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ルフトハンザ 日本・韓国支社長 ブンケンブルク氏、日本市場の戦略やデジタライゼーションへの取り組みを説明
「東京ファッションウィーク 2018」に合わせてCA歴代制服ファッションショー
2017年10月20日 20:09
- 2017年10月20日 開催
ルフトハンザグループは10月20日に東京都内で記者会見を開催。2月に発表した「ルフトハンザグループ16のデジタルイノベーション」を核としたデジタライゼーションに関する取り組みや、今後の日本市場でのビジネス戦略などについて説明した。
合わせて、「東京ファッションウィーク 2018」に合わせた企画として、過去のルフトハンザグループの制服に身を包んだCA(客室乗務員)によるファッションショーや、ルフトハンザドイツ航空初の日本人CAによるトークセッションなどを開催した。
記者会見には、ルフトハンザ ドイツ航空会社 日本・韓国支社長兼スイス インターナショナル エアラインズ 日本・韓国地区社長のドナルド・ブンケンブルク氏が登壇し、日本の市場の重要性について説明した。
ブンケンブルク氏は、「ルフトハンザは1961年から日本に就航し、それ以降日本はルフトハンザにとって非常に重要かつ戦略的な市場」であるとし、継続的に就航地やフライト数を増やしてきたと紹介。
そして、1969年にヨーロッパのエアラインとして初めて大阪に就航したことや、現在ルフトハンザグループ全体で国内3都市4空港に就航していること、東京、大阪、名古屋にセールスの拠点を開設するとともに、東京にはサービスセンターも用意し、BtoCおよびBtoB向けのサービスを提供していることなどを取り上げつつ、日本市場への取り組みを説明した。
また、300人の日本人乗務員が勤務し機内でサービスを提供、日本食の機内食を用意し、ノリタケ製の食器を利用して提供していることなどを取り上げ、日本人の乗客が快適に機内で過ごせるようなサービスを充実させていると説明。合わせて、2017年で5年目を迎える、ANA(全日本空輸)との戦略的提携によって、よりよいサービスが提供できているとし、ANAとのよいパートナーシップが築けていると述べた。
そしてブンケンブルク氏は、「ルフトハンザは、世界的なエアラインとしての誇りだけでなく、業界をリードするイノベーターであるという誇りもあります。そして、日本においても長い歴史があるという点にも誇りを持っています」と述べつつ、今後も日本およびワールドワイドで、よりよいサービスの提供やさらなる成長を目指したいとした。
その一方、「確かに過去は強固な基盤であり、歴史を感じさせてくれるものです。しかし航空会社として成功するには、常に近代化していく必要があります。新しい技術を開発、投入してサービスを向上していかなければならない」と述べ、近代的な航空機やラウンジ、機内サービスに対して多大な投資を継続していくと指摘。そしてルフトハンザでは、「デジタライゼーション元年」と定め、2020年に向けて、デジタル分野に5億ユーロを投資していくという。
例えば、現在短距離路線で提供している機内インターネット接続サービスを、今後は長距離の国際線路線でもグローバルで提供していきたいという。また、乗務員がiPadを利用して顧客情報の管理や問題解決の一助として活用していること、スーツケースメーカーのリモワが開発した「リモワ電子タグ」に対応し乗客が手荷物情報をトラッキングできること、スマートフォン用のアプリによってチケットの予約や変更、フライト情報の確認が行なえることなどを紹介しつつ、将来はアプリによってホテル予約やレストラン予約、リムジン予約など、より付加価値の高いサービスを提供し、デジタルプラットフォームを充実させていきたいとした。
そして、「すべてにおいてお客さまが中心であるということを忘れずに、将来に向けて継続的にイノベーションに取り組むことで、デジタルプラットフォームを開発し発展していきます。それこそ、我々がサービスを充実し、優位性を保つことにつながると考えています」と述べ、今後のさらなる成長に向けた意気込みを述べた。
質疑応答では今後の路線拡大戦略についての質問があり、ブンケンブルク氏は、今後もグループで協力し就航地を増やすなどして拡大していきたいとした。例えば、ヨーロッパ内のポイントツーポイントネットワークでの低価格路線としては、ユーロウイングスでの路線充実を考えているという。アリタリア航空の買収についても、ネットワークの拡大という意味で考慮しているが、こちらは政府の承認を経る必要があるため、今すぐのことではないと述べた。
また、日本路線の位置付けについては、ルフトハンザグループとして拡大している最中という。例えば、羽田~フランクフルトおよび羽田~ミュンヘン便を、2016年冬には週5便だったものを今年冬には週7便に、大阪~フランクフルト便は、今年の冬は週5便だが来年冬には週7便に、そして来年夏には名古屋-フランクフルト便を週3便から週5便に増便というように、路線を拡大する予定と説明。
さらに、ルフトハンザグループとしては、スイス インターナショナル エアラインズとオーストリア航空が成田に就航しており、戦略的提携を行なっているANAともネットワークを共同で拡大するなどして、充実を図るとともに、関係性も強化していきたいという。ただ、現在運休しているルフトハンザの成田便については、現時点で復活させるなどの具体的な予定はないとした。
このほか、ヨーロッパ内でLCCとして運航しているユーロウイングスについては、長距離路線も増やしていく計画で、アジアや日本への路線拡大についても可能性を検討していきたいという。さらに破綻したエアベルリンについては、機体やクルーを含めて路線を買収できないか検討しており、政府の承認を経る必要があるが、それによってさらなる拡大ができることを期待しているとした。
続いて、ルフトハンザグループの制服に身を包んだCAによるファッションショーを開催。こちらは、10月16日から22日まで開催されている「東京ファッションウィーク 2018」に合わせたもので、ブンケンブルク氏は「日本におけるルフトハンザの歴史が長いこともあり、今回CAによる歴代制服のファッションショーを企画した」と説明。そして、ルフトハンザの過去から現在までの制服に身を包んだCAらが登場し、会場は華やかな雰囲気となった。
また、ルフトハンザ初の日本人客室乗務員として、1961年4月21日から1993年6月30日までルフトハンザに在籍した、矢飼順子氏がスペシャルゲストとして招かれ、勤務していた当時の思い出を語った。
矢飼氏は、もともとはスカンジナビア航空に勤務していたそうだが、羽田空港で事務所が隣にあったルフトハンザが乗務員を募集するということで、すぐに応募し、採用されたという。採用から2年間は着物、それも晴れ着を着て勤務していたという。しかも、ルフトハンザでは制服が支給されていなかったこともあって、自宅から最初の寄港地のホテルまで、ずっと着物を着ていたそうで、大変なこともあったそうだが、楽しく勤務できたと、当時の様子を懐かしそうに述べた。
また、記憶に残っていることとして、1963年にアメリカでケネディ大統領が暗殺された直後のフライトで、香港に着陸する直前に前輪が出ないというトラブルが発生、無事着陸できたものの、シューターで機外に出たときに、自分だけ靴を履いていたのが唯一の失敗(当時の規則では、緊急避難時には全員靴を脱ぐことになっていたという)と、はにかみながら当時を懐かしむように語った。
最後に、もう一度生まれ変わるとしたらCAをやってみたいですか、という質問に「ぜひやってみたいです。もちろんルフトハンザで。ほかには行きたくないです」と即答。この答えに、ブンケンブルク氏をはじめ、現役CAも感慨深い表情を浮かべていたのが印象的だった。