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ANA、全世界の空港や支店に集まった七夕短冊を足利織姫神社に奉納。お焚き上げで天に願い届ける

約3万枚の短冊を奉納。海外からも多く集まる

2018年8月30日 実施

ANAが毎年実施している七夕イベントで集まった短冊を、栃木県の足利織姫神社に奉納。お焚き上げが行なわれた

 ANA(全日本空輸)は毎年、7月7日の七夕に合わせて、国内・海外の就航先空港、同社支店などに笹飾りを設置し、搭乗客や訪問者が願いごとを短冊に書いて結び付けられるイベントを行なっている。その短冊は8月から9月ごろにかけて栃木県の足利織姫神社に奉納されており、2018年は8月30日に奉納行事が行なわれた。

 ANAの七夕イベントは2018年で11回目を迎えた恒例行事となっているもの。海外でも願いごとを預かっているが、当初は4空港からスタートし、徐々に規模が拡大。2018年は海外37の空港・支店で実施した。国内では空港・支店や各部署など54か所が参加している。

 例年、集まった短冊は、足利織姫神社が実施している七夕短冊の「お焚き上げ祈願祭」に参加して奉納。お焚き上げを行なって、願いごとを天に届けている。2018年も8月30日にその「七夕短冊 お焚き上げ祈願祭」が同神社で行なわれ、ANAも全世界から集まった短冊を奉納、お焚き上げした。

 祈願祭に参加したのは、この七夕イベントを担当するANA CS&プロダクト・サービス室 CS推進部長の西嶋直子氏と、同CS&プロダクト・サービス室 CS推進部 CS教育推進チームの田中仁美氏。

 西嶋氏は、ANAが七夕イベントを継続的に行ない、足利織姫神社に奉納している理由として、「日本の伝統行事である七夕と、空でいろいろな願いを込めてくださるお客さまの想いをつなげる企画だと思っている。七夕をとおしての日本の伝統と、空の旅をつなげられるのは、七夕のお焚き上げ祈願だと思っており、これを盛大にしていこうという社員みんなの想いも込められている」と説明。

 先述のとおり、海外37か所、国内54か所からの短冊が集まっているが、枚数は海外からが1万1980枚、国内からが1万8053枚の計3万33枚。枚数こそ収集場所の多さが理由か国内からが多いものの、空港・支店レベルで見ると実はミャンマー・ヤンゴン支店空港所・市内支店が2766枚、フィリピン・マニラ支店空港所が2004枚と非常に多くの願いごとを集めたという。国内は那覇の1501枚をはじめ、福岡、セントレアなどで多く集まった。

 七夕の文化のない海外拠点では、七夕の説明をするなど、文化紹介の取り組みも行なっている。田中氏によると、「説明するにあたって、身近に感じていただけるように、例えばヤンゴンにおいては上座部仏教徒の方が多いので、短冊に仏さまのスタンプを押すなど七夕と仏さまをリンクさせ、神社へ奉納に行くことやお焚き上げ祈願があることを知っていただいた」といった工夫をしたそうだ。

全国、全世界から集まった短冊を奉納

 一方、奉納場所となる足利織姫神社の七夕短冊 お焚き上げ祈願祭は2004年から毎年実施しているもの。足利織姫神社は2017年に遷宮80周年を迎え、最近は「恋人の聖地」としても話題を集めて、足利市の重要な観光資源になっている。

 この七夕のお焚き上げ祈願祭は、神社が“織姫”の名を持つことから始まった取り組みとのことだが、織姫神社の名前につながっているように、教育や文化の面で古くから女性が活躍してきた場であるという。

 今回の祈願祭に参加した足利大学も大正時代に作られた足利実践女学校をルーツとしているほか、「足利織物」で知られるように機織りの文化も盛んで、足利織姫神社もそうした機織り産業を信仰面から支えた存在として建てられたもの。戦前から戦後にかけては多くの女性が機織り産業に従事し、「足利銘仙」と呼ばれる織物が一世を風靡したそうで、祈願祭においても、その足利銘仙のデザインをあしらった行燈による装飾が行なわた。

小高い山の上に建つ足利織姫神社。右の橋は歌にもなった有名な渡良瀬橋
足利織姫神社に徒歩で向かうと、境内へと続く229段の階段が待っている
足利織姫神社

本殿内でANAの短冊祈願。お焚き上げの炎や足利銘仙の行燈が境内を彩る

全日本空輸株式会社 CS&プロダクト・サービス室 CS推進部長 西嶋直子氏(中央左)や、全日本空輸株式会社 CS&プロダクト・サービス室 CS推進部 CS教育推進チーム 田中仁美氏(中央右)らが短冊祈願に参列

 そのお焚き上げ祈願祭に先立ち、神社の本殿内においてANAの短冊祈願が行なわれた。太鼓の音に合わせて祈願が始まり、修祓(しゅばつ)、祝詞の奏上、玉串奉奠(ほうてん)が厳粛な雰囲気のなかで執り行なわれた。

