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紅葉写真を100倍ステキに仕上げよう! 旅先の観光写真がもっと映える撮影と画像処理のコツ
- 提供:
- アドビ株式会社
2022年11月7日 00:00
深まる秋。今年こそはと紅葉の時期に合わせて旅行を計画している人も多いのではないだろうか。鮮やかな紅葉は写真に撮って残しておきたいと誰もが思うことだろう。本記事では、これからベストシーズンを迎える京都の紅葉をテーマに、一眼レフやミラーレスカメラをお持ちの方はもちろん、スマートフォンで撮影したい方にも役立つ撮影と写真の仕上げ方について紹介する。
写真家おすすめ「京都の紅葉」撮影名所・6寺院
・楊谷寺 ~花手水発祥のお寺で撮る、手水に浮かぶ散り紅葉~
・正寿院 ~猪目窓と160枚の天井画を同時に写し込む~
・嵐山 祐斎亭 ~丸窓から見るライトアップされた紅葉とリフレクション~
・善峯寺 ~雨霧のかすんだ景色に映える鮮やかな紅葉~
・勝林寺 ~雅を感じさせるライトアップされた紅葉と和傘~
・厭離庵 ~紅葉の時期に一般公開される庭園の美しい寺院~
風景写真家が勧める京都の紅葉スポット
ここでは京都在住の風景写真家である星野佑佳さんに紅葉の時期に巡りたい京都のお寺などの建築物を紹介してもらった。
ただ建築物と風景という組み合わせは、写真家であっても上手く撮るのが難しいテーマ。例えば屋内と窓からの風景を1枚の写真に収めようとすると、屋内が真っ暗になったり、逆に窓からの風景が真っ白になったりする。そんなときはPCでもスマホでも使える画像処理ソフトのAdobe®︎ Lightroom®︎(以下Lightroom)の出番だ。星野さんも、撮影の現場では対処しきれない明るさや色の処理などをメインにLightroomで画像調整を行ない見事な写真に仕立てている。
そんな星野さんお勧めの建築物とその風景、およびLightroomによる写真の仕上げ方をご覧いただきたい。
紅葉写真の撮影とLightroomでの仕上げ
美しい紅葉写真を撮るには、同じ場所であっても明るさを変えて撮ったり、構図や撮る角度を変えて撮ったり、ズームレンズであれば広角側や望遠側の両方で撮ったりしておくといい。あとから見返すと撮影時には気付かなかったよさを発見することもあるからだ。
撮影したあとはLightroomの出番だ。よく撮れた写真なら「お化粧」程度に画像調整を行なうと、見る人の印象に残る鮮やかな写真になる。また、構図はいいのに明るさで失敗したような写真もLightroomで「修正」すれば、撮影したときの感動的な風景が蘇る。
以下、星野さんの作品を題材に、お寺の様子や撮影時の状況、そしてLightroomによる仕上げを解説してもらう。写真家が何に注目し、どのような撮影を行ない、どう仕上げるか、その術を垣間見ることができる。撮影や仕上げのヒントにしてほしい。
楊谷寺 ~花手水発祥のお寺で撮る、手水に浮かぶ散り紅葉~
カメラ: Nikon Z7 II
レンズ: NIKKOR Z 24-70 f/2.8 S
シャッタースピード: 1/25秒
絞り値: f5.6
露出モード: 絞り優先オート
露出補正: -1.0段
ISO: 800
ホワイトバランス: 晴天
<星野さんコメント>
撮影状況:
楊谷寺は「花手水」で知られたお寺です。花手水という名称を使ったのもこちらのお寺が最初だとか。境内のあちこちにある花手水が参拝客の目を楽しませてくれます。この写真は手水に浮かぶ「散り紅葉」がテーマ。雨の日のしっとりとした雰囲気を狙ったのですが、その雨のためにテカリが出るのを抑えるためと紅葉の色を出すためにPLフィルターを使いました。それなりに暗い環境でさらにPLフィルターも使ったため、手ぶれが心配でした。そこで明るさはLightroomで仕上げることとし、撮影時は暗めに(シャッタースピードが速くなる)撮っています。なお、拝観は境内に示された順路通りに進みます。はじめは寺院内を見学し、後半では空に広がる紅葉も楽しめます。
※「PLフィルター」とはカメラのレンズに取り付ける黒っぽいフィルターのこと。被写体表面の反射を抑える効果があり、被写体のリアルな色や質感を表現したり、水面に対して利用すれば水のなかの様子がくっきりと写るようになる。ただし、フィルター自体が黒いのでシャッタースピードが遅くなるなどのデメリットもある。
