に書かれた船名「ワールド ドリーム 世界夢号」の上部に当たって砕け、岸壁に用意していた打ち上げ花火の閃光と煙にワールド ドリームの巨大な船体が覆われた。
ワールド ドリームの日本寄港クルーズは?
シンガポールと香港のそれぞれの式典とは別に、ドリームクルーズは報道関係者の質問に答える機会を設けている。このなかで、ゲンティン ドリームとワールド ドリームの違いについて、ともに同じ価値を提供する両船は、特に「食事」を重視しているため、配船するシンガポール起点と香港起点にそれぞれ合わせたレストランとメニューを提供すると説明している。香港起点のワールド ドリームでは、中国本土や日本、そして韓国の船客を考慮して中華、そしてシーフードを提供する日本料理レストラン、コリアンバーベキューを提供する韓国料理レストランなどゲンティン ドリームにはないレストランを用意している。
加えて、船客の嗜好変化に合わせて、ワールド ドリームでは上級船室を増やしてホテルのような質の高いサービスの提供を強化した。さらに、若い世代の船客に向けたアクティビティとしてVRを駆使したデジタルゲームを体験できる専用エリアも新たに用意したことをアピールした。
なお、2017年11月時点で2016~2017年シーズンのゲンティン ドリームのように沖縄海域のクルーズプランを提示していない理由として、海況状況から冬の季節は沖縄海域よりフィリピンやベトナム沿岸がクルーズに適しているためとしている。また、香港起点クルーズの船客割合は中国本土からが48%、香港が40%、海外からが12%であることも明らかにした。
ドリームクルーズの主役、「上級」レストラン、バー、ラウンジ、カフェをチェック
ゲンティン ドリームでもワールド ドリームでも、式典に合わせて旅行業界関係者を対象に船内を公開した。上級船室についてはすでにトラベルWatchで紹介したが(関連記事「ドリームクルーズ、同社2隻目となる新造船「ワールド ドリーム」を香港で公開」)、ここでは、両船とも重要なコンセプトの1つと位置付けている「食」を提供するレストランとラウンジ、バーの内装や、船内公開に合わせて用意したサンプルメニューを紹介する。レストランなどの一部は、視察航海レポートでさらに詳しく紹介する。
Genting Club Restaurant&Lounges
ゲンティン ドリーム、ワールド ドリームともに第17デッキにある上級船客専用サービス「Dream Palace」で利用できるゲンティンクラブのレストランとラウンジだ。両舷一杯にレストランエリアを、左舷後方にラウンジエリアを配置している。ラウンジにはカウンターバーを備え、レストランには半個室エリアを設けている。
Bistro by Mark Best(ゲンティン ドリームのみ)
ゲンティン ドリームに設けた有料レストランで、豪シドニーのシェフでWebレビューや業界ランキングで同地区上位にランクしている、Marque RestaurantのシェフであるMark Best氏が監修する洋上で唯一のレストランだ。第8デッキ左舷側にある。オージービーフと豪ワインを組み合わせたメニューを提供するほか、オープンデッキでグリル料理も楽しめる。
Premie Steakhouse&Seafood Grill(ワールド ドリームのみ)
ワールド ドリームに設けた有料レストランで、ゲンティン ドリームのBistro by Mark Bestに相当する位置付けになる。場所は同じ第8デッキ左舷側。メニューは後日掲載する視察航海レポートで紹介する予定だ。内部は肉料理がメインのPremie Steakhouseが船首側、Seafood Grillが船尾側と分かれているが、セットメニューを頼めば、アラカルトで両方のメニューを注文できる。Seafood Grillでは、店内に並べている素材を船客が選んで調理をお願いできるシーフードビュッフェや調理を直接見て楽しめる「オープンシェフシート」を用意している。
HUMIDOR(ゲンティン ドリームのみ)、Bubbles、Johnnie Walker House
HUMIDORはゲンティン ドリームに設けたシガーラウンジだ。第8デッキ左舷側にある。日本でいうところの「葉巻」を楽しむスペースで、多種多様なコレクションを用意している。Bubblesはシャンパンバー。Johnnie Walker Houseは、スコッチウイスキーのブランド「Johnnie Walker」がスコッチウイスキーの文化や楽しみ方を伝え、テイスティングや個人にあったブレンドを提供する場でもある。世界中でも6カ所にしかなく、原酒ラインアップから利用者のオーダーに合わせてブレンドする「シグニチャーブレンド」をその場で作ってくれる。客船に設けたJohnnie Walker Houseは2017年11月時点で両船だけだ。
