【イベントレポート】

【パリ航空ショー2017】エアバス、総2階建て「A380」型機の効率向上型「A380plus」のコンセプト説明

A350型機の実績などを反映、開発確定なら2020年就航へ

2017年6月19日~25日(現地時間) 開催

エアバスがA380型機の効率向上モデル「A380plus」の開発を発表。パリ航空ショー2017で展示した同機内でコンセプトを説明した

 仏エアバスは、パリ航空ショー2017の開催に合わせ、6月18日(現地時間)付けで総2階建て旅客機「A380」型機の効率向上モデルとなる「A380plus」型機の開発を発表。パリ航空ショー2017では、そのコンセプトに含まれるウィングレットのモックアップを取り付け、「A380plus」のロゴを記載した機体を展示した。

 このベースとなっている機体は、2017年2月にル・ブルジェ空港に隣接するル・ブルジェ航空宇宙博物館への寄贈が発表され、2月14日に到着したMSN 4(登録記号:F-WWDD)。パリ航空ショー2017期間中にはA380型機の展示飛行も行なわれたが、そちらには飛行試験1号機のMSN 1(登録記号:F-WWOW)が使われた。

 エアバスは会期中の6月19日(同)、同機内においてAirbus Head of A380 Marketingのフランク・ヴェルメイル(Frank Vermeire)氏がコンセプトの説明を行なった。

 A380plusは、従来のA380型機から効率性と経済性を高めることを目的とした新パッケージであると説明しており、「新しいエンジンのオプションとなる『neo』とは異なるもの」と紹介。そのポイントを5項目に分けて説明した。

A380plusのモデルプレーン
Airbus Head of A380 Marketingのフランク・ヴェルメイル(Frank Vermeire)氏
A380plusの5つの改良点

 1つ目は「4%の燃費削減」。翼端が上下に分かれ、上方に3.5m、下方に1.2mと、上下で4.7mの高さとなる形状に変更したウィングレットや、翼端近くのひねり、主翼上面の中央部分(リブ18~30の間)を最大で厚みを30mm増やすといった形状の変更や、主翼付け根(フェアリング)の最適化によって空力性能を改善。またエンジンも、より燃料消費効率のよいものとすることで4%の燃料消費節約が可能とする。説明会ではウィングチップの変更でどのぐらいの改善されるのか質問が出たが、ヴェルメイル氏は「これらが複合的に作用して4%の燃費節約となるため、それぞれの変更が何%になるかは説明できない」と話した。

4%の燃料消費削減を実現するA380plusの空力、エンジンの改良点。特にウィングレットの改良が目立つ

 2つ目はシステムに関する改良で、インフライトエンタテイメント(機内エンタテイメント)システムを第4世代のものを採用することで、信頼性が向上するとともに重量も軽減。さらに4K解像度にも対応する。また、廃液タンクもツインタンクとすることで信頼性向上と軽量化を実現するほか、A350型機で採用されている燃料ポンプの採用で信頼性を向上。運航部分でもフライトオペレーションシステムを変更することで、より最適な経路や高度を選択できるようになり燃費改善につながるとした。

システムも最新のものにアップデート

 3つ目は客室の見直し。4月にドイツのハンブルグで行なわれた「Aircraft Interiors Expo」で披露された「キャビン・イネーブラー(Cabin enablers )」をベースとした見直しにより最大で80席を増席できる。説明会ではどのような改良が何席の増席につながるかも説明があった。

 例えば、前方階段は乗客が2階に上がるための階段と下部のクルーレストの階段を組み合わせたモジュールとすることで20席を増加。後方階段も再設計により14席を増加させるほか、カートもより多く詰める。クルーの休憩室はパイロットとCA(客室乗務員)のエリアを統合した新たなユニットを用いることで3席増を実現する。

 また、アッパーデッキに側面に設けられている荷物の収納スペースを取り払うオプションを提供。これにより6席を確保できる。また、現在の標準仕様では8アブレストとなっているプレミアムエコノミーを9アブレストとすることで11席増。10アブレストのエコノミークラスを11アブレストとすることで23席を増加させる。

 ヴェルメイル氏は、「これらすべての変更により、これまで収益をもたらさなかった25m2のスペースから収益を上げることができるようになる」と説明する。

 さらに、説明会では10アブレストを11アブレストする手法について質問があり、ヴェルメイル氏は「10アブレストのエコノミーシートではシート幅が19インチのものを使っているが、今日では多くの航空会社が多くの航空機で18インチ幅のシートを使用している」と答え、すでに市場にも受け入れられているとの見解を示した。

客室の設計見直しで80席を増席可能に

 4つ目は最大離陸重量の増加で、80席を増加することに対応する意味もあり最大離陸重量を578トンへと向上。航続距離については80席を増席した状態で現在と同じ距離である8200nm(ノーティカルマイル、約1万5200km)、現在と同じ席数ならば300nm(約556km)伸ばすことができる。ヴェルメイル氏は「現在世界で使われているA380を平均すると497席、569トンの最大離陸重量で運用されている。A380plusはそれに80席を足した状態で、同じ路線をカバーできる」との運用上の考えを示した。

現在サービスインしているA380の平均的な運用と必要な航続距離を、80席を増やした状態で利用できることを説明するスライド

 5つ目は、メンテナンス間隔を広げ、メンテナンスコストを削減するというもの。これはEASA(European Aviation Safety Agency、欧州航空安全機関)の承認の下に対応するもの。現在運用されているA380にも適用される。2018年には、いわゆる簡易的なA整備についてはすでに飛行750時間ごとが1000時間に、C整備と呼ばれる重整備は24カ月または飛行1万2000時間から36カ月または飛行1万8000時間に間隔を広げることができるようになる。

 これら5つの改良により、シートあたりコストを13%抑えることができるようになるという。先述のとおり、現在は航空会社に説明を行なって、話し合いをしている段階で、開発の実施については詳しく言及できないとした。また、最後のメンテナンス間隔の変更は既存のA380にも適用可能だが、既存機の改造については主翼の形状変更などを例に挙げ、非常に多くの変更が必要になるので対応していないとしている。

メンテナンス間隔を広げることによりコストを削減
A380plusは、これらの改良により13%のシートコスト抑制を実現するコンセプトで開発研究が進められている
A380plusのロゴを付けたエアバス A380型機の飛行試験4号機
モックアップながら上下4.7mの高さのウィングレットを装備して展示。写真上段3枚は機外から、写真下段3枚は機内から見たところ
飛行試験4号機の内部。ここはアッパーデッキ
前方階段
後方階段
飛行試験機らしい機器が並ぶ
コックピット

飛行試験1号機(MSN 1、F-WWOW)による飛行展示

エアバス A350-1000型機の脇を通って離陸するエアバス A380型機のMSN 1
飛行展示で軽快な動きを見せるエアバス A380型機