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JAL会長の大西賢氏、世界女性サミットでESG(環境・社会・ガバナンス) の取り組みについて講演
2017年5月15日 21:08
- 2017年5月13日 開催
「女性と経済」をテーマに、世界各国のリーダー的立場の女性が一同に介し、経済における女性の活躍を中心にディスカッションが行なわれる「世界女性サミット(Global Summit of Women)」。27回目の開催となった2017年は、「2017 世界女性サミット 東京大会」と題し、5月11日から13日までの3日間、東京で開催された。
東京開催ということで、初日の5月11日の開会式には安倍晋三内閣総理大臣が参加するとともに、小池百合子東京都知事による都知事フォーラムも開催された。世界各国の要人や、国内外で活躍している女性実業家が多数参加し、連日開催された会議では活発な意見交換が行なわれた。
また、今回東京で世界女性サミットが開催されるということで、JAL(日本航空)がオフィシャルエアラインとしてサミットに参画。参加者の日本への足を提供するなどしてサミット開催をサポートした。そして、最終日の5月13日に開催された「EGS(環境・社会・ガバナンス)上の課題とシェアリングエコノミー」と題されたセッションに、JAL 取締役会長の大西賢氏が参加し、JALのEGSへの取り組みについて講演を行なった。
大西氏は冒頭、「JALは、社会的責任を果たし、社会からの期待に応えるためには、EGSへの取り組みが不可欠と考えています」と述べ、EGSへの取り組みの重要性を強調。そのうえで、実際のJALの取り組みを紹介した。
まず、環境に関する取り組みとして、CO2排出量や産業廃棄物の削減を積極的に進めていることを説明。そして実際に、地球温暖化による気候変動のメカニズムを明らかにすることを目的とした、航空機による「大気観測プロジェクト」に協力し、過去25年間にわたって観測データを提供しているという。
また、社会に関する取り組みとしては、次世代の人材育成だけでなく、災害救援活動や復旧活動への支援、地域活性化など、地域社会に貢献する活動を展開。そして、実際に2011年3月11日に発生した東日本大震災に関する取り組みについて説明した。
東日本大震災では、津波によって水田が海水に浸かってしまい、塩害によって稲作農家は大きな打撃を受けた。日本政府によって、農地からの塩分除去の取り組みも行なわれているが、地震と津波の被害が甚大で塩害対策が進められない農地も少なくないという。そういったなか、耐塩性に優れる綿花を栽培することで、農業を再開するとともに農地を再生する取り組みが進められている。
東北地方は、綿花栽培の北限を越えていることから、栽培には様々な課題があったそうだが、様々な団体や企業の協力があり、現在では栽培から収穫された綿を製品化し、販売するというサプライチェーンが整い、大きな成果を上げている。そしてJALは、このプロジェクトに参加するとともに、多くの従業員が現在も取り組みをサポートしているという。
最後に、コーポレートガバナンスについて紹介。JALは、社員が幸せだと思えるような企業を目指さなければ、最高のサービスを顧客に提供したり、企業価値を高めて社会に貢献するといったことが行えないという考えのもとに、「全社員の物心両面の幸福を追求する」という企業理念を掲げているという。
そのうえで大西氏は、「その企業理念を追求するためには、全社員が身体的および精神的に健康でなければならない」とし、会社の財産である社員および社員家族の健康と生産性の管理に力を入れていると述べた。実際にJALでは、社員の健康管理に関する取り組みによって、一人あたりの医療費は退職後も含め、日本の平均と比べて20%削減できているという。
また、ガンを患った社員に対する取り組みについても紹介された。JALでは、ガンを患った客室乗務員を中心とした女性従業員に対して、さまざまな支援を行なっているという。
JALの社員約3万人のうち、約半数が女性。そして、女性の方がガンを患って苦しむことが多い。そのため、「もしガンが見つかったら私たちと一緒に戦おう」と説明し、社内の健康診断でガンが見つかった場合には、治療から治療後の復職までをサポートしているという。大西氏は「社員は一人一人がノウハウの固まりで、失ってしまうのは社にとって大きな損失となる。そのため、なるべく長く働いていただけるように、きめ細やかな対応を行うことが重要」と指摘し、この取り組みの重要性を強調。そして、過5年の間に約250名のガンを患った社員のうち、約80%が治療を経て仕事に復帰した事例を紹介して、講演を終えた。