旅レポ

スカイマーク1985便「タイガースジェット」で羽田から神戸へ飛んでみた!

BERTH、KAKEF、OKADAで「HANSHIN WEST ARRIVAL」

2016年5月20日 実施

タイガース尽くしの機内で、スカイマーク仕様のユニホームを着た乗務員がお出迎え

 スカイマークがプロ野球球団「阪神タイガース」とコラボレーションして実現した「タイガースジェット」。ボーイング 737-800型機にタイガースのロゴマークを配したこの特別デザイン機は4月27日から運航が開始されていたが、5月20日、関係者向けに羽田空港から神戸空港まで臨時便が運航された。この便に搭乗する機会を得たので、その模様をお届けしたい。

タイガースのロゴマークが施されたタイガースジェット。写真は招待飛行後に開催された記念式典時に撮影

 今回の出発地となった羽田空港38番搭乗口。ふと案内表示盤を見上げたところ、便名の数字が「1985」、カウンター前のポスターも「1985便搭乗口」との貼り紙。子供のころ何年か大阪に住んでいたことから、いまだにほんのりと阪神が好きな筆者は思わずテンションが上がった。そう、「1985」は阪神タイガースとファンにとって特別な数字だ。

 そして、阪神タイガース仕様の制服を着用した搭乗口のスタッフが「便名は阪神タイガースが21年ぶりのリーグ優勝と球団史上初の日本一を達成した1985年にちなんだ名前となっております」とアナウンス。やはりそうであったか。

案内表示盤には、阪神ファンならすぐにピンとくる便名
搭乗カウンター前に貼られていたポスターにも「1985便」と案内が
タイガースジェットのフライトの際にスタッフは縦縞の制服を着用
背番号はタイガースジェットのボーイング 737-800型機にちなんで737

 ふと、今回のフライトは予定表を見たところ「羽田(12時45分)発~神戸(14時50分)着」となっており、「あれ? 羽田から神戸までにしては少し時間がかかるのでは」と思った。このとき筆者は知る由もなかったが、実は今回の招待飛行は臨時便ということで、通常とは異なる阪神ファン垂涎のルートを飛ぶのだ。

アナウンスでは便名の由来も説明
カウンターを抜ければ、タイガースジェットへの搭乗も間近だ

離陸前から機内は濃いタイガース密度

 搭乗の際にタイガースジェットの機内に入ると、「スカイ・インテリア」が採用された内装は圧迫感がなくスッキリとした印象。だが次の瞬間、なにより目を奪われたのが、タイガースカラーのブラックとイエローのヘッドレストカバーが並ぶ風景だ。シートは左右共に3席ずつで、A席、C席、D席、F席がブラック、B席、E席がイエローと、虎縞になっている。

タイガースカラーのヘッドレストカバーがまぶしいシート
イエローバージョンのシート
こちらはブラックバージョン
機内はこのようにタイガースカラーのストライプが壮観だ。なおこの写真のみ5月21日の一般公開時に撮影したもの

 さらに、機内には「六甲おろし」のメロディが流れ、CA(客室乗務員)はもちろん、スカイマーク 代表取締役会長の佐山展生氏も、縦縞の制服を着用して乗客のお出迎えをしていた。自分の座席に座りシートポケットを探ると、スカイマークとタイガースのコラボうちわが。早くも出発前からスカイマークのタイガースジェットにかける本気を見た思いである。

 序盤のわずかな時間であまりにも密度の濃いタイガース感を味わったため、そのあとのCAによる緊急脱出時の説明で黄色いライフジャケットを見た瞬間、「もしかしてこれもコラボレーション……?」と勘違いしてしまうほどであった。

スカイマークの佐山会長も縦縞のユニホーム姿で搭乗
最前列に収まったタイガースのマスコット「トラッキー」のぬいぐるみ
コラボうちわは2種類。どちらか1種類がシートポケットに入っている
うちわの裏面は2種類共通で、路線と神戸空港から甲子園球場までのアクセスが紹介されている
CAもユニホームを着てシートベルトの説明
黄色が当たり前のライフジャケットまでもが、タイガースとのコラボに見えてくる不思議
曇りの中タイガースジェットが羽田を出発、神戸へ
LEDが使われ、洗練されたデザインの機内

