【イベントレポート】パリ航空ショー2015

Zodiac、27inchピッチに対応する軽量エコノミーシートなど航空機内装品を多数展示

2015年6月15日~6月21日(現地時間) 開催

 航空機の内装品などを手がけるフランスのZodiac Aerospaceは、パリ航空ショー2015において2017年以降に納入を開始する新しい軽量エコノミークラス用シートなど、次世代の航空機内装品を展示した。

 エコノミークラスのシートは、従来10~12kg程度の重量だが、今回のパリ航空ショーでは、約4kgと約6kgという2種類の軽量シートを展示。シートの軽量化は、燃費向上にも繋がり、航空会社にとってはコスト削減に繋がる。

 約4kgのモデルは、シートテーブルのアームなど一部を除いて、CFRP(炭素繊維複合材)を用いて実現した。リクライニング機能の有無で2種類のモデルを提案しており、リクライニングありの場合は4.5kg程度になるという。軽量化のため、テーブルのアームをフリーストップ構造とすることで、固定するためのノッチなども省かれている。

 約6kgのモデルは、シートピッチを最少27inchまで詰められることをアピール。人が座ったときの足元に当たる部分の形状を最適化し実現した。この最適化された形状を維持する目的もあって、座席のリクライニングはできない。素材はアルミが使われている

 展示ではシートピッチを可変できるようになっており、実際に27inchと29inchでの座り心地を比べさせてもらった。実は最初に着席を促されたとき、足元にゆとりがあるなと違和感なく座ったのだが、その状態が29inchと聞いて、驚きを隠せなかった。続いて、従来の27inchピッチの状態へ変更してもらったところ、この状態が既存の航空機に搭載されているような29inchピッチのシートに座っている感覚に近かった。シートそのものの軽さもあり、LCCを始めシートピッチを詰めて販売座席数を増やしたい航空会社の便でお目にかかる日が来るかも知れない。

CFRPを用いて約4kgへと軽量化したエコノミークラス向けシート
リクライニング機能の有無でアームレストも異なる
テーブルはフリーストップアームを採用することで、固定用ノッチの重量分も削減している
約6kgのエコノミークラス向けシートは、アルミを使ったもの。テーブルにはやはり固定用ノッチはない
足元周りの形状を最適化して27inchまでピッチを詰めて利用できることを売りにする
写真では利用者の感覚が分かりにくいかも知れないが、写真左が27inchピッチ、写真右が29inchピッチ。27inchピッチは狭さはあるものの、既存の29inchピッチの機材に座った状態と近い感覚

 ビジネスクラス用シートでは、「ファーストクラスのような広さ」を持たせた新モデルが展示された。既存のビジネスクラス程度の横幅スペースながら、スイッチ類のレイアウトやシート形状を工夫してソファのようなシートを搭載。もちろん180度フルフラット化も可能なほか、各座席にスーツを掛けられるクローゼットも備えるなど、高級感のあるシートになっている。

ソファのようなシートを持つビジネスクラス用シート
リクライニングはもちろん電動で、壁のレイアウトに合わせてピッタリと座面が広がるよう設計されている
大型のシートモニターや各席にクローゼットを備えるなど、その他の装備も充実している

 Zodiacのブースで一際目を惹いたのが、機内をイメージしたモックアップ展示だ。これは機内スペースを有効活用した同社の製品をデモンストレーションしたもの。

 1つはギャレーで、従来2カ所必要だったギャレーの空間を、1カ所にまとめられるというのが売り。具体的には機内サービス用カードの収納スペース3個分を、奥に2つずつカートを収納できるよう拡張。さらに奥側の収納スペースはエレベータを備えることで、1カ所のギャレーにつき最大6個のカートを追加で搭載できるようにした。

 カートの収納スペースは、ビジネスクラス座席最前列の、プライバシーを確保するためのデッドスペースを活用している。もちろんエレベータを搭載するなどコストが上がる要素はあるが、2カ所必要だったギャレーが1カ所に減ることで、そのぶん座席数を増やして売り上げを伸ばせば、利益を高められると同社は説明している。

キャビンのモックアップ展示
ビジネスクラス最前列の出っ張り部分を利用し、3個分のカート収納スペースを奥方向に2個、最大6個収納できる。
奥にカートが収納されているのが見える
エレベータを使って上部のカートを下ろす
エレベータの操作スイッチ
奥からカートを引き出すときは棒を使う。ここはちょっとアナログ

 もう1つの機内スペース有効活用案はトイレだ。フルフラットになるのが当たり前で、個室感を高めることが主流の昨今のビジネスクラス用シートは、足元にフットレストスペースがあり、壁として使われる面積も多くなっている。

 Zodiacが展示したモックアップのトイレは、座席の出入り口の壁になっている部分に洗面台を置くことでトイレの空間を拡げようというものだ。下記の写真でシート側とトイレ側を見比べてみると、うまくスペースを共有していることが分かるだろう。

ビジネスクラス最前列席とその先のトイレ。右側の壁の部分に洗面台。足元の先には実は便座がある
2点タッチ操作で操作が可能なディスプレイを利用したコックピットのシステムも展示。マスク内蔵マイクが拾った音から呼吸音だけを減衰させる一種のノイズキャンセリングシステムを搭載したパイロット用酸素マスクなどもデモンストレーションした
これはGreenpoint Technologiesが提供する、VIP用に内装をアレンジしたボーイング 787型機の模型
CA(客室乗務員)らが休息する、いわゆるクルーレストに置かれるベッド。ディスプレイなどを埋め込むことも可能という

編集部:多和田新也