井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
えっ、そんなのあるの? 電車に備わる意外な設備
2025年12月3日 06:00
日本の鉄道はどこに行っても、比較的、車内の接客設備が均質化されている。それは「外れが少ない」ということでプラス要素ではあるのだが、おもしろみに欠けるという見方もあるだろう。しかしときどき、「えっ、そんな設備があるの?」となってしまいそうな車両があるのも事実だ。
腰掛の下に荷物を置ける小田急GSE
車内における荷物の置き場所といえば、荷棚に置くか、(もしあれば)客室端部やデッキの大型荷物置場に置くか、あるいは窮屈になるのを覚悟のうえで足元に置くか、といったあたりが一般的なチョイス。
ところが小田急の70000形GSE車では、腰掛の下に荷物を置けるスペースを確保している。もちろん、腰掛を支持するとともに回転できるような仕掛けは不可欠だが、脚台を中央に配置してT字形とすることで、その左右に空きスペースを確保した。小さめのトランクなら収まるぐらいのスペースが確保されている。
それより大きな荷物については、客室端部の大型荷物置場を使うことになる。
展望サロン室を備えた特急電車
輸送力という観点からすれば、座席を1つでも多く確保したいところ。それに多くの利用者は、いったん着席したら目的地までそのままで、車内をやたらと歩き回ることは多くないものだ。とはいえ、車窓が売りで観光客が多い路線になると、事情を異にすることもある。
その一例が、JR西日本の特急「くろしお」のうち一部列車で使われている、283系電車の展望ラウンジ。場所は基本編成の3号車で、海側に向かう形で1人掛けの腰掛を4脚、その背後に2人掛けのソファを2脚、それぞれ設置している。また、海側の側窓を大きくして展望に配慮している。
なお、283系は6両の「基本編成」が2編成と、3両の「付属編成」が2編成という小所帯で、このうち付属編成の方には展望サロンがない。たまに、その付属編成を2編成連結して6両として、基本編成の代走に充てることがある。すると、6両編成でも展望サロンはないことになる。この辺は検査のスケジュールや車両のやりくりに起因するので、多分に「運次第」のところがある。
同じJR西日本で、「やくも」の273系電車にもフリースペースが設置されているが、こちらは特に展望を意識した設計にはなっていない。ちょっと気分転換に、立って歩き回って雑談できる、そんな感じであろうか。
もっとも「やくも」の場合、1号車に設置されているセミコンパートメントの方が、グループ客向きではある。4人用のボックスと2人用のボックスが2区画ずつある。また、ボックスとボックスの境界には大型荷物置場があるから、大荷物を抱えていても大丈夫だ。
衝立で仕切られたグリーン車
日本はヨーロッパと違い、開放型の客室が一般的。以前に「個室の設備がある車両」を紹介する記事を書いたことがあったが、わざわざ記事を起こして紹介するということは、それだけ希少ということでもある。
その「開放室」と「個室」の中間を行くような設備を備えた車両がある。それが、羽越本線の特急「いなほ」で使われている、E653系1000番代のグリーン車。ただし、「いなほ」の一部列車では車両の違いから、グリーン車がない。グリーン車がある「いなほ」を選ぶ必要がある。
実はこの車両、もともとは普通車だった。新製当初は常磐線の特急「フレッシュひたち」で使われていたが、それを「いなほ」に転用する際に、グリーン車に格上げ改造した。そして、窓と腰掛の位置を合わせつつも、グリーン車だから普通車よりもシートピッチを拡げたい。
その結果、普通車の2列分をグリーン車の1列として使うことになった。当然ながら前後のシートの間隔が大きく空くのだが、そこに衝立を立ててしまった。よって、1列ごとに衝立で仕切られたグリーン車が誕生した。この設備は日本で唯一。
なお、腰掛自体は2-1配列で、海側が2列になっている。だから、日本海の景色を眺めたい場合には、海側のA席・B席を選ぶ必要がある。2列ごとに設けられている側窓の中央に腰掛を配した関係で、ロールカーテンのガイドレールが目の前に陣取ることになってしまうが、視界を妨げるというほどのものでもない。
なお、このグリーン車は新潟方の客室端部に、ちょっとした展望ミニサロンみたいなスペースが設けられている。山側は三角形のテーブルの前後に椅子が1脚ずつ、海側は壁沿いのテーブルと、海側に向かって立ったときに身体を支えられるクッションという設え。
女性用パウダールームがある「さくら」「みずほ」
山陽・九州新幹線を直通する「さくら」「みずほ」と、一部の九州新幹線内「つばめ」、そして博多南線で使われているN700系7000/8000番代には、特徴的な設備がある。それが女性用パウダールーム。といっても、「WEST EXPRESS銀河」のように、可動式の鏡やスツールまで備え付けてあるわけではないが。
5号車の新大阪方車端にあるトイレ・洗面所区画において、洗面所のスペースのうち片方が、このパウダールームに充てられている。
JR東日本の新幹線電車のうちE5系とE7系、そして同型車であるJR北海道のH5系やJR西日本のW7系でも、女性用トイレ・洗面所の設備がある。ただし全車ではなく、E5系/H5系では1・3・7号車、E7系/W7系では1・3・5・9号車が該当する。グリーン車と、車椅子対応トイレがある号車は対象から外れている。
東海道・山陽新幹線でも女性用トイレが設定されるようになったが、これは2か所のうち片方を女性専用に改めたもので、ハード的な差異はない。それに対して、E5系/H5系とE7系/W7系のそれは、設備の構造からして違いがある。
具体的にいうと、洗面台がレール方向を向く構造で、通路を通る人が背後から覗き込むようなことになりにくい配置。そして、その洗面台のところからトイレの区画に出入りするようになっている。つまり、通路からじかに出入りする構造ではない。





































