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ANA、日本との連携が強まるメキシコへのデイリー直行便、成田~メキシコシティ線就航セレモニー

往路12時間強、復路約14時間半のANA最長路線に

2017年2月15日 就航

ANAは成田~メキシコシティ線就航にあたり搭乗口でセレモニーを実施した

 ANA(全日本空輸)は2月15日、成田~メキシコシティ線に就航。成田空港の搭乗口で、国土交通副大臣、外務副大臣、メキシコ大使らを招いて就航セレモニーを実施した。

 ANAの成田~メキシコシティ線は、ANAにとって42都市目の国際定期就航都市となり、2016年度の成田発便としては、武漢(中国)、プノンペン(カンボジア)に続いて3つ目の新規就航都市となる。これによりこの冬期スケジュールでは、65路線、週に571便のネットワークとなる。

 また、成田~メキシコシティ線は冬期スケジュールにおいてANAの最長路線となり、日本発の往路が12時間15分、復路が14時間35分のフライトとなる。

 機材はボーイング 787-8型機を使用。2月8日に掲載した「ANA、標高2200m超のメキシコシティ就航に備え、ロールスロイスの新エンジンを搭載するボーイング 787-8型機を準備」でもお伝えしたとおり、メキシコシティ国際空港は酸素濃度が薄い高地にあるため、ANAではこの就航に備えて、高地向けにチューニングして離陸時の推力を高めたロールスロイス製エンジン「Trent 1000-L」を4機のボーイング 787-8型機に搭載。初便には同エンジンを搭載する4機(JA820A、JA823A、JA827A、JA828A)のうち、登録記号「JA820A」が充てられた。

ANAの成田~メキシコシティ線運航ダイヤ(デイリー運航)

NH180便:成田(16時40分)発~メキシコシティ(13時55分)着
NH179便:メキシコシティ(01時00分)発~成田(翌日06時35分)着

セレモニーの前には、2016年10月に成田空港勤務のANAグループ社員で結成したブラスバンド「ANA NARITA SKY BAND」による演奏が行なわれた
ANA NARITA SKY BANDの演奏のバックには、メキシコのお祝いごとで使われるというピニャータの飛行機と、同じくメキシコのお祭りなどで装飾として使われるパペルピカドの旗が飾られた
ANA NARITA SKY BANDのメンバー
ANA NARITA SKY BANDによる「DEPARTURE」の演奏
全日本空輸株式会社 代表取締役社長 篠辺修氏

 セレモニーで主催者として挨拶した、ANA代表取締役社長 篠辺修氏は、経済、観光の両面で同路線のメリットを紹介。経済面については「日本やアメリカを含めて、世界40カ国以上のFTA(自由貿易協定)を背景に、世界の生産や輸出の拠点になっている。例えば2010年からの5年間を見ても、日本による直接投資額は2倍を超え、日系企業の進出数も2倍。自動車産業を中心に、日本と経済的な結び付きが毎年強まっている」と将来性の高さに期待。

 観光面では「観光資源を大変豊富に持っている。世界遺産もたくさんあるし、日本の皆さんにとってはカンクン、ティオティワカンなどは大変人気のある観光スポットだと思っている」と紹介した。

 また、メキシコと日本の交流についても、「千葉県の御宿とは関係がたいへん深く、1609年に御宿沖で座礁した帆船、サンフランシスコ号の救助に町の皆さんがあたって以来、日本との交流がスタートしたと聞いている。2014年から御宿では、日本メキシコ学生交流プログラムが行なわれており、今回の就航を機会に、ANAもこのプログラムのお手伝いをすることにした」との取り組みも披露した。

 メキシコといえば、米国の新大統領であるトランプ大統領が、米国とメキシコの自由貿易協定見直しに言及していることが話題だが、篠辺氏はセレモニー後の囲み取材のなかで「予約動向を見ても特に変化は出ていないので、モニターはもちろん続けるが、特別な手当はしていない。私どもが知る限りでは様子見の企業はいると思うが、全体感としては大きな変化を感じていない」とし、現状でなにかを変える予定はないとした。

 また、同便開設の狙いについては「アジアと北米をつなげる結節点を成田に置いているので、その延長」としつつも、現状では日本を出発する日本人の利用が多いとする。特に日本人利用者については、「メキシコ人の方の需要は、(同じ路線を飛ばしている)アエロメヒコ航空の方に寄るだろうと思っている。私どもが日本人のお客さまを多く運ぶだろうと考えている」とした。搭乗率はビジネス需要も多いことから70%程度で十分とし、そのラインを確保したいとした。

 このほか、メキシコから先のネットワークについては、「米国のヒューストンをはじめとして、メキシコシティも中南米への入り口になると思っている」との考え。ただし、メキシコシティはANAのパートナーによるネットワークが不十分であると考えられることから、「これからいろいろな会社との提携を進化させたい。スターアライアンスでも中南米路線はホワイトスポット状態になっていて、いくつかの会社を勧誘しているので、(提携先は)そうした会社も含めて(検討すること)になる」とコメントした。

衆議院議員 国土交通副大臣 田中良生氏

 同セレモニーには、日本政府から国土交通省、外務省の各副大臣が列席。国土交通副大臣の田中良生氏は、「日本とメキシコを行き来する人の数は、過去5年間で8割以上増加。我が国からメキシコへの投資も急増している。多くの日本企業が進出するなど、両国の経済関係は近年大きく進展をしてきた。また、メキシコは世界遺産がとても多く、日本人観光客にも注目されているところ。私は本路線の就航によって、メキシコが日本にとってより身近な存在となり、日本とメキシコとの間の相互交流が促進される。両国の関係がさらに強固なものになると確信している」と挨拶。

