旅レポ

デルタ航空の国際線ビジネスクラス「デルタ・ワン」でニューヨークへ行く

フルフラットシートで移動の疲れも軽減

成田空港第1ターミナル北ウイングの第2サテライト4階にあるデルタ航空のラウンジ「スカイクラブ」

 3月10日~12日の3日間にわたって米国ニューヨーク州ニューヨーク市のグランド・セントラル駅で行なわれた、訪日観光の魅力をアピールするイベント「Japan Week 2016」を取材するためニューヨークへ行ってきた。その際に、デルタ航空のビジネスクラスである「Delta One(デルタ・ワン)」を体験する機会を得たので、その模様をお伝えしていきたい。

 デルタ航空は、成田空港から米国本土の7都市(デトロイト、ニューヨーク、ポートランド、アトランタ、ミネアポリス、シアトル、ロサンゼルス)への路線も就航している米国の航空会社。2008年に合併したノースウエスト航空の路線を引き継ぎ、米国の航空会社ではもっとも充実した日本路線網を持っている。今回は、成田~ニューヨーク間のDL172便で、デルタ・ワンを体験してきた。

ビジネストラベラーにとってデルタ航空の国際線ビジネスクラス「デルタ・ワン」とは?

 筆者はトラベル Watch以外にも、僚誌であるPC WatchやCar Watchなどで半導体や新製品関連の記事を書くことが多い。取材に行くのはIT系の企業やイベントが多い米国、台湾、欧州などで、国際線を頻繁に利用し、年間の1/3ぐらいは出張で家を空けているビジネストラベラーの一人だ。

 海外取材の際、移動に主に利用しているのがいわゆるスカイチーム・アライアンス系のエアラインだ。理由は、初めての海外仕事で乗ったエアラインがかつてのノースウエスト航空で、そのときにマイレージカードを作って以来、特に変える理由もなかったのでずっと乗り続けているため。そして国際線に乗る機会が多いため、毎年上級会員を維持しており、デルタ航空のマイレージ・プログラム「スカイマイル」の上級会員(メダリオン)制度のダイアモンド(12万5000マイル)/プラチナ(同7万5000マイル)/ゴールド(同5万マイル)/シルバー(同2万5000マイル)のうち、プラチナを毎年クリアしている。

 ビジネストラベラーにとってマイレージ制度の魅力は、上級会員になればなるほど便利な特典が増えることだ。例えばラウンジの利用権。デルタ航空スカイマイルの場合、アジア地域の会員はゴールド以上であればスカイチームの航空会社に搭乗する際、デルタ航空のラウンジとスカイチーム提携会社のラウンジを利用できる。

 座席でもメリットはある。エコノミークラスなら、前に席がないビジネスクラスとの仕切り前の席(=バルクヘッド席)や、非常口席などに座ることが重要になるが、上級会員はその点でも優遇されていることが多い。

 さらにプラチナ以上には、国際線ではデルタ・コンフォートプラス(いわゆるエコノミー・プラスに相当)へのアップグレードを発券時に、米国国内線ではファースト・クラスへのアップグレードをフライト5日前までの申請で利用できる権利を与えられている(いずれも空席状況による)。短時間の国内線はともかく、時間が長い国際線の機内で快適に過ごすためには、デルタ・コンフォートプラスへのアップグレードは非常に重要だ。

 そんなビジネストラベラーの一人として、デルタ航空を普段から利用している一人として、ビジネスクラス「デルタ・ワン」の魅力をチェックしていきたい。

国際線ビジネスクラスの利用は専用チェックインカウンター、ラウンジから始まる

スカイクラブの内装は落ち着いたデザインになっている

 ビジネスクラスの利用というのは、空港に着いたときから始まっている。空港に着いた旅行客が最初にすることは、航空会社カウンターでのチェックインだろう。これはどこでもそうだが、ビジネスクラス(と上級会員)向けには専用のカウンターが用意されており、繁忙期などには混雑しているエコノミークラスのカウンターを横目にさっとチェックインできる。ギリギリまで粘ってPCで仕事をしたいようなビジネストラベラーにとっては、そうした時間を節約できるのは大変ありがたい。

