ニュース

JAL、1-2-1の“パーソナル+リゾート配置”を採用した新ビジネスクラスシート搭載ボーイング 777-200ER型機(SS2)発表会

バンコク、シンガポール、ホノルル線に順次投入

2016年6月10日 開催

新ビジネスクラスシート「SKY SUITE III」を搭載したボーイング 777-200ER型機(SS2)

 JAL(日本航空)は6月10日、新ビジネスクラスシート「SKY SUITE III(スカイスイート 3)」を採用した新仕様のボーイング 777-200ER型機を、6月18日の羽田(東京国際空港)~バンコク線(JL031便/JL034便)で初就航すると発表した。同日、羽田空港において発表会を開催。新ビジネスクラスシート採用の狙いなどを説明した。

新ビジネスクラスシート「SKY SUITE III」。配置は1-2-1

 新ビジネスクラスシート「SKY SUITE III」は、名前からも分かるとおり新仕様の第3弾となる。ボーイング 777-300ER型機や787-8、787-9型機に採用されているビジネスクラスシート「SKY SUITE」、ボーイング 767型機に採用されているビジネスクラスシート「SKY SUITE II」と同様、フルフラット&全席通路アクセスを実現しているが、SKY SUITE&SKY SUITE IIが進行方向に正対する配置であるのに対し、1-2-1配置の中央2席が内側を向き合うヘリンボーン配置を採用。窓側列の席は外側を向くことで、高いパーソナル空間を実現しつつ、中央席では2人での会話もしやすいものとなっている。

全席通路アクセス、全席フルフラットを実現
17インチの大型モニターを装備
扇形のおしゃれなパーティション。もちろん格納することもできる

 JALはこれら新世代のシートを搭載した機体を「JAL SKY SUITE」シリーズとして展開。SSxと予約システム上は表記されている。たとえば、ボーイング 777-300ER型機は「JAL SKY SUITE 777」で「SS7」、767型機は「JAL SKY SUITE 767」で「SS6」、787-8型機は「JAL SKY SUITE 787」で「SS8」、787-9型機は「JAL SKY SUITE 787」で「SS9」となる。

 今回導入されたボーイング 777-200ER型機は「JAL SKY SUITE 777」で「SS2」。シート名称と機体愛称が似ているため、以下本記事では機体愛称をSS2と表記していく。

日本航空株式会社 執行役員 路線統括本部 商品・サービス企画本部長 加藤淳氏

 発表会では冒頭に紹介ビデオが流されたあと、JAL 執行役員 路線統括本部 商品・サービス企画本部長 加藤淳氏が登壇。SKY SUITE IIIシートを“全席通路アクセス・全席フルフラット”を実現するシートとして紹介した。

国際線777-200ERに新たなビジネスクラス座席を導入

「“1クラス上の最高品質”というテーマを従来よりスカイスイート仕様として追求してまいりましたが、これまでは長大路線を中心に導入してまいりました。この度、こちらの200ERの機材ですが、中距離路線についてもスカイスイート仕様に刷新してお客さま満足度を高めるべく準備をしてきました。」

「6月18日から羽田~バンコク線にまずは投入します。その後、改修が進むにつれて、8月には羽田~シンガポール線に投入する予定です。さらに少し間は空きますが、年明けからはホノルル線、まず羽田~ホノルル、それから関空~ホノルルといったところに導入して、その後、来年3月以降で成田~ホノルル、名古屋~ホノルルといったところにこの機材を導入していきます。」

「長大路線のスカイスイートを経験されたお客さまが増えてくるなかで、中距離路線の機材についても『快適性を高めてほしい』『スカイスイート化してほしい』という声をたくさんいただきました。我々としては、それは予想されることでしたので、改修については3年くらい前から企画し、ようやく実現にこぎ着けました。」

 加藤氏は、SS7、SS6などの導入が今回のSS2の導入につながっているとし、顧客満足度も高いことから、スカイスイート仕様を中距離路線へ投入していくという。

 プレミアムエコノミークラスのシートは、スカイスイート仕様の標準ともいえる「SKY PREMIUM(スカイプレミアム)」。このスカイプレミアムについては、「ビジネスクラスとエコノミークラスの間にあるスカイプレミアム、こちらは従来のスカイスイートと同様の機材を導入しています。大変ご好評をいただいているので、従来のスカイスイート仕様のシートを踏襲しました。特徴としては、前の人がリクライニングをしても後ろに倒れてこない、背もたれが倒れてこない、いわゆるフィクスドバッグ形式の座席です」と、高い満足度が得られているとのことだ。

