法林岳之のマイルをためる、旅に行く
第3回「航空券によって、マイルが違う?」
2019年9月20日 08:00
各航空会社が提供するマイレージプログラム。毎日のお買い物などでもマイルをためられるが、基本となるのは各社の飛行機に搭乗したときにたまるマイル。
今回は飛行機に搭乗したときのマイルの計算について、チェックしてみよう。
マイルはどう計算される?
飛行機に搭乗することでたまるマイル。日々のお買い物などは別にして、より多くのマイルをためるには、どうすればよいか。単純に考えれば、より遠くの目的地まで飛ぶか、あるいは近距離の路線を何度も飛ぶという話になるが、意外にマイレージプログラムにためるマイルの計算はそう簡単でもない。なぜなら、マイルの計算には搭乗クラスや航空券の種別などが絡んでくるからだ。
例えば、東京・羽田からハワイに旅行に出かけるとしよう。Aさんは旅行会社が販売するパッケージツアーで、ANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)を指定できるプランを見つけて、エコノミークラスを利用するツアーに申し込んだとする。次に、BさんはANAやJALのWebサイトで、エコノミークラスの往復航空券を購入したとする。AさんもBさんも同じ区間を同じエコノミークラスで往復するが、マイレージプログラムにはAさんよりもBさんの方がより多くのマイルがたまる。
同じ区間、同じエコノミークラスに搭乗したのに、なぜ、Bさんの方がマイルがたまるのだろうか。実は、AさんとBさんでは購入した予約クラス、つまり、航空券の種別が違うのだ。
第1回でも説明したように、飛行機に搭乗したときのマイルは、IATA(国際航空運送協会)の「TPM(運賃計算に使用する区間距離)」に基づく「区間基本マイル」によって計算される。ただし、この区間基本マイルがそのままたまるわけではなく、搭乗したクラス(ファースト、ビジネス、エコノミーなど)や予約クラス(航空券種別)によって、最終的に加算されるマイルが違ってくる。
例えば、ANAのエコノミークラスでハワイに旅行をした場合、マイレージプログラムに加算される片道のマイルは、以下のような計算になる。
Aさん(パッケージツアーを利用)
3831マイル(区間基本マイル)×30%(予約クラス「L」の倍率)= 1149マイル
Bさん(個別に航空券を購入)
3831マイル(区間基本マイル)×50%(予約クラス「S」の倍率)= 1915マイル
この計算式を見ても分かるように、AさんもBさんも同じ区間を同じエコノミークラスで搭乗したのに、たまるマイルは片道で766マイル、往復で1532マイルも違っている。ここで出てくる「予約クラスの倍率」は、「マイル積算率」とも呼ばれ、利用する運賃に対して、あらかじめ決められた倍率を指す。簡単に言ってしまえば、同じエコノミークラスでも高い運賃は倍率が高く、安い運賃は倍率が低く設定されている。
一般的に、旅行会社などが企画するパッケージツアーの場合、旅行会社がまとめて確保する「包括旅行運賃」と呼ばれるパッケージツアー用運賃の航空券が割り当てられることが多い。この航空券は運賃が割安である半面、航空券の種別によって決められたマイル積算率が低く、たまるマイルが少ない。航空会社や航空券、路線によっては、マイレージプログラムにマイルがたまらない航空券が発行されることもある。
これに対し、Bさんが購入した航空券は各航空会社や各旅行会社などで、個別に購入できる航空券で、パッケージツアー用運賃のような安さはないものの、その分、マイル積算率は少し高く、たまるマイルも多い。こうした個別に購入できる航空券は、予約の変更やキャンセル、払い戻しの可否、有効期限などの違いで、いくつかの種類があり、運賃やマイル積算率、たまるマイルがそれぞれに異なる。
こう書くと、パッケージツアーでの旅行は、あまりおトクではないように見えるが、その分、旅行にかかる費用は抑えられるわけで、一概に損というわけでもない。
また、搭乗するクラスによる違いも大きい。個人の旅行ではあまり利用しないかもしれないが、ビジネスクラスやファーストクラスは運賃が高いため、マイル積算率も高く、エコノミークラスに搭乗したときよりも多くのマイルをためることができる。もちろん、その分、費用はたくさんかかってしまうが……。
航空券の予約クラスはどこで分かる?
