旅レポ
カジノだけではないラスベガス。コンベンション施設や観光から大人の統合リゾートについて考えてみた(1)
「ラスベガス・コンベンション・センター」と「T-Mobile・アリーナ」を訪ねる
2017年7月27日 00:00
アメリカのラスベガスを視察をする機会があった。ラスベガスといえばカジノの入る巨大ホテル。しかし、近年では各地にあるカジノ・ホテルでも、すでにゲーム以外の魅力をいかに高めるかに軸足を移している。
「MICE」はその一つ。MICEは「Meeting」「Incentive tour」「Convention/Conference」「Exhibition」の頭文字から取った言葉で、「ビジネスに関連した旅行」のこと。
これらは1度の訪問人数も多くなることから、どの地域でも誘致に力を入れている。特にラスベガスには、大規模なコンベンション向けの施設があり、その訪問客を受け入れられる宿泊施設がある。当然、ゲームやショーなどコンベンションの合間に気軽に楽しめる娯楽も充実している。さらに施設が集まるエリアとマッカラン国際空港が近く、アクセスがよいなど、MICEとしての好条件が揃う、世界有数のMICE都市ともいえる。そのため世界規模の展覧会やイベントが常時開催されている。
ラスベガス観光局が実施した今回のツアーでは、それらMICE関連の施設を見学することがメイン。本稿では「ラスベガス・コンベンション・センター」と「T-Mobile・アリーナ」を中心に紹介する。
ラスベガスは、アメリカ西海岸から内陸に入ったネバダ州の砂漠にある。巨大ホテルなどの施設が、「ラスベガス・ストリップ」と呼ばれるラスベガス大通りの両サイドのエリアにギッシリとまとまっている。
この近辺は常時散策している人も多く、空港からホテルに送迎してもらえば、あとは徒歩とモノレールでも十分観光が楽しめる。また「Uber」も機能していて、各ホテルに乗り場がある。英語があまり得意でなくても、行き先をアプリで指定できてしまうので便利。ストリップの主要部分はおおよそ6~7kmの範囲にあるので、頑張れば歩けないこともない。
ただし、ラスベガス発祥といわれるダウンタウンは、古きよきアメリカを感じるカジノが並んでいるのだが、ここはストリップから離れているので、クルマで移動する必要がある。
ちなみにGoogle Mapsなどでストリップ周辺を見たり、現地の天候、時間などを表示したりすると、地名に「パラダイス」と表示される。これはアメリカの国勢調査指定地域(CDP)という統計用の地方区分名なので驚かないように。「地上の楽園に来たんだ」と、ロックファンならGuns N' Rosesの「Paradise City」の鼻歌でも歌いながらしばし感慨にふけってみてほしい。夜の電飾の洪水はまさにパラダイスにいるようだ。
拡張を続ける巨大施設「ラスベガス・コンベンション・センター」
「ラスベガス・コンベンション・センター(LVCC:Las Vegas Convention Center)」は、世界的にみても規模の大きなコンベンション施設。日本なら東京ビッグサイトや幕張メッセのような施設をさらに大きくしたようなイメージだ。
展示場部分の面積を比較すると、東京ビッグサイトの9万6540m2、幕張メッセの7万2000m2より広く、18万290m2ある。さらに2023年までに拡張と改良も予定されている。会議室は 20名から2000名の座席を確保できる部屋まで145室ある。バンケットスタイルでは、最大900名に対応。
国際的な家電見本市「International CES」や映像機器関連の展示会「NAB Show」の会場として、名前を知っている人も多いだろう。
お酒を飲みながら楽しめる新アリーナ「T-Mobile・アリーナ」
「T-Mobile・アリーナ」は2016年4月に完成した新しい多目的アリーナ施設。MGM Resorts Internationalが運営して、大物ミュージシャンの音楽ライブや、NBA(バスケットボール)、NHL(ホッケー)、ボクシングなどのスポーツといった大型イベントを手がけている。
アリーナの広さは6万387m2あり、下段のシートは可動で座席数はイベントにより変えられる。コンサートで端にステージを作ると1万2000~1万8000人、コンサートで中央にステージを作ると1万9500~2万人、ホッケーが1万7500人、バスケットボールが1万8000人、ボクシングが2万人の収容人数となる。
また、スイートルームやボックス席といったプレミアムシートが豊富に用意されていて、VIP用の特別なエントランスも設けられている。また、落ち着いた「Hyde Lounge」というバーラウンジや、左右に分かれてバドワイザーとジャックダニエルを気軽に楽しめるカウンターもあり、お酒を楽しみながらスポーツや音楽を楽しむというスタイルが確立されている。
