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ジープ「コンパス」でタスマニアの州都ホバートから大自然を巡るショートトリップ

世界遺産のポート・アーサー史跡地区やタスマニアデビルなどが保護されているボノロング野生動物保護施設など

 読者の皆さんは、タスマニア島と聞いて何を思い浮かべるだろう? 「タスマニアデビル」や「タスマニアビーフ」「大自然」といったところではないか。はたまた、世代によっては1990年に公開された映画「タスマニア物語」を思い出す人もいるかもしれない。

 オーストラリア本土のグレートバリアリーフやエアーズロックなどの観光地、大都市のシドニーやメルボルンに比べて観光地としてはメジャーではないが、豊かな自然が残るタスマニアは、オーストラリアでは人気の観光地となっている。

 そもそもタスマニア島の地勢だが、オーストラリア本土の240kmの南東に位置し、島自体がタスマニア州というひとつの州になっている。面積としては約6万km 2 で北海道よりも少し小さく、九州よりは大きいといえば想像がつくのではないか。訪れた1月末は南半球なので真夏だったが、昼間の気温は20℃強で、夜間は10℃以下に下がる。数日前には最高気温が30℃を超えたというが、それでも夜間は冷えるので、日本の真夏よりは過ごしやすい気候となる。

 ここでは、アジアパシフィック向けに開催されたジープ「コンパス」の試乗会が実施されたタスマニア島の魅力を紹介していきたい。試乗会を主催したFCAオーストラリアの担当者によると、「タスマニアは、主要都市から少し走れば広大な大自然が現われ、ジープの性能を試すことのできるオフロードや気持ちよく走れるワインディングもあります」ということで、タスマニアが試乗会の舞台となったようだ。実際に試乗会の発着地となったタスマニア島の州都ホバートから30分も走ると、舗装されていないオフロードや4WDでないと走破できなさそうなガレ場(荒れた路面、礫地)が現われた。丘陵地帯を抜けるワインディングも心地よく、制限速度は100km/h程度なので、日本国内では感じることのできない速度域で疾走することもできる。ジープ・コンパスの性能や詳細については別記事で触れたいと思う。

アジアパシフィック向けに実施されたジープ・コンパス試乗会。タスマニア島のホバートを中心に、ワインディングやオフロード、ガレ場などを走行した
ホバートで宿泊した「MACq 01 Hotel」
MACq 01 Hotelはジープ・コンパス試乗会の発着地となっていて、部屋からはホバートの港を一望できる

 タスマニア島は、シドニーやメルボルン、アデレードからの直行便が就航している州都のホバートを中心に観光することが多いので、ホバートから日帰りが可能な観光地も紹介していきたい。宿泊していたホバートのホテルで、お勧めの観光スポットを聞くと、まずホバートを一望できる「ウェリントンピークに行ってみて」と言われた。ウェリントン山は、ホバートの町から見上げれば望める約1200mの山で、山頂まで道路が整備されていて30分ほどで到着する非常にアクセスのよい場所にある。ホバートの町を出発しクルマを走らせると、舗装はされているがすぐに山道となり、勾配のある坂を登っていく。まわりの景色は森から徐々に背丈の低い茂みとなり、頂上付近では高山植物へと変わっていった。ホバートの町では20℃ほどあった気温だが、頂上付近では霜が降りるほど寒くなり、クルマの外気温は0℃を示していた。山頂の建物からはホバートの町やさらに奥の山々も望むことができ、やや曇っていたのだが、圧巻の景色だった。

ホバートから30分ほどで到着するウェリントン山の山頂。路面は凍結していなかったが、頂上付近の外気温は0℃。霜が降りるほどの寒さだった
山頂からはホバートの町や遠くの山が一望できる壮大な景色だった
約20万人が住むタスマニア島の州都ホバート。中心部はデパートやお土産物屋も並んでいる