Vintage Room(ワールド ドリームのみ)
ゲンティン ドリームでHUMIDORだった場所にワールド ドリームではVintage Roomを設けている。グループ向けのプライベートレストランで、ワールド ドリームの総料理長によるコース料理を楽しめる。メニューでは利用する船客の好みを反映してくれるだけでなく、ヘッドソムリエがPenfoldsをはじめとする世界中のワインからメニューに適切な銘柄を選んでくれる。ワールド ドリームの「ツートップ」が提供する極上のメニューが体験できる。
Penfolds Wine Vault
オーストラリアのワイナリー「Penfolds」の船内ショップでグラス単位で試飲できる自動販売機を用意している。ゲンティン ドリームでは、世界で5本しかない「2012 Grange Imperial 6little」と仏グラスメーカー「Saint Louis」とのコラボレーションで制作したクリスタル製ワインベッセル「Penfolds Aevum Imperial Service Ritum」を展示している。
Silk Road
ゲンティン ドリーム、ワールド ドリームともに、中華料理を提供する上級レストランだ。赤で統一した店内に広いステージを設けてそこを囲むように座席を配置しているので、セミナーやショーを楽しみながら食事ができる。
UmiUma
日本料理を提供する和食レストラン。円形カウンターを設けた寿司バーと海鮮をメインとした料理や鉄板焼きを楽しめる椅子席エリアに分かれる。ワールド ドリームでは、韓国風焼肉バーベキューも提供する。
Blue Lagoon
ゲンティン ドリームにもワールド ドリームにも設けているアジア料理レストランだ。シンガポールやマレーシアで一般的なラクサ(カレー麺)に海南鶏飯、サテ(串焼き)、バクテー(豚肉漢方煮込み)、ホッケンミー(焼きそば)などなど東南アジアでよく見かける屋台の雰囲気を味わえる。24時間営業しているので、夜中に小腹が空いたときに重宝する。
Bread Box(ゲンティン ドリームのみ)、Desert Cafe(ワールド ドリームのみ)
Bread Boxはゲンティン ドリームにある“船のパン屋さん”で、シナモンロールが有名という。ソーセージを使った「調理パン」も提供する。デザートを含めて多彩なスイーツと特別に焙煎したコーヒー豆を使ったエスプレッソ、カフェラテ、カプチーノ、ウインナーコーヒーが楽しめる。ワールド ドリームではDesert Cafeがあって、ここでもスイーツからコーヒー、ソフトドリンク、そして、アルコールも提供している。24時間営業なので深夜でもスイーツが食べられる貴重なスポットだ。
Lobby Cafe
船のレセプションや大画面スクリーンを備えたロビーに併設したカフェで、経験上、この船で待ち合わせに最も便利な場所だったりする。卵を付けたトーストセットだけでなく、カレーも提供している。
Crystal Life Cuisine
Crystal Lifeはボディケアに関連したサロン、バーバー、スパ、そしてトレーニングジムなどをまとめたエリアだ。ここにあるカフェ「Crystal Life Cuisine」では果物や野菜などを使ったジュースなど、健康に配慮したメニューを提供する。第15デッキ右舷前方に位置するこの区画は比較的静かなので、落ち着いたひとときを過ごしたいときによい。
Palm Court
上部構造物では最上層となる第19デッキ前端の両舷一杯に確保した広いラウンジだ。Dream Palaceの上層デッキになるので、上級船室利用者専用と思いがちだが、すべての船客が利用できる。その見晴らしはよく、Dream Palace専用プールやサンデッキも見渡せる。左舷側にはバンド演奏ができる設備とフローリングを敷いたダンスフロアも用意している。
Zouk&Zouk Beach Club
Zoukはドリームクルーズと同じゲンティン系列のナイトクラブでシンガポールでは老舗の有名店だ。内部にはプールバーや4レーンを備えたボーリング場を設けている。Zouk Beach ClubはZoukと同じ第17デッキの後甲板にあってステージと大画面スクリーン、そして利用客ごとに仕切られた観覧席を備えたエリアだ。日中はファミリー向け映画を上演し、夜は屋外クラブとして利用する。
このほかにも、カクテルバーの「Mixt」や1日6回まで無料で利用できる「The Lido」「Dream Dining Room Upper」「Dream Dining Room Lower」、そしてサンデッキに設けたバーなどがある。