旅レポ
カジノだけではないラスベガス。コンベンション施設や観光から大人の統合リゾートについて考えてみた(2)
グランド・キャニオン遊覧飛行とネオン看板の博物館を訪ねる
2017年9月12日 11:26
ラスベガス訪問の2回目は、グランド・キャニオンの空からの眺めと古きよきラスベガスのネオン看板を集めたミュージアムを紹介しよう。ラスベガスでは、巨大ホテルが立ち並ぶ大通り「ラスベガス・ストリップ」の賑やかさやショーなどを楽しむのはもちろんだが、こればかりでは飽きてしまう。ちょっと足を伸ばせば、雄大な自然を楽しむこともできる。
雄大な自然を空から堪能「グランド・キャニオン国立公園」
グランド・キャニオン国立公園は、コロラド川の浸食作用でできた雄大なスケールの大峡谷を見ることができる。テレビや写真で一度は目にしていると思うが、実際に間近で見ると確実に大自然の驚異に圧倒されるので、ぜひ一度訪れてみることをお勧めする。コロラド川に沿って約440km、直線距離にしても約300kmはある想像を絶する自然の驚異だ。国立公園には1908年に指定され、1979年に世界遺産に登録されている。
渓谷は地上に点在する展望ポイントからも楽しむことができるが、今回は小型飛行機に乗って上空から遊覧するツアーだ。ラスベガス周辺からは、このグランド・キャニオンのツアーやラスベガス上空など、小型飛行機やヘリコプターに乗って楽しむツアーがたくさん出ている。
今回のツアーは「Grand Canyon Airlines」のもので、ボールダー・シティ空港というラスベガスから少し離れた空港から遊覧する。この空港と各ホテルとの送迎も含まれている。同じ空港からは、「Papillon Grand Canyon Helicopters」というヘリツアーも出ていた。
これらラスベガス周辺のツアーは、「ラスベガスグランドキャニオンツアー」から予約ができる。
地上から見たい場合には、渓谷南北の縁となるサウスリム、ノースリムのビューポイントへレンタカーを借りて向かうとよい。渓谷は徒歩で降りることも可能だが、その場合にはそれなりの装備が必要。砂漠なので飲料水は多めに携帯しておきたい。もちろんオプショナルツアーに参加するのもよいだろう。
巨大サインを集めた博物館「ネオン・ミュージアム」
ラスベガスといえば、きらびやかな夜のライティング。現在ではほとんどLEDやスクリーンを使っているが、ちょっと前まで光る看板といえばネオン管や電球を使っていた。この古きよき看板をアートとして収集し博物館として展示しているのが、「ネオン・ミュージアム(The Neon Museum)」だ。
屋外に実物がそのままゴロゴロと展示されていて、その間を縫って解説員が細かく解説(英語)してくれ、ツアー参加でのみ見学できる。ツアーは時刻が決まっているので、Webサイトから予約購入しておくのがおすすめだ。今回の見学は昼間だったが、週末は夕方~夜にかけてのツアーもあり、こちらだとネオンが点灯した状態を見ることができる。SNSアップなど個人利用での写真撮影はOKだが、商用利用での撮影は不可。今回は特別に撮影許可を得ている。解説の動画と音声の記録も禁止されているなど、なかなか厳しい。アートとして、キッチリ扱っているということでもある。
場所は、古いカジノホテルが並ぶダウンタウンに近いので、ダウンタウンと併せて回ってみるとよいだろう。
The Neon Museum
ネオン・ミュージアムはダウンタウンが近いので少しだけ紹介しておこう。ダウンタウンのメインとなるフリーモント・ストリートは、歩行者天国で上は電飾のアーケードとなっている。アーケード内を滑るジップラインもあり、夜はライブなども楽しめるようになっていて、これらダウンタウンのエンタメをまとめて「フリーモント・ストリート・エクスペリエンス」と呼んでいる。
こちらはストリップに比べ小ぶりで庶民的なホテルが並び、通りに面して入ったロビーにいきなりカジノがあるのが特徴だ。ちょっとオールドスタイルの雰囲気を散歩しながらノンビリと楽しめる。もちろん24時間営業している。
