ニュース

ロボットバーテンダーがカクテルを作る最新鋭客船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」船内を紹介

博多港に日本初寄港、6つの“スマート”が特徴のハイテク客船

2015年6月27日 寄港

福岡・箱崎ふ頭に入港したクァンタム・オブ・ザ・シーズ

 ミキ・ツーリストが日本総代理店を務める米Royal Caribbean International(RCI、ロイヤル・カリビアン)が運航する豪華客船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」が、6月27日に博多港(福岡)に入港。船内において、福岡市港湾局による歓迎式典が開催されるとともに、旅行代理店および報道陣向けに船内の見学会が開催された。

 クァンタム・オブ・ザ・シーズは2014年11月に就航した世界第2位の大きさを誇る大型客船。過去、日本に寄港した客船の中では総トン数、総乗客定員数が最大規模となる。

クァンタム・オブ・ザ・シーズの概要
就航年
2014年11月
総トン数
16万7800トン
全長
378m
全幅
41m
喫水
8.5m
海面からの高さ
62.9m
最大乗客定員
4905名
客室数
2090室
乗組員
1500名
巡航速度
22.0ノット
船籍
バハマ
造船所
マイヤー・ベルフト(ドイツ)

 クァンタム・オブ・ザ・シーズの特徴は最新テクノロジー“スマート6”を採用、次世代の船旅を提供している点だ。具体的には以下の通り。

スマートチェックイン

 乗船手続きをオンラインで行なうことでチェックインを簡略化。荷物に非接触ICチップ(RFIDタグ)を付けることで荷物の場所をオンラインでチェック可能。

スマートコンシェルジュ

 従来から使われていたクルーズカード「SeaPass」に加え、RFID内蔵のリストバンド「WOWband」を発行。部屋の鍵や、レストランなどでの会計に利用可能。またレストランや寄港地でのツアー予約など、クルーズバケーションを自分で作ることができる専用スマホアプリ「ロイヤルiQ」を提供する。

スマートコネクト

 衛星通信を利用することで地上と変わらない高速通信を提供。

スマートエクスペリエンス

 ロボットアームがカクテルを作る「バイオニックバー」、6台のモニターをロボットアームが動かしてショーを盛り上げるラウンジ「TWO70°(ツーセブンティーディグリー)」など、最新の映像技術や舞台装置を採用。海の見えない内側の客室には壁面にスクリーンを装備し、航海中のリアルタイム映像を映し出す「バーチャルバルコニー」を採用。

スマートサービス

 全乗組員にタブレットを支給。乗客の食事の嗜好やマッサージの好みなどを記録することで質の高いサービスを提供する。

スマートサスティナビリティ

 高度な設計により省エネを徹底。船内の照明にLEDを採用するだけでなくモーションセンサーにより明るさを調節。また、ゴミのリサイクルシステムを導入するなど環境にも配慮している。

 そのほか、アメリカン、アジア、フレンチなど異なる味覚が楽しめる6つのメインダイニングを備えるのも特徴だ。これは同社の船では初となる試みで、2回に分けられたディナータイムに、好きなレストランで食事が楽しめるようになっている。

 今回の寄港は、上海を発着地とする4泊5日の日中クルーズのためで、6月25日に上海を出航、博多港には7時に着岸し当日の22時に離岸、27日に上海に戻るスケジュール。乗客は中国約4150名、台湾約50名、アメリカ約50名、その他約200名の計4450名となる。

 同船は今後、博多港に26回、鳥取県の境港に1回(7月2日)、長崎港に17回(7月9日ほか)、熊本八代港に4回(7月23日ほか)、那覇港に12回(8月1日ほか)、広島港に2回(8月15日ほか)、宮崎油津港に1回(8月16日)、横浜大黒ふ頭に1回(8月27日)、神戸港に1回(8月28日)の寄港が予定されている。

左右に張り出したブリッジ。下部にはライトが設置されている
デッキ6から13まではすべて客室。ここだけ見ると高層マンションのような雰囲気
係留索にはネズミ返しが付けられていた
船尾側。ガラス部分がラウンジ「TWO70°」
船尾に掲揚されているのは船籍があるバハマの商船旗
船体には大きなロイヤル・カリビアン・インターナショナルのロゴが入っている
さまざまなライフラフトを搭載
乗船、下船時にはパスポートのチェックが行なわれる。船内には空港にあるようなセキュリティチェックポイントがある
約4500名の乗客を迎えるガイドも大人数
岸壁には60台あまりの観光バスが並ぶ
7時半過ぎに乗客が降りてきた。この列は10時過ぎまで続いた
和太鼓教室「博多響学館」のジュニアメンバーによる歓迎セレモニーも実施された