サプライズで江本孟紀氏が登場

機内で挨拶する佐山会長

 タイガースジェットが離陸し、ベルト着用サインが消えたころ、佐山会長が登場。「タイガースジェットが4月27日に就航いたしました。2015年9月29日に民事再生になりまして、それ以来、皆さんのご支援もあり、3月末には民事再生手続きを終了しました。安全はもちろん定時性も大事。5月には94%を超えましたが、トップを目指していきたい。安全性・定時性を共に確保したうえでほかの航空会社にはできないことを行なっていきたいと思います」と挨拶。そして、「タイガース便を飛ばすということは、ほかの航空会社ではジャイアンツファンもいますからできないと思いますが、スカイマークの場合は柔軟にできます。タイガースジェットは25機中2機なので、(スカイマーク機に乗っていれば)8%の確率で乗ることができます」と茶目っ気を添えてタイガースジェットを紹介した。

 そしてサプライズだったのが、阪神タイガースOBで野球評論家として活躍する、「エモやん」こと江本孟紀氏の登場だ。「まさかタイガース便に乗ることになるとは思わなかったんです(笑)。本当は名古屋へ巨人戦の仕事に行く予定でして、そっち行くのに佐山会長から『神戸に回って行け!』ということで、今日はこの飛行機に乗らせていただきました」とコミカルなボヤキ節を混ぜつつ挨拶。「ぜひ、アメリカの大リーグのように選手専用の飛行機も飛ばしていただきたいと思っております。我々解説者も横にちょっと乗っていきますので」とさりげなく要望を語った。

サプライズだった江本孟紀氏の登場。機内が湧きあがった
タイガースコラボタオルを広げる佐山会長。中央に書かれているのは江本孟紀氏のサイン

 江本孟紀氏の突然の登板……もとい登場に、幼いころ試合で同氏を見ていた筆者は「まさか同じ便でフライトしていたとは」と思わず緊張。そのあとの取材で、カメラを持つ手が震えるなど少し取り乱してしまったことは内緒だ。

コラボタオルは機内で販売される
今回は招待飛行ということで特別にコラボタオルをいただいた
そして、今回のフライトの搭乗証明書も

1万6000フィートの飛行高度で富士山を通過

今回の招待飛行の操縦を担当した機長の益田敏弘氏(左)と副操縦士の工藤貴章氏(右)

 佐山会長が「(今回のフライトを担当する)益田敏弘機長はタイガースジェットの発案者なんです。半年前に懇親会を開催したとき、提案がありました」と紹介、それに続いて機内放送で益田機長が挨拶。「今回はタイガースジェット1985便に搭乗いただき誠にありがとうございます。飛行高度は1万6000フィート、約4800m、速度は360ノット、時速でいうと約660kmで飛行を続けてまいります」と説明した。

 1万6000フィートとはかなり低い高度。実は富士山を通過時、火口も雪渓も近くでバッチリ見え、これまでに見たなかで最も近距離だったため「近っ!」と驚いたのだ。なお、今回の招待飛行後に開催されたお披露目記念式典で、益田機長は「本日は雲があって、もし中に入ってしまうとなにも見えないことになってしまいますので、できるだけ低くかつ揺れない高度を探して飛びました。富士山に最も近い高度です」と富士山付近のフライトについてコメントしていた。

富士山をギリギリの高度で通過

エンジンカバーにも虎のマークが!

 また、機内では阪神ファンのCAによるタイガース愛にあふれたトークも。高校時代に阪神の御堂筋優勝パレードが開催された際、家族で場所取りをして最前列で見たという藤田依里さん、同じ高校出身である岡崎太一選手の魅力を語った稲田美香さん、フライト前日に甲子園へ行き、ライトスタンドで原口文仁選手のサヨナラヒットを見たという吉谷真梨子さん。3人がそれぞれのエピソードを語ってくれた。

 ほかにもタイガースジェットに関するクイズコーナーがあり、「機体に何匹の虎のマークが貼られているでしょうか?」という問題が出された。答えは5匹で、機体後部の左右に1匹ずつ、前方左ドア側面に1匹、そして左右のエンジンカバーに1匹ずつ貼られているとのこと。エンジンカバーの虎は上部に貼られており、機内からしか、それも一部の座席からしか見られないとレアだ。

2005年のタイガース優勝の思い出を話した藤田依里さん
「岡崎選手は辛い時代を乗り越えたところがかっこいいです」と稲田美香さん
「素敵なサヨナラヒットで本日も快晴になってきました」と試合に例えてフライトを説明した吉谷真梨子さん
エンジンカバーに貼られた虎のマーク

飛行ルートがまさかの「バックスクリーン3連発」

 さて、気になるのが今回のルートだ。益田機長は機内放送で「本日の飛行時間は通常より長くなっているかと思いますが、これは「BERTH」「KAKEF」「OKADA」というウェイポイントを通過するためです」とアナウンス。だから予定表には、羽田発が12時45分で神戸着が14時50分になると書かれていたわけである。バース(BERTH)、掛布(KAKEF)、岡田(OKADA)といえば、1985年優勝時のタイガースのクリーンアップ。それもジャイアンツ戦で3者連続ホームランを放った「バックスクリーン3連発」のメンバーだ。これをまさか飛行ルートで再現するとは。

