旅レポ
サミット目前の伊勢市で「桜めぐり プレスツアー」に参加(その2)
「五十鈴川桜まつり」と「おかげ横丁」の散策や人気店を訪問
(2016/4/8 06:00)
伊勢市情報発信センターの「桜めぐり プレスツアー」の続編をお届けする。概要は前編を参照していただければと思うが、続編では桜が満開となった「五十鈴川桜まつり」と、「お伊勢さんのおかげ」という感謝の気持ちをもって開業した伊勢市内の観光スポット「おかげ横丁」の散策や人気店を探索したのでレポートする。
桜まつりがスタート、五十鈴川沿いを散策
前回、伊勢神宮の内宮の参拝までをレポートしたが、訪問した4月3日は、ちょうど「おはらいまち」の横を流れる五十鈴川沿いで「おかげ横丁 五十鈴川桜まつり」が始まったところであり、ツアーのコースに含められていた。内宮からそのまま徒歩で五十鈴川沿いを歩いていくと、満開になったばかりの桜並木に出会えたが、規模は決して大きくはない。
しかし、地酒や伊勢うどん、団子などの屋台が軒を連ね、夕刻からぼんぼりが点灯し夜桜も楽しめるとのこと。聞けば、春になると山の神が桜の木に宿り花を咲かせたと昔の人は考えたらしく、「花見という宴を行なうことで神様を喜ばせ、豊作をお祈りした習いを受け継いだ桜まつり」ということらしいので、この時期に伊勢神宮を訪れるのであれば、ぜひ足を運んでみてほしい。
目前に桜を望む席で食事ができる「野あそび棚」
五十鈴川沿いを内宮B4駐車場(浦田市営駐車場)まで歩いてくると、「野あそび棚」という一軒の食事処が気になった。2階にテラス席が設けられたクラシカルな外観の建物であり、数多く設けられた窓の外には桜が咲いているのだから室内を覗いてみたい。
店内にお邪魔するとその景観は圧巻。2階席では食事をするテーブルの横に花が咲いているし、テラス席では五十鈴川の流れと咲き誇る桜を眺めながら食事をとることが可能なので、天気のよい日であれば、かなり贅沢な気分に浸れるだろう。内宮や、おはらいまち訪問客が利用する内宮B4駐車場に隣設されているので、観光前や観光帰りの食事処としては最適。
また、土日や祝日は、おかげ横丁内の食事処は混み合うことが多いとのことだが、こちらは思ったほど混んでいないこともオススメである。月替わりメニューなども用意されているので、訪問前にはおかげ横丁のWebサイトを確認してみてほしい。
伊勢参りの土産物として古くから親しまれた「萬金丹」の「伊勢くすり本舗」
内宮B4駐車場から、伊勢市の人気観光スポット「おかげ横丁」に向かう途中にある宇治浦田東交差点の側にある「伊勢くすり本舗」は、1570年創業の加藤延寿軒と号した製薬所を祖とし、文化・文政(江戸後期)には二条関白家の製薬所として、古くから薬草を丸めて作った丸薬を製造してきた老舗。
店内には、600年近い歴史のある萬金丹のディスプレイ、薬の古い看板、書物を展示している。主要商品は、和漢便秘薬「おはらい丸」、和漢薬配合の安心の伝統薬「萬金丹」、3種類の和漢植物配合の黒糖飴「萬金飴」、体を芯から温め、冷え症や肩こりを改善する天然生薬100%の「神楽湯」など。
高級食材の的矢牡蠣と松阪牛が、食べ歩きスナック価格で食せる「武雷庵」
宇治浦田東交差点から、おかげ横丁に向かって歩いていると美味しそうな匂いがした。その匂いの元は、道路右側にある「武雷庵」(ブライアン)の店頭で焼かれている松阪牛だった。
店頭の表記を見ると、三重県志摩市の的矢湾で生産される的矢牡蠣が、なんと300円。オーナーの仲武康博氏に聞けば「ブランド品でもある的矢牡蠣が、東京の半分以下の値段で食べられる。たぶんこのエリアでも、この値段で食べられるのはウチだけじゃないかな。もちろん安いだけじゃなくて本当に美味い」とのこと。
早速、的矢牡蠣を生でいただいたが、口いっぱいに広がる潮の香りと奥深い旨味は、まさに「海のミルク」である。また、提供されている松阪牛も、老舗松阪肉専門店の「朝日屋」から仕入れているとのことなので、こちらの味も絶品だろう。
江戸から明治期の建築物が移築・再現された「おかげ横丁」を散策
伊勢神宮の内宮門前町「おはらい町」のなかほどに位置する「おかげ横丁」。第61回神宮式年遷宮の年、1993年7月に開業した人気スポットである。その名前は、伊勢神宮の参拝時に「神様に感謝の気持ちで詣でる」ことを指す「おかげさまで」という感謝の気持ちから名付けられ、約4000坪の敷地内には、江戸から明治期にかけての伊勢路の代表的な建築物を移築・再現し、この地方の魅力が凝縮されている。