初入港歓迎式典

 クァンタム・オブ・ザ・シーズは6時過ぎに博多港に入港、接岸。4500名あまりの乗客は、船内での入国審査の後、続々と下船。ふ頭に用意された60台あまりのバスに分乗し、太宰府や福岡市内など思い思いのエリアへと観光に出かけていった。その後、入れ替わりに関係者や報道陣が乗船、船内後部にあるラウンジ「TWO70°」において初入港歓迎式典が開催された。

 式典の主催者として壇上に登った福岡市 副市長 中園政直氏は「このたびはクァンタム・オブ・ザ・シーズの日本最初の入港地として博多港に寄港していただき大変喜ばしく思っております。クァンタム・オブ・ザ・シーズはアジア最大の超大型船であり、過去、日本の港に寄港した客船の中で最大の規模でございます。迎えるに当りましては博多港といたしましても大きなチャレンジでございましたが、ご列席の関係者の皆様を始め、多くの方々のご尽力の元、実現することができました」と挨拶。

 続けて「ロイヤル・カリビアン・インターナショナルはクルーズ業界の先駆者として、アジアクルーズ市場を大きく発展させてこられました。そしてここ博多港におきましては、2008年のラプソディ・オブ・ザ・シーズの初寄港以来、多大なるご協力を賜り、今では日本でも有数のクルーズポートに成長いたしました。今後とも良きパートナーとしてともにクルーズ市場の発展に寄与して参りたいと考えております」と述べた。

 次いで、中央ふ頭の深さ不足により貨物中心の箱崎ふ頭への入港となったことについて「福岡市といたしましては今回ここ箱崎ふ頭でクァンタム・オブ・ザ・シーズをお迎えしておりますが、本日ご列席賜っております関係者の皆様にさらにお力添えを賜り、なるべく早い時期に、本年春にオープンいたしましたクルーズセンターがございます中央ふ頭において、より充実した受け入れ環境のもと、皆様をお迎えしたいと考えております」と、早い時期に対応したいとの意向を示した。

 最後に「福岡市はショッピングやイベントを楽しめる九州最大の商業都市であるとともに、美しい自然と新鮮で美味しい食べ物も楽しめる大変魅力的な都市でございます。今回の寄港に加え、今年も数多く寄港していただけると伺っております。ぜひ季節ごとに移ろいゆく福岡の景色も楽しんでいただきたいと考えております」と締めくくった。

 国土交通省 港湾局長 大脇崇氏は「我が国に寄港するクルーズ船としては最新鋭、過去最大規模のクルーズ船になります。大きさを目の当たりにして驚いております」と感想を述べた後、「クルーズ振興は地域の活性化にも大きく貢献するものであり、私ども政府におきましては“クルーズ100万人時代”を目指してクルーズ船の受け入れ環境の整備などに積極的に取り組んでいるところでございます」とした。

 ロイヤル・カリビアン側からは船長のSrecko Ban氏が登壇。「クァンタム・オブ・ザ・シーズは素晴らしい船で、とても特別な仕様を持っております。大きいだけではなく、さまざまな技術を駆使した革新的なクルーズ船です。本船は乗客約5000名が乗ることができ、新しいさまざまなアメニティを採り入れました。スマートシップとして素晴らしいテクノロジーを駆使して作られた船でございます。今日は博多港という素晴らしい港に寄港することができ、大変嬉しく思っております。博多港には今後多くの寄港を予定しておりますので、関係者の皆様と協力して一緒にやっていきたいと考えております」と語った。

 次いでロイヤル・カリビアン・インターナショナル中国 営業・マーケティング部長 北東アジア担当 Thomas WANG氏が登壇。「日本は世界の中でも魅力的な寄港地で、中国の人々には大変好まれており、好評をいただいています。本当に日本と日本の人々が大好きで、福岡は素晴らしい街だと思います。今後ももっと福岡に船を運航していきたいと思っております」と、福岡が人気の寄港地であることを示唆。

