荒木麻美のパリ生活

南仏のプロヴァンス地方、演劇の町アヴィニョンとリュベロンの「鷹ノ巣村」を訪ねて(後編)

シミアンヌ=ラ=ロトンドは岩山の上に作られた村

 アヴィニョンでの滞在を経て、レンタカーでプロヴァンス地方のリュベロンに向かいました。アヴィニョンからリュベロンまでは1時間半くらいです。

 私たちはリュベロンのシミアンヌ=ラ=ロトンド(Simiane-la-Rotond)という村に滞在しました。友人の家がここにあるからです。

友人宅は4階建て。4階から見た朝の景色の美しいこと!

 シミアンヌ=ラ=ロトンドは岩山の上に建つ、小さなとてもかわいい村です。頂上には城が、村内には数軒のアトリエ、カフェレストランが2軒、そしてパン屋があります。そのほかの買い物は週に1回あるマルシェを待つか、近くの村や町までクルマで行くことになります。

村内
頂上にある城
村に唯一あるパン屋
Les tables d'en haut(Rue Ponson du Terrail Le haut, Le Village, 04150 Simiane-la-Rotonde)
村内にあるレストランで出された料理は、シンプルな調理で素材のよさを引き出していました
近くの村、フォルカルキエ(Forcalquier)のマルシェ。新鮮な魚介類も充実

 南仏のプロヴァンス地方にあるリュベロンには、シミアンヌ=ラ=ロトンドのような、岩山の上に作られた「鷹ノ巣村」が点在しています。

 シミアンヌ=ラ=ロトンドを拠点に、これら鷹ノ巣村を訪ねつつ、風光明媚なところをトレッキングするという日々を過ごしました。たくさん訪ねたなかから、特に印象に残ったところを、私のお勧め順にご紹介しますね!

リュストレル(Rustrel)、ブリュウ(Bruoux)、ルシヨン(Roussillon)

 今回私が一番楽しかったのは、これら3つの村にある天然顔料の旧採掘所です。

 リュストレルでは黄色系の顔料が出ます。輝くような黄色の岩肌を眺めながら、4時間ほどのトレッキングをしました。途中、3000年前の動物たちの足跡が200個ほど残っているところがあり、これは何の動物のものだろう?と想像しながら足跡探しに夢中に。

3000年前の動物たちの足跡探し

 ブリュウはリュストルの隣にあり、こちらも黄色系の顔料を採掘したところです。採掘跡をガイド付きで1時間ほどかけて見学できるのですが、残念ながらなかでの写真撮影は禁止。なかは年間を通して10度くらいと肌寒く、迷路のようになっているのですが、湧水が溜まっているところもあり、とても神秘的でした。

 ルシヨンは赤色系の顔料が出るところです。村の中心地のそばに30分または1時間ほどで回れる散歩道があり、下から見上げる赤い岩壁に圧倒! フランスには「フランスの最も美しい村」という協会があるのですが、ルシヨンは協会が認定した村の1つ。村中の建物が赤色系なので、夕暮れ時にはその美しさがさらに増します。

有料ですがこの散歩道は歩きやすくてお勧め
天然顔料を売っている店で、この地方ならではの色を揃えたミニセットを購入
赤色系の街並み

ゴルジュ(Gorges)

 地名のゴルジュは登山用語で「切り立った岩壁にはさまれた峡谷」のこと。まさに深い谷のそばにある村で、谷周辺の3時間のトレッキングはところどころかなり怖かったのですが、絶景でした。ここではロッククライミングもできるようですが、私にはどうやったらこの直角の岩壁を上れるのか、想像もできません!

多くの道はこんな感じで、崖のすぐ隣なのでドキドキ
途中にあったこのハシゴは上級者用。上から見下ろすだけで恐ろしい
私たちのような中級者はハシゴではなく、手すり(斜めに付いている!)を使って下りました

バノン(Banon)

 木の切り株に「バーバパパ」シリーズのイラストが描いてあったり、村内で行なわれていたという、パレードで使われていた道具を外からのぞくことができる建物があったりと、思わずくすりとさせられる、遊び心にあふれた楽しい村です。

「のぞいてみて!」と書いてある、穴の開いた扉があったのでのぞいてみたら、パレードグッズの迫力にビックリ!

