旅レポ

南紀熊野ジオパークで大自然を満喫できる「In the Outdoor白浜志原海岸」でグランピングしてきた

2022年5月21日 開業

5月21日にオープンした「In the Outdoor白浜志原海岸」

 和歌山県白浜町にある志原海岸に、OUTDOOR TRIPが運営するグランピング施設「In the Outdoor白浜志原海岸」が5月21日にオープンした。

 昨今のコロナ禍で、非接触型レジャーとしてアウトドア人気が高まっている。なかでもキャンプ人気はすさまじく、週末ともなればどこのキャンプ場も予約でいっぱいという状況だ。一方で、キャンプ道具を揃えたり、準備に手間がかかったりと敷居が高く、二の足を踏んでいる人も多い。その点グランピングは高いキャンプ道具を揃える必要もなく、テント設営の手間や食事の準備などの煩わしさからも開放され、気軽にそして快適にアウトドアを楽しめるとして近年注目を浴びている。

 グランピング施設「In the Outdoor白浜志原海岸」は関西初、国立公園「吉野熊野国立公園」内に立地。この地域は2014年8月に日本ジオパークに認定された「南紀熊野ジオパーク」として、人知の及ばない大地の偉大さを感じることができる人気のスポットだ。

太平洋の激しい波の浸食によって形成された海食崖は南紀熊野ジオパークの見どころ

 今回は、梅雨入り前の不安定な天気のなか、さっそくこの新しくできたグランピング施設を体験してきた。アウトドアレジャーの最大の泣きどころは天気。天候に左右され、雨ともなれば行動は限りなく制限されてしまう。しかしそこはグランピング。雨でも十分に楽しむことができるので、これからの梅雨時期の参考にしていただければ幸いだ。

In the Outdoor白浜志原海岸へ

 まずは白浜町志原海岸を目指す。大阪から阪和道を経由してクルマで約2時間半。南紀白浜空港からもクルマで30分程度の場所なので、レンタカーを利用すれば関東圏からもアクセスしやすい。場所は道の駅「志原海岸」から数分のところ、国道42号線から少し入ったところにある。国道沿いには施設の案内看板がないのと、道が細くて若干分かりにくい。あらかじめ調べた目印を頼りに国道から折れ、細い小道を登っていくとたどり着く。

案内看板は出ていない。思いのほか細い道なので通り過ぎに注意。特に志原海岸方面からの入口が分かりづらいので要注意。若干見通しの悪い細い道なので、対向車に注意して進んでほしい。ちなみに対向車が来てしまったら離合はできない
小道を上がっていくと開けた場所に建つ黒を基調とした管理棟(ロングハウス)
施設全体で黒を基調としたデザインに統一している

 小道を上がっていった先に開けた場所があり、そこに管理棟でもあるロングハウスが目に飛び込んでくる。駐車スペースは十分にあり広々としている。チェックインは15時からで、まずは受付でチェックインを済ます。

 施設利用時の注意事項や説明を受けるとウェルカムドリンクならぬ、ウェルカムお菓子(?)がカゴいっぱいにいただけた。そのほかにも各種アメニティグッズが用意されているのがうれしいところ。

受付は8時~19時のあいだオープンしており、時間内であればスタッフが常駐している。時間外の緊急時の連絡先も記載されているので安心だ
3種類の味が楽しめる本格コーヒーのほか、女性にうれしいクレンジングジェルや洗顔、化粧水、乳液。そして男性にはシェービングクリームやひげ剃りまで。一般的なホテル同様のアメニティが用意されている
カゴいっぱいのお菓子とオリジナルトートバッグ。このトートバッグ、滞在中のちょっとした散策やシャワーの際の身支度品を入れて持ち歩くのにとても重宝する

車椅子ユーザーにも対応した充実の設備

 チェックインを済ますと、各自利用するサイトへ移動する。まずは施設全体の様子を見ていこう。「In the Outdoor白浜志原海岸」には5つの客室タイプが用意されている。今回は「プライベートキャビン with NORN」というプライベートガーデン付きのコテージに宿泊した。

プライベートキャビンでは自家用車をキャビン横に駐車できるので、雨天でも荷物の出し入れに困ることはない

 このほか6〜16名までの大人数に対応するテントタイプ「ヴェナヘイムグランピング・デラックススウィート」、同じくテントタイプで3〜8名に対応する「グランピングテントスウィートダブル」、2〜4名に対応する「グランピングテントスウィート」、そしてアウトドアブランド「スノーピーク」と建築家の隈研吾氏がコラボした「住箱 by snow peak」と、ニーズに合わせたチョイスが可能となっている。

