井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

平日なのに休日ダイヤなんてことある? 曜日によるダイヤの違いに注意

筑豊電鉄の黒崎駅に掲出されていた時刻表。土休日ダイヤの方が運転本数が少ない様子が分かる

 もう14年前、2010年10月の話になるが、九州方面に乗りつぶしに行ったときに、スケジュール策定のミスをしたことがある。実際に訪問するのは週末であるにもかかわらず、平日ダイヤを見ながらスケジュールを組んでしまったのだ。幸い、旅程が崩壊するような致命傷にはならなかったが。

平日ダイヤと土休日ダイヤの使い分けが一般的

 これは会社や路線によって事情が異なるが、大都市近郊の鉄道路線では、「平日ダイヤ」と「土休日ダイヤ」を用意して、使い分けるのが一般的だ。

 通勤・通学利用が多い平日と、それが激減する週末で同じダイヤを使ったのでは、週末にムダに多くの列車を走らせることになってしまう。だから、朝夕のラッシュ時に運転する本数を変えるのが、主な相違となる。もっともそれだけではなく、日中の山手線みたいに、土休日ダイヤの方が本数が多いこともある。

 週休二日制が一般化したことで「土休日」とワンセットにするやり方が一般化した。ただしその辺の考え方は会社によって違いがあり、西日本鉄道(西鉄)みたいに「土曜ダイヤ」と「日祝ダイヤ」を使い分けている場合もある。運転本数が少ない路線では、平日も土休日も同じダイヤで済ませることもある。

 冒頭で挙げた筆者のミステイクは、単なるスケジュール策定時の勘違い。どうして、土曜に実施すると分かっているのに平日ダイヤを調べてしまったのか、今に至るまで謎のままだ。しかし、こうして原稿のネタを提供してくれることになったのだから、よしとしよう。

筑豊電鉄で使われている車両は、路面電車と同じ仕様
終点の筑豊直方駅は、JRの直方駅から750~800mほど離れており、徒歩移動すると10分ぐらいかかる。スケジュール策定ミスのせいもあり、急いで移動するハメになった

 地方幹線でも、通勤・通学需要の多寡に合わせて「平日だけ運行する列車」「平日と土休日で運転区間や運転時刻が変わる列車」が設定されることがあるから、注意するに越したことはない。

盆暮れ正月GWには例外が発生することがある

 一般論としては、平日ダイヤは平日に、土休日ダイヤは土曜・日曜と祝日に実施するものである。平日に土休日ダイヤを実施するのでは「看板に偽りあり」となってしまう。ところが、その「看板に偽りあり」が発生することがあるから話がややこしい。

 それが、いわゆる盆暮れ正月と4~5月の大型連休(いわゆるゴールデンウイーク)。前者は全国的に会社や学校が休みになり、後者は祝日が集中するせいで連続した休みを実現しやすくなる。ただしいずれにしても、期間内に平日が混在するのは避けられない。

 ところが、多くの人が休みになる連休期間には、乗る人、つまり通勤・通学利用の人が激減してしまう。そこで平日ダイヤを実施したところで、車両も乗務員も動力費もムダになるだろう。そのため、盆暮れ正月・GWには、期間全体をまとめて「土休日ダイヤで運行します」とする事例が多い。

 ところが、「連休中の平日に土休日ダイヤを実施するのか」「実施する場合、いつからいつまでを対象にするのか」といったところの判断は、業界全体で足並みを揃えるわけではない。ときには、会社によってズレが生じることがあってもおかしくない。

 すると、盆暮れ正月とGW、とりわけその期間内にある土曜でも日曜でも祝日でもない日については、土休日ダイヤを実施するかどうかを確かめたうえでスケジュールを立てなければならない、という話になる。

 もっとも、平日ダイヤと土休日ダイヤの使い分けを行なうのは大都市圏の路線が多く、それらは運転本数が多いものだ。だから、よほどきわどい乗り継ぎを組み込まない限り、致命傷にはならないことが多いと思われるが。

 しかし冒頭で挙げた筆者のやらかしでは、勘違いの対象になった筑豊電鉄から、筑豊本線への乗り継ぎを予定していた。筑豊本線の運転本数は筑豊電鉄よりも少ないから、そこでスケジュールが瓦解する危険性はあっただろう。

都電荒川線(東京さくらトラム)は西鉄と同様に、「平日」「土曜」「日祝」の3本立て。それぞれ、朝夕ラッシュ時の運行本数に違いがある様子が見て取れる
山手線のダイヤには特徴があり、日中の運転本数を見ると、土休日ダイヤの方が平日ダイヤより多い。他線ではあまり見ない形だ

臨時列車の運転日は毎日変わる

 盆暮れ正月・GWみたいな「超繁忙期」には、需要の急増を受けて、多数の臨時列車が設定される。ところがこの臨時列車も、期間内は毎日同じように運行する……とは限らない。特定の日にだけ運行する列車もある。

 そして例えば、盆暮れ正月・GWの前半と後半では主な人の流れが違ってくると考えられるから、臨時列車の増発も、それに合わせたものになるだろう。利用が増えない方向に増発しても意味は薄い。もっとも、車両の送り込みを兼ねて、メインの人の流れと逆方向の臨時列車が設定される場面はあり得るかもしれない。

 こうした、需要の動向にきめ細かく対応する臨時列車の増発は、東海道新幹線では日常的に行なわれている。だから東海道新幹線の時刻表を見ると、特定の日だけ運転される列車の設定が多い様子が分かる。

 そうした臨時列車は、毎日運転される定期列車と比べて指定席をとりやすいことが多い「穴場」だが、運転日を勘違いすると惨事が起きかねない。

 もっとも、列車が運転されない日の指定席は発券できないから「指定席券を間違って買ってしまう」とはならない。しかし、自由席を利用する場合には注意が必要だろう。

ある日の新大阪発「のぞみ470号」。発車標だけ見ている分には、定期列車と臨時列車の区別はつかないし、利用者がそれをいちいち意識する理由もない
右上にある表示装置は、「のぞみ470号」の乗務員向けに列車番号を表示しており、「9470」とある(末尾の「A」は省略)。9000台だから、特定の日に限って走る臨時列車だと分かる