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JR東日本、人気シェフの秋元さくら氏監修料理も楽しめるリゾート列車「伊豆クレイル」説明会

7月16日デビュー、伊豆の景色を眺めながら「食とお酒とおしゃべり」を楽しむ

2016年7月16日 運行開始

 JR東日本(東日本旅客鉄道)は、伊豆の景色をゆっくり眺めながら「食とお酒とおしゃべり」を楽しむ“乗って楽しいリゾート列車”である「IZU CRAILE(伊豆クレイル)」の運行を7月16日から開始する。座席車3両とカウンターを備えたラウンジ車1両の計4両編成で、土曜日と休日を中心に小田原駅~伊豆急下田駅間を運行する。デビューを前に、報道向けに車両概要と料理を公開した。

ターゲットは20歳~40歳代の女性、各車両はデザインにこだわり

 伊豆クレイルは、特急として使用していた651系車両の力強い印象に「柔らかさ・女性らしさ」を取り入れてリゾート列車にリデザインしたものであり、伊豆ゆかりの「桜」「海風」「さざ波」をピンクゴールドのラインで描き、エレガントな大人のリゾートを表現したとのこと。

「IZU CRAILE」の名もCresciuto(クレッシュート、イタリア語で大人、成長した)とtrain(トレイン)とile(イル、~に適した)を組み合わせた造語であり、「大人に適した列車」の意と解説されている。また、C(クール)+RAIL(レール)+E(エレガント)で「CRAILE」の表記とし、景色と食、お酒を楽しむクールでエレガントな大人のリゾート列車であると、挨拶に立ったJR東日本 執行役員 横浜支社長の平野邦彦氏は話した。

 平野氏は「エクステリアも、ターゲットは20歳代から40歳代の女性をメインにしている。建築設計家や有名なデザイナーを起用せず、JR東日本グループのオリジナルデザインで、桜やさざ波、海風などの伊豆ゆかりのモチーフをピンクゴールドであしらっている。大人のリゾートを感じさせるエレガントなエクステリアになっていると思っている」とも語った。

首都圏で食をテーマにしたリゾート列車はJR東日本初。「伊豆を観て食べて楽しんでもらう。伊豆クレイルオリジナル商品も販売する、この列車のキーワードは伊豆のショーケース」と平野支社長

 インテリアについては、和モダンをベースに伊豆の豊かな自然を感じる心地よい空間をデザイン、座席の1、4号車は車窓の両側に広がる伊豆の「海」と「山」をイメージした「青」と「緑」、3号車は「夕日」をイメージした「オレンジ」の3色展開。通路のカーペットデザインは、桜の花びらが川面を流れる様子をイメージ、天井は朝日に照らされた竹林が織り成す影をイメージしたものとのこと。

 車両は定員98名(予定)の全車グリーン車指定席の651系4両編成。1号車はすべての座席がオーシャンビューで、2名用のカウンター席と向かい合わせ席を配置した。2号車はバーカウンターとラウンジを併設し、景色を眺めながらくつろげる空間。3号車はグループ旅行に最適な海側に面したコンパートメント席で、車イスを置くスペースを確保したコンパートメント席も1室配置し、入口の暖簾は四季折々デザインを変えて季節感を醸成するとのこと。4号車は1人からグループまで気軽に利用できるように、回転式リクライニングシートと固定式ボックスシートを配置している。

伊豆クレイルの1号車から3号車までのスケッチビューと編成に関する解説スライド。家族でも、友達同士でも、一人でも伊豆のオーシャンビューを楽しめる配慮がされている

 登壇した伊豆急行 取締役社長の小林秀樹氏は「食、酒、音響、装飾に至るまで、伊豆の魅力が押し詰まった素晴らしい列車ができた。この列車が伊豆急線を走ってくれることを、伊豆急グループは待ち望んでいた。伊豆急の路線はリゾートなので、お客様の数は天候に左右されやすいことは否めないが、伊豆クレイルで全天候型の新しい観光の付加価値がつくことはうれしいこと。これからも一生懸命、おもてなしに取り組んでいく」「伊豆急グループは、チームクレイルの一員と考えている。お客様に新しい伊豆の観光の思い出や感動をお持ち帰りいただけるように、JRや各自治体と力を合わせていく」と語った。

