旅レポ
タイで初めての王朝が開かれた古都・スコータイの旅(その1)
全乗客に“フルサービス”を提供してくれるバンコク・エアウェイズに乗ってスコータイへ
(2016/5/9 00:05)
日本人の海外渡航先トップ10に入るタイ。全世界の都市別渡航先でもトップ5にバンコクが常に顔を出すほど旅行先としては定番となっている土地だ。だが、タイでもまだまだ知られていない土地があるという。そんな地を紹介すべくタイ国政府観光庁が実施した視察ツアー。目的地はスコータイという北部の都市だ。
スコータイはタイ族が初めて独立王朝を開いた場所で、日本で例えるならば奈良県の橿原や飛鳥のような位置付けの都市といえるだろうか。1991年にはスコータイ周辺の街と歴史公園がユネスコの世界文化遺産にも登録されており、マイナーというには失礼ではあるのだが、日本人に馴染みがない土地であるのも事実だ。そんなスコータイを訪れた視察ツアーのレポートをお届けしていきたい。
バンコク・スワンナプーム空港で乗り継いでスコータイへ
まずはスコータイへのアクセスについて紹介しておきたい。スコータイへはバンコク・エアウェイズがバンコク・スワンナプーム空港からの国内線を運航している。日本人が同地を訪れる場合も、このバンコク乗り継ぎを基本に考えることになるだろう。バンコクからスコータイへは1日2便、早朝と午後にフライトがある。日本発の深夜便でバンコクへ行って、そのままスコータイ行きの便に乗り継ぐことも可能だが、バンコク・スワンナプーム空港の入国審査などに時間がかかると危うい。
今回の視察ツアーは、羽田00時20分発~バンコク05時25分着のTG661便(2016年3月26日までの冬期スケジュール)に乗って、バンコク07時00分発~スコータイ08時15分着のPG211便に乗り継ぐという行程だったので、実はちょっとビクビクしていた。バンコク・スワンナプーム空港で荷物の受け取りと、バンコク・エアウェイズへの再預け入れを行なう必要があるのもリスク要素だ。結果としてなんの問題もなく参加者全員が乗り継げたのだが、もし自分で行程を組み立てるとしたらバンコク~スコータイは午後の便にするか、バンコクで1泊して翌日の便を選ぶと思う。
以下がバンコク・エアウェイズが運航するタイ~スコータイ線のダイヤだ。
PG211便:バンコク(07時00分)発~スコータイ(08時15分)着
PG213便:バンコク(15時15分)発~スコータイ(16時30分)着
PG212便:スコータイ(08時45分)発~バンコク(10時00分)着
PG214便:スコータイ(17時00分)発~バンコク(18時15分)着
ちなみに、3月27日にはじまった夏期スケジュールでは、タイ国際航空の羽田発深夜便の到着時刻が4時50分と早まった(TG661便:羽田~東京00時20分発~バンコク04時50分着)。また、大阪発便は関空00時30分発~バンコク04時20分着のTG673便、名古屋発便はセントレア00時30分発~バンコク04時30分着(週5便、5月15日~8月1日は週3便)と、4時台にバンコクに到着する便がある。問題ないと言い切るには不安があるものの、先述の冬期スケジュールでの行程よりは朝のスコータイ行き便への乗り継ぎに多少余裕がある。
このバンコク・エアウェイズは、フルサービス航空会社なので、短い飛行距離ながらバンコク~スコータイ間で機内食も出る。早朝便なら朝食の時間帯なのでちょうどよい腹ごしらえになるだろう。
さらにバンコク・スワンナプーム空港内には、バンコク・エアウェイズのラウンジがある。今回は時間がタイトだったので利用できなかったのだが、ここはエコノミー利用客も含めて全乗客が利用可能とのことで、先述のようにバンコクでの乗り継ぎ時間に余裕をもたせたスケジュールで動く場合には便利そうだ。
バンコク~スコータイ間の機材はATR 72-500型機が使われていた。席数は70席のモノクラス。熱帯魚などが描かれた外装のペイントは機体によって微妙にデザインが異なっていてかわいい。ノーズ部分にタイの都市名が書かれており、往路はHS-PGG(登録記号)で「Chang(サムイ島)」、復路はHS-PGBで「Phuket(プーケット)」の機体だった。
平屋建てで情緒感あふれるスコータイ空港のターミナル
スコータイ空港の旅客ターミナルは平屋で、PBB(パッセンジャーボーディングブリッジ)はなく、駐機場はターミナルと離れた場所にあるのでオープンエアのトラムで移動する。
ターミナルと駐機場の間には緑が広がる。ハスの葉でいっぱいの池の中央にはなにやら寺院のレプリカと思わしきオブジェも建っており、到着早々、ローカルな香りに包まれた異国情緒あふれる空間へ誘い込まれる。ターミナルも平屋建てでコンパクトだ。スコータイ空港には税関、入出国審査、検疫のいわゆるCIQ施設はないので、入出国の手続きはすべてバンコクで済ませることになる。
