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国連世界観光機関駐日事務所東京事務所開設で記念講演会開催

自民党幹事長の二階氏やUNWTO事務局長リファイ氏が講演

2017年3月15日 開催

東京事務所開設で記念講演会では、「持続可能な観光国際年2017」という今年のテーマが掲げられた

 国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所は、3月1日に東京都港区にある国連大学本部ビル内に東京事務所を開設した。それを記念して3月15日、国連大学本部ビル内のホールで、記念講演会を開催、自由民主党幹事長の二階俊博氏、UNWTO事務局長のタレブ・リファイ氏、小西美術工藝社 代表取締役社長のデービット・アトキンソン氏が記念の講演を行なった。

 講演会では、主催者を代表して国連世界観光機関駐日事務所 代表の本保芳明氏が挨拶。「活動を広げ、政府や観光産業などと密に連携して活動する必要がある。このような観点から東京事務所を開設した」と説明、さらに「奈良に本部、東京に出先という、地方創生にふさわしいかたち」とコメントした。

 また、来賓として国土交通副大臣の田中良生氏は政府の観光政策に触れ、「政府主導のもと、官民一体で、2016年は2400万人で過去最高。我が国が多くの旅行者を海外からお迎えするためには、受け入れ環境を整備していくのが重要な課題。入国から出国までのあらゆる場面の受け入れ環境の整備。世界の人々が訪れたくなる日本を実現したい」と述べ、観光産業の成長に期待を寄せた。

国連世界観光機関駐日事務所 代表の本保芳明氏
国土交通副大臣 田中良生氏
日本観光振興協会 山口範雄氏

 さらに日本観光振興協会 山口範雄氏が来賓として挨拶、「インバウンドは重要なキーワード、従来の観光産業以外にも、新しい物を求めてきている」とし、なかでもガストロノミーツーリズムの例を挙げ、東京事務所開設への高い期待を表わした。

 その後、講演は自由民主党幹事長の二階俊博氏、UNWTO事務局長のタレブ・リファイ氏、小西美術工藝社 代表取締役社長のデービット・アトキンソン氏が行なった。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック期間中に津波が発生しても、命を失うことなく開催できるか責任がある

自由民主党幹事長 二階俊博氏

 講演の最初の登壇者は自由民主党幹事長の二階俊博氏。講演のテーマは「持続可能な観光と防災」。二階氏はまず、国連大学に東京事務所を設置したことを、国連の専門機関との連携が深まるとして、「この試みは大成功だと思っている」と東京事務所開設を評価した。

 そしてテーマの防災については「自然災害は忘れたころにやってくると言われているが、忘れないころに、次から次にやってくる。従来では想定しなかったものが、想定を超えて、我が国を襲う」と最近の災害を振り返り「観光客の犠牲をもたらせてはならない」と訴えた。

 二階氏は、これまで、観光客が津波の被害があったことを例に挙げ、「私は、これはグローバルな課題と認識、津波と縁のない内陸国の人にも知ってもらう必要性を痛感した。仙台で開催された国連防災の日で『津波の日』を呼びかけ、世界津波の日の決議案を採択していただいた」と自らの活動を紹介した。さらに、南海トラフ巨大地震が発生した場合に34mの津波が想定されている高知県黒潮町に世界各国から高校生を招いて、自然災害について、理解を深める活動「『世界津波の日』高校生サミット」を紹介した。

 二階氏は「2020年には、多くの外国人や観衆がつめかける。その開催期間中に、もし、津波が発生した場合でも、障害のある方を含めて、怪我をさせることなく、命を失うことなく、開催できるか、我が国は大きな責任がある」と、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた重要な課題であることを強調した。

日本の特性は絶対的に美しい、そして、非常に謙虚で謙譲の精神を持っている

国連世界観光機関(UNWTO)事務局長 タレブ・リファイ氏

 続いて、タリブ・リファイ氏は「持続可能な観光国際年のはじまり」をテーマに講演、「日本は優れた2つの特性を持っている。1つは絶対的に美しい、そして、非常に謙虚である、謙譲の精神を持っている。この2つの特性ゆえに、日本が世界の中でもっとも魅力あるディスティネーション」と日本を賞賛、「今後とも親切に外国人を受け入れ、そして謙虚であり続け、訪問者を心から受け入れてください。尊敬しない国に人は行きたがりません。尊敬しているからこそ、行きたいと思うのです」と述べた。

 リファイ氏はテーマに沿った話を展開、経済効果では観光で1人の雇用が生まれれば1.4人分の雇用がほかに生まれているなどと紹介さらに、観光産業には政治的側面があると指摘した。

「民間、政府、安全保障の議論をするときに、観光を代表する人が常に参加しなくてはらない。軍事施設、健康にかかわる保健施設。国家計画を立てるときは、観光という視点を忘れてはならな。なぜなら、観光のインフラが標的にされるから」とし、観光産業が自然災害、健康的な危機、政治危機にさらされているとした。

 さらにリファイ氏は危機が発生したあとは「迅速に復興させ、不屈の精神で、観光業は復活しないといけない。そのために、詳細な計画を立てる必要がある」と延べた。さらに「仙台を津波が襲ったときは“仙台に行かない”で済ませてではだめで、仙台に行くことが、復興を助ける」と指摘、復興にも観光が重要であると訴えた。

 リファイ氏は「UNWTOはだからこそ、危機管理ツールきっとを用意していいる。危機の最中、何をやるべきかを手をとり、足を取り添えてくれるもの」とし、最後に観光とは「みなさんがいろんな生活の中で、常に私達の世界全体を幸せにするものだ」とまとめた。

日本は「文化、自然、気候、食」の基礎条件を満たす観光資源大国

株式会社小西美術工藝社 代表取締役社長 デービット・アトキンソン氏

 最後は小西美術工藝社 代表取締役社長のデービット・アトキンソン氏。「日本の観光業について」と題し、流ちょうな日本語で講演した。アトキンソン氏は、日本がこれまであまり観光に力を入れてこなかった理由として、日本の人口が多く、内需や国内産業で十分だったと指摘、「人口が大きく減るなかで、国内産業から国際競争力のある観光産業に、急ピッチで改革」と現状を説明した。

 一方で、日本については「日本は観光資源大国。文化、自然、気候、食、全部の基礎条件を満たしている10カ国しかないといわれている国の一つにカウントされる」とし、細長い日本の地形から「スペインにできること、スウェーデンでにできることは日本という国家でできる」といった地の利を紹介、「多様な観光資源をたくさん持っているところで、世界で最も知られていない観光資源大国だと思う」と述べた。

 また、欧州に比べて北米からの観光客が少ないことには「日本の多様な観光資源を、どこに発信するかという課題が見えている」と指摘した。

 今後については「2020年の4000万人という目標は、もっと高い目標を立てたほうがよかったと思えるくらい、心配の必要がないと考えている」と予測し、その一方で「日本の観光戦略を実現するにあたり、今は各省庁で別々に努力しているが、日本経済の10%を超えるような産業になっていくときに、別々の省庁で実現する、持続ができるかは私は疑問に思う。政治の話は私が口を出すべきところではないが、ゆくゆくは日本は諸外国同様に、スポーツ観光の省庁が必要になると感じている」と指摘した。