旅レポ
「世界で最も住みやすい街」、 メルボルン市街散策レポート
4K動画で見るアルバート・パーク・サーキット1周も
2017年9月11日 16:42
JAL(日本航空)が9月1日に開設した成田~オーストラリア・メルボルン線、その初便で初めてメルボルンの街を訪れた筆者。聞けばメルボルンは、英誌「The Economist」を発行するEconomist Groupの調査部門EIU(Economist Intelligence Unit)によって、世界140都市を対象にした「世界で最も住みやすい街」のランキングで、7年連続1位に選ばれているのだとか。
本当に世界一住みやすい街なのか、今回許されたわずか2日間の滞在でその本質を知ることはかなわないと思う。けれど、時折冷たい雨が降り、風が吹きつける、冬から春に向かうこの季節、そんななかでも実際に街を歩き回って少なくとも分かったのは、どれだけ散歩しても飽きない街、ということだった。
メルボルン空港から市街まではシャトルバスで
今回新たにJAL便が就航したメルボルン空港、正確にはメルボルン・タラマリン空港は、市街中心部から見ると北に20kmほど離れたところにある。当然ながら歩いて行くには遠すぎるので公共交通機関を使わなければならないのだが、鉄道は残念ながら通っていない。頼りになるのはシャトルバスだ。
「SkyBus」の大きな文字が目立つ赤いバスが目印。チケット売り場は空港内と空港外のどちらにもある。行き先は中心部の「サザン・クロス駅」で、なんと24時間365日、日中はおよそ10分間隔、深夜は30分間隔で運行している。料金は片道チケットが19オーストラリアドル(約1660円、1オーストラリアドル=約87円換算)往復チケットが36オーストラリアドル(約3140円)だ。有効期限は3カ月と長いから、帰国時もメルボルン空港を利用するなら往復で買っておこう。
さっそくバスに乗って街中へ、といきたいところだが、その前に寄りたいのが国際線到着ロビー階にある通信会社「Optus」の携帯電話ショップ。ここではSIMカードが販売されており、SIMフリースマートフォンを持っているのであれば滞在期間中のモバイル通信を格安で利用できる。
例えば、1日512MBのデータ通信と通話が可能な5日間有効のSIMが10オーストラリアドル(約870円)で手に入る。そのほか、計14GBのデータ通信が可能な30日間有効のSIM(30オーストラリアドル、約2610円)など、滞在期間や用途に合わせて選べる多数のプランがあるので、ぜひとも利用したいところ。
観光の際には、やはり地図アプリをいつでも使えたほうが何かと都合がよい。バスチケットを購入したときも、受付のお姉さんに「あなた、SIMはもう買ったの?」なんて親切に確認されるくらいなので、観光にモバイル通信は必須、と考えておいてもよいのかもしれない。
歩いてよし、乗ってよし、走ってよしのメルボルン市街
メルボルン空港からバスに乗って30分弱、メルボルンの代表的な鉄道駅であるサザン・クロス駅に到着する。市街地のほぼ中心部といってもよい場所にあり、ここから徒歩やメルボルン名物のトラム(路面電車)で観光するのにも都合のよいスタート地点だ。
メルボルンの市街地には、かつて英国と深い関係にあった名残を今も目にすることができ、ヨーロッパ風の建築物がそこかしこに見られる。また、ショッピングストリートやカフェ、レストラン、そのほか多くの観光スポットがぎゅっと凝縮されたかのように集まっているので、それらを徒歩でも見て回ることができる。街の様子をとりあえず肌で感じ取りたいなら、歩いてぶらぶらするのがよいだろう。
ある程度最初から行きたい目的地が決まっているなら、最もコストパフォーマンスの高い移動手段であるトラムでさっと移動するのもお勧め。碁盤の目状の市街地をほとんどくまなくカバーしており、しかも頻繁に行き交っているので目的地まであっさりたどりつける。走行速度もそれほど早くないため、車窓から街並みをのんびり眺めるのにもぴったりだ。
なお、市街地中心エリアの特定の範囲は「フリートラムゾーン」として設定され、無料で乗車できる。それ以外の区間は料金が発生するので、チケットとなるICカード「myki」カードを入手しなければならない。ただ、最初のカードの発行に必要なのはわずか6オーストラリアドル(約530円)だ。