Lightroomでの仕上げ:
中央の散り紅葉を撮影した状態より浮き上がらせるようにしたいと思いました。全体的に不足気味な彩度は「プロファイル」を「ビビッド」にすることで補い、そのうえで散り紅葉に注目して適度な明るさに。最後に、周辺を暗くして散り紅葉が浮かび上がる効果を出しています。
STEP1 発色のベースを「ビビッド」に変更して色鮮やかに
Lightroomの初期設定では、発色の基礎となる「プロファイル」は「Adobe カラー」となっている。万能なプロファイルではあるが、紅葉写真などの色彩をもっと引き出したいときは別のプロファイルを利用してもいいだろう。風景写真に合うのは「風景」や「ビビッド」などのプロファイルだ。
STEP2 暗く撮影したぶんを明るくする
撮影時の状況によってあえて暗く撮ることもある。手ぶれが心配だったので、わざと暗めに設定することで速いシャッタースピードにし、手ぶれを回避した。手ぶれした写真はLightroomでも直せないが、多少の暗い写真であればLightroomで十分な調整ができる。Lightroomでの調整を見越せば、このような撮影法も可能だ。
正寿院 ~猪目窓と160枚の天井画を同時に写し込む~
カメラ: Nikon Z7
レンズ: NIKKOR Z 14-30 f/4 S
シャッタースピード: 1/30秒
絞り値: f11
露出モード: 絞り優先オート
露出補正: -3.0段
ISO: 400
ホワイトバランス: 晴天
<星野さんコメント>
撮影状況:
ハート型の窓は「猪目窓」といいます。ハートというと西洋文化を想起しますが、「猪目」はれっきとした日本の伝統的な紋様です。この猪目窓と可愛い天井画が人気で、並んで順番に写真を撮ります。私も参拝客の一人として撮ったのですが、急かされているようでちょっと焦りながら連写をしました。横位置で撮ると縁側の外がたくさん入り白飛び部分が多くなりそうでした。そこで縦位置にして天井画の割合を増やしています。露出は外の風景に合わせているので、屋内が暗く写っていますが、その明るさはLightroomで十分に回復できるので安心して撮っています。正寿院の拝観ですが、本堂でお菓子をいただいてから、猪目窓のある客殿の見学となります。
Lightroomでの仕上げ:
屋内に露出を合わせると外の景色が白く飛んでしまうため、撮影時はわざと暗く撮っています。この暗く写った屋内に対しては「自動補正」を適用し、その後、微調整を行ないました。さらに明るくしたい天井画部分は「線形グラデーション」を使って明るくしています。
STEP1 「ビビッド」と「自動設定」の適用
調整前の写真を見ると紅葉の鮮やかさが不足しているように感じた。また、紅葉に露出を合わせているため、建物の内部が暗く写ってしまった。それぞれ調整したい。「プロファイル」をビビッド系に変更すれば、紅葉の鮮やかさは復活する。明るさの調整が難しそうだが、そんなときはいったん「自動設定」を適用すると、調整の方向性を示してくれるのでありがたい。
STEP2 明るさや彩度の調整を追い込む
前のSTEPの「自動設定」でいい感じにはなったが、まだ屋内が暗い印象だ。そこで手動で明るさの調整を行なう。調整しすぎると屋内だけでなく屋外の紅葉にも影響が出る。最終的に天井部分は次のSTEPで調整することとし、全体的な明るさの印象を整えた。
嵐山 祐斎亭 ~丸窓から見るライトアップされた紅葉とリフレクション~
カメラ: Nikon Z7 II
レンズ: NIKKOR Z 14-30 f/4 S
シャッタースピード: 8秒
絞り値: f11
露出モード: マニュアル
露出補正: -2.7段
ISO: 200
ホワイトバランス: 晴天
<星野さんコメント>
撮影状況:
丸窓に見えるライトアップされた紅葉は目を見張ります。それをさらに引き立たせるのが、ピカピカに磨かれた机に映るそのリフレクション(反射)。このシーンを撮ろうと机の横一列に観光客が並び、そしてうしろには順番待ちの二重三重の列がありました。この「丸窓の部屋」以外にも嵐山の自然が映り込む「水鏡」や金魚の水槽が置かれたトイレなど凝った演出が人気の建物です。丸窓の撮影では、机に傷を付けないようにハンカチを敷き、その上にカメラを置いてスローシャッター(レリーズ使用)で撮っています。紅葉の色を出すためと、また丸窓の実像と机に映り込んだ虚像との露出差を減らすためにPLフィルターも使っています。