 さらに、国土交通省が進めている首都圏空港の機能強化についても、「今回の本路線の就航は、成田空港のネットワーク充実の観点から、たいへん意義深いものであると考えている」とコメントした。

衆議院議員 外務副大臣 薗浦健太郎氏

 外務副大臣の薗浦健太郎氏はまず、「一人の千葉県民としても今日の日を心待ちにしていた」とコメント。両国関係の紹介では、先の篠辺氏の発言にあった1609年の御宿沖でのエピソードに加え、「日本のメキシコ大使館は、永田町、それも衆議院議長公邸、参議院議長公邸に隣接した“超一等地”にある。これは幕末に我が国が結んだ不平等条約の改正を悲願とした当時の明治政府と、1888年に初めて平等条約を結んだのがメキシコだった。これを機に、そのほかの国との平等条約への改正が進み、日本の近代化が一気に進んだ。メキシコ大使館の敷地がここにあるのは、この当時の日本国政府からメキシコへの感謝の表われである。それ以降も、例えばサンフランシスコ講和条約を2番目に批准していただいのはメキシコ。そして、日本で初めての経済連携協定、本格的なEPAを結んだのもメキシコだった」との歴史を紹介した。

 同路線の開設については、「本年は日本人移住120周年、来年は外交関係樹立130周年という記念すべき年を迎える。EPA発行10年を経て、投資貿易は急速に拡大し、メキシコには1000社を超える日本企業が進出している。民主主義、自由交易といった基本的価値観を共有する両国の関係は、今後もますます拡大する、揺るぎないものと確信している。今回の就航を機に、この成田が、日本とメキシコ、アジアとメキシコをつなぐ架け橋として発展していくことを切に願う」と期待した。

駐日メキシコ大使 カルロス・フェルナンド・アルマーダ・ロペス氏

 駐日メキシコ大使のカルロス・フェルナンド・アルマーダ・ロペス氏は、「副大臣2名の臨席が日本国政府が寄せる、この便への大いなる感心と重要性を物語るもの」とし、「このフライトによるコネクティビティの素晴らしさは、いろいろな面でポジティブな結果を生むと確信している」とコメント。

 日本人に対して、「メキシコを訪問していただいている方が感じられる魅力のなかには、34を数える世界遺産、そのなかにはビーチもある、遺跡もある、コロニアル・シティ、食事、マリアッチやテキーラもある。もっともっと多くの日本の方にメキシコに行ってほしい」とメッセージを寄せる一方で、「同時にもっとたくさんのメキシコ人に日本に来てほしい。ぜひとも多くのメキシコ人が日本に来て、日本の美学を深く知ってほしい。世界に誇る日本の安全、美しさ、そのすべてを感じてほしいと思う」と相互交流の発展に期待した。

主催者、来賓によるテープカットセレモニー
セレモニーの出席者。左から、成田市長 小泉一成氏、駐日メキシコ大使 カルロス・フェルナンド・アルマーダ・ロペス氏、衆議院議員 外務副大臣 薗浦健太郎氏、全日本空輸株式会社 代表取締役社長 篠辺修氏、衆議院議員 国土交通副大臣 田中良生氏、国土交通省東京航空局 成田空港事務所 成田国際空港長 木村茂夫氏、成田国際空港株式会社 代表取締役社長 夏目誠氏

 セレモニーでは、メキシコの文化を日本に紹介している民族舞踊グループの「Mexico en la Piel(メヒコ・エン・ラ・ピエル)」による通称「メキシカン・ハット・ダンス」のパフォーマンスが上演された。これは、メキシコの有名な楽曲で、男女の出会いの物語。お互いがアピールしたあと、男性がソンブレロ(メキシカンハット)を床に置き、それを女性が拾い上げたら両想いの証なのだという。グループのディレクターであるシルビア・ルバルカバさん(女性)と、メンバーの堀田ロペス大地さん(男性)が、ANA NARITA SKY BANDの生演奏をバックに情熱的な踊りを披露した。

 その後、16時20分頃から搭乗を開始。搭乗客には、ANAオリジナルの「燕タンブラー」などの記念品もプレゼントされた。初便は169席(ビジネスクラス46席、プレミアムエコノミー21席、エコノミークラス102席)に対し、165名(幼児1名含む)が搭乗。ビジネスクラスは満席となった。

 そして、ほぼ定刻どおり、16時42分にプッシュバックを開始。地上スタッフによる見送りを受けながらメキシコシティに向かって出発した。

「Mexico en la Piel(メヒコ・エン・ラ・ピエル)」による通称「メキシカン・ハット・ダンス」のパフォーマンス
「メキシカン・ハット・ダンス」のパフォーマンス
搭乗口では多くの乗客が列を成した
ゲートを過ぎたところで初便搭乗記念品を配布
記念品はANAオリジナルの燕タンブラーと、A4クリアファイルやフォトカード
燕タンブラーには初便を記念した刻印が施されている
西日を浴びる成田~メキシコシティ線初便。地上スタッフに見送られながらメキシコシティへ向けて出発した