 ラウンジの入口で搭乗券、パスポートを出すとチェックは完了で、ラウンジでくつろぐことができる。デルタ航空のラウンジは「スカイクラブ」の名称で展開されており、ワールドワイドに246カ所(提携会社のラウンジを含む)に設置されている。成田空港では第1ターミナル北ウイングの第1サテライト、第2サテライトの2カ所にあり、今回は第2サテライトのスカイクラブを案内された。

スカイクラブには貴賓室も用意されている
同社の機内誌「SKY」も並んでいる
シャワー室も用意されている。成田空港で乗り継ぐ乗客にはうれしい設備だ

 ビジネストラベラーにとっては、ラウンジに行けることは大きく2つの意味がある。1つは、PCなどのIT機器の電源を容易に確保できることだ。現在は機内や搭乗口付近でも電源が用意されていることは増えているとはいえ、安心して利用できるという意味で、確実に確保できるラウンジは非常にありがたい。もう1つはWi-Fiなどのインターネット回線が確保されていることだ。最近の空港は一般エリアでも利用できることは多いが、すべての空港で確実にあるわけではない。ラウンジに行けばインターネットに接続できるというのは、ビジネスユーザーにとっては重要なポイントとなる。

乗客が使えるPCも用意されている
Wi-Fiも完備されている

 ラウンジで自分の居場所を確保してPCを電源につないだら、用意されている無料のドリンクやフードを楽しむのもいいだろう。成田空港のスカイクラブでは、ドリンクバーのようなソフトドリンクとアルコール類のセルフサービスのサーバーなどが設置されている。デルタ航空の本社があるアトランタに、同じく本社を置くコカ・コーラのソフトドリンクや、ビール、ワインなどを楽しむことができる。食事も用意されており、焼き鳥、スープ、スナック類と共に、セロリやブロッコリーなどのサラダや、豆サラダなど、健康に配慮した食事もある。このあたりは米国の航空会社らしい気配りだ。

第2サテライトのスカイクラブには2カ所のフード・ドリンクコーナーが用意されている
デルタ航空の本社があるアトランタに同じく本社を構えるコカ・コーラのドリンクサーバーやビールサーバーなどが設置されている
フードコーナーに用意されているスープ。チャウダーが美味しかった
焼き鳥も用意されていた、炭水化物を避けたい人にはうれしい選択肢
逆に炭水化物を求める人には巻き寿司もある
豆サラダやセロリ・ブロッコリー・にんじんのサラダはブルーチーズをかけて食べる
PCやタブレットを充電している間に……ちょっと食べ過ぎかもしれない

 ラウンジのドリンクやフードを楽しんだら、自分のフライトがどんな状況か気になるところ。デルタ航空が提供するIT系サービスを利用して確認しよう。筆者のお勧めは、スマートフォン向けアプリ「Fly Delta」だ。iOSとAndroid、Windows Phone 8.1という3種のOS向けに用意されている。筆者はAndroid版を利用しているが、自分のスカイマイルの番号と紐付けておくと、マイレージの履歴、予約の詳細、さらには電子化された会員証などにアクセスできる(画面に表示される会員証のSRコードを係員が読み取ることで、磁気カードと同じように使える)。

オンラインチェックインすると送られてくる電子搭乗券。スマートフォンなどで表示して、SRコードをリーダーにかざすだけで、紙の搭乗券の代わりとして使える
Fly Deltaアプリの画面、予約の詳細や座席の指定などもすべてアプリからできる
Fly Deltaではこのように会員証もすべて電子で表示できる。ラウンジなどの利用もこれで可能だ
Fly Deltaからのメッセージは、スマートウォッチにも通知できる

 仕事に集中していると、搭乗開始のアナウンスを聞き逃してしまうこともあるが、そうした際に安心なのが「Apple Watch」や「Android Wear」などのスマートウォッチとの連携だ。