施設最大人員を収容できる「ヴェナヘイムグランピング・デラックススウィート」
3〜8名に対応する「グランピングテントスウィートダブル」
2〜4名に対応する「グランピングテントスウィート」。施設内では1番多い5棟が設置されている
アウトドアブランド「スノーピーク」と建築家の隈研吾氏がコラボした「住箱 by snow peak」
「プライベートキャビン with NORN」の外観。柵で囲われているため、ほかの利用者からは見えない。芝生の前庭は完全プライベート空間になっており、ドッグランも兼ねているので、愛犬と一緒に滞在することが可能だ。車椅子ユーザーが移動しやすい工夫もされている

「プライベートキャビン with NORN」は車椅子にも対応している。キャビン横までクルマで入ることができ、クルマを降りると車椅子でも移動しやすいようにコンクリートの通路が設置されている。そしてキャビンへは緩いスロープもあるので車椅子のままキャビン内部へ移動することができる。キャビン前面はガラス張りで開放感たっぷり。そしてキャビン内部の調度品などはシンプルなデザインで統一されていて清潔感のある印象だ。

包み込まれるような座り心地のチェア。奥のベッドルームは別室になっており、アウトドアには付きものの虫を気にせずぐっすり眠ることができる
キャビンから前庭を望む。ガラスを開けるとさらに開放感を感じることができる
水回りも広々としている。ステンレスを基調としたデザインで清潔感もある
もちろん温水洗浄機能も完備
存在感抜群の薪ストーブ「NORN」。今回はお世話にならなかったが、冬場は大活躍することだろう
車椅子ユーザーでも無理なく入れるスペース。ただし手すりを取り付けるなど、もうひと工夫欲しいところ
キャビン内はエアコンも完備している。暑さが苦手な人でもコレなら快適に過ごせる
BALMUDAのポット。調度品の選び方にもセンスを感じる
ベッドルームにはダブルベッドが2式。最大4名まで寝ることができる
ベッドルームにもエアコン完備。暑くて寝苦しいということもない

 今回は特別にグランピングテントスウィートの内部も見学させてもらうことができた。グランピングテントスウィートは「In the Outdoor白浜志原海岸」の1番スタンダードな客室タイプで、2〜4名で宿泊ができる。こちらもプライベートキャビン同様にシンプルで清潔感が感じられる。キャビンにはない、凝縮されたプライベート空間の魅力がテントサイトにはある。

テント内部にはダブルベッドが2式。最大4名まで寝ることができる
薪割りのために用意されているファイヤーサイドのハンマー。小袋の中には着火剤やライターが入っている
こちらにもBALMUDAのポット。調度品は黒でまとめられている
冷蔵庫にはソフトドリンク類があらかじめ用意されている。アルコール類は受付で購入可能。近隣のコンビニエンスストアはクルマで5〜10分程度走ったところにある
冷蔵庫の横にはなんとエアコンが。テントのなかでも快適に過ごすことができる
ベッドサイドにはちょっとしたモノが収納可能なキャビネット。そしてご覧の通り施設内はWi-Fiが利用可能。ちなみに筆者のauは4Gでアンテナフルだった
最近人気の“人をダメにする”系のクッションが2つ
客室に備え付けのドライヤーは「mod’s hair」ブランドのモノ。もちろん黒
テントサイト前にはファイヤーサイドのTipiが設置されている
テント横には屋根付きテラス。そしてWeber「Q」シリーズのガスグリルが設置されている。残念ながら雨が酷くてココでは食事が無理!という場合もご安心を。そんな時はロングハウスで食事することが可能
荒天時や団体での食事はココで。17時30分〜20時/20時〜21時30分の2部制で利用可能

 また、今回残念ながら見ることは叶わなかったが、木のトレーラーハウスというコンセプトの「住箱 by snow peak」も興味を引く。こちらもテントやキャビンとは違った楽しみ方ができそうだ。また施設内には受付のあるロングハウス、そして3つのタイプの宿泊施設のほかに、サニタリー棟が敷地内のほぼ中心に建っている。ここではトイレやシャワー、女性専用パウダールーム、自動販売機が設置されている。3つあるシャワールームの1つは車椅子対応になっていて、車椅子でも無理なく利用できるように少し広めの造りになっている。

敷地の中心部に立つサニタリー棟。入口両サイドには自由に使える薪が用意されている。薪が足りなくなったらここで補充できる
プライベートキャビン同様に内部はバリアフリーだが、各施設を結ぶ動線は未舗装なので、車椅子での移動は場合によっては難しいかもしれない

 車椅子対応のキャビンからサニタリー棟までは十数mと近いが、残念ながら舗装はされていないため、車椅子のタイヤの種類によっては自力での移動が難しいかもしれない。また、車椅子対応のシャワールームはバリアフリーで段差はないが、手すり等が設置されていない点、シャワールーム内で転倒して中から助けを呼びたい場合に非常ボタンがない点など、ここは改善の余地があるように感じた。