mykiカードの基本的な利用方法は、トラムに乗車してから(または無料区間外に出るときに)車内にあるカードリーダーにmykiカードをかざし、降りるときにもう一度かざす、という流れ。けれど、フリートラムゾーン内の移動であれば無料なのでもちろんかざす必要はない。広範囲まで移動する場合や、勘違いして無料区間外まで乗り過ごしてしまう可能性を考えて、mykiカードがあると安心。あるいは記念として購入するのもよいだろう。
ポイントtoポイントの自由な移動にシェアサイクル
もう1つ、移動手段として個人的にお勧めしたいのが、シェアサイクル。東京都内などでも広がっているサイクルシェアリングの仕組みが、ここメルボルンでも利用できるのだ。サザン・クロス駅前をはじめ街中の各所にサイクルポートが設置されており、クレジットカードがあれば、誰でもその場で借りて乗り出すことが可能。青色のポートと自転車を探そう。
とはいえ、有効期限内の30分以内であれば何度でも追加料金なしに借りることができるので、トラムではアクセスしにくいスポットを目指すときや、街中に無数にある広々とした公園を気持ちよく走りたい(自転車進入禁止の公園もあるので注意が必要だが)と思ったときに、安価な移動の足として便利に使えるだろう。
気を付けておきたいのは、自転車の乗車時はヘルメットの装着が義務づけられていること。ノーヘル走行は厳禁だ。ヘルメットはサイクルポートに停車している自転車にくくり付けられているものを使ってOK。でも、人がかぶったものや雨に濡れているものを身に付けたくないという人もいるはず。そういう場合は現地で購入するか、日本からマイヘルメットを持参しよう。
自転車の重量がそれなりにあるのに電動アシスト車ではなく、それでいて街中は微妙な勾配が続いたりするので、なかなかよい運動になる。筆者が滞在したときは肌寒い日ばかりだったが、それでもしばらく自転車をこいでいると汗だくになるくらいだ。
で、一生懸命自転車を走らせていると、意外とあっという間に30分の期限が近づいてしまう。目的地に行くあいだにちょっと寄り道して写真をパシャパシャ撮っていたりすると、いつの間にか時間オーバーして追加料金が請求されることに……。筆者も何度かオーバーしてしまったのはここだけのヒミツだ。シェアサイクルはサイクルポートからサイクルポートまでの純粋な移動手段として考えるのが賢いかもしれない。
ところで、市街南側をスタートしたあと、汗をかきかき市街北側のメルボルン博物館まで30分を少しオーバーしながらたどり着いたのだが、そこまでして自転車を走らせたのは理由がある。実はメルボルン取材で個人的に一番行きたいと思っていたのが、メルボルン博物館に併設されているIMAXシアターなのだ。
ここで筆者は、2017年9月時点で世界最大となる32×23mのスクリーンで「ダンケルク」を鑑賞した(2016年まではシドニーが最大だったが閉館した)。上下左右の視界ほとんど全てを覆い尽くす巨大スクリーンと、VRも目じゃない臨場感に脱帽。ほかにはないエンタテイメント施設を楽しめるのもメルボルンの魅力だ。
おしゃれなカフェとカフェ通り。多彩な“食”に疲れが吹き飛ぶ
メルボルンは世界有数のカフェの街とも言われている。街のいたるところにカフェショップがあり、いたるところにテラス席もあって、そこで人々がコーヒーを味わっていたり、食事していたり、談笑していたり、パソコンで(おそらく)仕事している。
メルボルンで有名なコーヒーチェーンの1つは、まさにメルボルン発祥の「Hudsons Coffee」だが、それ以外にも初めて聞く名前のチェーンらしきお店や、小さなカフェは数え切れないほど。日本で人気のスターバックスも一応目にするが、メルボルンではそのほかのカフェの存在感が圧倒的に大きい。
メルボルンのカフェでぜひ注文したいのが、透明なグラスに注がれた、美しいラテアートが施されているカフェラテ。さすがに何店舗も巡って比較したわけではないが、お腹がすいて慌てて入ったイタリアンレストランですら、一見して丁寧に淹れたと分かる整った紋様と、クリーミーな味わいのカフェラテが普通に出てきた。周囲の雰囲気のせいか「メルボルンに来てよかった」と思わせるのに十分なクオリティだ。
