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【インタビュー】JALがホノルル線に力を入れる理由を日本航空ホノルル支店長 荘司敏博氏に聞く

プレミアムエコノミークラス導入の背景にあるもの

日本航空株式会社 ホノルル支店長 荘司敏博氏。荘司氏にホノルル線についての話をうかがった

 日本人の海外観光地として最もメジャーな地域がハワイというのは誰もが納得する部分だろう。近年では航空路線の発展により、ハワイ一本ということはなくなったが、グルメ、ファッション、観光スポットなど、あらゆる層が満足できる観光地であるのは間違いない。

 とくに近年、ハワイの玄関口となるオアフ島のワイキキでは開発が進み、伝統あるリゾートホテルに加え、「トランプ インターナショナル ホテル ワイキキ」「ザ・リッツ・カールトン レジデンス ワイキキ ビーチ」など暮らすように過ごせる高級ホテルが増えている。その一方で、カイムキやカカアコなどローカルで注目されたエリアがすぐに日本で話題になるなど、安く楽しく過ごす方法も豊富。旅行先としての魅力が多いのもハワイの特徴になる。

ワイキキビーチから見るダイヤモンドヘッド。ハワイと言えば、このような風景をイメージする人も多いだろう

 そのハワイへ日本から行くには航空機を利用するのが一般的。航空各社は日本からハワイへ向かう路線を強化しており、新仕様機の導入や新型機の導入、増便などニュースも多い。その中で、現在最も提供座席数が多く、プレミアムエコノミークラスの導入など力を入れているのがJAL(日本航空)になる。JALのホノルル支店長を務める荘司敏博氏に、ホノルル線についての話をうかがった。

ホノルル線に投入されているボーイング 777-200ER型機。プレミアムエコノミークラスを備える
従来仕様のプレミアムエコノミークラスシートだが、エコノミークラスと比べて疲れの違いは歴然

──JALは、多数の便をハワイ路線に就航させるなど、ハワイ路線に力を入れている印象があります。このようにハワイ路線に力を注ぐのはなぜですか?

荘司氏:ハワイは観光資源として非常に素晴らしいものがありますし、私どもとしても60年以上もハワイ路線を運航し続けることができ、地元とのつながりも非常に深いものを持たせていただいています。日本の皆さまにハワイが定番の観光地として定着しているのも、地元の皆さまの御支援おかげで、私どももずっとハワイ路線を運航し続けることができている部分があると思っています。

 そのような意味で、観光の路線として非常に需要も強いですし、私どもとしても力を入れております。それが評価をいただいている部分かと思います。

──JALは便数、提供座席数が多いのですが、現状で十分と考えていますか? それともまだまだ足りないと思っていますか?

荘司氏:決して十分と思っているわけではありませんが、いたずらに拡大しようと思ってはいません。社長の植木が申しておりますとおり、「いたずらに規模拡大を追わない」と考えていますので、数というよりは、付加価値の高いリゾート路線として、さらに高品質なサービスを目指していきたいと思っています。

 単純に増便するのではなく、今後ビジネスクラスを増やして、プレミアムエコノミーを増やすという機材の改修を行なっています。ゆったりとリゾートに来ていただいて、本当に充実したお休み、余暇を取っていただく、そういうディスティネーションを提供したいと思っています。

──それは、すでに発表されているように羽田~ホノルル線に、新機材「JAL SKY SUITE 777(SS2)」を導入するということでしょうか?

荘司氏:そうです。

──これまでホノルル線にはプレミアムエコノミーがありませんでした。今回、羽田、関西空港、セントレア(中部)、成田からのホノルル線にビジネスクラスとエコノミークラスの中間に位置するプレミアムエコノミークラスを用意したのはなぜですか?

荘司氏:エコノミークラスを利用するお客さまにおいて、ビジネスクラスほどグレードの高い座席ではなく、ハワイに朝到着することもあり、機内ではゆっくり休みたい、つまりもう少しだけ座席にゆとりがほしいとの要望などがありました。それに応えてご用意したものです。実際に導入してみると、ハワイから日本に向かわれるお客さまからも好評を得ています。

──今後、ビジネスクラス、プレミアムエコノミークラス、エコノミークラスの3クラスを持つ機材として、ボーイング 777-200ER型機は新シートのSS2に変わっていくことが発表されています(2016年12月15日より導入予定)。SS2の導入に対する期待はありますか?

