旅レポ

時差のない西洋、オーストラリア・ブリスベンで体も心もリラックス(その5)

川が流れるブリスベンの象徴「ストーリー・ブリッジ」と市民の足「シティホッパー」

ストーリーブリッジ

 オーストラリアの人口第3位の都市にして、クイーンズランド州の州都であり、日本からの直行便もあるオーストラリア・ブリスベン。クイーンズランド州政府観光局が実施したプレスツアーで訪れ、この地の魅力の一端に触れたレポートの最終回となる今回は、ブリスベンを象徴する建造物である「ストーリー・ブリッジ」と、便利で楽しい乗り物「シティホッパー」を紹介したい。

ブリスベンのシンボル「ストーリー・ブリッジ」

 前回記事でセグウェイに乗って近くの公園を訪れたブリスベンのシンボル「ストーリー・ブリッジ」。カンガルーポイントとフォーティテュード・バレーを結んでいる橋で、ブリスベンのシティ側とサウスバンク側を結ぶ市内中心部の橋としては下流寄りにある。

 1940年に開通した歴史ある鉄筋橋で、遠くからは一見吊り橋のようでもあるが、上部はトラス構造となっており、川の両岸にある橋脚によるカンチレバー(片持ち梁)橋だ。ちなみに橋の名前の「ストーリー」は、この橋の建設を訴えた人の名前にちなむもの。70年を超える歴史を持つだけに、いろんな物語も刻んできていそうだ。

1940年開通時に橋の命名を記念した碑
フォーティテュード・バレー側から見た歩道
フォーティテュード・バレーは橋の下に入れる歩道がある
カンガルーポイント側から見たストーリー・ブリッジと歩道

 このストーリー・ブリッジは無料の高速道路として多くのクルマが通行しているほか、歩道も整備されているので、歩いて渡ることもできる。さらに、「Bridge Adventure Climb」という、橋の上部構造物の上に登ることができるアトラクションも提供されている。こちらの料金は昼間の時間帯で1人119ドルから。10名以上のグループレートや、夕暮れや夜間、夜明けの時間帯はやや料金が高めとなっている。

 この訪問時はクライムを体験する時間をとれなかったが、せっかくなのでストーリー・ブリッジを歩いて渡ってみることにした。もちろん歩行者も無料で渡れるが、意外に自転車の通行量が多いことには注意が必要だった。

 近くで見るストーリー・ブリッジはまさに昔ながらのイメージに残る鉄橋そのもの。金属材料がぜいたくに使われまくったトラス構造に、リベットが打ち込まれまくっている。それでいて遠くから見るとそれほどゴチャゴチャした構造には見えないのだから美しい。クルマで渡るだけではもったいないので、ぜひ歩いて渡るか、時間があればクライムを体験してみることもお勧めしたい。

ストーリー・ブリッジに登れるアトラクションも。楽しそうだが、階段の急角度を見ると少しひるむ
柱一つ一つがトラス構造となっているが、あまりごちゃごちゃしておらず、全体にスマートな印象を受ける橋だ
カンガルーポイント側の階段がある「Baildon St at Story Bridge Hotel」近くの様子
階段の途中から見るストーリー・ブリッジ

 ちなみに、今回はカンガルーポイント側の「Baildon St at Story Bridge Hotel」バス停付近にある階段を使ってストーリーブリッジの歩道へと上がった。旅程中のある日、セグウェイ体験の目的地でもあったキャプテン・バーク公園近くのカフェで朝食をいただき、そのまま歩いて行った次第だ。

 そのカフェは「Puk Collective」というお店なのだが、こちらもブリスベンらしいオーガニックな朝食を楽しめる。オープンなテラスも席数が多く、気持ちのよい朝を迎えられるお店だ。

Puk Collective

所在地:98 Main Street, Kangaroo Point
営業時間:6時30分~14時(土・日曜は7時~14時、公休日は7時~13時)
Webサイト:Puk Collective(英文)

ストーリー・ブリッジの下、キャプテン・バーク公園(Captain Burke Park)の近くにある「Puk Collective」
グラノーラとアサイーのスムージー(奥中央)を注文。朝なのでヘルシーなつもりが思ったより量があった
ちなみにストーリー・ブリッジは夜にはライトアップされる。季節によって色が変わるほか、スポンサーが付いたときには、また違った色にもなるそうだ

無料で川を行き来できる「シティホッパー」が便利で楽しい

 さて、ブリスベンレポートの最後に紹介しておきたいのが、交通機関の一つ「シティホッパー」の話だ。交通機関といってもバスや鉄道ではなくフェリー(船)。中央に川が流れるブリスベンはフェリーも大切な交通手段の一つだ。

 ブリスベンにはいくつかの航路があり、対岸を結ぶ“渡し船”のようなルートのほか、カンガルーポイント付近では3つのターミナルを行き来する航路もある。長めの航路としては、シティからブリスベン川へ出たところにある「ノースキー(North Quay)」と、下流の住宅街「ニューファーム」を結ぶ「シティホッパー(CityHopper)」。そして、セントルシアのクイーンズランド州立大学と、空港にわりと近い(といっても歩けるほど近いわけではないが)ハミルトンを結ぶ「シティキャット(CityCat)」がある。シティキャットは有料(ゾーン制)となるが、そのほかは無料で利用できる。

