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【インタビュー】Booking.com日本地区統括リージョナル・マネージャー アダム・ブラウンステイン氏に聞く

Booking.com for Businessを日本でも開始

Booking.com 日本地区統括リージョナル・マネージャー アダム・ブラウンステイン氏

 オランダのOTA(Online Travel Agent、インターネット経由の旅行代理店)であるBooking.comは、ホテル予約に特化した形のOTAビジネスをグローバルに展開している。最大の特徴はホテルのラインアップが、大手のホテルチェーンだけでなく、地場の小規模のホテルなども入っており選択肢が非常に多い。ビジネストラベラー、そして観光客に人気のサービスとなっている。

 今回は、そうしたBooking.comの日本地区統括リージョナル・マネージャー アダム・ブラウンステイン氏に、同社の戦略について話をうかがう機会を得たので、ここにお届けする。

日本へのインバウンド需要は増加。日本のホテルオーナーのビジネス拡大の手助けをしたい

 Booking.comは1996年に設立された歴史あるOTAで、ホテルのオンライン予約に特化した旅行代理店業を世界で展開している。同社によれば、グローバルで1日平均120万泊の宿泊予約日数という実績を誇り、現在でも成長を続けている。Booking.comの特徴は、大手のホテルチェーンだけでなく、個人経営のアパートメントやホステルまで幅広いラインアップを揃えていることであり、ビジネス旅客から個人旅行まで幅広くカバーしている。同社によれば、現在Booking.comのサイトは、日本語を含む40以上の言語に対応し、226の国と地域で111万5037軒の宿泊施設を提供しており、これは日々増えているという。

 そうしたBooking.comの日本地区統括リージョナル・マネージャーにこの7月に就任したのがアダム・ブラウンステイン氏だ。ブラウンステイン氏はBooking.comが買収したbuuteeqの共同創業者で、同社の買収に伴いBooking.comに入社した。それ以前にはMicrosoftで製品管理やSurfaceの立ち上げに関わっていたほか、ソニーではPlayStation関連のビジネスに従事していた。そのときには3年ほど日本で暮らしていたという。ブラウンステイン氏はBooking.comの日本関連ビジネスの責任者として、ホテルへの営業、日本向けコンテンツの作成、システムの連携などの各部門を統括している。

――Booking.comにとっての日本市場の重要性を教えてほしい。

ブラウンステイン氏:日本は世界で3番目に大きなコンシューマ市場であり、かつユニークな文化を持っている。例えばフード、ショッピング、そして新幹線に代表されるようなテクノロジーもあり、これは日本以外の国の観光客からすれば十分な観光資源。すでに年間で約2000万人の観光客が日本を訪れており、2020年までに4000万人に増やすという日本政府の方針もあり、今後も成長が期待されている。そこには我々にとってもビジネスチャンスがあると考えている。

 また、日本のゲストも非常にユニークであり、そのゲストのニーズに応えるべくコンテンツの日本語化をホテルパートナーと協力して進めている。我々はプロフェッショナルな翻訳チームを持っており、単に翻訳するのではなく、きちんとホテルのマーケティングコピーを正しく顧客に伝えることができることを心掛けて翻訳している。

――具体的にはどのようなことをしているのか? 例えば、日本では旅館のような形態は大手のホテルチェーンのようなIT投資もできない。

ブラウンステイン氏:Booking.comは革新的な取り組みを重視する企業であり、ITを利用してホテルオーナーを助けたいと思っている。そうしたときに課題となるのが、ITというと何か難しいのではないかという不安を持たれているホテルオーナーの方に、どのようにしてそうではないと理解していただけるかだ。例えば、先日アカウントマネージャとある老舗のホテルにうかがったが、これまでITが難しいと思っていたのでオンライン予約などには手が出せなかったとおっしゃっていた。そこで、iPadを利用してデモをしたら、意外と簡単そうだと言っていただいた。弊社には日本だけでも100人の営業職員がいて、東京、大阪、福岡、札幌、那覇の5カ所に大きなオフィスを構えており、ホテルオーナーのビジネスをオンラインにするお手伝いをさせていただいている。

――それは具体的にはどのような形なのか?