 続いて訪れたのが、オーストラリア本土では絶滅してしまったタスマニアデビルが見られる、ボノロング野生動物保護施設。ここもホバートの町から30分ほどのドライブで到着できる場所にある。保護施設という名のとおりで動物園ではなく、ケガをした動物や親がいなくなった子供の野生動物を保護しているそうだ。施設内には、タスマニアデビルをはじめ、コアラやカンガルー、ウォンバットなどのオーストラリア固有の生物を見ることができる。時間帯によってはガイドツアーも行なっていて、餌やりをすることも可能。タスマニア島の生態系を知るにはうってつけの施設だ。

野生動物を保護しているボノロング野生動物保護施設
タスマニアデビルやコアラ、カンガルー、ウォンバットをはじめ、タスマニア島に生息する鳥や爬虫類なども観察することができる

 タスマニア島の歴史を振り返ると、1800年代にシドニーから植民が行なわれ始め、そのほとんどが流刑囚だった。今でもその跡は見ることができ、ホバートからクルマで2時間ほどのところにポート・アーサー史跡地区がある。ここは、2010年にオーストラリアの囚人遺跡群として世界遺産に登録された場所で、ビジターセンターを中心に観光地化されている。ポート・アーサーは、1830年に開拓が始まり、1833年になると流刑地中の流刑地として、オーストラリアで再犯した囚人が集まるようになったという。しかし、ポート・アーサーは、囚人の流刑地だけではなく地区全体が自由移民の暮らす町でもあり、兵士や民間人、囚人を含めて最盛期となる1840年ごろには2000人を超える人が住む町となっていたそうだ。ポート・アーサー史跡地区では、刑務所や司令官邸、裁判所や教会、造船所など多くの遺構が残されていて、実際に中に入って見ることもできる。

世界遺産にも認定されているポート・アーサー史跡地区
流刑地時代の刑務所をはじめ、多くの遺構や再現された当時の建物などを見学することができる。施設内には32カ所の建造物があり、地区ごとにそれぞれの役割が異なっている。桟橋から渡し船もあり、全部を見て回ると2~3時間では見切れないほどだった

 そして、豊かな大地と海に囲まれたタスマニア島は食事も魅力的。新鮮なロブスターや牡蠣、寒流に揉まれた魚、ジューシーな赤身が特徴のタスマニアビーフやポーク、チキン、野菜も豊富に取れる。レストランは多いとは言えないが、地元のバラエティに富んだ食材を出してくれる店を見つけることができる。また、丘陵地帯にはワイナリーもあり、ビンテージからフレッシュなワインまで数多くの種類を取り揃えていた。ビールやウイスキーなどもタスマニア島では生産されていて、こちらも多彩な味が楽しめた。

試乗会の途中に立ち寄ったワイナリー。多種のブドウを栽培していて、白ワイン、赤ワインともにフレッシュなタイプから重厚なモノまで多くの種類があるという
食もタスマニアの楽しみの1つ
どこで食べても新鮮な地のモノが出てきて、調理方法も多彩だったので飽きることがなかった
ポート・アーサー史跡地区に行く際に立ち寄ったメインゴン湾展望台(Maingon Bay Lookout)。タスマニアの自然と雄大な景色が一望できる
タスマニア島は美しいビーチでも有名。訪れたのは真夏だったが、海水温は低めで海水浴をしている人は見受けられなかった
都市を抜けるとすぐに気持ちよいワインディングが拡がる。ドライブしながら景色を眺めているだけでもタスマニアの美しさが分かる

 タスマニア島は、トランジットも含めると日本国内から12時間以上はかかるので決して簡単に行ける場所ではないが、手つかずのままに残された大自然や圧倒される景観、タスマニア島でしか見られないオーストラリア固有の生物や植物、豊富な食材など現地で出会った人はみなタスマニアのよさを語っていた。

 もし観光で訪れるならば、現地での移動はレンタカーになると思うが、オーストラリアは右側通行なので、左側通行の諸外国と比べれば運転もしやすい。大都市の観光も捨てがたいが、たまには豊かな自然で身体が洗われるような体験をするのもよいだろう。