 筆者はGoogleのAndroid Wearを採用したMotorolaのMoto 360というスマートウォッチを利用しているが、搭乗が開始されるとFly Deltaからのメッセージがダイレクトに通知されるようになっており、非常に便利。今回はスケジュール変更はなかったが、以前、1時間ほどフライトが遅れたときも、ラウンジから出て行こうとしたらFly Deltaからのメッセージがスマートウォッチにあって、そのままラウンジにとどまったという経験があり、Fly Deltaはぜひインストールしておきたいアプリだ。

DL172便で利用されているボーイング 777-200ER型機
ボーイング 777-200ERの上部に取り付けられたGogoの衛星インターネットのアンテナ
今回利用したゲートはゲート「21」だった
機内へ乗り込む搭乗口も「DELTA ONE」(デルタ・ワン)と「MAIN CABIN」(エコノミークラス)で分かれている

デルタ・ワンの自慢のフルフラットベッドシートを試す、完全フラットで快適に睡眠

 ラウンジのアナウンスとFly Deltaからの搭乗時刻の通知があり、ゲートへ移動。パスポートと搭乗券を確認してもらい搭乗する。デルタ航空では混雑を避けるため、搭乗券に書かれているゾーンごとに搭乗する仕組みになっており、障がい者や小さな子供を連れた乗客などが優先搭乗で、その後ゾーン「PREM」と書かれたデルタ・ワンの乗客とスカイマイルのダイヤモンドメダリオン、ゾーン「SKY」と呼ばれるスカイプライオリティ・プラス(デルタ航空が加盟しているスカイチームの加盟エアラインとデルタ航空の上級会員のゴールド以上が該当)の乗客、そしてゾーン1、2、3と搭乗していく。ビジネスクラスの乗客は「PREM」なので、早々に機内に入って落ち着ける。

デルタ・ワンのキャビン、通路とシートが1:1で、すべてのシートが通路から直接アクセスできる
搭乗するとすぐ提供されるウェルカムドリンク

 搭乗すると、CA(客室乗務員)がウェルカムドリンクを持ってきてくれる。ウェルカムドリンクは、シャンパンとオレンジジュースがトレイに載っているが、ほかのドリンクも注文でき、ギャレーに戻って持ってきてくれる。普段は付き合いの宴席でもない限りアルコールを飲まない筆者だが、このウェルカムドリンクのシャンパンだけはいただくようにしている。「せっかくだから楽しもう」と思うし、なにより「ビジネスクラスに乗るんだなぁ」と気持ちが高まる。

 かさばるコートや上着も、CAが専用のクローゼットに預かってくれる。筆者は服装に無頓着ということもあってついつい頭上の荷物入れに押し込んでしまうのだが、CAに上着を渡すのが正しいビジネスクラスの乗客のあり方だろう。なお、預けた服は着陸前にCAが持ってきてくる。

 デルタ・ワンのシートだが、実は機材(飛行機の種類)により異なっている。搭乗したDL172便ではボーイング 777-200ER型機が使用されており、今回はこのレポートになる。

今回座った7Dのシート
上部には荷物入れがあり、容量はかなり余裕がある
座席配置の関係で7Dと7Cにだけ用意されているスペース。スマートフォンなどをちょっと置いたりできる
離陸時にはエンタテイメントスクリーンやテーブルなどを収納する
シートの角度などを変えるコントローラ

 シートの最大の特徴は180度水平になるフラットベッドシートだ。もちろん離着陸時などは別として、飛行機が巡航高度に達したあとには、席の右側にある電動スイッチを利用してフルフラットベッドモードにできる。もちろん、背もたれだけをリクライニングしたり、フットレストだけを上げたりといった使い方も可能だ。

 筆者もフルフラットにして寝てみたが、飛行機とは思えないぐらいに快適だった。普段乗っているエコノミークラスでは、リクライニングできるといっても限界があるし、食事では後ろの座席の人に配慮しないといけないが、デルタ・ワンではシートがシェル型で独立しているので、後ろの人を気にする必要もない。

