【イベントレポート】パリ航空ショー2015
ボーイング、開発中の「737 MAX」「787-10」「777X」の開発状況を報告
(2015/6/17 03:21)
- 2015年6月15日~6月21日(現地時間) 開催
ボーイング(Boeing)は6月16日、パリ航空ショーにおいて、現在開発中の3機種「737 MAX」「787-10」「777X」の進捗状況を発表した。
会見したボーイング航空機開発担当副社長のScott Fancher氏は、航空機開発において重視していることとして「顧客の要求に応えること」「経済的価値を生むこと」「ボーイングと顧客の双方にとってのリスクを縮減すること」の3点を挙げ、市場に合致した航空機を世に出せるよう注力していると語った。各機種の進捗状況は以下のとおり。
ボーイング737 MAX
「ボーイング737 MAX」型機はボーイング737型機の後継として開発されている140~200席級の機体で、主翼端に「シミタール・ウイングレット」と呼ばれる上下に分かれた独特のウイングレットを備える。
エンジンはCFM International製「LEAP-1B」で、現在の737型機が装備する「CFM56」よりもファン径が大きくなるので、地面とのクリアランス確保のためノーズギアが8inch高くされる。
エアバスが開発中の競合機「エアバス320neo」型機に対して燃費が8%優れ、航続距離は325海里(約600km)長いという。開発は予定通り進んでおり、目標性能も達成できる見込みであるとのこと。現在設計工程の90%が完了しており、初号機の主翼の組み立てが始まっている。生産ラインも完成間近とのことで、順調な開発状況にある模様だ。
LEAP-1Bエンジンは今年5月から飛行試験を開始しており、今回の会見でも開発は順調と語られたが、燃費性能が目標に達していないとの情報も漏れ聞こえており、今後の推移が気がかりだ。
737 MAX型機は今年中に製造を開始し、2016年に初飛行、2017年からの納入開始を予定している。
ボーイング787-10
「ボーイング787-10」型機は、「ボーイング787-9」型機の胴体をさらに延長した300席級の機体で、「ボーイング777-200ER」型機の後継となる。国内ではANAが導入を決めている。787-10型機の航続距離は、現在運航されている路線の90%をカバーすることができ、長距離路線にも対応可能だ。
ライバルである「エアバス330」型機に対して1席あたりの燃料コストが20%低く、最新機種である「エアバス350」型機に対しても10%低いという。会見では787-10型機は“"Efficiency plane”(効率のよい飛行機)であることが強調されており、長距離を飛行することにより787シリーズの燃費の良さが最大限引き出される。
開発は順調で、目標性能も達成できる見込みとのこと。エンジンは「GEnx」または「Trent 1000 TEN」(現在ANAなどの787シリーズに採用されているTrent 1000の推力増強型)から選択できる。Trent 1000 TENの開発も順調な模様だ。
生産工程は787-9型機との共通性を持たせるよう設計されており、工程の95%を787-9型機と共有できるようになるとのこと。
本年2015年中に設計の90%が完了する見通しで、2016年の設計完了、2017年ロールアウト、2018年の初納入を予定している。
ボーイング777X
「ボーイング777X」型機は、「ボーイング777-300ER」型機の後継となる、400席級の機体で、胴体の材料は既存の777型機と同じアルミ合金であるが、主翼は炭素繊維複合材(CFRP)製となる。新設計となる主翼は横幅が非常に長いのが特徴で、既存の空港設備への適合性の問題から、地上では主翼を折りたたむ機構が装備される。会見ではこの折りたたみ機構がオプションとなるのか、全機標準装備となるのかという質問が出たが、現時点では全機標準装備とする計画とのこと。
エンジンは新開発となる「GE9X」を搭載する。GE9Xは高圧タービンの材料をCMCとすることが予定されているなど非常に先進的な設計であるが、今回の発表ではエンジン開発も順調に進んでいるという。
主に長距離路線に投入される機材であるため、キャビン快適性の向上にも注力されており、窓が大型化(現在の777型機と787型機の間くらいのサイズ)されるほか、キャビン気圧の上昇や加湿も行なわれる予定である。
CFRP製主翼についてはプロトタイプを製造し、試験を行なっているとのこと。主翼製造のための新しい建屋をシアトルに建設中で、完成すれば世界最大のオートクレーブが設置される。主翼のウイングボックスはシアトルで製造され、その他のCFRP部品はセントルイスで生産される。
今夏に概念設計を完了し詳細設計に移行する予定で、2017年の製造開始、2019年初飛行、2020年納入開始を予定している。