旅レポ
マカオにオープンしたばかりの高級リゾート「ウイン・パレス」を隅々まで堪能してきた(その3)
本格的な日本料理の味わいに驚き
2017年3月4日 00:00
前回までに、ウィン・パレスの施設や、中華と洋食のレストランなどを紹介してきた。最後に紹介するのが、ウィン・パレスのレストランのなかでも、特に興味深い存在となっている、和食のレストランだ。
毎日新鮮な食材を築地から空輸
ウィン・パレスの日本食レストランが「泓(ミズミ)」だ。一般的に、海外の日本食レストランというと、どうしても日本で食べる和食に比べて味わいが劣るという印象があるかもしれない。実際筆者も、いくら贅を尽くしているウィン・パレスにある日本食レストランといっても、なかなか国内同様の味わいは難しいだろうと思っていた。
しかし、実際に提供される料理を口にした瞬間、その考えは完全に改められた。非常に新鮮な食材、ベースとなる出汁を中心とした深く繊細な味わい、日本の伝統やおもてなしをそのまま再現したサービスなど、どれを取ってもこれが海外の和食レストランとは思えないほどのクオリティなのだ。
それもそのはず、泓では、魚介類や肉、野菜、調味料などの食材は、築地や北海道など、日本各地から毎日新鮮かつ最高級のものを空輸して利用しているのだという。また、シェフも全部で8人いるそうだが、すべて非常に腕の立つ日本人を揃えている。これによって、まるで国内にいるかのような、本格的な和食が楽しめるというわけだ。
まず最初にいただいたのが、カニのサラダだ。北海道産ズワイガニに、北海道産のウニとすだちのジュレ、地中海産キャビアが添えられている。また、下にはカニのほぐし身もこれでもかと盛り付けられていて、見た目にもすごく贅沢な一品だ。
見た目だけでなく、味も非常に贅沢で、甘いカニの味わいがほぼ直球に味わえるのはもちろん、そのなかにウニの甘さが加わって、なんとも言えない美味しさだ。そして、ほのかな酸味のすだちジュレと塩味の強いキャビアがアクセントとなって、またカニの美味しさを引き立ててくれる。素材の味を活かしながら、奥深い味付けを演出するという、まさに和食王道のサラダに仕上がっていた。
次に、甘鯛を使った一品。こちらは山口県産の甘鯛を使い、カリカリにした揚げ物と柔らかく炊き上げた茄子を添え、大根おろしを加えた出汁をかけたもの。カリカリの揚げ物とふわふわの甘鯛の食感の対比が非常に楽しい。また、茄子や出汁の味わいも非常に格別。特に驚いたのが出汁の味わいで、水の質が異なる海外で、ここまで深い味わいの出汁が取れるのは、非常に驚きだ。
続いて、握り寿司が運ばれてきた。全部で4貫で、サーモン、ブリ、マグロの大トロ、クエの4種類。ネタはすべて築地から当日空輸したものだそうだが、とにかく非常に新鮮で味も申し分なかった。特に気に入ったのがクエで、淡泊ななかにもしっかりとした甘みがあり、何貫でも食べられそうな勢いだ。シャリはやや酢が弱めと感じたが、握り加減は絶品。こちらも、ここが海外だとは思えない味わいだった。
そして、メインとして運ばれたのが、石垣牛のステーキだ。A5ランクの石垣牛をレアに近い絶妙の火加減で焼き上げていた。またサシもしっかりと入っていて、口に入れるとすぐに溶けてなくなってしまう。薬味として海塩とわさび、梅ソース、ガーリックソースが添えられていたが、海塩やわさびで食べると肉の味わいが直接広がり、なんとも言えない美味しさだった。また、サツマイモや椎茸のソテー、トマトなども日本産のもので、こちらも抜群の味わいだ。
最後にデザートとして提供されたのが、静岡県産のマスクメロン「クラウンメロン」と、串に刺さった巨峰。メロンはもちろん最高級品質で、非常に濃い甘さとほのかな酸味が絶妙の味わい。そして巨峰は、皮がむかれて提供された。こちらも甘酸っぱく非常に美味しくいただけた。
このほか、泓では常時60種類を超える豊富な日本酒を揃えている点も大きな特徴となっている。筆者は下戸で、品種についての知識も乏しいが、日本でも滅多に手に入らないような希少なお酒も取り揃えられているそうだ。同行した酒好きの人は、滅多に飲めないお酒があると、かなり盛り上がっていたのも印象的だった。
このように、泓で提供される品々は、まさしく日本の高級和食店で提供されるものと同等以上のクオリティだった。今回はコース的な感じで料理をいただいたが、寿司カウンターで寿司だけを楽しんだり、鉄板焼きカウンターで最高級ステーキを楽んだりといったことも可能。海外にいることを忘れてしまうほどの、本格的な日本料理が楽しめる泓は、マカオでもトップクラスの日本食レストランと言えるだろう。
ミシュランで星を獲得したラーメン店が監修したラーメンが楽しめる!