サニタリー棟入口。シャワー、トイレ、パウダールーム、自動販売機が設置されている
スタンディングで使用するシャワールームが2つ
車椅子対応のシャワールームが1つ
女性専用のパウダールーム入口
女性用パウダールーム
1度に3名が利用可能
美容家電で人気の「SALONIA」のドライヤー。サニタリー棟に常備されているドライヤーは「SALONIA」で統一されている
男性用の洗面台も広くて使いやすい。鏡の高さが若干高いため、車椅子に乗ったままだとやや見にくいかもしれない
清潔なバスマットが用意されているので、各自でシャワー室前に敷いて使用する。使用済みバスマットは棚の下に回収ボックスがある
車椅子対応のシャワールームと広々とした脱衣所
間口の広さは標準的。段差もない
洗い場も広さは十分。ただしシャワーハンガーの高さは可変になってはいるものの、1番高い状態だと小柄な車椅子ユーザーは届きにくい
通常のシャワールーム。脱衣場の広さは十分
洗い場も必要にして十分。鏡がないので男性のひげ剃りなどは少し苦労する
備え付けのボディーソープ、シャンプー、コンディショナー
全てのシャワールームに高級コスメブランド「Aesop」のものが備え付けられていたのには驚いた

アウトドアレジャーの醍醐味、アウトドア料理を手軽に楽しむ

 キャンプの楽しみの1つにアウトドア料理がある。ただ、材料を用意し限られたスペースで下ごしらえして料理するのは大変だ。それもアウトドア料理の醍醐味ではあるが、グランピングではそんな手間を掛けることなく、自分では作れないようなプロの料理人によるアウトドア料理を手軽に楽しむことができる。

「In the Outdoor白浜志原海岸」ではアウトドア料理の醍醐味を感じられるように、プロの料理人が最終の火入れの手前まで調理した状態で用意してくれている。あとは自分たちでグリルするだけでアウトドア料理の楽しさとプロの味を堪能できる。

 キャビンに設置されている冷蔵庫にはあらかじめ下ごしらえされた食材が夕食用5品、翌日の朝食用に2品用意されている。どれも地元の食材などをふんだんに使用したレシピ。調理自体はどれも難しいものではなく、メニューに記載されているとおりに火を入れるだけ。時間配分もきっちり記載されているので誰もが失敗することなく美味しい料理を作れる。

すでにプロの手によって下ごしらえしてあるので、あとはグリルで調理するだけ。これで2人前の量。このときは少し足りないかな?という印象
メニューには調理方法や料理の内容などが丁寧に分かりやすく記されている
「南紀産マグロのタリアータ風サラダ」はキャビアの塩辛さがアクセントに
各サイトには「weber」のガスグリルが常設されている。ガスグリルの使い方も丁寧に記載されているので初めてでも心配ない
グリルで調理したスキレット料理「紀伊国みかんどりの焼きタコライス」。香ばしく焼けたチーズと少し酸味の効いたソースがビールに合う!
アウトドア料理に欠かせない肉料理は、厚切りのやわらかいリブアイステーキ。ソースが2種類付いてくるのだが、日置川産「ほんまもん味噌」を使ったソースが絶品だった
最後の料理は「真鯛の紙包み焼き」。鯛の美味しさはもちろんのこと、エビは殻まで香ばしくいただける。海の幸の旨みが凝縮された逸品
〆は焼きりんご。熱々のりんごの酸味にホイップクリーム、地元産はちみつと、料理を締めくくるに相応しいデザートだ
「In the Outdoor白浜志原海岸」では各種お酒も販売している。受付が終了する19時までの販売なのでお酒好きは忘れずに調達しておきたいところ。和歌山のクラフトビール「ボイジャーブルーイング」のビール4種が購入可能。どれも料理に合う旨さ

 冷蔵庫を開けて調理前の料理を見たとき、正直量が少ないかな?と思ったが、まったく問題なくむしろ多いと感じるほどだった。地元のクラフトビールと地元産の食材を使った料理。どれも美味しく幸せなひとときだった。

朝食ももちろん自分で調理する。用意されているホットサンドメーカーで作るキューバサンド。焼いている途中のバターの香ばしさにつられ、できあがると同時に食べてしまった。写真を撮り忘れたことに気付いたときはすでに胃袋の中だった