 バノンにある、友人お勧めの本屋Le Bleuetにも行ってみました。地上3階、地下1階の大型書店です。とてもセンスのよい品ぞろえで、日本特集のコーナーもありました。中庭もあってのんびり過ごせそうです。

Le Bleuet(Rue Saint-Just, 04150 Banon)

ジュカ(Joucas)

 風車が印象的な村です。ここではゆったりとランチを食べたかったので、村の外れにあるホテルレストランまで行きました。レストランから広い庭を眺めつつ、洗練された料理を楽しみました。

Le Jas de Joucas(Sous la Pinède, 84220 Joucas)
村外れのホテルレストランでゆったりランチ

ボニュー(Bonnieux)

 杉の森は道が整備されて高低差が少ないので、体力に自信がない人、障がいがある人でも回りやすそう。何人かの車いすの人とすれ違いました。

 ボニューに来たら、ローマ時代に作られたジュリアン橋も必見。本来あるはずの川にはまったく水がなかったので、下からの景色も楽しみました。ハイキング後は村のなかにある自家製アイス屋さんで一休み。アイスの種類がたくさんあって迷ってしまいます。ガレットやクレープもありますよ。

ローマ時代に作られたジュリアン橋
Le Tinel(Pl. Gambetta, 84480 Bonnieux)
村内で自家製アイスクリームを食べながら一休み

ルールマラン(Lourmarin)

 フランスの最も美しい村の1つです。村の外れにあるルールマラン城では文化活動が盛んなようで、展覧会やコンサートの予定がたくさん出ていました。

 村の中心部にはかなりおしゃれなアパレルショップや雑貨店がたくさんあり、日本人経営の店もあるようです。私は雑貨や服にあまり興味がないため短時間の滞在でしたが、ショッピング好きにはたまらない村ではないかと思います。

カロンブ(Caromb)

 村のなかには行かず、村外れにあるパティ湖周辺をハイキングしました。湖といっても1764年に建設されたダムで、現役の大型ダムとしてはフランスで2番目に古いもの。時期によって釣りをしたり、泳いだりしてもよいようです。

 このほかにも行った村はあるのですが、印象に残った場所は以上となります。印象に残らなかったところの1つとしてはゴルド(Gordes)という、リュベロン地方といえばここ!という村があり、フランスの最も美しい村の1つでもあるのですが、美しいのは遠くから見たときだけ。村内は私にはこれといったものはなく、そそくさとあとにしました。心惹かれる場所というのは、まったくもって個々人の好みであり、実際に行ってみないと分からないものだなぁということを痛感しました。

遠くから眺めるのが一番美しいと思ったゴルド

 リュベロンはメロン、トリュフ、ワイン、オリーブオイル、ハチミツ、チーズ、ラベンダーなど、特産品がたくさんです。私もお土産にいろいろ買いました。製造販売所のなかには製造工程を見せてくれるところもたくさんあり、私もオリーブオイルやラベンダーの精油の製造工程を見てきました。子供と行っても楽しそうですね。

オリーブオイルの製造工程を見学
ラベンダーの精油の製造工程を見学

 このなかでも特にスピルリナの栽培所には興味津々。スーパーフードのスピルリナは亜熱帯地方の高アルカリの塩水で育つ藻の1種なのですが、プロヴァンス地方の気温と質のよい水は、スピルリナの栽培に適しているそう。味見をしたら青のりみたいで美味しい! これまで食べたスピルリナより風味があってとても気に入りました。

La grenouille bleue(60, chemin de la Scipionne lieu dit les routes, 84360 Lauris)
とても蒸し暑いスピルリナの栽培所
いろいろと買ってしまったお土産たち

 プロヴァンスはとても乾いた土地で、私たちの滞在中もほぼ毎日晴天。滞在中1日だけ雨が降ったのですが、「まともな雨が降ったのは数か月ぶり!」と地元の人が言っていたほど、あまり雨の降らないところのようです。夏は酷暑だったようですが、私たちが行ったのは9月も後半だったので、さわやかでとても気持ちのよい日々でした。また機会があれば、今度はラベンダーの花が美しい6月頃に来てみたいです!

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/