出発時は駐機場へ向かうトラムの出発をターミナルで待機することになる。ショッピングエリアなどはなく、セキュリティチェックを終えるとすぐに待合所となるが、ドリンクや軽いお菓子などが並んでいて、まるでラウンジで過ごすような気分。無料のWi-Fiインターネットサービスも用意されており、スタッフにボーディングパスを渡すと専用の端末に読み取らせたうえでコードを発行してくれる。
スコータイ空港はバンコク・エアウェイズの自社空港
このスコータイ空港とバンコク・エアウェイズの関係で面白いのは、スコータイ空港そのものがバンコク・エアウェイズの所有であることだ。通常、空港のような重要なインフラは国や自治体などが設置を行なうことが多い。民営化されて、いわゆる空港会社による運営になることはあるものの、航空会社が空港自体を所有していることは珍しいといえる。
バンコク・エアウェイズにとってスコータイ空港は2番目の自社空港となる。1989年に最初の自社空港であるサムイ空港、1996年にスコータイ空港を整備し、開業した。2003年には3番目となるトラート空港をオープンしている。最初の空港となったサムイ空港はタイ国際航空によるバンコク線をはじめ、中国南方航空による広州線といった国際線も乗り入れているが、スコータイ、トラートの2空港は現在バンコク・エアウェイズのみが就航している。
そのスコータイ空港は先述のとおり、ターミナルも小さく、滑走路も1本の、いかにも地方空港といったコンパクトなもの。だが、こうした施設は空港の敷地全体の1/3程度でしかなく、実は広大な敷地を有している。
敷地内のほかのエリアはなにに使われているかというと、有機栽培の農場に使われているという。この話を聞いたときは、驚くというより、キョトンとしてしまった。現在のタイの国王であるラーマ9世が提唱している、欲を出しすぎず適度に満たされた生活を送り、持続的に経済を成長させようという「足るを知る」に沿った生産体制を整えているという。
この有機栽培は20~30年前のタイの農法そのままで、約90名が従事している。人間のほかにアヒルが1000羽ほどおり、有機栽培には欠かせない存在だけに「彼らも従業員のようなもの」だとか。また、水牛も300頭ほどいるそうだが、こちらは農作業に従事しているわけではなく、生かすことそのものを目的に飼っているという。とはいえ、刈り取った草や野菜の残り物などを食べてくれる存在として、エコシステムに組み入れられている。
栽培しているものは主に米。タイには2万を超える米の品種があるといい、ここでも複数の品種を栽培。ほかに野菜やハーブを栽培するエリアや、花を栽培するハウスもある。
さらに面白いのは、動物園があること。特にこれは!という動物に巡り会えるわけではなさそうだが、スコータイの近辺に動物園はなく、ちょっと変わった見どころの1つといえそうだ。
レストランやホテルも併設
さらに空港の敷地内にはレストランやホテルも設置されている。レストランはさわやかな風が吹き抜ける居心地のよいお店。もちろん同地で有機栽培された作物を使った料理が中心だが、なかでも米粉の麺を用いた「スコータイヌードル」は味わっておきたい一品だ。
空港ホテルの「Sukhothai Heritage Resort(スコータイ・ヘリテージ・リゾート)」は、入った瞬間に大きな池が目に飛び込む開かれたレイアウト。敷地は東西に延びており、ここを風が吹き抜けることから涼しく、さらに直射日光を避ける作りとすることで、エアコンの設置も最小限に抑えた省エネなホテルだという。
客室は68室で、うちスーペリアが52部屋。残りはデラックスが9部屋、ジャグジースイートが6部屋、ロイヤルスイートが1部屋。全体に清潔感のある施設で、全部屋にバルコニーもあってのんびりできる。
マッサージルーム
いわゆる空港ホテルはトランジットなどの短期滞在用に使うものというイメージもあると思うが、設備が整っているこのホテルは、スコータイ地域の観光の拠点としても便利そうだ。観光スポットについては次回以降で紹介していくが、スコータイの世界遺産は「スコータイの歴史上の町と関連の歴史上の町」として3つの街と歴史公園が一つの世界遺産として登録されている。北からシーサッチャナライ、スコータイ、カンペーンペットという3つの街だ。スコータイ空港はシーサッチャナライとスコータイのちょうど中間に位置しており、この両地区を巡る拠点として絶妙のロケーション。もちろん日中から夜までフルに活動するなら市街地のホテルの方が向いているが、少し離れたところを拠点にして、のんびりと歴史公園を巡るようなスタイルが好きな人なら選択肢に入ってくるだろう。
さて、第1回目はバンコク~スコータイを結ぶバンコク・エアウェイズと、同社所有のスコータイ空港の話に終始してしまったが、次回からは空港の外に出て、歴史公園に代表されるスコータイやシーサッチャナライの観光スポットなどを紹介していく予定だ。