ハワイ現地発
【ハワイ現地発】おまかせブームのハワイでホントに“任せられる”店は?
2023年10月23日 12:00
パンデミック後、ハワイに続々と登場した新レストラン。その特徴の一つは「おまかせコース」をメインとする店がグッと増えたこと。「おまかせって店の都合?」などと斜に構えることなかれ。それが美味しければウィンウィンになるのだから。
コンセプトがユニークで味とともに印象に残っている店といえば「Sushi Fukurou」。完全予約制のこの店は、通りかかって見つけることはまずありえない。カラカウア通り沿いのショッピングプラザ5階にあるメキシカンレストラン「BUHO Cocina y Cantina」のなかにあるのだ。
「BUHO」の入口を入ったらひたすらまっすぐ進み、さらに細い通路を突き当たりまで達っしたら、右を見てみよう。そっと暖簾が掲げられていることに気付く。ここをくぐると「Sushi Fukurou -梟-」だ。分かりづらいのはもともとは倉庫として使われていたから。改装して「超隠れ家」としてオープンしたのが2022年。
店内はカウンターの10席のみで、完全予約の2部制になっている。メニューは12品90ドル。一般的な「寿司屋」ではなく、コンセプトは「和×ハワイ×メキシコ」。日本、ハワイ、メキシコの食文化を巧みにミックスさせた料理がおまかせコースとしてサーブされる。ちなみに、この店が入るメキシカンレストラン「BUHO」はスペイン語でフクロウを意味するのだそう。
3つの食文化がどのように融合した料理に出会えるのか? すし職人は、ハワイで生まれ育ち、日本にゆかりを持つミキ・ヤナギハラ シェフ。ハワイの食材や日本の魚介、ハワイ、日本、メキシコの調味料を発想豊かに組み合わせて一品ずつを仕上げていた。
※写真は14品(125ドル)コース。内容は季節によって変わる
タコのセビーチェは、サッと炙ったタコにオクラ、ハラペーニョ、ほんのりライムとにんにくを効かせている。うずらの卵をポンと乗せた漬けマグロ巻き寿司は、長崎からの本マグロの赤身を漬けにしてわさびオイルをサッと塗り、あられをトッピング。
中トロタルタルのタロチップス添えは、わさびワカモレの上に中トロを乗せ、その上にはキャビア、天ぷら仕立てにしたオゴ(ハワイの海藻)を。タロイモのチップスとともに頬張れば、カリッ×とろ~りの食感も楽しめる。カンパチの大根タコスは、タコスの皮に見立てた大根に、ハワイ島コナのカンパチ、オレンジ果汁を混ぜた大根おろしを置いた、さっぱり系フィッシュタコス風のプレゼンテーション。
驚くほどユニークな茶碗蒸しは、丁寧にとった魚介出汁と、イクラの食感、そして卵のなかから出てくるオキナワンスイートポテトとつぶつぶのとうもろこしのそれぞれの甘みを楽しめる斬新な逸品。地元のとれたての卵を使用しているという。サワラの昆布じめを炙った握りは、キアヴェ(の木)の香りをふわっと漂わせる塩と刻み昆布がアクセントに。
ハワイ沖でとれたオナガダイは、ゆずドレッシングを合わせ、イクラとマイクロパクチーと一緒に。ウニのロコモコは、山盛りウニの下にご飯としそ、上にはうずらの卵を乗せた贅沢なロコモコ。とろりとした食感とともに磯の香りと甘みが口いっぱいに広がるなかで、メキシカンスパイス、タヒンの絶妙な辛みで味を引き締めている。
そして、カムエラトマトとマウイオニオンを乗せ、ロミサーモンをイメージしたキングサーモンにぎりに続いて、対馬産アナゴ手巻きは、あえて軽く仕上げた特製ダレとフィンガーライムでさっぱりと。刻みワサビとポン酢ジュレを乗せた北海道ホタテは、ほんのり炙って甘みを閉じ込めている。
いわゆるビーフタコスは、麹味噌で味付けした和州牛にわさびマヨネーズで味付けした椎茸と合わせ、ウベのトルティーヤチップスに乗せて新たな味の世界を楽しませてくれる。この下にはほんの少しご飯が隠れている。赤酢飯にトロとたくわんを巻いた手巻きは、いくつでもいけてしまうバランスよい巻き寿司。
デザートは、揚げたての抹茶チュロス、餡、ハワイで作るロゼラニのアイスクリームを添えた、3つの文化のコラボレーションを堪能するスイーツ。
ヤナギハラシェフは、おまかせコースのテーマを「ジャーニー(旅)」と表現し、「ジェットコースターのように楽しんでほしい」と話してくれた。「甘みのあとには酸味を、軟らかな口当たりのあとはしっかりした食感を」と、味、食感、視覚的に、対極の一皿をテンポよく出してくる。遊び心にあふれた料理を、食の旅をするように楽しむ体験は、この店でしかできないだろう。