東日本旅客鉄道株式会社 執行役員横浜支社長 平野邦彦氏
伊豆急行株式会社 取締役社長 小林秀樹氏

 運行区間は、小田原駅~伊豆急下田間を1日1往復となっており、下りは小田原駅(11時40分頃発)~伊豆急下田駅(14時06分頃着)、上りは伊豆急下田駅(15時09分頃発)~小田原駅(17時12分頃着)。途中の停車駅は熱海、伊東、伊豆高原、伊豆熱川、伊豆稲取、河津。下りのみ、上りのみの利用も可能なので、特急「踊り子」と組み合わせて利用するのもよいだろう。

発着地を代表して小田原市、下田市の両市長より挨拶

 小田原市の市長である加藤憲一氏は挨拶のなかで「小田原が伊豆クレイルの出発地になることを、本当にうれしく思っている。これまでも踊り子号、ビュー踊り子号の特急列車もあり、都心と伊豆を結ぶターミナルとして機能し、たくさんのお客さまにお越しいただいていたが、今回の専用列車は、これまでとは違うお客様のご来訪が期待できるので楽しみにしている」と話し、「小田原と言うとお城、城下町のイメージが強いが、自然環境豊かで多くの食材がある。長い歴史の中で培われた文化などもたくさんあり、まだまだ観光でお越しいただけるお客さまに伝えきれていないが、伊豆クレイルの車内を通じて伊豆の魅力とともに小田原のよさを伝えられるよいチャンスになっていくと考えている」ともコメントしていた。

甲冑を引き連れて登壇した加藤市長は、小田原駅構内にオープンする「IZU CRAIL LOUNGE」の内装や什器の木材は小田原のもので、小田原市から寄贈されたものとも語った

 下田市の市長、楠山俊介氏は「伊豆クレイルの到着地、伊豆観光の目的地になったことに感激している。162年前にペリー提督が下田に来訪し日本が開国された。ペリー提督は下田の街を、こんなに美しい街はない、こんな素晴らしい人々はいないと称していただきました。昭和36年(1961年)に伊豆急線が開通し、JRの特急列車で多くのお客さまを運んでいただいたところでもある。伊豆半島は海の国、山の国でもあり、海の幸や山の幸も豊富。観光でお越しになられたみなさんに喜んでいただける伊豆半島を、もっと楽しむ列車ができたことをうれしく思っています。お洒落な方々が、お洒落な電車を使って、お洒落な時間を使って、お洒落な街に来る。まさにこの列車は“おしゃレール”だと思っています」と語っていた。

楠山市長はペリー提督とともに登場。「伊豆急下田の駅に降り立った時に、お持ちいただいていたお洒落感、それを裏切らないような街にしたい。お帰りになる際には本当に満足していただき、もう一度来たいと思ってもらえるようにしたい」とコメント

料理監修は、人気フレンチレストラン「モルソー」の秋元さくらシェフ

「食とお酒とおしゃべり」を楽しむリゾート列車なのだから、誰しも提供される料理が気になるところとは思うが、続けてステージに立ったのは目黒にあるフランスの家庭料理とワインで人気のレストラン「モルソー」のオーナーシェフである秋元さくら氏。

 メニューを考えたときのイメージを尋ねられると「自然豊かな伊豆の食材を四季折々の形にして、美しく楽しく、そして親しみやすくの3つのキーワードをテーマに料理を考えました。女性がターゲットなので、見た目が艶やかで心が躍るような表現ができればよいなと思い、そこに心を込めました。親しみやすくても、想像したとおりではなく刺激的で楽しさがあるような料理だったらいいなと思っています」とコメントした。