シティホッパー。写真でも小さく見えるが、実際にも小柄なかわいらしい船だ
シティホッパーは一隻一隻に名前が付いており、入り口の脇にパネルが貼られている。これは「MERMAID」号のようだ
こちらはより長距離を移動できる有料のシティキャット
シティキャットはラッピング船が多く、いろいろなデザインの船が運航されていた

 これは利用しない手はないだろう。特にブリスベン中心部付近を網羅しているシティホッパーが便利だ。下はブリスベン市が提供しているシティホッパーの航路となるが、例えば、シティ付近のホテルを利用していたり、シティを散策したあとに「ノースキー」からサウスバンクやカンガルーポイント、あるいは少し時間はかかるがシティの東側にあるショッピングエリアへも向かうことができる。先述したストーリーブリッジを徒歩で渡る場合も、バスはちょっとハードルが高いと思うならば、シティホッパーを使えばかなり近いところまで行ける。

CityHopper(シティホッパー)

始発便:シドニーストリート発06時00分、ノースキー発06時15分
最終便:シドニーストリート発23時30分、ノースキー発23時45分
Webサイト:CityHopper(英文、ブリスベン市Webサイトより)

 シティホッパーの端から端、つまりシティにあるノースキーから、ニューファームのシドニーストリートというところにあるターミナルまでは40分強で、30分間隔で運航されている。乗船に際してはとくに手続きは必要なく、ターミナルで到着を待って、来たら乗るだけだ。

シティホッパーの航路としては最下流部となる、ニューファームの「シドニーストリート」ターミナル
ブリスベン川で運航されているフェリーの航路と料金。シティホッパーは無料
シティホッパーの時刻表。シドニーストリート~ノースキー間は30分間隔で運航されている
シドニーストリートターミナルの桟橋へ向かう通路
桟橋が待合所になっている
シドニーストリートの桟橋で待っているとシティホッパーがやってきた。上流側から来て、このターミナルで折り返すことになる
下部デッキ
上部デッキ
シドニーストリートターミナルを出発
地上からは見られないアングルでストーリー・ブリッジを望む
運航本数が多いので、ターミナルに泊まる際に待つことも
途中の「イーグル・ストリート・ピア」ターミナル。シティの東側で、ショッピングエリアやレストランが並ぶ賑やかなエリアだ
カンガルーポイントを川から見る。左下にあるのが前回セグウェイに乗せてもらった「Riverlife」
「海事博物館」。今回は訪問できなかったが、屋外展示物を川から見て、なんとなく行った気分に
下部デッキ最後方はオープンエア。川面に近いので迫力ある船旅を楽しめる
シティホッパーが作り出す航跡を利用してジェットスキーを楽しむ人も
地図を見て、交差しているのが気になっていた橋をシティホッパーから観賞
向かって左側の橋(Goodwill Bridge)が歩行者専用橋で、右側の橋(Cook Bridge)が自動車専用道の橋。歩行者用の橋が潜り込むようにして交差している
「ノースキー」ターミナルの付近。すなわちシティの西岸となるが、川岸をまっすぐ伸びるハイウェイの桁を見ると緩やかなアップダウンがあることが分かる。橋があるところでは複雑に交差していて、道路を走っていると分かりにくい形状が船からなら一目瞭然

 記者はこの滞在中の空き時間を利用するなどして3度乗船したが、観光客も意外に多く乗っていた。船は上下2デッキの構造で、上部デッキはオープンエアの空間となっている。写真を撮るなら上部デッキなのだが時間によっては混んでいることもあったので注意したい。

 アクティビティとして楽しみすぎるのも、交通手段本来の目的で使っている人に迷惑をかけかねないので自重しなければならないが、乗っていること自体を楽しめる乗り物でもあるので、ぜひ1度は体験してみてほしい乗り物だ。川から見る街の眺めは俯瞰的な風景を見られるし、先述のストーリーブリッジをくぐることもでき、街歩きとは違った角度でブリスベンを楽しむことができるだろう。

夜にライトアップされたストーリー・ブリッジをシティホッパーから観賞
シティの高層ビル群とライトアップされたストーリー・ブリッジ

 さて、5回にわたってお伝えしてきたブリスベン旅のレポートも今回で終了。タイトルにも記したように、とにかくリラックスできることが強く印象に残った街で、日本での日常生活から距離を置きながらも、日常さながらの空気感で過ごせる。そんな気持ちになれた。

 もちろん、紹介してきたとおり観光スポットやアクティビティも充実しており、さまざまな過ごし方をできる街でもある。直行便がある便利さも去ることながら、本格的な冬を迎える日本に対して、南半球のオーストラリアは夏のハイシーズンを迎える。日常とはちょっとだけ違った気持ちで静かに過ごせる旅をしたい人にお勧めしたい街だ。

編集部:多和田新也