ニュース

特急レッドアロー号と蒸気機関車「C58」が引く「SLパレオエクスプレス」が共演

西武秩父駅に初めてSLが発着

2016年5月28日 式典開催

2016年5月28日~29日 運行

西武秩父駅ホームに並んだ臨時SL列車「SLパレオエクスプレス(右)」と臨時列車の特急レッドアロー号(左)が1つのホームに並ぶ史上初の共演。ホームではセレモニーは行なわれた

 西武鉄道と秩父鉄道は、共同の鉄道イベントとして、5月28日~29日に秩父鉄道「SLパレオエクスプレス」を西武秩父線西武秩父駅から秩父鉄道三峰口行の臨時SL列車として運行させた。5月28日その出発記念セレモニーが、池袋駅からの臨時レッドアロー号の到着とSLパレオエクスプレスの出発に合わせて西武秩父駅の2~3番ホーム上で行なわれた。

 SLパレオエクスプレスは、秩父鉄道が保有し、土休日を中心に熊谷~三峰口駅間で運行されている、蒸気機関車が牽引する観光列車。蒸気機関車は「C58(シゴハチ)363」。1944年製造され1972年には廃車。その後、埼玉県北足立郡吹上町立吹上小学校に展示されていた。1988年の「さいたま博覧会」に合わせて復活し、観光列車SLパレオエクスプレスとして運行されるようになり、現在に至っている。

 西武鉄道では、1957年まで新宿線の一部で蒸気機関車が運行していたが、本線系統の駅から蒸気機関車が出発するのは、約60年ぶりのこととなる。西武秩父駅から蒸気機関車が発着するのは今回が史上初。

 SLパレオエクスプレスの西武秩父駅の発車に合わせ、池袋駅からイベント用の臨時列車として、池袋駅(09時25分)発~保谷駅(09時43分)発~西武秩父駅(11時15分)で特急レッドアロー号(10000系)が運行(乗車駅は池袋駅と保谷駅のみ)され、西武秩父駅の3番ホームに到着。SLパレオエクスプレスは向かいの2番ホームに入線し、2つの車両が2ショットで並んだ。

 イベント用臨時電車とSLパレオエクスプレスに乗るには、「臨時SL列車イベント参加チケット」の事前購入が必要。全車着席定員制の自由席。セレモニー開催時は、同チケット購入者のみが西武秩父駅の2番~3番ホームに入場が可能だった。チケットは全日完売している。

 今回のSLパレオエクスプレスは11時29分に西武秩父駅へ入線、12時19分に出発し、三峰口駅へは12時50分に到着、14時03分に出発し、秩父駅へ14時33分着となる。なお、西武秩父駅と秩父鉄道の乗り換え駅の最寄りとなる御花畑駅には停車しない。西武秩父駅と秩父鉄道秩父駅間は約1kmほどで、徒歩での移動も可能。

西武秩父駅の駅舎。西武秩父線終着駅となる
西武秩父駅の2番~3番ホーム。跨線橋を渡ってアクセスする。イベント中このホームには一般客の入場制限がかかった。右に見えるのは1番ホーム
西武鉄道と秩父鉄道の信号機が設置されている
イベント用臨時列車の特急レッドアロー号が西武秩父駅に到着する
イベント参加の乗客が降車。ホームは参加者であふれる
特急レッドアロー号には「臨時」の表示
臨時SLパレオエクスプレスが後ろ向きに入線してくる。参加者の多くは釘付けでカメラを向ける
秩父鉄道の電車「デキ201」が牽引
蒸気機関車がホームにあらわれた
SLパレオエクスプレスの蒸気機関車「C58 363」がホームに入線
運転席の周辺
機関車と客車の連結部分
客車はエンジ色で上品なデザイン。国鉄12系客車の4両編成
ホームと出入口にわずかに段差がある。乗降時に注意をうながすアナウンスが流れていた
2ショットが撮れる先頭周辺ではたくさんの人が写真撮影に興じる
秩父市のイメージキャラクター「ポテくまくん」も登場
レッドアロー号と「ポテくまくん」

 特急レッドアロー号とSLパレオエクスプレスが揃った2番~3番線のホーム先頭周辺では、西武鉄道の本線系統の駅から蒸気機関車が約60年ぶりに発車することを記念し、出発セレモニーが開催された。