 提供される料理は、下り列車は「クレイルスタイル・サマーランチセット」、上り列車は「クレイルスタイル・アフタヌーンカフェセット」。料理の違いについて問われると秋元氏は「どちらも地元食材を非常に大事に使っていますが、下り列車は女性のことを気遣うバリエーション豊かでボリューミーな仕上がりにしています。上り列車は、私もお酒が大好きなので、お茶だけじゃなくてお酒も楽しめるようなものにしています」と語っていた。

 「クレイルスタイル・サマーランチセット」と「クレイルスタイル・アフタヌーンカフェセット」のメニュー詳細についてはJR東日本のWebサイトで公開されたので確認してほしいが、実際に下り列車の料理を製作する、平塚で人気の料理店「アッシュ×エム」の代表取締役である相山洋明氏は「今回は彩りと香りを重視している」とした。。

 相山氏は「駅から列車が出発して、車窓から景色を眺めながら、配られたお弁当の蓋を開けた瞬間に“わっ”と小さな歓声が上がるような彩りや、旬を感じる香りがあることが一番こだわった部分です。また、調理してからお客様の口に届くまでの時間を逆算して、一番いい状態で食べていただけるようにしています。ローストビーフなどは色の鮮やかさ、メロンと生ハムは一口食べたときのバランス感なども感じていただきたいです。ワサビの冷製フランでは、口に入る時までワサビの香りを飛ばさないためにどうするかなど、今日まで工夫してきた」と調理に対するこだわりを語った。

料理を監修した秋元氏(左)と往路の料理製作を行うアッシュ×エムの相山氏(右)。二人とも評判の店のオーナーでもある
こちらが「クレイルスタイル・サマーランチセット」。「ローストビーフとグラタンドフィノア」と「伊豆温泉メロンと生ハムのオードブル」を試食したが、とても満足できるものだった

 下り列車の料理を担当する伊豆今井浜 東急ホテルの料理長、片之坂亨氏は、難しかった料理について聞かれると「伊豆の食材と言えば金目鯛、フレンチなのでコンフィなのですが、小さいことに難しさを感じ課題となりました。また、駿河湾の桜えびを使った料理を、どういう料理にするかとても考えました」と話し、スイーツに関して苦労した点を問われたシェフパティシェの土屋真氏は「伊豆を代表する柑橘を使ったものを考えたが、ホテルで出すのとは違い列車内で食べていただくので、風味や食感を出すのに苦労しました。ブルーベリーのチーズケーキでは、今から旬のブルーベリーを使うが、酸味が足りない場合の味の調整なども苦労しました」とコメントしていた。

伊豆今井浜 東急ホテルの片之坂料理長
シェフパティシェの土屋氏
こちらが「クレイルスタイル・アフタヌーンカフェセット」。「金目鯛のコンフィ ラタトゥイユ添え」と「富士湧水ポークのボロニアソーセージを使ったカンパーニュサンドイッチ ワサビの風味」、「伊豆稲取ニューサマーオレンジプリン」を試食
会場に用意された車両セットと料理。コンパートメント車に料理が並ぶとこのようなイメージになる

 この伊豆クレイルの「クレイルスタイル・サマーランチセット」や「クレイルスタイル・アフタヌーンカフェセット」をいただくためには、JR東日本グループの旅行会社である「びゅうトラベルサービス」からツアーを申し込む。1号車(定員24名)、3号車(定員22名)の食事・ドリンクがセットになって6月3日14時から販売される。

 旅行商品として、宿泊プランや日帰りプラン、小田原および熱海発着プランなどがあり、往路(小田原駅~伊豆急下田駅)の3号車利用時にはオプショナルプランとして“ワイン飲み放題プラン”も用意されている。こちらも6月3日14時から販売される予定となっている。

 なお、食事などのサービスがない4号車(定員52名)は、乗車券・指定席券で利用可能とのことだ。