 搭乗証明書を見ると、「BERTH」は香川県高松市付近、「KAKEF」は淡路島西端沖、「OKADA」は兵庫県姫路市と淡路島の間の海上に位置している。3人の名前がついたウェイポイントがあるのにも驚いたが、3番バース、4番掛布、5番岡田の順でたどるルートは四国上空から神戸空港に入るために実際に使われており、名称は「HANSHIN WEST ARRIVAL」だという。

 今回の飛行経路はYANAG、KOGEN、ENNAR、KOMAK、CUE、OLIVE、DANGO、BAMBO、MARCO、MPE、KTE、BERTH、KAKEF、OKADA、TRACY、SIOJIで、山口県の方まで飛んでから四国に入って神戸空港に行く、というルートになっている。ちょっとだけ「『MAYUM(真弓)』や『HIROT(弘田)』とかがあったら、バックスクリーン3連発だけでなく1985年当時のスタメンが組めるのでは」と妄想してしまったが、よく考えたら(よく考えなくても)「OKADA」のあとが「TRACY」といきなり元広島カープのトレーシー(?)がいるというところで我に返った。

搭乗証明書を見ると、神戸を通り過ぎて四国経由で着陸するルートになっているのが分かる
四国東端にある「BERTH」を通過したところ
「KAKEF」通過時は風力発電機がならぶ風景が見られた
海上に位置する「OKADA」を通過

 タイガース尽くしの機内に、イベントや江本孟紀氏登場というサプライズなどが盛り込まれた招待飛行も、「HANSHIN WEST ARRIVAL」を通って、無事神戸空港に着陸。1時間39分のフライトだったが盛りだくさんであっという間に感じられた。なお、今回は招待飛行ということで特別なフライトとなっており、飛行ルートや内容など通常のタイガースジェットとは違うのでご注意いただきたい。

三宮経由で関西各地へのアクセスが便利な神戸空港

 さて、ここまでは少々浮かれ気分で招待飛行のレポートをお伝えしてきたが、元々タイガースジェットは、神戸空港の利用を通じて神戸をはじめ関西地域の魅力を発信する「神戸 旅の港街 プロジェクト」の1つ。神戸空港というと東日本の人にとって、伊丹空港(大阪国際空港)や関西国際空港と比べ、残念ながら知名度が高いとは言いがたい。

 しかし実際、宿泊のため神戸市街に出ることになって驚いたのが、空港からの移動のしやすさだ。神戸空港の出発ロビーがある2階の出口がすぐ、ポートライナー神戸空港駅の入口になっている。ほかの地域から神戸空港に到着した場合でも、1階到着ロビーからすぐのエスカレーターで上がれば、さほど歩かずに駅へ行けるメリットがあるのだ。

 神戸空港駅からは約18分で三宮駅に到着。三宮は神戸随一の繁華街であるのはもちろん、交通の要所でもある。神戸新交通が運営するポートライナーの駅だけでなく神戸市営地下鉄の駅もあり、さらに「三ノ宮駅」の名称でJR西日本(西日本旅客鉄道)の駅が、「神戸三宮駅」として阪急電鉄や阪神電気鉄道、神戸高速鉄道が集まっている。神戸空港から三宮駅に出てしまえば、兵庫県内はもちろん大阪や京都への移動も容易だ。

神戸空港のサイトに関西各地へのアクセスと所要時間を記したマップが掲載されている
ポートライナーに乗って、ポートアイランドを通り抜ければ約18分で三宮駅
神戸大橋をポートライナーで渡る際、わずかな時間であるが港町・神戸の風景を楽しめる

 東京方面から神戸を中心に関西方面の旅を計画する場合、神戸空港経由なら比較的短時間で羽田から神戸に移動でき、なおかつハブ的な存在の三宮駅へのアクセスがよいという点は魅力だろう。神戸へは新幹線で新神戸駅というプランが思い浮かぶかもしれないが、神戸空港を利用した空の旅も検討してみる価値は大いにあるのではないだろうか。

丸子かおり

フリーライター/編集者。主にIT系の記事を執筆することが多いが、科学系の書籍や料理本を手がけることも。趣味はごはん・手芸・デジタルなどジャンルを問わない自作。著書は「AR<拡張現実>入門」(アスキー新書)、「放射線測定のウソ」(マイナビ新書)など。ブログはhttp://mrk-reco.com/