荘司氏:SS2の導入に関しては特に大きな期待をしています。最近は優れた座席仕様の飛行機をホノルル線にかなり早い時期に入れています。日本からホノルルに向かう便は夜を越えて飛ぶことになるので、夜ゆっくり寝られるという評価をいただいている仕様の機材が導入されるのは歓迎です。最新の座席仕様の機材がホノルル線に導入されることで、お客さまも機内でゆっくり寝ることができ、ホノルルに到着してすぐに行動することが楽になります。ゆっくり寝られることでリゾートで少しでも長く有効に過ごす時間が増えるのかなと思っています。

12月15日から導入予定の新仕様機材「JAL SKY SUITE 777(SS2)」。一番の特徴は、JAL新世代仕様機として1-2-1のヘリンボーン配置のビジネスクラスシート採用
中央2席が並ぶSS2のビジネスシート。新婚などウェディング需要には最適の仕様

──すでに成田~ホノルル線に導入されているSS6と、今度羽田線に導入されるSS2では、ビジネスクラスのシート配置がSS6は互い違いの配列による1-2-1配置、SS2は同じ1-2-1配置でも中央2席が隣り合うヘリンボーン配置となっています。このビジネスクラスのシート配置の違いはどう捉えていますか?

荘司氏:今までのSS6とは異なる配置ということで、よりお客さまの細かなご要望にお応えすることができ、ご旅行の選択肢が増えたと考えております。

──JALでは、JAL便を利用する個人利用客に対し、「JALOALOカード」を提供しています。このJALOALOカードを使ったことがあるのですが、ジャルパックのトロリー(アラモアナライン)が乗り放題になるなど便利なサービスでした。利用客も多いと思うのですが、実際のホノルル便利用者に対する利用割合はどのくらいですか?

荘司氏:利用率などの数字については公表できないのですが、多くのお客さまに大変ご好評をいただいています。

JALOALOカードで乗り放題となるジャルパックのレインボートロリー アラモアナルート。ビジネスクラス利用の場合は、JALOALOカードALI'I(アリイ)となり、写真のようにダイヤモンドヘッドルートも乗り放題となる

──利用率は高いと考えてよいのですか?

荘司氏:おかげさまで好評をいただいており、フラダンスなどのアクティビティで訪れる方など便利に利用されているようです。お客さまの声など拝見しますと、JALOALOカードについては「よかった」という声をいただくことが多いです。

──フラダンスの話が出ましたが、フラダンスで利用される方は多いのですか?

荘司氏:私もホノルルに赴任するまではそれほど気にしたことがなかったのですが、フラダンスをハワイで行なうためにいらっしゃる方が非常に多いです。日本ではフラダンス教室がとくに多いという実感はなかったのですが、グループでの旅行であるとか、イベント参加の利用がとても多いです。

──今後、オアフ島ではホノルル空港からのモノレールが作られるという話がありますが、このモノレールに関する期待などはありますか?

荘司氏:オアフ島での交通手段はクルマしかないので、モノレールができることについて非常に大きな期待をしています。モノレールは、ホノルル空港の西のカポレイという地域からスタートしアロハスタジアムまでを結ぶ予定です。この区間についてはかなり工事が進んでおり、橋桁などできています。

 次にアロハスタジアムから空港を通って、空港の先にミドルストリートというバスターミナルがあるのですが、そこまでが第2期工事になります。第3期工事が、そのミドルストリートからアラモアナショッピングセンターになります。ところが、建設費高騰によりもしかしたら2期で終わるかも知れないという話が持ち上がっています。

 我々としてはモノレールが空港とつながれば便利になるので、ぜひアラモアナショッピングセンターまでつなげていただきたいと思っています。

 モノレールがなぜ作られるのかというと、オアフ島では、朝夕の交通渋滞が激しいことがあり、その渋滞解消のためなのです。このモノレールができることで、お客さまがアラモアナショッピングセンターから空港まで余裕をもってお越しくださることができるようになり、お客さまの空港へのアクセスが便利になります。

──ハワイ路線に関しては、オアフ島のホノルル空港便だけでなく、かつてJALにあったハワイ島のコナ直行便を期待する声も聞こえてきます。この辺りについてはどのように考えていますか?

荘司氏:(ホノルル空港に勤める)我々地元としては路線は増やしてほしいと思っていますが、会社としては全世界の路線を考えた上でどのようにするかという問題だと思います。地元からの要望は非常に強く、ウェディング需要などがあると理解しています。JALが(ハワイ島の)コナ直行便を運航するまでは、日本ではマウイ島の人気が高かったのです。

 今ではマウイ島よりハワイ島のほうが日本での人気が高いのですが、それは私どもが路線運営をしてきたことも少しは貢献しているのではないかと思っています。チャンスがあればコナ島への直行便は復活させたいと思っています。

──ハワイ路線は日本では人気の高い路線であり、JAL以外にも多数の航空会社が競っている路線です。利用客がJALを選ぶメリットはどこにあると思っていますか?

