法林岳之のマイルをためる、旅に行く

第1回「マイルって何?」

 旅行や出張などで国内外に出かけるとき、よく利用する飛行機。この飛行機を利用するうえで、必ず話題になるのが『マイル』だ。「○○さんがマイルをためて、□□へ旅行したんだって」なんていう話をよく耳にするが、「どうやったら、マイルがたまるのか」「ためたマイルで何ができるのか」「そもそもマイルって、何?」と思っている人もいるだろう。

 そこで、今回から各航空会社のマイルとマイレージプログラムについて、基本的なことから学ぶためのコラムをスタートする。ため方から使い方、便利な活用まで、マイルの基礎をしっかりと押さえて、夢の特典旅行を目指そう。

距離を表わす「マイル」

 飛行機を利用するとき、よく耳にする「マイル」。マイルとは言うまでもなく、距離を表わす単位だが、飛行機の話題における「マイル」は搭乗してためる「マイル」や各航空会社が提供する「マイレージプログラム」「フリークエントフライヤープログラム」を指す。何度もその航空会社の便に搭乗すると、マイルが徐々にたまり、たまったマイルを使えば、国内外に出かけるときの無料航空券をゲットできる。おそらく、多くの人はこれくらいのことを理解しているはずだ。

 ただ、そのたまるマイルがどう計算されているのか、どうやったらためられるのか、いつまでにためればよいのかといったことは、今一つ理解されていないことがある。なかには「どうせ、年に1~2回、帰省や旅行で使うくらいだから、マイルなんて関係ないよ」とあきらめてしまっている人もいるとか。しかし、マイルとの付き合い方をきちんと知っておけば、年に数回しか飛行機に乗らない人でもマイルをためて、おトクに旅行を楽しむことができるはずだ。

 まず、「マイル」とは何なのか。改めて説明するまでもないが、マイルは「距離」を表わしている。鉄道や自動車ではメートル法に基づく「キロメートル(km)」が使われているが、航空業界は「マイル(mile)」が使われる。ただし、米国などで距離の表記に使われるヤード・ポンド法の「マイル」と違い、航空業界や海運業界で使われるマイルは「海里」に基づいており、英語では「Nautical Mile」や「Sea Mile」などと表記される。実際の距離についてもヤード・ポンド法の1マイルが約1.6kmであるのに対し、1海里は約1.8kmとなっている。

 では、具体的に飛行機に搭乗したときのマイルはどうやって決まるのか。まず、基本になるのが「区間基本マイル」や「区間マイル」と呼ばれるもので、これはそれぞれの区間(路線)によって決まっている。例えば、国内線では羽田から大阪(伊丹)が280マイル、大阪から札幌が666マイル、国際線では羽田からロンドンが6214マイル、大阪からバンコクが2592マイルといった具合だ。この「区間基本マイル」や「区間マイル」はIATA(国際航空運送協会)から発行される「TPM(運賃計算に使用する区間距離)」を基準にしたもので、国内の各航空会社のページにはそれぞれ国内を発着する国内線と国際線のマイルが一覧で掲載されている。

マイレージチャート(ANA国内線)

マイレージチャート(ANA国際線)

JAL国内線区間マイル表

JAL国際線区間マイル表

 それぞれの路線に搭乗することで、ここに掲載されている区間基本マイルや区間マイルをベースに計算されたマイルがたまっていくが、実際には航空券の種別(予約クラス)や搭乗クラスなどによって、たまるマイルは違ってくる。例えば、搭乗クラスで言えば、ビジネスクラスやファーストクラスはたまるマイルが多く、エコノミークラスは少ない。エコノミークラスでもチケットによって、たまるマイルが数段階に分かれている。これらについては、また別途、説明しよう。

マイルをためるための「マイレージプログラム」

 マイルをためる基本となる「マイル」が「距離」や「海里」を表わしているということが分かったところで、次にチェックしたいのが各航空会社のマイレージプログラムだ。航空会社によっては「フリークエントフライヤープログラム」と呼ばれることもある。

 マイレージプログラムは簡単に言ってしまえば、各航空会社が提供する会員プログラムで、そのサービスの1つとして、マイルをためることができる。国内大手2社ではANAが「ANAマイレージクラブ」、JALが「JALマイレージバンク」という名称で、それぞれサービスを提供していて、誰でも無料で登録することができる。年会費などの費用もかからない。

 海外の航空会社もマイレージプログラムを提供しており、米ユナイテッド航空の「マイレージプラス」、独ルフトハンザ ドイツ航空の「マイルズ&モア」、タイ国際航空の「ロイヤルオーキッドプラス」などがある。これらのマイレージプログラムは基本的に誰でも無料で登録でき、複数の航空会社のマイレージプログラムに登録することもできる。

 ただ、ここで気になるのは、搭乗する航空会社ごとにマイレージプログラムへ加入する必要があるのかという点。いろいろな航空会社のマイレージプログラムに加入してしまうと、搭乗したマイルが分散してしまい、効率よくマイルをためることができない。ましてや海外の渡航先で搭乗する現地の航空会社ともなれば、将来、二度と搭乗しないことも考えられる。

 そこで重要なのが航空会社の「アライアンス」の存在だ。実は、世界各国の航空会社はアライアンス(航空連合)という形で提携しており、共同運航便などを運航するほか、お互いのマイレージプログラムの顧客が搭乗した際、提携する同じアライアンスの航空会社にマイルをためられるようにしている。

