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西鉄、鉄道部門における安全の取り組みや立体交差事業について説明会実施

運転シミュレータの体験会や西鉄天神大牟田線の高架事業の進捗を説明

2017年2月24日 実施

西鉄が報道関係者向けに運転シミュレータ体験会など安全への取り組みを説明

 西鉄(西日本鉄道)の鉄道部門は、同社が掲げている安全への取り組みや運転士育成のための教育内容、さらには福岡県や福岡市とともに進めている西鉄天神大牟田線の高架事業の進捗やこれからの工事内容の説明会を、福岡県久留米市にある電車教習所で実施した。

ソフト・ハードの両面から取り組む安全対策

会場となったのは西鉄が所有する電車教習所(福岡県久留米市宮の陣)
安全の取り組みについて、最初に安全推進課長兼教習所長でもある塩田英顕氏から説明があった

 西鉄の鉄道部門が日頃の安全の取り組みについて、メディア向けに公開するのは初めてとなる。安全マネジメントに関する訓練の内容や設備投資による安全対策、さらに今回の会場ともなった電車教習所で行なわれているスタッフ育成といった内容におよんだ。

 教育訓練は、有毒化学物質が使用されたテロや踏切での障害事故からの復旧を想定した内容で、乗客の避難誘導、交通整理訓練、対策本部設置、負傷者救出、不審物撤去といった化学物質の除去までを行なう訓練や、二次災害を誘発させないための情報伝達、列車防護、救援列車派遣といった線路・踏切上での訓練など、本番を想定した大規模訓練の様子も公開された。

 施設や設備に関して、ATS(自動列車停止装置)や列車防護無線といった列車本体に搭載されるものや、ホーム上での内方線付き点状ブロックの整備、転落防止幌などの設備について説明があった。

 続いて車両の整備や線路の点検について、列車の検査・点検ペースや、変電所・橋脚といった施設の巡回内容がスライドで紹介された。

 最後に、教習所の概要に触れられたが、運転士を育成するまでに95日間で述べ350時間が必要とのことだった。運転士として独り立ちしたあとも、この教習所で定期的に研修が行なわれている。

安全マネジメント体制(平成28年/2016年度)
安全マネジメントに関する取り組み~教育訓練
施設・設備等による安全対策
施設・設備等による安全対策~車両の検査・点検
施設・設備等による安全対策~設備の検査・点検
施設・設備等による安全対策~安全運行を支える保全車両や施設
駅ホームにおける安全性向上
駅ホーム転落防止のための体験講習会
アルコールに関する取り組み~厳正なアルコールチェック
事故等の発生状況
教習所概要
3月に運行を開始する新型車両 9000系

教習所内の各所をオリエンテーション

シミュレータ施設や学習室の案内を担当したのは、右から主任教師の石井英一氏、田島義章氏、木原和秀氏、井上真輝氏、田島敏之氏

 安全の取り組みについての説明が終了すると、教習所全体で行なわれている授業や研修を追体験するためのオリエンテーションとなった。特に3000形の車両を用いた運転シミュレータは、さまざまなシチュエーションを再現できることから、予防安全にも効果的な研修を行なうことが可能だ。シミュレータの後ろには、5000形を輪切りにした実習設備もあり、現役の研修設備として稼働しているとのこと。

 まず、実習室に移動し、木原氏より運転士向けのカリキュラムの一部を学習。モニターに表示されるアニメーションでモーターの原理(フレミングの左手の法則)の説明があり、「運転士全員に電車が動く原理を知ってもらうため」とのことで、運転士は基礎から多くの項目を、この部屋で学ぶ。

 続いて、運転シミュレータのある部屋に移動し、田島敏之氏のデモンストレーションから報道陣向けの体験会へと移行した。筆者も運転シミュレータを体験したが、マスコンを手前に引き速度を上げていくところから、惰性で前進していく感覚や駅ホームに入り停止位置でキチンと停まるには、かなりの習熟度が必要だと痛感した。しかも画面内には、線路内に立ち入っている作業員に対して警笛を鳴らし、退避させるのと同時に緊急停止の動作を行なうなど、さまざまな難題が待ち構えている。

実習室では、木原和秀氏が実際の授業に見立てて説明
モーターの原理でもある「フレミングの左手の法則」
運転シミュレータの運転台側
運転シミュレータの投影スクリーン側
運転台に田島敏之氏が座りデモンストレーションを行なう
田島義章氏がコントロールデスク側に座り非常時を想定したやりとりを披露
シミュレータはさまざまな気象条件を再現可能
3000形のマスコンはワンハンドル型で、握った状態から手を離すと自動的に停止動作が行なわれる「デッドマン装置」を搭載している。運転士が意識不明などの急病によりハンドルから手を離した時の対策装置となる
足元には2種類の警笛。手前のグリーンのペダルが電子警笛。シミュレータでも実際に作動する
雨を降らせたところ
積雪状態
濃霧により視程がわるくなった状態
気象や事故など、あらゆる条件の設定をこちらの専用PCで行なう
線路脇の土砂崩れを再現することも可能
5000形の実習設備
5000形の台車
同じく5000形の主制御器
電動発電機
起動装置と主電動機
パンタグラフの実習装置
5000形の運転台
変直ハンドルとブレーキハンドル。運転士は乗務前に事務所でハンドルを渡されて電車に向かう
車掌スイッチキー
非常時、ドアを開閉させるための忍び錠

西鉄天神大牟田線の連続立体交差事業について

 説明会の最後には、西鉄天神大牟田線の雑餉隈(ざっしょのくま)から下大利までの5.2kmにわたるエリアで工事が進む連続立体交差事業についての説明があった。

 この工事は、このエリアを往来する自動車の往来のスムーズ化や、踏切事故をなくすために、現在地上を走行している線路を高架化するもの。現在の線路脇に仮線を用意し、現在線の真上に高架線を通す「直上型」とすることによって、自動車の通勤ラッシュ時の渋滞が緩和される。

鉄道事業本部施設部 春日原連立工事事務所 所長 井口要氏
鉄道事業本部施設部 雑餉隈連立工事事務所 所長 大鶴慎一氏
連続立体交差事業の対象エリアとなるのは雑餉隈・春日原エリアから下大利の5.2km
連続立体交差の工事が完了すると交通渋滞の緩和、踏切事故の解消、線路によって分断されていた地域の一体化などの問題が解消される
従来の駅も改築工事が行なわれることによって、バリアフリー化される
雑餉隈側の1.9km間は福岡市の事業、それよりも南側の春日原から下大利の3.3kmは福岡県の事業と管轄が分かれている
直上部を通す高架の高さは約10m
直上部の高架の工事手順
仮線部の工事手順
直上部の工事風景
下大利川の仮線部
仮線部脇の工事風景
雑餉隈駅の高架工事風景
春日原駅の高架工事風景
工事中の下大利駅
これから仮線に切り替えが行なわれるポイントの状況写真
赤い点線の箇所に現在線と接続する線路の切り替え工事が行なわれ、仮線に接続される

 説明会の最後には、ウォーキングイベント「レールあんどハイク」の紹介があった。3月4日に行なわれるイベントは、「幻の仮線路&福岡外環状道路コース」と名付けられ、井尻~雑餉隈間の仮線路を歩くことができる。

 事前予約は不要で、9時30分~10時30分の受付時間内に日鉄天神大牟田線 雑餉隈駅東駅に集合。歩行コースは約5km、所要時間は約1時間30分を予定している。

説明会の最後にアナウンスされたウォーキングイベント「レールあんどハイク」。3月4日に開催される