三重の老舗の味、名産品、歴史、風習、人情まで、一度に体感できることから、「伊勢神宮参拝のついでに寄る」ではなく「おかげ横丁に行ったついでに伊勢神宮を参拝する」という人も多くなったほどの人気スポット。三重県内や中京地区はもちろん、東海地方からの来訪者も年々増えているそうだ。
入場料を支払う必要のあるテーマパークではないが、江戸から明治期の街並みを再現するために電線の地中埋設はもちろん、伊勢人が“神様のお住まいと同じ平入りでは恐れ多い”と家屋の妻の部分に玄関を設けた「妻入り」と、雨風の強い伊勢ならではの外壁の仕上げ「きざみ囲い」などを再現した建物が、おかげ横丁が位置する「おはらい町」に立ち並び、建築材料は栂(とが)材を使用している。
懐かしささえ感じる街並みを歩いていると、威勢のよい和太鼓の音が聞こえてきたので、その方角に向かうと「神恩太鼓」のパフォーマンスの最中だった。神恩太鼓とは、神に対し自分やまわりが、いまあることを感謝する「神恩感謝」の気持ちで太鼓を叩くものとのことで、激しいリズムであっても、演奏後の奏者たちの表情も晴れ晴れとしたものだった。
おかげ横丁には約50軒の店舗が入っており、そのすべてを紹介するのは難しいが、散策していて伊勢路の伝統工芸品を販売する「神路屋」で面白いハンコを見つけた。「干支はんこ」というものであるが、自分の干支に合わせた一文字のみのハンコで、無病息災・厄除祈念のための縁起のよいものとのこと。価格的にも手ごろなので、おかげ横丁の土産物によいかもしれない。
皇風煎茶禮式で、水沢茶をいただく煎茶道体験
おかげ横丁の散策を終えて向かった先は、皇風煎茶禮式(こうふうせんちゃれいしき)の煎茶道体験。皇風煎茶禮式は、礼法を重んじる端正な立ち居振る舞いの作法が特徴。伊勢市宇治浦田で煎茶道体験を行なっている杉山さとし氏も「立ち座りだけで3年ほど修業した」と語るほどに厳格な世界でもある。
杉山氏は「今日お飲みいただくのは、玉露と同じような“かぶせ茶”という育て方をした水沢茶です。烏龍茶などは熱いお湯で出しますが、これは60℃で淹れています」とのこと。かぶせ茶とは、新芽が開き始めたころからヨシズやワラで日光を数日間遮って育てる被覆栽培のことで、渋味が少なく芳醇な旨みを持ったお茶にできるそうだ。
実際にいただいたところ、まろやかなお茶の風味が広がり、それだけでも幸せな気分になれた。また、添えられていた和菓子をいただき、2杯目のお茶をいただいたところ、旨みの感じ方が変わっていた。そんな味わい方もお茶の楽しみ方なのだそうだ。
杉山氏は「玉露は40℃のお湯で淹れて、本当に小さな茶碗で舌の上に2~3滴をいただくものですが、本当に美味しいです」とも語っていた。杉山氏の煎茶道体験は一般の人でも参加が可能。準備なども含め、事前予約が必要となるとのことだ。
割烹寿司店「桂」にわがままなリクエスト
一日中歩きまわり、夕食の時間となったので、伊勢市駅から近い食事処の「桂」に向かった。桂は、四日市市西伊倉町に本店(近鉄中川原駅から徒歩9分)を置く高級割烹料理店であるが、外宮店はランチタイムには1000円台のセットも用意し、観光客はもちろん近隣住民も気軽に立ち寄れる食事処となっている。
「伊勢に来た方にぜひ食べてほしいものをおまかせで」とわがままな注文をしたところ、「あわびのクリームコロッケのチーズ焼き」(1000円・税別)、「てこね寿司」(1500円・税別)、「伊勢うどん」(600円・税別、昼間は500円)の3点をチョイスしてもらった。この価格で高級割烹料理店の味がいただけるのは驚きでもある。
料理に関するこだわりについて聞くと、あわびのコロッケについては「時間をかけて牛乳を煮詰めて作った濃厚なクリーム。ともかく一度食べてみてほしいです」。てこね寿司は本来、カツオやマグロの切り身をヅケにして漁師が手で混ぜた素朴な郷土料理であるが、桂では「一般的に赤身の魚を使うことが多いのですが、ここでは赤身と白身を使って紅白にしてます。特製のたれもぜひ味わってください」とのこと。
シメには「伊勢うどん」。鰹節や昆布などの出汁が加えられた濃厚なつゆを太い緬に絡めて食べるのが伊勢うどんであるが、やはり桂のつゆは独特で香りが強く、ほぼ満腹状態であるにも関わらず完食してしまった。昼間なら500円(税別)で桂の伊勢うどんがいただけるので、伊勢市駅に降り立った際にはぜひとも食してみていただきたい。