 また、同社は情熱を持ってクルーズ業界に取り組んでおり、アジアにクァンタム・オブ・ザ・シーズをはじめ「マリナー・オブ・ザ・シーズ」「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」「レジェンド・オブ・ザ・シーズ」、そして2016年にデビューが決まっている「オベーション・オブ・ザ・シーズ」と、大型の客船を配船していることをアピール。北アジアを重要なマーケットとして認識している点を強調した。

 また、現状でクァンタム・オブ・ザ・シーズは日本からのツアーが設けられていないものの「2015年には25泊、日本の大型連休にクルーズを行ないまして約1万人のお客様に体験していただくことができました。2016年も大型連休の時期に、大型の船を配船し、日本のお客様にロイヤル・カリビアンの世界を楽しんでいただきたいと考えております」と、別の船によるツアーが予定されていることも明らかにした。

初入港歓迎式典が行なわれたラウンジ「TWO70°」
福岡市 副市長 中園政直氏
国土交通省 港湾局長 大脇崇氏
クァンタム・オブ・ザ・シーズ船長のSrecko Ban氏
ロイヤル・カリビアン・インターナショナル 中国 営業・マーケティング部長 北東アジア担当 Thomas WANG氏
中園氏からSrecko Ban氏に博多人形と記念盾が贈呈された
Srecko Ban氏から中園氏へは記念盾が贈呈された
博多港振興協会 会長 角川敏行氏からホテルディレクターのDean Bailey氏に花束を贈呈
機関長のNikola Petrovic氏には九州クルーズ振興協議会 事務局長 杉町敏紀氏から博多人形が贈呈された
関係者による乾杯
関係者による記念撮影

クァンタム・オブ・ザ・シーズの船内を紹介

 歓迎式典に続いて行なわれた船内見学会は、時間の関係で主要な施設を回るのみとなった。

船内の主な施設
デッキ16
ノーススター(海上展望カプセル)、船上サーフィンなど
デッキ15
スパフィットネスセンター、ジョギングトラックなど
デッキ14
プール、ジャグジーなど
デッキ13~6
客室、ラウンジTWO70°(デッキ5~6)
デッキ5
ロイヤル・エスプラネード、シアター(デッキ3~5)、レストラン、バーなど
デッキ4
受付、ワインバー、カフェプロムナードなど
デッキ3
カジノ、ミュージックホール、客室など

デッキ14~16

 オープン構造となる上部デッキで、アクティビティやエンターテインメント系の施設が用意される。目玉となるのは「ノース・スター」と「リップコード・バイ・アイフライ(RipCord by iFLY)」だ。

 どちらも洋上初となる施設で、前者はカプセルに乗って洋上92mのパノラマを楽しめるもの、後者はスカイダイビングを体験できるシミュレータだ。そのほか同社の船ではお馴染みの船上サーフィン施設「フローライダー」、スパやフィットネス、エステといった施設も用意されている。

デッキ14の中央部にはプールがある
子供用プールやジャグジーも用意
プールを見下ろす位置にあるスカイバー
展望カプセル「ノース・スター」
ゴンドラはアームにより海上92mまで上昇できる
デッキ14の外周にはジョギングトラックがある
デッキ外周部には救命浮輪がセットされている
オーストラリア人アーティストによるピンクの「ポーラーベア(ホッキョクグマ)」。高さ9.1mにもなるこのオブジェは1340枚の三角形によりデザインされており重量はなんと8t
洋上最大の屋内体育館「シー・プレックス」。球技はもちろんバンパーカー、空中ブランコ体験なども楽しめる
フローライダーではサーフィンを体験できる。温水なので寒さとは無縁
船尾にあるため眺めは抜群
世界でも数カ所にしかないスカイダイビングシミュレーターを洋上で体験できる「リップコード・バイ・アイフライ」
フリークライミングが楽しめる「ロッククライミングウォール」
カンフーパンダとのコラボレーションによるヌードルショップ

デッキ5

 クァンタム・オブ・ザ・シーズならではの最新設備が備えられているのがこのフロア。270度の展望を楽しめるラウンジ「TWO70°」、2台のロボットがカクテルを作ってくれる「バイオニックバー」は、ここでしか楽しむことができないもの。そのほか、カバーチャージ(席料)が必要となるスペシャリティレストランやバーがいくつも用意されており、好みや気分に応じてさまざまな味覚を楽しめる。