先ほどの泓は、ウィン・パレスを代表する和食レストランだが、もうひとつ忘れてはならないお店が存在している。それが「花悦(ハナミ)」だ。花悦は、日本式のラーメンを提供するラーメン店だが、ここが非常に注目を集める存在となっている。なぜなら花悦は、「ミシュランガイド東京2016」において、世界初となる星を獲得したラーメン店「Japanese Soba Noodles 蔦」が手がけるラーメン店だからだ。
花悦は、楕円形のカウンターのみで構成された、カジュアルな雰囲気の店となっている。そして、提供されるラーメンは、「醤油ラーメン」1本で勝負。トッピングが違う4種類のメニューがあるが、どれもベースは同じ醤油ラーメンとなっている。そのほかには、日本酒やビールなどを提供している。
スープは、烏骨鶏とロンコンカイの丸鶏から取ったチキンブイヨンに、日本の魚介の乾物から取った濃厚な和風出汁を組み合わせたダブルスープとのこと。また、醤油だれは蔦で使っているものと同じ和歌山の醤油蔵の醤油を使ってるという。麺は外国産と日本産の小麦をブレンドした自家製麺、そしてチャーシューには沖縄アグー豚を使っているそうだ。このあたりのこだわり方は、さすが蔦といったところだろう。
今回は、トッピングにチャーシューと豚ワンタン、味付け卵が添えられたメニューをチョイス。まずスープは、その透き通るような透明感のなかに、鶏や魚介の深い味わいが溶け込んでいて、ため息が出るほどの美味しさだった。現地の麺とはまったく異なる味わいで、日本人なら誰もがほっとして、また最後まで飲み干したくなるようなスープだ。
また、自家製麺はもちもちとした食感で、小麦の香りもしっかりと感じられる。今回いただいたものでは、麺がやや柔らかめに仕上げられていたが、これは現地の人の好みに合わせている部分もあるかもしれない。それでも、スープによく合う麺と感じた。
もちろん、コク深く柔らかいチャーシューやワンタン、醤油の風味がしっかりしみ込んだ味付け卵などのトッピングも絶品のひと言。この完成度のラーメンは、日本でもなかなか味わえないはずで、そういった意味でも驚きの店と感じる。
なお、価格はノーマルの醤油ラーメンが118MOP(約1680円、1MOP=14.2円換算)、今回いただいたフルトッピングのラーメンが158MOP(約2240円)と、ラーメンとしてはかなり高いという印象。
とはいえ、マカオという土地で、材料もとことんまでこだわり抜いて作られたラーメンが提供されていると考えると、この価格にも納得だ。日本では、蔦でラーメンを食べようと思うと、何時間も行列しなければならないことが多いが、花悦ならそこまで並ぶことなく食べられるのもうれしいところ。もしマカオに行く機会があれば、ぜひとも足を運んで試してみてもらいたい。それだけの価値は十分にある。もちろん、ウィン・パレスに泊まった際には絶対に外せない店だ。