シートをフルフラットベッドにしたところ。飛行機とは思えない寝心地
各シートには掛け布団、枕のほかに、腰枕(一番上の小さな枕)も用意されていた

 また、実際に眠ったときによかったのは頭用の枕とは別に、腰の下などに入れて調整できる腰枕まで用意されていたことだ。フラットなベッドは逆に苦手という人でも、それを使って腰などへの負担を調節できるのだ。また、デルタ・ワンではシートの位置が工夫されていて、基本的に1-2-1の配列のため、どのシートからも直接通路に出られるようになっている。トイレなどに立つときに「スミマセン」としたりされたりすることがないのは助かる。

 こうしたこともあり、今回ニューヨークまで約12時間のフライトだったが非常に快適で、半分ぐらいの時間はぐっすり眠ることができた。ニューヨークの時間でちょうど朝になるような時間に目が覚めるようにして、できるだけ時差ボケにならないように調整したら、今回の渡米では時差ボケとは無縁で過ごせた。普段時差に悩まされることが多いので、これは本当にありがたいと感じた。

本やタブレットなどを入れておける収納も便利
TUMIとのコラボレーションで作られているアメニティキット。飛行機を降りたあとでも小物入れとして便利なので、人気のアイテムだ
ヘッドフォン
夜にはボタンが点灯して、暗くても操作しやすい
読書灯も用意されている
備え付けられているスリッパ。機内では靴を脱いでくつろげる

食事やドリンクのメニューも充実している、今回はビーフステーキをチョイス

 ビジネスクラスに乗るもう1つの楽しみは、食事や飲み物だろう。残念ながらお酒が不得手な筆者はウェルカムドリンクのシャンパンぐらいで終わりになったが、ビール、ワイン、シャンパンなど各種のドリンクが用意されており、お酒が飲める人には空の上だけに「天国」のようだろう。なお、ワインのセレクションはジェームズ・ビアード賞を3度受賞したマスターソムリエである、アンドレア・ロビンソン氏が選んだ、いずれも一流のワインが揃っているということだった。

 食事に関しては、着座するとすぐにメニューが渡される。メニューには前菜、メイン、デザートなどが書かれている。大きくは洋食、和食から選べて、洋食ではさらにメインをビーフ、チキン、フィッシュ、ポークの4種から選べる。なお、和食は提供数に限りがあるので、日本人乗客が多いとCAがメニューを聞きに来る前になくなってしまっていることもある。確実に和食を選びたいなら、席を予約するときに和食もリクエストしておくと確実だ(デルタ航空のWebサイト「delta.com」で予約可能)。今回は、せっかく米国系航空会社の上級クラスに乗るのだから、洋食こそが一番のチョイスだろうと考えて、洋食、かつその王道となるビーフとなる牛テンダーロインのグリルをチョイスした。

食事やドリンクのメニュー

 前菜は帆立貝柱のロースト、ミックスグリーンサラダ(グリーンピースのビュレ、細竹の子、トマト、アーモンドのスライス入り)とタラゴン風味のグリーンピーススープで、順番にサーブされていく。それらを食べ終わると、いよいよメインの登場だ。もちろん機内食なので焼きたてとはいかないが、ほどよく温められて提供され、美味しくいただくことができた。

前菜となる帆立貝柱のロースト
タラゴン風味のグリーンピーススープ
ブレッドは複数から選べる
ミックスグリーンサラダ(グリーンピースのビュレ、細竹の子、トマト、アーモンドのスライス入り)
メインとなる牛テンダーロインのグリル

 メインが終わるころにはかなりお腹は満たされていたが、ここからデザートとなる。デルタ・ワンでは、デザートはCAがワゴンで持ってきてくれる。アイスクリーム、チーズ、フルーツから一部、あるいは全部を選ぶことができるのだが、もちろんデザートは別腹なので、すべてお願いして食べてみた。特に美味しかったのはアイスクリームで、バニラの上にラズベリーのソース(ソースは好みで選べる)をかけていただいた。