プレミアムエコノミークラスのシート「スカイプレミアム」。配列はSS7同様の2-4-2

 エコノミークラスのシートは、JALが“新・間隔エコノミー”として訴求している「SKY WIDER(スカイワイダー)」。従来のエコノミークラスのシートと比べて足下スペースを10cm拡大しており、一般にも利用機会が多いことからスカイスイート仕様のアイコンとなっている。このスカイワイダーでのトピックは、SS7の3-3-3配置から、3-4-2配置へと変更されていること。この配置については、「座席の配置ですが、普通エコノミークラスというと3-3-3の横9席が一般的ですが、今回ホノルル線に就航することを年頭において、3-4-2という配置を行なっています。ホノルル線では、ご夫婦やカップル、あるいは家族連れ、いろいろな人数の組み合わせがありますし、このような配置のほうが通路への出入りの自由度も高まると考えてこのような配置を取りました。全クラス機内エンタテイメントのモニターも付いていますし、機内Wi-Fiも備えています」と、説明した。

エコノミークラスのシート「スカイワイダー」。3-4-2の配列となっている

 JALは、ボーイング 777-200ER型機の11機すべてをSS2へと改修し、中距離路線における顧客満足度を高めていく。

 発表会終了後、加藤氏への合同インタビュー取材が行なわれた。合同インタビュー取材、および個別質問については以下に掲載しておく。

――ホノルル線ではなく、なぜバンコク線が先になったのか?

加藤氏:中距離路線のビジネス利用のお客さまから快適性の向上に対する声が多く、我々としても東南アジアのビジネス需要に対してしっかりとお客さまのご要望に応じていきたいということで、東南アジアのバンコク、シンガポールから新しい機材を入れたいと考えました。

――バンコク線での観光客とビジネス客の比率は?

加藤氏:バンコク線はかなりビジネス需要のほうが高い。ホノルル線のほうは(羽田、成田、関空、セントレアと)路線が多くいっぺんに入れられないので、順番にという形になってしまう。すぐにご要望に応えていくという面では、東南アジアのビジネス需要から対応していきたいというところです。

――エコノミーは3-4-2の変則配置だが、これはほかの路線でも行なっていくのか?

加藤氏:バンコク線では、そのニーズが強いかというとそうでもないのだが、ホノルル線というような観光ディスティネーションに対しては、この配置が有効なのではないかと考えている。そういうディスティネーションであれば、今後も考えることはあるかもしれません。

――実機を見ての出来映えについての感想は?

加藤氏:大変満足しています。今回の(ビジネスクラスシート)「SKY SUITE III」というのは、実は足下の部分が交差しており、非常にコンパクトに作れています。そのおかげで座席数を確保できています。我々としては、目的を全部かなえることができたということで非常に満足しています。

――乗客に提供できる快適性は?

加藤氏:ビジネスクラスについては、フルフラットシートや全席通路アクセスというのはスタンダードになってきているので、それに対してしっかりお応えするというのが上位クラスだと思います。エコノミークラスについては、座席ピッチが広いですし、CMで「エコノミーでも着いたあと疲れない」と申し上げているとおり、エコノミー座席での快適性をしっかり追求しています。

――ビジネスクラスの席数が減っているが、あえて減らした理由を?

加藤氏:従来の席数よりも減っていますが、従来のシートはフルフラットではありません。そのため、従来の席数を確保するのは物理的に無理なところがあります。それでも最大限席数を減らさずにすむにはどのようにしたらよいかということを模索しました。その中で、(中央のシート2席が)向かい合っている、その中で足下が交差している、ただし上下になっていることで空間はしっかり確保できているという商品が(シートメーカーで)計画されているということで、我々としてはいち早くその商品の実現に一緒になって取り組みました。

 ヘリンボーン配置はすでに各航空会社さまも導入されており、足下が干渉しないような配置になっています。我々は、足下を干渉しないよう、2段ベッド的な構造になっているのが異なっています。

――3-4-2のエコノミークラス配置については?

加藤氏:この配置は我々の提案です。ホノルル線はカップルや新婚の方がバラバラに座ることがあり、3-3-3ですと割り切れませんので、どうしても離れてしまうことなどの悩みが昔からありました。なるべくそれを軽減できるような配置というのはなんなのだろうという議論の中で、こういった形を採ってみました。今後もお客さまの反応を見ながら、活かすべきかどうかを判断していきたいと思っています。

――トータルの座席数も、W51仕様(245席)、W52/W53仕様(312席)のボーイング 777-200ER型機から236席へと減っている。JALの収益性について問題は発生しないのか?

加藤氏:確かにトータルの座席数は減っていますが、これまでもスカイスイート化により座席の魅力が向上し、スカイスイート化以前よりも早く座席が埋まっていきます。これにより全体の収益性は向上しています。


 なお、質問の中にあるW51仕様などのコンフィギュレーションナンバーは、JALのWebサイト「航空機コレクション」で知ることができる。SS2はW61仕様とW62仕様があり座席配置は同じで、乗務員の休憩施設が装備されていないものがW62仕様になる。SS2の初号機となった登録記号JA701JはW61仕様とのこと。