ブラウンステイン氏:クラウドベースのツールとして提供している。PCだけでなく、スマートフォンやタブレットからもアクセスすることができ、ITにはあまり詳しくないというホテルオーナーであっても、手持ちのスマートフォンでも十分対応可能だ。それを利用すれば、ゲストからのアーリーチェックインのリクエスト、予約の管理、自分のホテルのアピールなどをすべてこなすことができる。ホテルオーナーはシンプルさを求めており、それに応えられるシステムだと自負している。

――日本のインバウンド需要は今後も増えていくと予想しているか?

ブラウンステイン氏:中国からの観光客の伸びは若干減少したが、それ以外の国・地域からの観光客が増えているので全体としては増えている。現在日本という観光地は世界中の観光客から注目を集めている。その理由は充実したインフラと安全だ。地下鉄や新幹線などは非常に便利で、安全性が高いところが人気の理由だ。また、ショッピングやフードが充実していることも見逃せない。

 課題があるとすれば、ホテルのサプライだろう。特に小規模の旅館などの場合は、世代交代で家業が継続できなくなったりすることもあるし、スタッフの雇用の問題などもある。そうした問題を解決することができれば、サプライは増えていくと考えており、弊社もITを活用してそうしたことに貢献したい。

ビジネス顧客の取り組みにBooking.com for Businessという新しいプログラムを日本でも開始

――Booking.comは海外のホテルには非常に強いが、日本のビジネス顧客の取り込みについてはどう考えているのか?

ブラウンステイン氏:ビジネス顧客のホテル予約に関しては、現在我が社がグローバルで取り組んでいるテーマの1つ。これまで我々は個人旅行の顧客がメインの顧客だと考えていたが、ビッグデータを利用して弊社の予約動向を確認したところ、多くのビジネス顧客が利用していることが分かってきた。東京から大阪に移動し、鉄道の駅近くに宿泊するようなビジネス客は、非常によい顧客になっていただける可能性が高いといえる。このため、我々はビジネス顧客に対する新しいプログラムとして、Booking.com for Businessという新しいプログラムを日本でも開始した。

 弊社の顧客の大企業が契約していただければ、その企業の社員が自分でホテルの予約を簡単に管理することができるようになる。ホテルのサプライとも協力している。例えばマイステイズ・ホテル・マネジメントと提携しており、マイステイズが展開するホテルを予約することができるなどしている。今後もこの市場を成長市場と捉え、サービスなども充実させていきたい。

――Booking.comのロイヤリティプログラムについて教えてほしい。

ブラウンステイン氏:弊社では「genius会員」というプログラムを展開している(筆者注:同社のWebサイトによれば、1年間で10回同社経由でホテルを予約した会員が加入資格を得ることができる)。我々の顧客は非常にリピート率が高く、そうしたロイヤリティ(ブランド忠誠度)が高い顧客に対するプログラムが必要だと考えからだ。非常に成功しており、会員になっていただければ、Genius料金という宿泊費の割引などを提供している(筆者注:対象のホテルであれば10%の割引が提供される)。それ以外にも複数のメリット(筆者注:レイトチェックアウトやアーリーチェックインなど)を提供しており、顧客からの評判も上々だ。ただし、これで満足だとは考えおらず、今後もプログラムを充実させていくことが必要だと考えている。

――今後の取り組み付いて教えてほしい。

ブラウンステイン氏:今後も、もっとホテル予約を簡単に手軽にしていきたい。すでにWebサイトだけでなく、iPhoneやAndroidなどのスマートフォン向けのアプリもどんどん充実させている。今後も、それぞれを充実していき、さらに使いやすさをお客さまに提供していきたい。