ニュース

首都高、3月18日開通の横浜北線でトンネル内火災事故を想定した防災訓練実施

避難用の道路下空間を公開。首都高初導入の「すべり台式」非常口を動画で

2017年3月8日 公開

首都高が横浜北線横浜北トンネル内で防災訓練を実施

 首都高速道路は8日、開通を18日に控えた横浜北線(旧横浜環状北線)の横浜北トンネル内で、火災をともなう車両事故の発生を想定した防災訓練を実施した。神奈川県警察、横浜市消防局、首都高速道路などが合同で行なったもので、防災設備が正しく稼働することと、事故発生時に協調する関係機関との連携について確認した。

 横浜北線は3月18日16時に、横羽線 生麦JCT(ジャンクション)~第三京浜道路 港北JCT間を結ぶ延長約8.2kmの自動車専用道路として開通する。うち約5.9kmがトンネルとなっており、万一の事故発生に備え、その長いトンネル区間には首都高速道路が導入するものとしては最新の防災設備が投入されたという。

 ここでは、8日に行なわれた防災訓練の様子と、防災設備、道路下避難経路などを写真とともに紹介する。なお、港北JCTから先、東名高速道路 横浜青葉までの区間には、今回の横浜北線に接続する形で横浜北西線が2020年頃までに完成する予定。ここにも、横浜北線に準じた防災設備を採用する計画としている。

首都高速道路株式会社 代表取締役社長 宮田年耕氏が開会の挨拶

多様な消火設備をフル活用。迅速な救助、撤去作業を実演した防災訓練

 防災訓練では、横浜北線横浜北トンネル、横浜港北JCT方面の下り線で、計7台の乗用車、貨物トラック、バスが絡む多重衝突事故が発生したと仮定。うち乗用車1台から出火し、貨物トラック1台は横転しているという状況を再現した。非常電話、各種消火設備、非常用避難経路といった防災設備を用い、消防・救助部隊、警察、首都高レッカー隊などとの迅速・緊密な連携をこなした。

トンネル内で多重衝突事故が発生。後続車両が滞留し始めた
非常電話から通報
乗用車1台で火災が発生。トンネル内に備え付けの消化器を使って初期の消火活動を行なう
大型電光掲示板に火災の発生と避難を告げる表示
通報を受け、高速道路交通警察、首都高パトロールが到着
非常口を開き、すべり台で道路下の空間へ避難者を誘導
泡消火栓を利用して鎮火を図る
その間にも被害状況の確認などが進む
トンネル天井付近に備える消火設備より水噴霧。激しい雨のように降り注ぐ
消防隊が到着
消防車両による消火活動で鎮火した
現地対策本部を設置
横浜市消防局特別高度救助部隊「スーパーレンジャー」が到着
脱出不能となった車両から救助するため、油圧カッターなどを使って車両の各部を切断、破壊していく
ルーフ部分を取り外し、救助
直ちに救急車へ運ばれた
横転したトラックに取り残されたドライバー
スーパーレンジャーが車両によじ登り、救助へ
火災を鎮圧し、救助と避難も完了。消火、救助を手がける部隊は速やかに撤退していく
横転したトラックなど、自走できない事故車両の撤去に取りかかる
トラックを起こすため、エアジャッキが投入された
36トンまでの重量に対応するエアジャッキを始動
始動からわずか数分で完全にトラックが起き上がった
首都高協定レッカー会社によりレッカー移動
ほかの事故車両も次々とレッカー移動されていく
ほぼクリアになった事故現場だが、最後に路面清掃を行なう
復旧後、高速道路交通警察と首都高パトロールが一般車両を先導。訓練開始から終了まで53分
今回の防災訓練に参加した各組織のみなさん

横浜北線横浜北トンネルの防災設備

生麦JCT方面を見たところ
横浜港北JCT方面を見たところ
非常電話。黄色いボックスを開け、中にある受話器から通報できる
左の扉奥に消化器、中央に泡消火栓、右に水栓が設けられている。この消火設備はトンネル内の50mごとに設置
泡消火栓から取り出した消防ホース。50mの長さがあり、この場所で火災が発生し使えなくなったとしても、50m先の泡消火栓から伸ばせば問題なく対処できる
道路脇にある自動火災検知器。25mおきに設置され、赤外線で火災の発生を検知する
拡声放送スピーカー。200m程度の間隔で設置されており、各スピーカーから音声を遅延させて出力することで聞こえやすさを確保しているとのこと
100m間隔で設置されている監視カメラ。火災発生時はその場所の映像を自動で管制室に映し出すという
非常口の場所を知らせる表示
地上へと続く換気所に備えられた非常口
こちらは首都高として初めて導入することになるすべり台式の非常口
緑のボタンを押すことで、非常口が開く。銀色の箱状のカバーが開くと同時に、その下に見える緑色のスライド扉も動く。このスライド扉は8分経過すると閉じる仕組みで、これによりトンネルに充満した煙が避難通路に入り込むのを軽減する
すべり台
首都高 横浜北線に導入されるすべり台式の非常口を使って道路下通路へ降りる様子
高齢者や体の不自由な人も想定して検証を重ね、開発したというすべり台
道路下の避難兼メンテナンス用通路。基本的な構造は山手トンネルに近いとのこと
避難経路が分かりやすく表示されている。天井高は2.4mで、専用の緊急用車両が通行することもある
避難後、緊急電話で通報もできる。動けない人はここで救助を待つことも可能
約600kgの重りを用いた機械的な仕組みでこの上にある非常口を開く構造で、停電時も動作する
構内には消化水栓用の水道管などが走っている
非常口付近を映し出す監視カメラ
表示に従って歩くと、地上へ出ることのできる非常階段にたどり着く
道路下の避難通路は地下7階に相当する。地上まではかなりの距離がありそうだ
横浜北線は3月18日16時に開通する