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天草エアライン、ATR-42型機「新みぞか号」がデビュー

前日にボンバルディア Dash 8-103型機「みぞか号」がラストフライト

2016年2月20日 実施

2月20日のデビュー初日から多くの利用者で賑わった天草エアライン ATR-42型機「新みぞか号」

 天草エアラインに2月20日、日本の航空会社では初めての導入となるATR-42型機が就航した。これまでの39席のボンバルディア Dash 8-103型機「みぞか号」からATR-42型機「新みぞか号」では48席となり、9席の増席となる。

 初便となるAMX101便の出発前には、蒲島郁夫熊本県知事、中村五木天草市長(兼天草エアライン副社長)、さらにコードシェア便のパートナーであるJAL(日本航空)の大西賢会長などが出席したセレモニーが天草空港で開催された。

 天草エアライン 代表取締役社長 吉村孝司氏は「本日、新たな飛行機ATRでの運航をできることになりました。天草エアラインは2000年3月の就航以来、無事故で天草島民の足、ライフライン、地域振興を目的として運航してきました。今後も安全第一に、天草の人のみならず、日本全国の皆様に愛されていく航空会社を目指していきたいと思います」と挨拶した。

 また、蒲島郁夫熊本県知事からは「私は天草エアラインのことを第2のくまモンだと思っております。くまモンは4つのいいことがあります。経済的な豊かさを熊本県にもたらしたこと、熊本県に誇りをもたらしたこと、安心・安全をもたらしさこと、最後に夢をもたらしたことです。天草エアラインも同じように天草の方々に与えてくれると思っております」と話した。

主催者挨拶をする天草エアライン株式会社 代表取締役社長 吉村孝司氏
くまモンとともに来賓を代表して挨拶する蒲島郁夫熊本県知事

 その後、来賓によるテープカットで新型機就航を祝った。司会は、天草エアラインをはじめ、数々のCMでナレーションをしているタレント・DJのケイ・グラント氏が務めるなど、華やかなセレモニーとなった。

来賓によるテープカット
司会はタレント・DJのケイ・グラント氏
天草空港には朝早くから多くの人が訪れた

 初便出発の25分前となる7時35分過ぎから保安検査場がオープンし、吉村社長より初便の搭乗証明書などの記念グッズが初便搭乗者にプレゼントされた。あいにく雨模様となったが、利用者はATR-42型機まで傘をさしながら徒歩で搭乗した。2000年3月23日の天草エアラインの就航初便も雨だったそうで、16年前を思い出す関係者もいた。

初便記念グッズを配布する天草エアライン 吉村孝司社長
初便記念グッズ

 午前8時過ぎ、記念すべきATR-42型機は46名を乗せ、福岡空港へ向けて離陸した。空港の展望デッキでは離陸の瞬間、拍手に包まれた。

 離陸後に囲み取材に応じたJALの大西賢会長は「1機しかない飛行機の中で、乗員・整備士の訓練をJALグループが支援したことによって(機体更新時に)最小限の減便に留めることができたと思います。以前、JAC(日本エアコミューター)に私もいましたが、航空路というのがどれだけライフラインであるのか、初便には必ずお医者さんや患者さんが乗られるというケースを見てて、命が懸かっている生活路線であることを身をもって経験していたこともあったので、天草の役割の1つはライフラインをつないでいくことだと思います。天草は本当に皆さん来られてファンになられる場所です。とにかく1回来ていただいて、地元の努力でリピーターを作っていく。陸路では大変であるが、飛行機で来る利便性で(天草に)来ていただきたい」と話した。

初便の搭乗風景
初便に搭乗する天草エアライン 吉村社長(写真右)を機体前で見送るJAL 大西会長。吉村社長はJAL出身で大西会長とは同期であり旧知の仲
新型機の内装デザインを担当した、グリーンランド国際サンタクロース協会の公認サンタクロースであるパラダイス山元氏も初便に搭乗
天草空港を出発し、離陸するATR-42型機

 新型機となるATR-42型機の就航に伴い、前日の2月19日には、2000年3月23日に初就航以来、15年間飛び続けたボンバルディア Dash 8-103型機「みぞか号」がラストフライトを迎えた。最終便となった福岡発天草行きのAMX108便は、満席となる39名を乗せ福岡空港を出発し、天草空港に19時50分に着陸し、約15年の天草エアラインでの役目を終えた。

 ラストフライトには、全国から集まった天草エアラインのファンが搭乗したほか、天草空港にも最後の雄姿を見ようと展望デッキにも地元の人が集まり、到着時には天草エアラインの地上スタッフが横断幕を持って出迎えた。

ラストフライトを終えて天草空港に到着したボンバルディア Dash 8-103型機「みぞか号」。デンマークで第2の人生を過ごすことになる

 最終便に搭乗した、兵庫県から来た天草エアラインファンの佐伯元啓さんは、「思い出に残るフライトになりました。これまで数十回利用してきたみぞか号の最後をお見送りしたいという気持ちから今日の最終便に乗ることにしましたが、クルーがきさくで、乗客とクルーが一体感を持って時間を過ごせる航空会社です」と天草エアラインの魅力を話した。吉村社長は、運航を終えたボンバルディア Dash 8-103型機がデンマークで第2の人生を歩むことを明らかにした。

天草エアラインの地上スタッフと吉村社長が横断幕でお出迎え
展望デッキにも天草エアラインファンによる横断幕の姿が
天草エアラインファンの佐伯元啓さん(写真左)

 到着ロビーでは、利用客の有志から最終便に乗務した谷本真一機長、金子照夫副操縦士、客室乗務員の井上紗綾CAに花束が贈呈された。谷本機長は「ラストフライトは(天候により)かなり揺れてしまいました。できればベルトサインを消灯してゆっくりお話したいと思っていたのですが、それができずに残念でしたが、ラストフライトの最中に管制官のみなさんからお疲れさまでしたという言葉をいただき、管制官からの拍手の音も無線から聞こえるなど、素敵なフライトになりました」、金子副操縦士は「みなさまに集まっていただき、すごく感動しました。お客様あっての天草エアラインであることを実感しました」、井上CAは「今日で最後だったので、普段よりも緊張して、アナウンスで間違ってしまいましたが、すごく思い出に残るフライトになりました」とラストフライトの感想を述べた。

天草エアライン利用者有志による花束贈呈
最終便に乗務した谷本真一機長、金子照夫副操縦士、客室乗務員の井上紗綾CA

 天草エアラインは、2000年3月23日に天草空港開港とともに天草~福岡線、天草~熊本線の2路線に就航後、2004年10月1日に熊本~松山線就航(2008年9月1日運航終了)、2008年9月4日に熊本~神戸線就航(2010年10月11日にて運航終了)、2010年12月15日に熊本~伊丹線に就航して、現在は天草~福岡線、天草~熊本線、熊本~伊丹線の3路線を運航している。

 2000年3月から飛び続けたボンバルディア Dash 8-103型機は、2013年2月に機体デザインコンテストで選ばれた新塗装機、親子イルカデザインの「みぞか号」に塗り替えられたことでマスコミから注目を集めるようになり、2013年4月7日には累計搭乗者数100万人突破した。最終的に1機の飛行機は、総飛行時間は約1250万km(地球を約310周)で、約120万人に利用された。天草→熊本線の搭乗レポートについては、別途お届けする。

(鳥海高太朗)