同じ区間、同じエコノミークラスで搭乗しても航空券によってたまるマイルは違ってくるが、航空券の種別や予約クラス、それぞれのクラスでたまるマイルは、どのように確認できるのだろうか。
例えば、航空券の予約クラスは、オンラインで予約するときの画面で確認できるほか、パッケージツアーや旅行会社が手配した航空券のときは、予約完了後に送られてくる「Eチケット」の「クラス」に表記されている。
オンラインでの予約画面では、国際線と国内線で表示内容が違う。ANAの場合、旅程を検索した画面で、[詳細](スマートフォンの場合は[運賃詳細])と表示された部分を選ぶと、[事前座席指定・予約クラス]に[Sクラス]などと表示される。JALの場合は旅程を検索した画面で、[運賃規則](スマートフォンの場合は往復選択後に[運賃規則を確認する])というリンクを選ぶと、現在選択中の運賃の詳細が表示され、[JAL国際線予約クラス]が[L]のように表示される。
国内線は旅程を検索すると、ANAなら「ビジネスきっぷ」や「スーパーバリュー」、JALなら「特便割引」や「先得」といった運賃が表示されるが、こちらも各運賃を選ぶと、それぞれの運賃の条件とマイル積算率が表示される。
また、第1回でも説明したように、ANAとJALにマイルをためる場合、スターアライアンスやワンワールドに加盟するほかの航空会社や提携航空会社に搭乗したときも同じようにマイルをためることができる。ただし、航空券の種別や予約クラスは提携航空会社によって表現が違い、マイル積算率も個別に決められていて、なかには特定の予約クラスや路線がマイル積算の対象外になっていることもある。
たまるマイルが変わるもう1つの要素
飛行機に搭乗したときにためられるマイルは、搭乗する区間で決められた「区間マイル」と運賃に対応した「マイル積算率」によって計算されるが、最終的に獲得できるマイルにはもう1つの要素が加わる。それはANAやJALのクレジットカードとそれぞれのマイレージプログラムのステータスだ。
ANAとJALはそれぞれのマイレージプログラムに対応したクレジットカードを発行しており、このクレジットカードの利用者は通常よりも10%以上のボーナスマイルが付与される。例えば、羽田から那覇へ飛んだ場合、通常は大人普通運賃で984マイルがたまるが、ANAやJALのクレジットカードを持っていれば、ANAカードでは10~50%、JALカードでは10~25%のボーナスマイルが追加される。
また、ANAとJALのマイレージプログラムでは、利用が多い顧客を対象に、「ANAプレミアムメンバー」や「JMB FLY ONプログラム」と呼ばれるサービスを提供しており、搭乗の頻度に応じて、ANAでは「ブロンズ」「プラチナ」「ダイヤモンド」、JALでは「JMBクリスタル」「JMBサファイア」「JGCプレミア」「JMBダイヤモンド」というサービスステイタスを設定している。サービスステイタスについては改めて説明するが、このサービスステータスによってもボーナスマイルが追加されるため、最終的に獲得できるマイルはさらに増えることになる。
例えば、JALで羽田から沖縄に飛んだ場合、クレジットカードやマイレージプログラムのステイタスがなければ、前述のとおり、大人普通運賃で984マイルがたまるが、クレジットカードで「JALカードCLUB-Aゴールド」を持ち、サービスステイタスも「JMBクリスタル」を獲得していれば、双方で合計55%のボーナスマイルが追加されるため、最終的に獲得できるマイルは1525マイルまで増える計算になる。特典旅行を目指し、少しでもたくさんのマイルをためたいのであれば、やはり、ANAとJALのクレジットカードは作っておいた方がよいと言えそうだ。