焚き火を眺めながらゆったりとした時間を楽しむ

 キャンプといえばもう1つ、焚き火を忘れてはいけない。最近のキャンプ場は焚き火それ自体が禁止されているところや直火NGなど、なにかと制約が多い。「In the Outdoor白浜志原海岸」では各サイトに焚き火台が設置されているので、思う存分焚き火を楽しむことができる。もちろん焚き火初心者でもすぐに火起こしできるように着火剤も用意されている。夕食を済ませ、焚き火を眺めながらゆったりと過ごしたら、あとはシャワーを浴びて眠りに就くだけだ。

あらかじめ十分な量の薪がすでに用意されている。これでも足りないようであればサニタリー棟にも薪が用意されている
焚き火に必要な道具も抜かりなく用意されている
小袋にはライターと着火剤。着火剤は強力なので焚き火初心者でもすぐに火起こしできる。この日は雨模様だったが難なく焚き火を起こすことができた
ファイヤーサイド製のファイヤーバード(火ばさみ)が備え付けられているので、薪をつかむのはもちろん炭を砕いたり、ならしたりと、1本で火加減を自在に調節することができる
テレビもなにもない、雨音と薪が爆ぜるパチパチという音を聞きながらゆったりとした贅沢な時間を過ごす
寝る前にもう1本。静かに味わう大人な時間
明日に備えてぐっすり眠るとしよう。おやすみなさい......Zzz

絶景の宝庫! 南紀熊野ジオパークを楽しむ

「In the Outdoor白浜志原海岸」は関西では初となる、国立公園内にあるグランピング施設だ。この地域は「吉野熊野国立公園」に指定されており、2014年8月には「南紀熊野ジオパーク」として認定されている。

 志原千畳敷や鳥毛洞窟、志原海岸などのジオスポットが徒歩圏内にある。砂岩と泥岩の折り重なった独特の地層や海食崖、海食洞、波食棚など、長い年月をかけて発達した海岸地形を観察することができる。残念ながらタイミングわるく満ち潮の時間帯だったため、志原千畳敷や鳥毛洞窟には行くことができなかった。干潮の時間帯でないと行けないというのもなんだか秘境っぽくていい。ここはまたの機会にとっておくとして、今回は志原海岸と敷地内近くの展望台、そして「かなたの入り江」をご紹介する。

志原海岸

 徒歩20分ほど。ベアーズロックの先まで行くと1時間程度必要だ。

敷地から遊歩道が整備されていて周辺ジオスポットへのアクセスはしやすい
志原海岸から見る海岸段丘。その向こうに志原千畳敷がある
平坦なように見えて石がゴツゴツとしているので歩きやすいスニーカーは必須。表面は鋭く転ぶと大けがをするので慎重に
引き潮の際、窪地に溜まった海水には磯の小魚がたくさん。網で魚をすくう子供たちの姿もあった
ここは釣りのメッカでもある。日によっては観光客よりも釣り人のほうが多いこともあるそうだ
鋭くとげとげしい岩肌。思わず手をつこうものなら出血は免れない
陸繋島(りくけいとう)。もとは陸近くにあった島が長い年月で海岸地形が発達し陸地とつながったもの。志原海岸の陸繋島は熊の頭部に似ている(?)ことから「ベアーズロック」とも呼ばれているらしい

展望台

 施設敷地から歩くこと5分の一番近い眺望スポット。志原海岸や「かなたの入江」を上から眺めることができる。

志原海岸方面。海側には波食台が広がる
激しい波の浸食で切り立った崖になっている海食崖(かいしょくがい)
雨が降っていてもこの眺望。晴れていればもっと素晴らしいことだろう
「かなたの入江」を上から望む

かなたの入江

 徒歩10分ほどのところにある入江。鳥毛洞窟は干潮時しか行くことができない。今回は残念なら断念。

こちらも遊歩道が整備されている。雨で若干滑りやすかったが比較的歩きやすい
「かなたの入江」にある海食洞。鳥毛洞窟はこの何十倍も大きな海食洞とのこと
長い年月、激しい波の力を受けてこのような地形に。自然の力をまざまざと見せつけられる

 グランピングという言葉は「グラマラス」と「キャンピング」の単語を掛け合わせた造語であることから、どうしても付いてまわる“豪華で贅沢”というアウトドアから少しかけ離れたイメージ。「In the Outdoor白浜志原海岸」は決して都心部から近いわけでもないし、かといって遠すぎるというほどでもない。これからキャンプを始めてみたいという人には入口にもなり得るし、本格派キャンパーの「たまにはゆっくり贅沢をしてみたい、でも贅沢すぎないでほしい」という気持ちにも応える“ギリギリの贅沢”を叶えてくれる。グランピングの魅力と本格キャンプの魅力を絶妙なバランスで実現させた施設と感じた。

In the Outdoor白浜志原海岸

所在地 和歌山県白浜町日置1875
TEL :0739-34-3311
客室数 :全12棟16室
チェックイン/アウト :15時/11時

竹信大悟