 2017年に続いて2年目の参加という西嶋氏は、この神事について「厳粛な雰囲気のなかで、こうやって七夕の祈願をしていただけるのは光栄なこと。お客さまの願いを責任感をもって、代表して奉納できたということで、これからもANAをますます発展させていく覚悟も改めて感じた」と感想。

 一方、2018年が初参加という田中氏は、「空気が変わったというか、そういった厳粛な場所に入って、肌で体感して、お客さまに書いていただいた短冊に祈願していただいた。それによって想いが叶えられていくのかなと感じた」と感想を話した。

本殿内で行なわれた短冊祈願
最後に御神酒が振る舞われた

 その後、神社の関係者や来賓、短冊を奉納した企業・団体の関係者が集まり、七夕短冊 お焚き上げ祈願祭を開催。2018年は48の企業・団体から、約30万枚の短冊が集まったとのこと。ANAからの短冊はこの約1割となる計算だ。

 受付は足利大学の看護学部の学生4名による巫女さんが務めた。足利大学は今年初めて祈願祭に参加。元々、近隣にある付属幼稚園で短冊に願いごとを書いて、奉納するという取り組みをしていたそうだが、今年は足利大学のキャンパスに笹飾りを設置したそうだ。

 祈願祭は本殿内と同様、厳かなもので、宮司による修祓から始まり、参列者代表として足利織姫神社奉賛会 会長の秋草俊二氏による玉串奉奠などが、粛々と執り行なわれた。

今年初めて短冊を奉納した足利大学の看護学部学生が巫女さんとして祈願祭に協力
足利織姫神社の宮司による七夕短冊祈願

 神事を終えてあいさつした足利織姫神社奉賛会の秋草俊二会長は、2017年に足利織姫神社が遷宮80周年という節目を迎えたことや、多くの企業・団体の協力で祈願祭が行なわれていることに触れ、「とくにANAには全国各地の空港、そして世界各地の空港からいろいろな方の短冊を集めていただいて、ここに奉納していただく。織姫神社もグローバルなかたちになっている」と感謝を示した。

 そして神社の将来について、「次の世代に向けて、ますます大きく神社を発展させたいし、年間入場者も40万人を超えるようになった。我々の目標は50万人であり、100万人と、小さいけれど、日本で一番きれいな、陸上の竜宮城と呼ばれるような神社を目指している」と、関係者の協力を求めてあいさつを終えた。

足利織姫神社奉賛会 会長 秋草俊二氏

 短冊を奉納している団体からは、ANAの西嶋氏と、足利大学 学長の荘司和男氏があいさつ。

 ANAの西嶋氏は、「ANAの七夕イベントは、実は社員発案のプロジェクトから始まっている。日本の伝統と、航空機を利用してくださるお客さまをつなぐには、どんなことが私たちにできるんだろう、そんな発想のプロジェクトから始まったときに、日本の伝統と七夕、こういう素晴らしい企画をしていらっしゃる足利織姫神社の皆さまのことを知ることができた」と、この取り組みのきっかけを紹介。

 そして、「いろいろな写真を見ていると、小さなお子さまからお年寄りまで、私どもが設置した笹の前で、非常に楽しげに、皆さまが大切な願いを込められている。これからもお客さまの思いを足利織姫神社さまにお届けして、そして世界に羽ばたいていきたいと思っている。ますます頑張っていきたいと思う」と、この取り組みを継続していく意欲を示した。

全日本空輸株式会社 CS&プロダクト・サービス室 CS推進部長 西嶋直子氏

 足利大学の荘司氏は、お焚き上げについて「お世話になったものに対して感謝の念を込めて供養するという、日本の、そして足利の素晴らしい文化だと思っている。足利のよい文化が、このあとも継続して続き、皆さんの願いが叶え続けられることを祈念したい」とコメント。

 また、ANAに向けても「うちの大学もグローバル化が大切だということで、そのような教育を進めているが、こういう場で、そのようなことを勧められている企業さまと一緒に立たせていただいたことをありがたく思っている」と話した。

 このほか、足利市議会議長の渡辺悟氏や、栃木県議会 議員の加藤正一氏らが来賓を代表してあいさつ。地元足利市の自治体や企業、商工会の関係者など20名近い来賓の紹介も行なわれた。

足利大学 学長 荘司和男氏
足利市議会 議長 渡辺悟氏
栃木県議会 議員 加藤正一氏

 その後、お焚き上げがスタート。多くの人の手によって、約30万枚という短冊が投じられた。そのお焚き上げの炎が上がるなか、神楽殿では足利マンドリンクラブによる演奏もスタート。

 本殿へと続く階段や神楽殿のまわりに設置された16個の銘仙行燈、そして280個の竹灯籠も灯され、境内を装飾。美しい雰囲気のなか、30万人の願いごとが大きな炎をあげて天に届けられた。

短冊への火入れが行なわれ、お焚き上げがスタート
次々に短冊が投じられ、30万人の願いが大きな炎を作り出した
神楽殿では、足利マンドリンクラブによる演奏
「足利銘仙」の柄をあしらった行燈や竹灯籠が境内を彩る