ダウンタウンとストリップは、離れていて徒歩での移動は無理なので、タクシーやバスを使って移動しよう。バスは「Strip & Downtown Express(SDX)」という路線が便利。24時間有効パスが8ドル(約880円、1ドル=110円換算)で利用できる。15分間隔で運行しているので、バス停の券売機で購入してから乗り込む。この路線はラスベガス・コンベンション・センターやプレミアムアウトレットなどにも停車するので使い勝手がよい。パスを購入できるスマホ用アプリ(rideRTC Mobile App)も用意されている。
ストリップを一望できる世界最大の観覧車「ハイ・ローラー」
もちろん、ラスベガスでは定番の常設のショーも数多く公演されているので、どれを体験しようか迷うほどだ。残念ながら内容はお見せできないが、今回は「MGMグランド」内で「シルク・ドゥ・ソレイユ」が演じているサーカスショーの「カー(KA)」を観覧した。天井からぶら下がるように頭上を舞う演出や、舞台を立体的に動かしたり、フィナーレでは大がかりな花火を使ったりなど圧倒される。ぜひ体験してみてほしい。英語が分からなくても楽しめる作りになっている。ラスベガスでは、「KA」以外のシルク・ドゥ・ソレイユも上演されている。
ほかにも、ストリップを高い位置から一望したいなら、観覧車「ハイ・ローラー(HIGH ROLLER)」に乗るのが手軽でお勧め。「ザ・リンク・ホテル&カジノ(The LINQ Hotel&Casino)」にある。2014年の開業で、約168m(550フィート)の高さは2017年時点では世界一だ。ちなみに日本で一番大きな観覧車は大阪のEXPOCITY内にある「REDHORSE OSAKA WHEEL」で、高さは123m。東京お台場のパレットタウンにある大観覧車は115mだ。
ハイ・ローラーは一般的な観覧車とちょっと異なり、球体のキャビン(ゴンドラ)が外輪より外側に張り出し、機械仕掛けで常に水平を保つ作りになっている。通常、観覧車のキャビンは天井付近を外輪の内側に吊るすものだが、こちらは外輪の上に乗る構造。風や乗客の動きの影響も受けにくく、揺れはほとんど感じられず安定して360度の絶景が楽しめる。
28基あるキャビンは40名収容可能と大きめで、貸し切ってパーティやバー、結婚式などのセッティングも可能。ヨガなどのスペシャルイベントも行なわれている。1周は30分。乗車前にアルコールを含むドリンクの販売もあり、ゆったり楽しめる。午後からは1周30分間バーテンダーのいるバーが楽しめる「ハッピー・ハーフ・アワー」というアップグレードチケットもあり、アルコール好きのグループならこちらもお勧め。
ちょっと変わった日本食とモダンアメリカンレストランを紹介
今回も後半は食事をとったレストランを紹介する。「ズーマ(ZUMA)」は、日本食をモダンにアレンジして食べさせてくれるレストラン。純粋な和食ではなく、和のテイストを感じるモダンなメニューという感じ。日本人以外の若い人たちでたいへん賑わっていた。日本語が達者な店員もいるので安心だ。「コスモポリタン・オブ・ラスベガス(The Cosmopolitan of Las Vegas)」内の3階にある。
ZUMA
「オーレオール(Aureole Las Vegas)」は、熟成肉や魚介類を使って、フレンチと融合させた新しいタイプのアメリカ料理を提供するレストラン。ワインのストックが豊富で、店内に入るとまず巨大なワインストッカーのタワーを目にすることになる。メニューにも料理に合うワインが提案されている。ワイン好きなら、ぜひ訪れてみてほしい。マンダレイ・ベイ リゾート & カジノのカジノレベルにある。ニューヨークにも出店している。
Aureole Las Vegas
ほかにも、「ウィン・ラスベガス」内にあるシーフードレストラン「レイクサイド」もお勧めだ。美しい人工湖のほとりで極上ロブスターを食べられる。この湖上では、30分間隔でショーをやっていて、これもなかなか楽しめる。5歳以下の子供は入れないので注意。