主催者として挨拶する西武鉄道株式会社 代表取締役社長 若林久氏

 セレモニーの冒頭、主催者代表として挨拶に立った西武鉄道 代表取締役社長 若林久氏は、「本日はじめてSLパレオエクスプレスが西武秩父駅から秩父鉄道三峰口まで運行いたします。西武秩父駅にSLパレオエクスプレスが乗り入れるには、さまざまな課題がありました。秩父鉄道の強力な後押しを頂いてクリアし、今日の実現にこぎつけることができました。12時19分から出発しますが、西武鉄道の本線系統では約60年ぶりにSLが運行するということで、感慨ひとしおです。西武鉄道としては、沿線代表観光エリアの秩父地域の活性化は大切であり、成長発展には欠かせません。1人でも多くの方に秩父に来て頂きたいという願いを込め、さまざまな施策を展開してきました。今年に入り4年目となるテレビコマーシャルも、女優吉高由里子さんから、お笑いタレントのピース又吉直樹さんに替わりました。新国立競技場の設計者として名高い建築家隈研吾さんが、秩父の自然をモチーフにしたレストラン観光電車『52席の至福』も4月17日より運行をはじめています。来年春には秩父駅に隣接して複合型温泉施設もオープンします。これからも引き続き、秩父地域の活性化発展に少しでも貢献できればと、取り組んでいこうと思います」と述べた。

秩父鉄道株式会社 代表取締役社長 大谷隆男氏

 続けて、秩父鉄道 代表取締役社長 大谷隆男氏が、「私どものSL、C58 363号は、1944年(昭和19年)運行を開始した車両です。国鉄時代は1972年(昭和47年)まで28年間運行してました。その後休車を経て、1988年(昭和63年)にさいたま博の開催にともなって、静態保存されていたものを復元、運行を開始し、現在まで続いています。運行を開始して今年で29年目。国鉄時代より長く走っています。運行開始以来の走行キロ数を調べてみましたら、126万kmと地球31周を超えていました。年齢的には72歳になります。修繕など大変ですが、多くの人に親しんでいただいていますので、大事に運行を続けていこうと思っています。ぜひ多くの方々に関心を持っていただきたいと思います」と、「C58 363」の歴史を交えて挨拶。

秩父市長 久喜邦康氏

 最後に、秩父市長 久喜邦康氏は、「SLパレオエクスプレスとレッドアロー号が一緒に並ぶことは、夢にみた光景でして、これが実現できることはとても誇らしいことだと思います。レッドアローから直接SLに乗車できるということは、東京から一番近いSLに乗れる場所として位置付けられます。どうかこのSLイベントが長く続けばと思います」と挨拶した。

出発セレモニーが始まる。写真左から、西武鉄道株式会社 西武秩父駅管区長 齋藤一彦氏、西武鉄道株式会社 代表取締役社長 若林 久氏、秩父市長 久喜邦康氏、秩父鉄道株式会社 代表取締役社長 大谷隆男氏、秩父鉄道株式会社 秩父駅務区長 宮崎啓介氏
テープカットの瞬間
蒸気機関車「C58 363」の横で記念撮影
発車直前、黒煙を上げる。
出発の合図は西武鉄道 西武秩父駅管区長 齋藤一彦氏
大音響の長い長緩汽笛の後、蒸気機関車はユックリと走り出す
乗客に手を振ってお見送り
電気機関車「デキ201」は、最後尾に連結されたまま走行

 すでにつながっていて短い区間ではあるが、これまでSLが走行していなかった区間を走らせることには、相当の苦労があったようだ。具体的には法令上の蒸気機関車を走行させるための手続きや、SL用の秩父鉄道が使用しているATS(自動列車停止装置)を新たに設置する必要があったとのこと。準備には、1年半ほど期間がかかったそうだ。

SLを走らせるため、新たに設置したATS。ホーム上から確認できる

 西武秩父駅へ接続できるようになったことで、都心からもっとも近く体験できるSL観光列車へのアクセスが、さらに手軽になったことになる。鉄道ファンはもとより、ファミリーでの参加も多く見られ、生のSLの迫力に子供達が嬌声をあげていた。

 5月28日~29日以降の運行は、現時点では未定ではあるが、なるべく続けていきたいとのことなので、期待して次回以降の開催を待とう。

 なお西武秩父駅前では、温泉複合施設の建設に合わせ再開発が進んでいる。御花畑駅方面に向かって、仲見世通りというお土産商店街が並んでいたのだが、5月29日から閉店となり、5月30日~8月31日(予定)は場所を移して臨時売店での販売となる。その間、わらじかつ弁当など弁当類、要冷蔵商品は販売されない。秩父銘菓、酒類、そばなどお土産は販売する。2016年9月上旬より別場所で新たに営業開始を予定している。新しく生まれ変わる西武秩父駅前にも期待したい。

西武秩父駅前には、仲見世通りというお土産商店街があるのだが
仲見世通りは、5月29日からは一時閉店。臨時売店での販売となる
秩父で人気のB級グルメわらじかつ。秩父周辺複数店舗で食べられる。仲見世通りにてわらじかつ弁当を購入、帰路レッドアロー車内で。ボリュームのあるカツが2枚も入っている
秩父といえばワインもお薦め。2015年オープンしたばかりの秩父ファーマーズファクトリー「兎田ワイナリー」の「コラージュ」。秩父市吉田釜産マスカット・ベリーA、兎田地区産メルロー、カベルネ・ソービニヨンがブレンドされたボルドータイプの赤ワイン。お土産に購入してみた

(村上俊一)