IR(Integrated Resort:統合型リゾート)の街ラスベガスは大人の楽しみができる場所なのだ。ただし、アメリカでお酒の買う場合(もしくはバーに入る時点で)、身分証明書を毎回提示させられる。未成年の飲酒に関しては、日本よりも厳格だ。
このT-Mobile・アリーナ周囲の広場は「東芝プラザ」といい、向かいにはダンスする大きな女性像が象徴的なプロムナードとレストランなどを擁する「ザ・パーク」がある。これらの屋外スペースではイベントも行なわれ、後述する近くにオープンした「パークシアター」やホテル「モンテカルロ・リゾート&カジノ」と一体感を持たせている。モンテカルロ・リゾート&カジノは2018年完成予定で改修されていて、名前も「パーク・MGM」に生まれ変わり、より一体感がでる。上層階には「NoMad」というブティックホテルも入ることになっている。
観客との距離が近く迫力のスクリーンで楽しめる「パーク・シアター」
T-Mobile・アリーナからザ・パークを挟んで向かいで、モンテカルロ・リゾート&カジノ(2018年からはパーク・MGM)ホテルの隣には、「パーク・シアター」がある。こちらも2016年4月にオープンした新しい施設となっている。
ホテルとはカジノレベルで内部がつながっていて、ホテル代とショーのパック料金も設定されている。こちらでも有名ミュージシャンのショーが行なわれていて、ある程度の長期間、定期的に同じミュージシャンが出演している。取材時は、Cher、Ricky Mautin、Bruno Marsがフィーチャーされていた。
座席数は、5200席。幅が42.6mという世界一ワイドなステージで、もっとも遠い座席との距離でも44.2m以内に収めているという、ステージと客席の近さが特徴。73.1m幅のプロジェクションマッピングの技術を使ったモニターと合わせて、臨場感あふれる迫力のステージが楽しめる。
ラスベガスは各国の料理が楽しめる
本稿の最後はレストランも紹介しておこう。まずは「Morimoto Las Vegas」。一時日本で「料理の鉄人」という番組があったが、それの米国版「IRON CHEF」出演のシェフ森本正治氏が手がける和食創作料理の店。
ラスベガスだけあり見た目はやや派手だが、ベースはしっかりとした和食。本格的な和牛や寿司が食べられる。MGM・グランド内にある。
Morimoto Las Vegas
「Otto Pizzeria Las Vegas」は、本格的なイタリア料理店。「ザ ベネチアン ラスベガス」内にあり、ここにはベネチアの街を模した水路が作られたショッピングモールがある。その一角にあるオープンテラスの雰囲気を味わえるレストラン。店はニューヨークにもある。
ピザはもちろんだが、デザートが甘すぎずに美味しい。ワインの品揃えも豊富。
Otto Pizzeria Las Vegas
最後にMGMリゾーツ・インターナショナル(MGM Resorts International)の販売部最高責任者のMichael Dominguez氏にIRとMICEについて話を聞いた。
「日本にはアートや食、文化といった観光に必要な要素は揃っています。しかしながら、IRのような集合体はまだなく、MICEとコラボレーションできている部分もありません。立派なMICE施設はあるのですが、ホテルなどとうまく連携できていないのです。それぞれの要素は力強いのに、インテグレートされていない。これがないと持続的な観光需要は生み出せません。
ラスベガスはすでに成熟してきていて、収益の70%をカジノのゲーミング以外で生み出しています。マンダレイ・ベイは大きなMICE施設を持っているので、すでに50~70%がMICEの収入です。ほかのホテルは30%ほどになると思います。この点が、マカオなどほかのIRと異なっているところです。
これら大きなMICE施設も最初から大きかったのではなく、需要とともに大きくなっていきました。もし、日本にリゾーツ・インターナショナルが進出するとしたら、MICEにフォーカスしたIR施設を考えていくでしょう」と、IR内でのコンベンションセンターの重要性を語ってくれた。
日本でもIRを作る話題が出ているが、どうもカジノの是非に終始しがちに思える。カジノが併設されるからこそ、その収益をMICE施設のような大きな設備に投資することができ、そこに人が集まるようになる。
MGMリゾーツ・インターナショナルは、日本でIRを展開できるなら、多額の投資をする考えをすでに表明している。日本ならではの魅力あるIRを見てみたいと思うのだが、さて今後どうなるのか。実現するとしたら、世界トップクラスの施設ができるに違いない。目を離さず注目していきたい。
次回は、ラスベガスの楽しみをもう少しお届けしていこう。