食という意味では、メルボルンはその種類が多彩なことでも知られている。先ほどのイタリア料理に加えて、中華、韓国、タイ、シンガポールなどのアジア料理から、イギリス、フランス、トルコ、スペインなどの欧州料理、そして当然ながら日本料理(主に寿司)も味わえる。世界中の食が集う一大フードマーケットのようになっているわけだ。
メルボルンのあるビクトリア州やその周辺は、とりわけ農業が盛んで、海が近く海産物が豊富に獲れることも料理の多彩さに関係しているのかもしれない。メルボルン郊外の丘陵地帯「ヤラバレー」にはいくつものワイナリーが存在し、ワイン好きにはたまらない観光スポットになっているようだし、美味しいものに目がない人にとってはメルボルンは天国のような場所ではないだろうか。
ちなみに、先述したイタリアンでカフェラテとともに注文したシーフードパエリアは、空腹だったこともあるだろうけれど、今までに食べたパエリアで一番美味だったことを付け加えておきたい。
アルバート・パークと、誰でも走れるF1サーキット
メルボルンは世界的にスポーツイベントの盛んな都市でもある。テニスの全豪オープンしかり、F1グランプリしかり。国民的スポーツであるオーストラリアンフットボールは、試合中継がレストランのテレビで流れているのを頻繁に見かけるほどだ。
というわけで、モータースポーツ好きなら市内観光のついでに足を伸ばしたい場所が、毎年のようにF1の開幕戦オーストラリアグランプリの舞台として選ばれている「アルバート・パーク・サーキット」。来年2018年シーズンも3月25日の開幕戦として開催されることが決まっている。
アルバート・パーク内にあるこのサーキットは、公道をほぼ100%そのまま利用した全長5.303kmのコース。レース期間中はコースサイドに多数の観客席やバリケードが設置されている場所だが、普段は明確な出入り口はなく、誰でも自由に散歩できる。見通しがよいので、遠くのメルボルン市街のビル群を臨むことができるほどだ。
鳥が羽を休めるアルバート・パーク湖を中心に、その周囲には芝生の広場やキッズスペース、アスレチック、プール、フットボールグラウンド、陸上競技スタジアムなどが設けられ、サイクリングする人やジョギングする人も多い。レースカーが300km/hで駆け抜けているとはとても思えないほどにのどかなところ。ここが確かにサーキットであると再認識するのは、ホームストレート脇にあるパドックや、路面のあちこちに残る縁石の跡を見たときくらいだろう。
というわけで、このアルバート・パーク・サーキットをレンタルした自転車で1周(思ったより時間がかかりバッテリー切れでやり直したため、実際には2周+α)した様子を4K解像度の早送り動画にしてみた。
カフェめぐりしてぼーっとして、ゆっくり滞在していたい街
メルボルン空港から市街への行き方に始まり、街中での移動手段や食文化、そのほか見どころをレポートしてきたが、滞在していた2日間、ほとんどずっと歩き通し、自転車で走り通しだったにも関わらず、街の風景にはずっと飽きることがなかった。
雰囲気のよいレストランやカフェ、にぎやかな市場、歴史あるヨーロッパ風の建造物、川を滑るように走るカヤック、広々とした公園など、次から次へと行きたい場所、見たい場所が現われてしまい、疲れているはずなのに不思議と足はずっと動き続けていた。
それだけメルボルンは、歩き回っているだけで楽しめるわくわくするようなスポットが数えきれないくらいある。そして、街を離れた郊外には、日帰り可能な距離にある観光スポットがいくつも見つかる。3~4日程度の滞在期間があれば、市街を離れてグレートオーシャンロードを疾走したり、ヤラバレーのワインセラーを訪問したりと、より濃密な体験ができるに違いない。
「世界で最も住みやすい街」かどうかは、たった2日間で判断できるはずがないわけだけれど、少なくとも2日間よりもっと長く滞在したい、と思わせる街であることは確か。できればあらゆるカフェに入ってラテを頼んでみたいし、1日中公園でぼーっとする時間もほしい。毎日出かけても、毎日新しいものが見つかる、そんな街だと感じた。