トラベルグッズレビュー

Amazon「Fire TV Stick」

HDMI対応テレビと組み合わせて、宿泊先で動画を鑑賞できる

Amazon「Fire TV Stick」

 国内旅行や出張でホテルに宿泊した際、就寝するまでの時間に動画を楽しんでいるという人は多いのではないだろうか。特に地方に行った場合、時間つぶしにテレビを観ようにもチャンネルが少なく、気に入った番組が見つからないこともしばしば。こうした場合に自由に番組を選んで視聴できるVOD(ビデオ・オン・デマンド)などのサービスは貴重だ。荒天で観光のスケジュールが狂い、ホテルに缶詰めを余儀なくされた場合も同様だ。

 もっとも、VODサービスでは1番組単位、もしくは日数単位で視聴に料金がかかるほか、サービスによっては番組のラインアップが貧弱なこともある。契約済みの動画配信サービスをスマホで視聴するという選択肢もあるが、長時間観ていると目が疲れる、スマホのバッテリを同時に充電しにくいといった問題もある。特に家族で宿泊しているのであれば、大画面のテレビに表示できた方が、番組を視聴するには快適だろう。

 こうした場合、テレビに接続して動画配信サービスを楽しめるデバイスという選択肢が考えられる。このジャンルにはApple TVやFire TVなどさまざまな製品があるが、スティックタイプのモデルであれば、旅行や出張などでも荷物を最小限に抑えられ、かつVODサービスと違って費用もかからないというわけだ。今回はそうした製品の例として、Amazon.co.jpの「Fire TV Stick」を実際にホテルに持ち込んで使ってみたので紹介したい。

Amazonの「Fire TV Stick」。スタンダードリモコン付属モデル(4980円)と音声認識リモコン付属モデル(6480円)の2モデルをラインアップする
Fire TV Stickをテレビに接続することで、Wi-Fiを経由してAmazonビデオなどの動画配信サービスを楽しめる

AmazonビデオストアのほかHuluやNetflixなども利用可能

 まずはざっとFire TV Stickについておさらいしておこう。Fire TV StickはAmazonの動画配信サービス「Amazon TV」をテレビで楽しむためのスティック端末で、テレビのHDMI端子に差し込んで利用する。視聴できるのはプライム会員向けの無料サービス「Amazonプライムビデオ」を含むAmazonビデオストアのほか、アプリを追加することで、HuluやNetflix、Gyao!、U-NEXTといったほかの動画配信サービスも利用できる。

 これらを宿泊先のホテルで使いたい場合、何が必要になるのだろうか。まず機器については、製品本体に加えて、給電用の電源ケーブル(USBケーブル+USB-AC電源アダプタ)が必要だ。本製品には操作用のリモコンが付属しているが、スマホに専用のリモコンアプリを入れることで代用できるので、荷物を少しでも減らしたければ、付属のリモコンは持参しないという選択肢もある。

Fire TV Stick本体。名前のとおりスティックの形状。テレビとはHDMIで接続する
製品本体のほか、給電用の電源ケーブル(USBケーブル+USB-AC電源アダプタ)が必要になる
専用リモコン。キーワードを音声入力できるタイプか、そうでないタイプかのいずれかが付属する(写真は前者)
専用のリモコンアプリ(無料)をスマホに導入することで、専用リモコンの代替として使うことができる
リモコンアプリを導入したスマホを使ってFire TV Stickを操作できる。ハードウェアキーがないので手元を見ずに直感的な操作を行なうのは難しいが、荷物を減らしたい場合はちょうどよい

 利用環境で必須となるのは「テレビにHDMI端子が搭載されていること」「ホテルの室内でWi-Fiが利用できること」の2点だ。まず前者については、最近のホテルのテレビは地デジ移行のタイミングで新しく入れ替わった機材が多く、大抵はHDMI端子を搭載している。2~3年前に比べると、利用できる環境は大幅に増加したと言ってよい。なければ潔く諦めるしかない。

 後者のWi-Fiについては、ホテルを予約する際にサービスの有無を確認すればよい。最近は少なくなったが「Wi-Fi接続可」と書いてあっても実はロビーでしか利用できず、部屋では利用できないホテルもあるので、不明瞭な場合は事前に確認しておこう。なお部屋に有線LANしかない場合は、当コーナーで過去に紹介したWi-Fiルーターなどを使って無線化するという方法もある。

電源を確保できるかに注意

音声認識リモコン同梱モデルはHDMI延長ケーブルは付属せず、HDMI延長アダプタのみが添付される

 本製品を宿泊先のホテルで利用するにあたり、意外なネックになりがちなのは「コンセントの位置」だ。本製品はUSB給電で駆動するため、本体側面のUSBポートにUSBケーブルを挿し、それを電源アダプタ経由でコンセントにつなぐ必要があるが、これが届かなければそもそも電源が供給できず、本製品を利用できない。

 本製品のUSBケーブルは長さが1.5m程度と、この種の添付品としてはかなり長めなのだが、それでも周囲にコンセントがなければ延長する必要がある。自宅ならどうとでもなるのだが、本製品を宿泊先のホテルで使うにあたり、いちばんのネックはここだったりする。