 アライアンスとしては、ANAなどが加盟する「スターアライアンス」、JALなどが加盟する「ワンワールド」、米デルタ航空などが加盟する「スカイチーム」がある。例えば、北米にユナイテッド航空の便で渡航する際、同じスターアライアンスのANAマイレージクラブやルフトハンザのマイルズ&モアのお客様番号を登録して搭乗すれば、それぞれのマイレージプログラムにマイルをためることができる。

 逆に、欧州に独ルフトハンザで渡航する際、JALマイレージバンクはマイルをためられないが、ブリティッシュ・エアウェイズの便であれば、JALマイレージバンクにマイルをためることができる。同じアライアンス内、もしくは後述する個別に提携している航空会社のみにマイルをためることができるわけだ。

スターアライアンス

アドリア航空、エーゲ航空、エア・カナダ、中国国際航空、エア インディア、ニュージーランド航空、ANA(全日本空輸)、アシアナ航空、オーストリア航空、アビアンカ航空、アビアンカ・ブラジル航空、ブリュッセル航空、コパ航空、クロアチア航空、エジプト航空、エチオピア航空、エバー航空、LOTポーランド航空、ルフトハンザ ドイツ航空、スカンジナビア航空、シンセン航空、シンガポール航空、南アフリカ航空、スイス インターナショナル エア ラインズ、TAPポルトガル航空、タイ国際航空、ターキッシュ エアラインズ、ユナイテッド航空

ワンワールド

アメリカン航空、ブリティッシュ・エアウェイズ、キャセイパシフィック航空、フィンエアー(フィンランド航空)、イベリア航空、JAL(日本航空)、LATAM航空、マレーシア航空、カンタス航空、カタール航空、ロイヤル・ヨルダン航空、S7航空、スリランカ航空

スカイチーム

アエロフロート・ロシア航空、アルゼンチン航空、アエロメヒコ航空、エア・ヨーロッパ、エールフランス航空、アリタリア-イタリア航空、チャイナエアライン、中国東方航空、チェコ航空、デルタ航空、ガルーダ・インドネシア航空、ケニア航空、KLMオランダ航空、大韓航空、ミドル・イースト航空、サウディア、タロム航空(TAROM)、ベトナム航空、廈門航空

 また、アライアンスとは別に、各航空会社が個別にマイレージプログラムのみの提携を結んでいるケースもある。例えば、ANAはいずれのアライアンスにも属していないエティハド航空、スカイチームに属するベトナム航空やアリタリア航空などとマイレージで提携しており、それぞれの航空会社の便に搭乗して、ANAマイレージプログラムにマイルをためることができる。JALも同様で、アライアンスに属していないエミレーツ航空やバンコクエアウェイズ、スカイチームに所属する大韓航空やエールフランスと個別に提携している。ただし、これらの個別提携では航空券の種別や搭乗クラス、路線などによって、ためられるマイルが制限されることもある。

どのマイレージプログラムにためるか

 搭乗した区間の距離をベースに計算される「マイル」。そのマイルをためるために必要な各航空会社の「マイレージプログラム」。そして、マイレージプログラムにマイルをためるうえで、ぜひ知っておきたい世界各国の航空会社が提携する「アライアンス」。この3つが分かったところで、実際にどのマイレージプログラムにマイルをためていくのがよいのかを考えてみよう。

 前述のように、世界各国の航空会社がマイレージプログラムを提供しているが、日本に就航していない航空会社のマイレージプログラムに加入するメリットは、かなり限られている。また、日本に就航している海外の航空会社のマイレージプログラムに加入するのも手だが、マイルは必ずしも飛行機に搭乗したときにしかたまらないわけではない。実は、国内大手2社のマイレージプログラムは普段のお買い物でためたり、各社のポイントサービスからマイルに交換するなどのため方が数多く用意されている。これらの点を考慮すると、やはり、国内大手2社のマイレージプログラムがもっともためやすく、扱いやすい。もちろん、普段からよく利用していたり、お気に入りの航空会社があれば、その会社のマイレージプログラムに加入してもよいだろう。

 また、もう1つ考慮したいのが前述のアライアンスだ。自分で航空券を購入する場合はともかく、会社が契約する旅行代理店が手配をしたり、パックツアーなどで海外に出かけるときは、どの航空会社の航空券が用意されるのかが分からない。そこでマイレージプログラムに加入するときは、それぞれのアライアンスを考慮したうえで、選ぶようにしたい。国内の旅行者でもっとも多いのは、スターアライアンスはANA、ワンワールドはJALというように、国内主要2社のマイレージプログラムに登録する方法だ。ただし、両社のマイレージプログラムに加入した場合でも効率よくマイルをためるために、当面、どちらのマイレージプログラムをメインに利用するのかを決めておいた方が確実だろう。

 あるいは、人によってはワンワールド系はJALマイレージバンクに加入しておき、スターアライアンス系はドイツによく出かけるので独ルフトハンザ航空の「マイルズ&モア」、アメリカを何度も往復するので米ユナイテッド航空の「マイレージプラス」に加入するといったアレンジも考えられるだろう。いずれにせよ、自分の旅行のスタイルに合わせて、マイレージプログラムに加入するようにしたい。

法林岳之

僚誌「ケータイ Watch」などで、記事を執筆するフリーランスライター。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。取材や講演などで国内外に出かける一方、年に数回、プライベートでも海外旅行を楽しむ。映画のロケ地探訪など、テーマを持った旅が好み。