ホテルのようなエレベーターホール
エレベーターを挟んだ吹き抜け部分には蝶をモチーフにしたアートが一面に広がる
吹き抜けのアーケード「ロイヤル・エスプラネード」への通路
ロイヤル・エスプラネードの入口
中央には船の形をしたデッキマップが置かれている
デッキ5から見たロイヤル・エスプラネード
寄港地の観光案内が受けられるショア・エクスカーション
ロイヤル・エスプラネードにある「バイオニックバー」
バーテンダーはロボットの「バイオ」と「ニック」
注文はタッチパネル、支払いはWOWバンドで行なう
ロボットの頭上(?)にはさまざまなボトルが並ぶ
注文を受けてシェイカーでカクテルを作る。合間に愛嬌を振りまいたりダンスをしたりと楽しませてくれる
できあがり。レーンにWOWバンドをかざすとカップを受け取ることができる
創作料理が楽しめるスペシャリティレストラン「ワンダーランド」
日本&アジア料理が楽しめるスペシャリティレストラン「イズミ」
壁には液晶モニターを使ったアートも。これは水森亜土さんみたいな演出
階段の踊り場もアーティスティック
ピアノバー「スクーナーバー」
ツアー中の写真を注文することができるフォーカス
エレベーターホールからロイヤル・エスプラネードと反対方向へ
天井部分にも蝶をモチーフとしたアート
「THE VIA」には米国のアーティストによる「WAVES OF LIGHT」が飾られている
イギリスのカリスマシェフ、ジェイミー・オリバーの手がけるイタリアンレストランも
ラウンジ「TWO70°」に続く通路。ゆったりとした空間が確保されており月並みだが船の中とは思えないほど
ワインバー「ビンテージ」
絵画の販売を行なっている「アートギャラリー」。すでに売約済みとなっている作品も少なくなかった
ラウンジTWO70°の手前には同名のカフェも
船の後方を一望できるラウンジTWO70°
入口のオブジェ
ソファが置かれゆったりとしたラウンジ内。ショーが開催される時はモニター左右のソファを移動させて舞台として利用
壁際にはイス席もある
ブランコが置かれていたりも
舞台側からの眺め
6枚のモニターを使った大型ビジョン。ウインドウ部分にもプロジェクションマッピングによる映像投影が可能
実はアームによりそれぞれを独立。単体モニター×6としても利用することができる

デッキ4

 吹き抜けのあるアーケード「ロイヤル・エスプラネード」が広がる。時計や宝飾品が並ぶショップやカフェ、パティスリーなどが軒を連ね、リゾート気分を満喫することができる。アメリカ郷土料理を提供する「アメリカン・アイコン・グリル」、アジア料理を提供する「シルク」と2つのメインダイニングも。

デッキ4から見たロイヤル・エスプラネード
ダンスフロアがあるラテンバー「ボレロ」
カフェ&スイーツが楽しめる「ラ・パティスリー」
ジュエリーショップまである
24時間営業を行なっている「カフェ・プロムナード」
アメリカンな雰囲気の「マイケルズ・ジェニュインパブ」
ショップが並ぶストリート
ウインドウの演出も凝っている
DJによるライブパフォーマンスなどが楽しめる「ミュージックホール」。ビリヤードテーブルもある
シアターへと向かう通路。黄色いクルマのオブジェはウインドウ部分にモニターが組み込まれており、ドライバーの動きが見えるようになっている
3Dスクリーンを備える「ザ・ロイヤル・シアター」

デッキ3

 中央から前方にはスタンダードクラスの客室。後部には創作料理を提供する「シック」、フレンチ・ヨーロピアン料理を提供する「ザ・グランデ」と2つのメインダイニングを配置。クルーズ船ならではのカジノも用意されている。

エレベーターホールからメインダイニングへの通路
フレンチ・ヨーロピアンが楽しめる「ザ・グランデ」
ザ・グランデの店内は明るくモダンな作り
メニュー
取材時に提供された特別メニュー
「上海酔ったチキン」。鶏肉の酒蒸し
「ローストビーフテンダーロイン」。これはそのままローストビーフ
「ミ編シーフード炒めジャガイモ麺をかき混ぜます」。フライドポテトを麺に見立てた海鮮焼きそば
「溶融したチョコレート溶岩ケーキ」。バニラを添えたフォンダンショコラ
「メレンゲルラード」。メレンゲのロールケーキ
ザ・グランデの向かいには創作料理が楽しめる「シック」
スロットマシンやポーカーなどが楽しめるカジノもある

安田 剛