荘司氏:いろいろな意味で便数も多いですし、選択肢を非常にたくさん用意しています。機材の点でも新しい機材を積極的に導入していますし、疲れが少ないということで、お客さまにとって到着してすぐに活動しやすい航空会社の1つであるのかなと思っています。

 機内でゆっくり過ごせるよう配慮しておりますし、到着の早い便(成田便)、到着の遅い便(羽田便)もありますし、セントレアや関空からの便もあります。お客さまのニーズにあった便を選びやすいというメリットがあると思っています。

──新機材の導入もありますが、現在JALはホノルル路線においてプレミアムエコノミークラスの導入を積極的に行なっています。このプレミアムエコノミークラスの反応についてはどうですか?

荘司氏:おかげさまで非常に好評をいただいています。プレミアムエコノミークラスはエコノミークラスと食事は同じなのですが、飲みものはシャンパンや焼酎などがありますし、シートもゆったりしています。その点もお客さまに評価していただき、乗っていただけているようです。旅行会社向けに体験会を行なったのですが、その際も「すぐ寝てしまったよ」など、非常にリラックスしておくつろぎいただいているようです。

ホノルル空港のJALカウンター。日本語の分かるスタッフが当たり前のように常駐しているので、航空券関連で困ったときにも安心

──基本的な質問が後になってしまいましたが、支店長の業務というのはどのようなものなのでしょうか?

荘司氏:日々のフライトが安全に運航されているかといったフライトオペレーションを統括する業務と、ハワイでの営業販売の責任者という業務が主なものとなります。営業販売というのは、ハワイ発のお客さまを1人でも多く日本へ、もしくは日本経由でその先へ行っていただくというものです。同時に貨物業務があり、パパイヤとかマグロといった貨物を日本のお客さまにお届けする業務もあります。

──日本ではインバウンド需要が高まっており、アジアやヨーロッパからの旅行客が増えています。ハワイから日本へ向かう人も増えているのですか?

荘司氏:これはかなり増えています。おかげさまで前年比を上回っております。ただここへ来て円高局面になっており、今後はどう動くか分かりませんが。ハワイは常夏の島ではあるものの季節感があります。とはいえ、やはり年中暖かいのです。それに比べ日本は非常に四季がハッキリしています。ハワイの人にとって、桜のシーズンに日本に行くことはとても人気です。ハワイの人はお休みを2週間くらい取って西日本から東日本に順番に桜の開花を追いかけていくとか、紅葉の季節に京都から奈良・箱根に行かれたりであるとか、あるいは冬の札幌雪まつりに行かれたりであるとかといったツアーが人気です。

 ハワイから東南アジアに向かう場合は日本を経由することが多いですし、ハワイは日系人の方も多く、日本はハワイの人にとって親近感のある国となっています。

──これからハワイに行くという読者に対して、実際にハワイに住んでいる支店長としてハワイのここがお勧めという部分はありますか? たとえばハワイで美味しいものとか。

荘司氏:美味しいものといえば、ポキ(生マグロ)は非常に美味しいと思いますし、大好きです。新鮮なポキを売っているお店がいくつかあるのですが、そこでポキを買って、家に帰ってポキをつまみにしてビールを飲むというのが楽しみです。

──ポキを買うお気に入りの店はありますか?

荘司氏:やはりワイアラエ・アベニューにある「タムラ」(Tamuras Fine Wine&Liquors)のポキが美味しいですね。

右側がポキ。ハワイではポキ丼や単品のポキなど各種ポキが売られている
荘司支店長がお気に入りというTamuras Fine Wine&Liquors。ワインも豊富に取りそろえられており、ワイキキに行ったら1度は立ち寄ってみたいお店

──では、好きな場所や風景とかはありますか?

荘司氏:ここはどこに行っても虹が見られるのがいいですね。アラモアナショッピングセンターの近くに住んでいるのですが、会社が終わって帰って、アラモアナビーチパークのマジックアイランドに行ったりすることがあり、そのマジックアイランドからの夕日を見ていると「本当にきれいだなぁ」と思います。また、朝は朝でダイヤモンドヘッドからの朝日などが非常にきれいです。虹とか、朝日とか夕日とか、そういう風景の素晴らしさですね。自然の素晴らしさを感じます。