 対処方法はいくつかあり、USBケーブルを長いものに取り替える以外に、電源タップなどで電源側を延長する方法や、またHDMI延長ケーブルを使って本製品を電源に近いところまで引っ張ってくる方法もある。3番目の方法に関しては、テレビ背面に障害物があって本製品をうまくHDMI端子に差し込めない場合の対策にもなるので、この3つの選択肢のなかではもっとも柔軟性が高い。ただし、もっともかさばる方法でもあるので、ケースバイケースで判断したい。

 ちなみにFire TV Stickには「スタンダードリモコン付属」と「音声認識リモコン付属」の2モデルがラインアップされているが、HDMI延長ケーブルが付属するのは前者のみで、後者はHDMI端子同士をつなぎ合わせて延長するためのアダプタしか付属しない。つまり後者だとHDMIケーブルを買い足す必要があり、そのぶんのコストが余計にかかるわけで、もしホテルでの利用を前提に新規購入するならば、前者の方がコスト的には有利だ。スマホアプリでリモコンを代用するのならなおさらだろう。

 なお最終手段として、モバイルバッテリを使う手もある。コンセントにケーブルが届かず、延長ケーブルや電源タップもない状況で、携行しているモバイルバッテリがあるのであれば、どうしても視聴したい場合に役立つだろう。言うまでもないが、バッテリの容量が十分にあることが前提だ。

事前の会員登録を忘れずに

 と、接続にあたってはいくつかハードルはあるものの、セッティングさえできてしまえばあとは楽なものだ。テレビの電源を入れたのち、リモコンを使ってWi-Fiの設定を行ない、続けてAmazonアカウントを入力すれば、ホーム画面が表示される。あとは表示される一覧から視聴したコンテンツを選べば、即再生が始まる。いたって簡単だ。

まずはテレビ背面のHDMI端子に本製品を接続
続いてコンセントに電源アダプタを差し込む
電源アダプタにつないだUSBケーブルを本製品に差し込む。これでセッティングOK
テレビの電源を入れてHDMIからの入力に切り替える
ネットワークの接続画面が表示されるのでSSIDを選んでパスワードを入力する。自前のWi-Fiルータと接続する場合は、WPSも利用できる
パスワードはソフトキーボードで入力する。やや手間がかかる部分だ
ホーム画面が表示されればセットアップ完了。メニュー操作や項目選択はリモコンもしくはリモコンアプリをインストールしたスマホを使って行なう
HuluやNetflix、Gyao!、U-NEXTのほか、ニコニコ動画やYouTubeも利用できる

 視聴については、プライムビデオについてはプライム会員は無料で観られるし、それ以外のコンテンツもAmazonのアカウントに紐付いた支払方法が適用されるので、VODのようにその場でクレジットカード番号を入力して決済するなどの手間は不要だ。

 また、アプリを追加すれば、前述のHuluやNetflix、Gyao!、U-NEXTなどほかの動画配信サービスを利用できるのもメリットだ。Amazonビデオに目的のコンテンツがない場合や、ふだん利用しているサービスをそのまま使いたい場合も重宝するだろう。

 ただし、本製品単独では会員登録が行なえないサービスもあり(例えばNetflixは本製品から無料体験アカウントを作れるが、Huluはあらかじめアカウントを作成しておく必要がある)、また会員登録が行なえてもリモコンでの個人情報入力は手間を要するため、各サービスのアカウントは、基本的には事前に用意しておいた方がよい。

 また、本製品は動画のほかに音楽や写真、ゲームを楽しむこともできるが、ゲームについては別売りのコントローラが必要になるので、旅行先での利用はあまり現実的ではない。音楽については、スマホを所有していれば宿泊先のホテルでわざわざ本製品を使う必然性はあまりなく、基本的には動画中心ということになるだろう。

ネットワーク帯域の占有には要注意

 以上のように、本製品があればホテルでも快適な動画鑑賞が行なえるわけだが、一つ気を付けたいのが、ホテルのネットワーク回線における帯域占有の問題だ。

 基本的にこうした動画配信サービスは、配信用にデータサイズが最適化されているとはいえ、PCやスマホでWebサイトを観たりメールやSNSの送受信を行なうのに比べて、データ転送量は格段に大きい。また映画などを観る場合は、1時間や2時間といった長時間にわたって、ネットワーク回線の一定の帯域を占有し続けることになる。基本的にやっていることはスマホで動画を観る場合と変わらないとはいえ、ホテルによっては利用規約に引っかかる可能性がある。

 実際、こうしたWi-Fi接続サービスを提供している多くのホテルでは、利用約款でネットワークに長時間負荷をかけるサービスの利用を禁じている場合がある。これらは主にブロードバンド黎明期のP2Pサービスを意識したもので、動画配信サービスはこれらと違って行為そのものがグレーというわけではないが、再生中に頻繁にコマ落ちするなどネットワークへの負荷がかかっている兆しがあれば、利用を取り止めるべきだろう。

 また、今回は基本的に国内ホテルでの利用を想定しているが、海外のホテルについては仮にネットワーク環境に問題がなくても、動画配信サービスの事業者がアクセスに制限をかけている可能性がある。もともとAmazon.co.jpで取り扱われている本製品は国内向けに販売されており、技術仕様の欄に「特定のサービスは日本国外で適用外の場合があります」と記されている。トータルで考えると海外旅行にはあまりおすすめではなく、国内旅行向けと考えた方がよさそうだ。

製品名Fire TV Stick
発売元Amazon.co.jp
価格(税別)4980円(スタンダードリモコン付き)

(山口真弘)