デザートはアイスクリーム、フルーツ、チーズの3種類
アイスクリームにはラズベリーのソースをかけてもらった。ソースは複数から選べる
チーズとフルーツ
就寝中にお腹が減っても心配ご無用、ギャレーにはこのようにスナックなどが用意されている

 食事が終わると眠くなって寝てしまったのだが、ニューヨーク時間に合わせるため、到着6時間前には起きて活動を開始した。不思議なことに夕食で満腹だったはずが、やっぱり小腹は減ってくる。そんなときには、手元のスイッチでCAを呼んでなにか食べ物を頼むことも可能だし、飛行機前方のギャレーに用意されているスナックコーナーへ行って、自分で好きな食べ物を持ってくることもできる。筆者はスナックコーナーで小腹を満たした。

 飛行機が目的地のニューヨークへと到着する直前には、朝食(米国時間では昼食)が提供される。今回の朝食は、チーズとハーブのキッシュ、グラノーラシリアル、スパイシーな鶏肉と焼きそばの3種類が用意されていた。夕食は洋食にしたので朝食はアジアンフードな焼きそばをチョイス。これが大当たりで、適度な塩味が効いて大変美味しかった。

朝食は焼きそばをチョイスした

大型ディスプレイで楽しめる機内エンタテイメント、機内Wi-Fiを利用したコンテンツ配信も

デルタ・ワンのエンタテイメントシステム

 一昔前、飛行機に乗るといえば、機内でいかに上手に暇つぶしをするかが重要だと筆者は考えていて、重たい本を何冊も持ち込んで読みふけったものだ。しかし、現代ではそうしたことは必要がなくなっている。まずエコノミークラスも含めて各席にディスプレイがあってパーソナルエンタテイメントシステムが備えられており、機内インターネットが用意されているフライトも増えているからだ。

 DL172便のボーイング 777-200ER型機にはパーソナルエンタテイメントシステムも機内インターネットも備えられており、ノート型PCと同じような10~13インチ程度のディスプレイが設置されている。ちなみにエコノミークラスのディスプレイは日本の自動車のカーナビぐらい(7~8インチ程度?)の大きさなので、それに比べると大きく見やすい。このエンタテイメントシステムはオンデマンドになっており、乗客は好きなタイミングで好みの映像や音楽を楽しめる。昔は映画などの上演時間が決まっていて、見たい映画のために頑張って起きていないといけなかったが、その必要はない。

 デルタ航空のエンタテイメントシステムは映画、テレビ番組、キッズ向け、音楽、フライトデータなどのコンテンツが用意されており、今回のフライトでは「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」がラインアップに入っていた。このフライトの3月上旬時点では、日本では映画館でしか見られない話題の映画を機内で見られるとあって、すぐに再生を選んだ。

 音声の選択肢には日本語もあり、日本語で楽しめた(すべてではないが、日本語対応のコンテンツも多い。デルタ航空によると、邦画も豊富で日本語で見られる映画は常時100タイトルもあるそうだ)。この映画は一度映画館で見ていたが、それでもこういう映画は何度見ても新しい発見があるもので、それがBlu-ray/DVDの販売前に楽しめるのはうれしい。もちろんほかにも話題のハリウッド映画やクラシックな名画も充実しており、最新作から旧作までいろいろと楽しめる。

取材時の日本ではまだ映画館で上映中の「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を鑑賞できた
飛行機の現在位置を確認できる

 機内インターネットは、米国Gogoが提供している通信衛星を利用したサービスで、デルタ航空はGogoがサービスを開始した初期から国内線で導入を進め、今では国際線でもサービスを導入、現在は多くのフライトで利用できるようになっている。

 Gogoの機内インターネットの詳細は弊誌記事でも前編後編として詳しく、デルタ航空の機材でのレポートをしているが、今回はそのレポートでは利用しなかった機内Wi-Fi経由でのコンテンツ配信サービス、ストリーミングサービスを活用してみた。

