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JR西日本、SL「やまぐち」号に使用する新製客車を公開

9月2日の運行を前に下関駅~新山口駅を走行

2017年8月25日 実施

SL「やまぐち」号新製客車の試乗会を実施した

 JR西日本(西日本旅客鉄道)は、9月2日からリニューアル運行を開始するSL「やまぐち」号のために新造された5両編成の客車内部を、8月25日に報道向けに公開した。

 JR下関駅から新山口駅までを試運転しながら実施された内覧会の様子をレポートしていく。

EF65電気機関車に牽引され下関駅を出発

 試乗会は、JR下関駅~新山口駅間で行なわれた。牽引する車両はSLではなく、EF65電気機関車だった。

 まず5両の概要だが、1号車が展望デッキを備えたグリーン車。2号車が定員64名の普通車、3号車が体験ゲームコーナーなどのスペースが設けられた定員40名の普通車、4号車が定員72名の普通車、5号車が展望デッキや車椅子対応のスペースが設けられた定員46名の普通車となる。

 各車両、戦前に製造された一等展望車「マイテ49」や普通車「オハ35」など、当時の雰囲気を持つ外観に仕上げられているが、内装も当時の設計図から、現代的な寸法や材質にアレンジされている。洗面所のシンクは当時のものから新規に型をとり、壁面のタイルなども当時の雰囲気を意識した造作となっている。

EF65電気機関車はTWILIGHT EXPRESS 瑞風のようなカラーリング
試乗会はJR下関駅からスタートした

 5号車は、客室に車椅子用のスペースや多目的トイレなど、年配や小さな子供連れが安心して乗車できる工夫がなされている。先頭には展望デッキが設けられており、山口線から見える自然を間近に感じることができる。

 この客車は「オハ31」の設計図をもとに新造された車体だが、当時の寸法のままではシートなどが現代人の体格に合わないということで、各部の寸法は最適化されている。5号車から2号車のシートには、ナラ材が使用され、木の質感のある車内となっている。

 4~2号車は「オハ35」の丸天井を模しているが、空調設備が屋根にあるため、当時のものよりは低くなっている。

 1号車は展望デッキのあるグリーン車として設定されている。「マイテ49」の図面から現代風に新造された。ちなみに展望デッキ部の寸法は当時のものとまったく同じとのこと。

5号車(スハテ35 4001)

外観。車両先頭部に展望デッキが確認できる。1号車にも同様に展望デッキがある
車内全景。2重屋根がよく分かる天井部となっており、ベースとなった「オハ31」系の形状を受け継いでいる
4名がけのボックスシート席
電源ソケット付きテーブル
照明。上部の採光部は当時と違いLED照明が採用されている
多目的トイレ。おむつ交換台が設置されている
多目的室は授乳などに使用可能
多目的室の照明と空調スイッチ部
多目的トイレの隣にはベビーカーも余裕で収納できる荷物置場が設けられている

4号車(オハ35 4001)

車内全景。4号車から2号車まではシート表面のカラーがブルーとなる
4名がけのボックスシート。5号車同様、電源付きテーブルが設置されている
間接照明を採用している
洗面所。シンクは当時の車両の実物から型取りをして、配管などは現代の仕様にアレンジされている
子供用のイスが設置されている洋式トイレ

3号車(ナハ35 4001)

展示スペースが設けられた3号車
「缶焚きゲーム」という、投炭形式の体感ゲームが用意されている。スコップを手に画面に向かって炭を投入し機関車を走らせる
運転シミュレータ。実際のSLを運転するように、逆転機を加減弁を駆使しながら、機関車を進めていく内容となっており、風景は実際の山口線の風景が表示される
逆転機を加減弁の数値を合わせながら進ませるのは、慣れるまでにコツが必要
運転シミュレータと缶焚きゲームのスペースには、蒸気機関車の歴史を学習できるパネルや、当時使用されていたアイテムなどが展示されている
ボタンを押すと光の流れなどで蒸気機関車の仕組みを説明してくれるパネル。ケースの中にはスコップや手旗などが展示されている
当時のヘッドマークや、改札鋏、日付印字機などが展示
展示スペースには、販売用のカウンターも設けられていた。飲食物などの売店となる予定
客席は定員40名のボックスシート
車内でのみ購入可能という「大内御膳」の展示もあった。価格は2000円

2号車(スハ35 4001)

2号車の車内全景
通路脇に大型の荷物スペースがある。ベビーカー置き場としても使用可能
洗面所の床や壁面のタイルは、シンク同様に当時の雰囲気に近づけている

1号車(オロテ35 4001)

 1号車は、グリーン車ということでJR西日本の特急車両に使用されているグレードと同クラスのシートを採用。エンジ色の落ち着いた雰囲気となっている。

1号車の車内全景
2名がけのボックスシート
肘掛けに収納されている折りたたみテーブルを引き出したところ
中央肘掛けの下には電源が2つ
壁を隔てて対面シートのスペースが設けられており、こちらのテーブルは大型のものが備え付けられている
対面シートは、後ろに壁があるためリクライニングは座面がスライドする形式になっている
照明は暖色系のLEDが採用されている
展望室はグリーン車を予約した乗客のみが自由に使用できる
ソファーは両側の壁に、1人がけと3人がけタイプのものが配置されている
「マイテ49」を模した1号車の後尾部には展望デッキがある

新山口駅では運行に向けてカウントダウン

JR新山口駅コンコースでは運行開始のカウントダウンが掲示されていた

 この新造客車によるSL「やまぐち」号は、9月2日から土・日曜と祝日を中心に運行する。JR新山口駅~津和野駅間を1日1往復し、終点までの料金は1660円(指定席料金含む。1号車のグリーン車料金は別途必要)。

 運行時間は、10時50分に新山口駅を出発し、終点の津和野駅には12時59分に到着。折り返しは、津和野駅を15時45分に出発、新山口駅に17時30分に到着する。

 C57形蒸気機関車により運行されるが、11月にはD51、12月にはC56が牽引するイベントも予定されている。