荒木麻美のパリ生活
ドイツ・モーゼル川沿いの2つの町、おとぎ話のワインの町とローマ帝国の時間が流れる古都
2026年6月20日 08:00
ドイツのフランクフルトに行く用事がありました。パリからフランクフルトまでは高速鉄道で4時間ほどなのですが、クルマで行くことに。というのは、帰りはモーゼル川沿いの2つの町に立ち寄りたかったからです。
フランクフルトでの用事が済み、まずはベルンカステル=クースという町に。ここはワインと中世の町並みで知られる人気の観光地です。小さな町なので、さくっと立ち寄る人が多い印象。
クルマを止めてブドウ畑の間を上り、丘の上に建つラントシュット城に到着です。ここからモーゼル川両岸に広がる町の景色とブドウ畑を一望できます。火災により城は廃墟となっていますが、きれいに整備されており、絶景を楽しみながら食事をできるレストランもあります。
丘を下って町のなかに入ると、石畳の路地と木組みの家が並ぶ、絵本のような世界でした。ブドウの木があちこちの家の前に植えられており、ブドウやワインに関連した装飾などが施された窓や壁を見ながら、ただ歩いているだけでウキウキ。
1416年築の「傾いた家」や、その近くのクマの噴水も人気スポットです。
ベルンカステル=クースは、モーゼルワインの中心地の一つです。白ワイン用のブドウ品種である、リースリングの産地として高く評価されており、急斜面の石灰岩・粘板岩質の畑が独特のミネラル感のあるワインを生み出します。毎年9月初旬に開催されるワイン祭りは、地域最大のイベントの一つとなっています。
モーゼルワイン博物館ではワインの試飲と、地下にあるセラーにずらっと並んだワインの購入ができます。私は下戸なので見ているだけでしたが、ワイン好きの人にはかなり楽しいところだと思います。
夕飯はドイツ料理のレストランAlt Bernkastelに。薄く叩き伸ばした肉に衣をつけて揚げたシュニッツェルとレストランお勧めのジャガイモのケーキを注文しました。シュニッツェルはスモールサイズにしたのですが、ボリューム満点!
ベルンカステル=クースをあとに、次の目的地のトリーアに到着です。ここもモーゼル川沿いに位置し、ドイツ最古の都市の一つで、古代ローマ時代の遺跡が数多く残る歴史都市です。「第二のローマ」とも呼ばれるほど繁栄した背景があり、観光名所がたくさんあります。
修復工事中のポルタ・ニグラ(黒い門)は2世紀ごろに建設され、強固な難攻不落の門とされていました。人気のフォトスポットです。
トリーアにはローマ時代の浴場跡がいくつか残っていますが、その一つカイザーテルメンです。4世紀初頭に建設が始まり、入浴だけではなく、サウナやマッサージ施設に運動場も備えた巨大健康テーマパークとなるはずでした。結局浴場としては完成しなかったのですが、水道管や床暖房の設備跡もあり、古代ローマ人の技術力の高さに驚くばかりです。
トリーア大聖堂はドイツ最古級の大聖堂として知られる壮大な教会です。古代ローマ建築、ロマネスク様式、ゴシック様式、バロック様式が混在しており、歴史を感じる重厚な美しさに圧倒されました。トリーア大聖堂で最も有名なのが「聖衣」で、イエス・キリストが磔刑前に着ていた衣とされています。聖衣のある部屋は静まり返っており、長い間膝をついて祈りをささげる女性が印象的でした。
長方形のトリーア大聖堂に対し、その隣にある聖母教会は円形で、光りがあふれ、軽やかさを感じる教会です。トリーア大聖堂との雰囲気の違いが興味深かったです。
トリーアはカール・マルクスの生誕地としても有名です。カール・マルクスは1818年に生まれましたが、生家は博物館となっています。マルクスの生涯、19世紀のヨーロッパ社会、社会主義・共産主義の歴史、世界への影響といった展示があり、私が訪れた日も課外授業と思われる学生たちがたくさん来ていました。町にはマルクスが出てくる信号や、中国政府寄贈の巨大なマルクス像もありました。
ドライケーニゲンハウスは、商人や貴族が住んだ、中世トリーアの都市型要塞住宅です。13世紀ごろに建てられ、現存する中世都市住宅としては最古級です。1階には現代的なカフェが入っており、知らなければ通り過ぎてしまいそうな、とてもそんな古いとは思えない建物です。
フランクフルトから続いていたドイツ料理にちょっと飽きたので、この日の夜はペルシャ料理を食べました。オーナーが1人でやっているらしいレストランで、ハーブがたくさんのサラダにスパイスがほどよく効いた煮込み料理など、胃にも優しい美味しい料理でした。
トリーアを離れる朝、モーゼル川沿いを散歩しました。途中、水車かなと思う建物がいくつもありましたが、これは巨大な手動クレーン。商業都市としてのトリーアの遺産で、モーゼルワインの樽や石材や建築資材などを積み下ろしするために使われていました。
ローマ時代の石橋もあります。橋そのものは消失しましたが、ローマ帝国時代の橋の遺構(橋脚)を見られます。
ベルンカステル=クースとトリーアは、どちらもモーゼル川沿いですが、中世の絵本の世界とローマ帝国の遺跡が溶け込んだ歴史都市という、かなり異なる雰囲気の町を見られて、満足度の高い旅でした。

























































































