旅レポ
韓国の西南部・全羅南道(チョルラナムド)の旅。民主化運動の聖地・光州広域にも行ってきた!
2025年2月18日 12:00
韓国観光公社主催の視察ツアーで、韓国西南部をまわってきました。今回訪れた光州(クァンジュ)、羅州(ナジュ)、木浦(モクポ)、海南(ヘナム)の見どころを全2回で紹介します。まずはソウルからKTXで1時間50分の光州広域市から!
5・18民主化運動の歴史的現場「全日ビル245」
ソウルから南に約300kmに位置する光州広域市は、韓国西南部の中心都市です。光州といえば「光州事件」を連想する人も多いはず。1980年5月、軍事独裁政権に対して民主化を求める光州市の学生や市民が抗議に立ち上がり韓国戒厳軍と衝突。軍によって武力鎮圧されて多くの死傷者を出した5・18民主化運動です。
この光州事件については、「ソウルの春」(2023年)や「タクシー運転手 約束は海を越えて」(2017年)、「光州5・18」(2007年)などの韓国映画で描かれているので、作品を通して知ったという人も多いのでは? 4月には「1980 僕たちの光州事件」が公開予定です。
また昨年アジア人女性として初めてノーベル文学賞の受賞者となったハン・ガンさんは、光州広域市出身の作家で、代表作「少年が来る」は光州事件を題材にした作品です。
まずは、その光州事件での民主化運動と戒厳軍による武力制圧の中心地となった場所に建つ「全日ビル245」を訪れました。ここは1980年当時このエリアで一番高い建物で、全南日報(当時)などの新聞社や放送局が入っていたことなどから戒厳軍の標的となり、ヘリコプターでの射撃を受けた韓国民主化運動の象徴的ともいえる建物なのです。
2020年5月に複合施設としてリニューアルしたという全日ビル245。9階と10階が5・18記念空間として開放されていて、その生々しい射撃弾痕などを見ることができます。
韓国民主化の歴史に興味があるという人はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。2階の南道観光センターには日本語の案内ガイドも常駐しているようです。
2年ごとに開催される光州ビエンナーレの会場、国立アジア文化殿堂
続いて向かったのは、全日ビル245から歩いてすぐの場所にある「国立アジア文化殿堂(ACC)」です。光州事件の人権と平和の意味を芸術に昇華させることを趣旨に2015年に開館しました。アジアの文化芸術をリードする複合文化施設で、光州一帯で美術をテーマに2年に一度開催される「光州ビエンナーレ」の会場でもあります。
芸術劇場や文化創造院、子供文化館など大きく5つの建物で構成されている国立アジア文化殿堂は、アジア最大の複合文化施設というだけあって広~い施設。図書館にはアジアに関する本を7万冊所蔵するのだとか。ゆっくりじっくり堪能したければ数時間はみておくといいかも。
お昼ごはんは、国立アジア文化殿堂の向かいにある「マハンジ」で国産豚カルビ焼き定食をいただきました。釜飯やスープ、キムチ各種などがセットで1万8500ウォンなので、1人前2000円弱。お腹いっぱいになる特製ランチ、お勧めです!
続いては伝統家屋と西洋風近代建築の調和が見られるエリア、楊林洞(ヤンニムドン)へ。静かで趣きのある路地の先には、近代的でスタイリッシュなカフェがあったり、レンガ造りの西洋風建物があったりと、落ち着いた散策をするのによい場所でした。
光州スポットの最後に紹介するのは、140年以上の歴史がある韓屋を修理・改修して再生したという「五街軒(オガホン)」です。現在は結婚式や宴会、レセプションやウェディング撮影などの場として提供し、予約制で運営しているそうです。
現地取材ではゲストハウスとしての貸し切り利用も可能と聞いて、同行の記者さんたち(特に女性)と「素敵~! 泊まりたい!」を連呼していたのですが、公式予約サイトなどは見当たらないため、宿泊の受け入れを積極的にしている感じではなさそうです。
ゆったりとした時間が流れる歴史の街、羅州
光州の南約30kmに位置する羅州(ナジュ)は、小さいながらも朝鮮時代の羅州邑城など歴史遺跡が多く残される街。韓国有数のお米の生産地でもあるのですが、生産量の減少で使われなくなった穀物倉庫が多くみられます。
それらの倉庫をカフェやアートスポットにリノベーションして新たな価値を生み出しています。そんな羅州では電動自転車タクシーに乗って歴史スポットを巡ってきました。
お昼ごはんに立ち寄ったのは、錦城館の向かい側に店を構えるコムタンで有名なお店「ハヤンチプ」です。コムタンは牛のお肉と骨をじっくり煮込んだスープ料理のことで、ここ羅州はコムタン発祥の地なんですって。
長時間煮込まれた牛のスープのなかには削ぎ切りしたたっぷりの牛肉とごはんが浸っています。胃に優しくて寒い時期にぴったりの極上の一杯でした。
羅州で最後に向かった「3917マジュン」は、広い敷地にカフェやゲストハウス、庭園などが集まる複合文化施設です。10年前は、木や草が生い茂って7軒の古い家屋が放置された寂しい風景だったとは想像がつかないほど素敵なところ。公式インスタを見ると、青々とした芝生に色とりどりの花が咲く春夏シーズン、銀杏が黄金色に色づいて金木犀が香る秋もよさそうです。
プライベートな韓屋宿泊体験ができるヒストリックハウスは日本統治時代の1939年築。西洋式、韓屋式、日本式と、それぞれのいいところをミックスして造られていて、当時は地元のお金持ちが住んでいたのだそう。文化財としても価値のある建物がゲストハウスとして利用できるって素晴らしいですよね。
オーナーのナム・ウジンさんは、国に頼らず民間主導で地元の文化財を守り、地域経済の活性化や雇用創出を可能にするビジネスモデルが重要だと熱く語っていらっしゃいました。
光州と羅州で訪れたスポットを紹介しました。光州には、キムチの文化や歴史を学びつつ体験ができる複合テーマパーク「光州キムチタウン」があったり、毎年秋には「光州キムチ祭り」が開催されるとか。キムチ大好きな私としては、いつか再訪したい街になりました。そして羅州では「3917マジュン」のゲストハウスでワーケーションしたい!
後編では、韓国の最西南端に位置する港町・木浦と海南で巡ったスポットを紹介します。