 ストリーミングサービスは機内の配信サーバーからコンテンツを乗客のPCやタブレットに、Gogoの機内Wi-Fi経由でストリーム配信する仕組みで、自分の手持ちのPCやタブレットでコンテンツを楽しめるようになる。ニューヨーク路線などの国際線には全座席に個人用ディスプレイがあるので必要ないかもしれないが、アメリカ国内線などでは自分のノートPCで見たいというニーズがあるだろう。

機内インターネット(有料)も利用可能
機内Wi-Fiのシステムに接続すると、機内エンタテインントシステムのひとつ、ストリーミングサービスのオンデマンドコンテンツを鑑賞できる

 今回はマット・デイモン主演の「オデッセイ」(原題はThe Martian)をこのDelta Studioで楽しんだ。オデッセイは主人公が一人火星に取り残されて生き抜くというSF映画だが、アメリカンジョーク満載のコメディチックな映画でもあって、筆者は今のところ今年一番面白い映画だと思っている。実はすでに3回ほど見ているのだが、お気に入りなので4回でも、5回でも問題ない。

 Delta Studioの選択肢から「The Martian」を選んで再生した。なお、再生にはAdobe Flash Playerが必要になるが、一般的なPCのWebブラウザであればインストール済みであることも多いし、もしない場合でも機内インターネットを使ってインストールすればいい。

こちらも取材時は上映中の「オデッセイ」を自分のPCやタブレットで再生できる
自分のPCやタブレットで映画を再生しながら食事をしたり、お茶をしたりとちょっと優雅な感じだ
機内インターネットの速度を確認すると、下りは9.26Mbpsと高速だった。ただし、上りは0.4Mbpsだったので大容量ファイルをアップロードしたりメールで送ったりというのはあまり現実的でない
USBポートや電源などが用意されている

ビジネストラベラーにとってのビジネスクラス利用の最大のメリットは“疲れない”こと

 そんなこんなで、エンタテイメントを楽しんだり、機内インターネットを利用して仕事をしたり、フラットベッドシートて寝たりしているうちに、12時間のフライト時間はあっという間に過ぎてしまった。

 まもなく着陸となったときには、預けていた上着をCAが持ってきてくれた。筆者の個人的な感想に過ぎないが、米国系の航空会社のCAのもてなしというのは日系の航空会社とはやや違う。日系の航空会社のCAはかゆいところに手が届くような親切さだと思う。それに対して米国系の航空会社のCAは、過度なサービスがなくおおらかで、母親のような親切さとでも表現すべきもてなしが最大の特徴だと感じている。方向性は違うが、どちらも乗客のためにということには変わりなく、どちらもそれはそれで心地よいと感じている。

 さて、ニューヨークで入国や税関の手続きなどを済ませてホテルに着くと、現地時間の18時だった。いつものようなエコノミークラスでの旅であれば、おそらくこの段階で疲れ果てて、そのままホテルで寝てしまい、目が覚めると夜中で時差ボケ決定というところだが、今回はまったく疲れを感じず、そのままニューヨーク観光に出かけて、歩き回ったその疲れで夜の0時に就寝できた。このため、今回は時差ボケを一度も感じることなく、ニューヨークの2泊3日を過ごすことができた。

 結局のところ、ビジネストラベラーがビジネスクラスに乗る最大のメリットはここにあると感じている。ビジネスパーソンが海外に行くのは商談なり、交渉なりなんらかの仕事のためだろう。当然スケジュールもギリギリで、あまり余裕のない状況で出かけることが普通だろう。そこで飛行機の移動で疲れ果て、いつもの実力の半分も発揮できず、結局商談がうまくまとまらなかったとしたら台無しだ。しかし、ビジネスクラスを利用すれば、負荷を最小限に抑えることができ、着いた日から全力で活動できると思う。ビジネストラベラーにとって、ビジネスクラスを利用することは投資と考えられる。それを自ら実感することができた、ということで今回の記事のまとめとしたい。

笠原一輝