食後に楽しむバーでのお勧めは、「マンダレイ・ベイ」ホテルの高層階に位置する「デラーノ・ラスベガス」内にあるバー「スカイフォール・ラウンジ」。ストリップのきらめく夜景の全貌を、南方面から見渡すことができる。ガラスなどの囲みのない屋外パティオに出ることも可能で、このVIPテーブルを予約するのがベスト。また、「ザ・コスモポリタン・オブ・ラスベガス」内にあるバー「ザ・シャンデリア」では、大きな吹き抜け内に無数のクリスタルがちりばめられたシャンデリアで囲まれた幻想的な空間でお酒が楽しめる。
さて、ラスベガスの断片的な情報だったが、いかがだったろうか。カジノだけではないスケールの大きな楽しみがあることが伝わっただろうか。
統合型リゾートをMICE施設と観光スポットから考える
前回のレポートでも書いたが、IR(Integrated Resort:統合型リゾート)を成功させるにはMICE施設との密接な連携は不可欠。
紹介した以外の施設でも、例えば「キープ・メモリー・アライブ・イベントセンター」のような興味深い施設もある。こちらは建築家フランク・ゲーリーが手がけた崩れたビルのような目をひくデザインをしているのだが、その奇抜なデザインがウケて、製品の発表会や結婚式の場として活用されている。しかも、その運営利益を、隣接するアルツハイマー病など脳の病気を診療・研究する「クリーブランド・クリニック・ルー・ルーボ脳健康センター(Cleveland Clinic Lou Ruvo Center for Brain Health)」に還元しているという、社会的に意義のある存在にもなっている。ダウンタウンに近い少し離れた場所にある施設だが、MICEで人を集め、収益で社会貢献するという流れを作っているのは興味深い。
また、今回視察で宿泊したホテルの「マンダレイ・ベイ・リゾート&カジノ(Mandalay Bay Resort&Casino)」には、大きなコンベンション・センターが隣接していて、同じように「ウィン・ラスベガス(Wynn Las vegas)」内にも大小のボールルームがコンベンション向けに多数用意されている。これらのホテルも簡単に紹介しておこう。
「マンダレイ・ベイ」は、ストリップの南端あたりに位置する、アジアンテイストのホテル。中央には波の出る人工ビーチもあり、大型のライブハウスや水族館も備える。「フォーシーズンズ」と「デラーノ」のホテルが隣接している。ストリップ中心部から少し離れているが、モノレール駅が建物内で接続している。
「ウィン・ラスベガス」は、トレジャー・アイランドやベラージオを手がけたスティーブ・ウィンが2006年に完成させたリゾート。「アンコール」という新館が並んで建っていて、全体がゴールドの外観は遠くからも目立つ。こちらはストリップのやや北よりにある。ロビー階を中心に生花をふんだんに使った館内の飾り付けは、見応えやSNS映え抜群。室内デザインは、全体的に伝統な重厚さよりもモダンで清潔な上品さが感じられるデザイン。内部には一般客室とは一線を画したヴィラも用意されていて、ハイクラスの滞在にも対応している。
敷地内には18ホール備えたゴルフコースが隣接しているが、このコースを使った人工ビーチを含んだホテル拡張の計画が進められている。いずれこのゴルフコースはなくなってしまうと思われるので、なくなる前にゴルフ好きなら一度プレイしてみてほしい。グリーンの美しいパーフェクトなコースだ。
さらに、今回紹介したような雄大な自然が楽しめる観光なども重要なポイントとなる。もし日本でもIRを誘致し成功させたければ、単に施設を作るだけではなく、末永くリピートして来て楽しんでもらう工夫が必要だろう。カジノを誘致するのではなく、MICEや観光資源を含めて世界でいまだ経験したことがないIRを生み出していくことになるはずだ。
日本は観光資源はとても豊富なので、その部分は心配はいらないと思われる。それ以外をどのようなカタチにしていくのか、今から楽しみにしておきたい。ラスベガスも最初からこのような巨大施設が多かったわけではなく、需要に応じてスクラップ&ビルドし、拡張していった結果こうなった。こういった大きな投資ができるのも、カジノがあるからなのである。
日本からのラスベガスへの観光は、まったく減ることはなくコンスタントに人気があるとのことだ。それだけ独特の魅力があることは間違いがない。もし、未体験ならカジノに興味がなくても、せひ一度足を運んでみてほしい。