Lightroomでの仕上げ:
この写真のポイントは丸窓から見える鮮やかな紅葉と机に映るリフレクション。紅葉に露出を合わせ、Lightroomの仕上げで屋内がぼんやりと分かるくらいに明るくしました。紅葉の鮮やかさを強調するために彩度も強めています。最後にリフレクションの範囲だけ明るさを強め、より印象的な写真に仕上げました。
STEP1 紅葉の鮮やかさを強調する
鮮やかな紅葉というのは、その印象が強いほど記憶のなかで美化される。あとから写真を見て「もっと色鮮やかだったはず」などと感じるのは、そのような理由もあるのだろう。色彩が弱く感じられるような場合は「プロファイル」を変えると、写真が見違えるほど鮮やかになることがある。試してみてほしい。
STEP2 全体の明るさを調整する
屋内が真っ暗なままだと、あまりにシルエット感が強すぎるので、障子や天井の様子がぼんやりと分かるくらいに明るくする。明るくしすぎると丸窓から見える紅葉の印象が弱くなるので、屋内の様子が分かりつつも、あまり明るくしすぎないのがポイント。
善峯寺 ~雨霧のかすんだ景色に映える鮮やかな紅葉~
カメラ: Nikon Z7 II
レンズ: NIKKOR Z 24-70 f/2.8 S
シャッタースピード: 1/50秒
絞り値: f/8
露出モード: 絞り優先オート
露出補正: -1.7段
ISO: 400
ホワイトバランス: 晴天
<星野さんコメント>
撮影状況:
国指定の重要文化財である「多宝塔」や「大元帥明王軸」、国指定天然記念物の「遊龍の松」などがある西山 善峯寺。広い境内からは京都の街並みも見渡せますし、自然風景的な写真も撮ることができます。ここではお堂の屋根を挟んで手前と遠景に紅葉を配し奥行き感を出しました。この日は雨。雨霧が立ち込めるお堂と紅葉の幻想的な美しさを写真に表現したいと思い、ずぶ濡れになりながらの撮影でした。しかし、いざ撮ってみると手前と遠景の露出差が大きいために手前の赤い紅葉がくすんでしまい、また肉眼では美しかった雨霧も白々として、そのままでは作品として成り立たないなと。それでもデータはしっかりしているので(RAWで撮っているので)、Lightroomで調整したところ撮影時のイメージをしっかりと再現することができました。
Lightroomでの仕上げ:
雨や霧の遠景は、思ったような写真にならないことが多いです。雨や霧などでかすんだ様子とはっきりと見せたい紅葉など、表現として相反する要素が混在するからですね。この作品は、撮影した時点ではがっかりするようなレベルだったのですが、Lightroomで調整したところ撮影時のイメージを見事に再現してくれました。
STEP1 「自動設定」を利用して適度な明るさにする
雨霧の雰囲気を残しながら、適度な明るさに調整したい。「自動設定」を試したところ、思い描くイメージにかなり近い感じに仕上がったので、それを微調整。また、もう少し遠景をはっきり見せるために「かすみの除去」も使っている。
STEP2 雨霧のかすんだ雰囲気を補う
STEP1での調整とのバランスをとりながら、かすんだ雰囲気を醸したい。調整の方法はいくつかあるが、ここでは「トーンカーブ」のシャドウ端を持ち上げ、ハイライト端を引き下げることでその雰囲気を表現した。
勝林寺 ~雅を感じさせるライトアップされた紅葉と和傘~
カメラ: Nikon Z7 II
レンズ: NIKKOR Z 24-70 f/4 S
シャッタースピード: 1/13秒
絞り値: f/5.6
露出モード: 絞り優先オート
露出補正: -2.0段
ISO: 800
ホワイトバランス: オート
<星野さんコメント>
撮影状況:
花手水などでも人気のあるお寺。訪れたのは寺院内の楓が色づく「秋の拝観」の期間中。境内に和傘や狐面などと紅葉のコラボがあちこちにあります。この日は、夕方のまだ明るいころから撮影を始め、やがて目当てのライトアップが始まりました。まだ空の青色が残っている宵の時間帯は明暗差が少なく、外の景色とライトアップが映える和傘の両方を写し込めます。カメラのホワイトバランス設定を「太陽光」から暖かみを残す「オート」に変え、空の青が白飛びしないようにマイナスの露出補正をして手持ちで撮影しています。
Lightroomでの仕上げ:
ライトアップされた和傘が白く飛ばないように、かなり暗く写しています。通常なら、これは失敗写真とされるかもしれませんが、RAWで撮影しLightroomを駆使することで、立派な作品に仕上げることができます。Lightroomでの仕上げまでを見越して撮影すると、写真の撮り方も少し変わってくると思います。
STEP1 ほどよい明るさにしてくれる「自動設定」
白く飛んでしまうとLightroomの調整でも直すことができないので、このようなシーンでは白く飛ばさないように撮影することが多い。特にこの写真の大事なテーマの1つである和傘が白く飛んでしまったら作品が台無しだ。そのため、かなり暗く写しているが、Lightroomは期待通りの明るさに調整してくれた。
STEP2 和傘の明るすぎる部分を暗くする
写真の全体的な調整はよしとして、気になる部分を調整していく。まずは向かって左の白い和傘が明るすぎること。背面からのライトによって蝶の模様が見えにくい部分がある。それを「マスク」機能の「ブラシ」で部分調整をする。
厭離庵 ~紅葉の時期に一般公開される庭園の美しい寺院~
カメラ: Nikon Z9
レンズ: NIKKOR Z 14-24 f/2.8 S
シャッタースピード: 1/6秒
絞り値: f/8
露出モード: 絞り優先オート
露出補正: -1.0段
ISO: 800
ホワイトバランス: 自然光オート
<星野さんコメント>
撮影状況:
嵐山にある厭離庵は普段は立ち入ることができず、秋の紅葉のシーズンだけ庭園や茶室、本堂が一般公開され見学することができます。竹垣に囲われた細い路地を進むと現れる小さな門は隠れ家的な雰囲気も醸しています。一面の苔が美しい庭園ですが、晩秋ともなると散り紅葉が苔を覆い、この時期ならでは彩りを見ることができます。晴れた日のカラリとした紅葉もきれいですが、雨の日は濡れた散り紅葉がしっとりとした佇まいを放ち、また別の美しさを奏でています。撮影は広角レンズを使い庭園の広がり感を出しています。ただ、暗く手持ちでの撮影だったためPLフィルターを使っていません。その分、紅葉のテカリが出ましたが、Lightroomで調整できる範囲と判断して撮影を続けました。
Lightroomでの仕上げ:
地面を敷き詰める濡れた真っ赤な散り紅葉が美しくシャッターを切った1枚です。テカリを抑えることができるPLフィルターを使わずに撮ったので、散り紅葉にテカリが目立ってしまいました。そのテカリを抑えるために赤色系に対して彩度を上げたり、逆に芝の緑を落ち着かせたりするなどして仕上げています。
STEP1 暗い部分を明るく、明るい部分を少し暗くする
調整前の雰囲気も味わい深いが、ここでは少し明るめに仕上げることにした。明るさに関しては「基本補正」パネルにある調整項目で大概の調整が行なえる。全体を明るくしたが、それに応じて画面奥が明るくなりすぎたので、その分は逆の調整を行なった。
STEP2 紅葉を赤の濃度を増し、笹のテカリは抑える
散り紅葉のテカリを目立たなくしたい。LightroomといえどもPLフィルターの代わりはできないが、色の調整を行なうことで目立たなくすることはできる。ここでは赤色系に対して色相を調整し、さらに目立つ笹の葉のテカリを抑えるために緑色系の輝度を抑えた。
紅葉写真は撮って終わりにせずに、写真編集で映える写真に仕上げよう
星野さんの作品を例に、それぞれの写真の撮影内容とLightroomによる画像調整を見ていただいた。作品によってはBefore/Afterで劇的に変化するものもある。
ここで取り上げた星野さんの作品は(あえて)暗めに撮られた写真があるが、暗い写真であってもLightroomでの調整によって見事な紅葉写真へと昇華する。撮っただけではなくLightroomでひと手間加えることで、写真としての完成度が高まる。見る人を唸らせるような魅力的な写真にするには、こうしたひと手間が大事だ。
今シーズンの紅葉狩り旅行で撮るであろう、たくさんの写真。あとで見返して「あれ、もっと真っ赤な紅葉だったのに……」などと感じるのは、思い出が色褪せるようで少しさびしい。鮮やかな写真を見れば、思い出もきっと鮮やかに蘇るはずだ。写真の魅力はそんなところにもある。
もちろんきれいな写真に仕上がったら「作品」としてSNSなどに発表するのも楽しいし、プリントして自宅やオフィスに飾ればその空間が潤うだろう。写真を美しくするだけでなく写真の楽しみ方も広げてくれる。Lightroomがたくさんの人に使われているのは、そんなことも理由なのかもしれない。