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香川・小豆島でバス・高速船のチケットを買わずに乗れる「tebu-Ride PASS」試してみた。移動・観光・お土産購入がスマホで完結
2025年8月4日 14:30
- 2025年8月1日~10月31日 実施
JTBと日立製作所は、デジタルチケットによる新たな周遊企画券サービス「tebu-Ride PASS(テブライドパス)」の実証実験を、香川県小豆島で8月1日~10月31日に実施している。
ビーコン(近距離無線通信技術)と顔認証技術を利用して、高速艇、バス、タクシーなど異なる交通機関の利用や観光施設への入場、売店での購入などを、専用アプリ「tebu-Ride PASS」をインストールしたスマートフォンだけで完結。旅行者の移動をスムーズにするとともに、事後決済方式の採用で旅行中の支払を簡素化。また、利用額に応じた割引制度も提供することで付加価値を向上させる。これにより、地域の魅力向上、観光事業者の省力化や生産性向上、観光客の利便性向上を目指すという。
実証実験で利用するtebu-Ride PASSアプリは、開発中のためiOS用のみの提供だが、iPhoneを持っている人なら誰でも参加できる。今後、本格運用開始時にはAndroid用アプリも用意するという。なお、今回の実証事件では観光客1000人程度の利用を想定している。
tebu-Ride PASSでの交通機関の利用や観光施設への入場、商品を購入する場合の利用方法は、「見せ券方式」と「顔認証方式」の2種類を用意。
見せ券方式は、tebu-Ride PASSアプリに表示される見せ券を示すだけで、交通機関の利用や施設への入場が可能で、あらかじめ利用金額が決まっている交通機関や観光施設で採用。対応する交通機関と観光施設は、高松港と土庄港を結ぶ小豆島フェリーの高速艇と、小豆島オリーブバスの田ノ浦映画村線、二十四の瞳映画村および岬の分教場。
顔認証方式は、文字どおり顔認証で決済を行なう方式で、利用金額が決まっていない交通機関や観光施設で採用。こちらでは、決済時にtebu-Ride PASSアプリは利用せず、交通機関や観光施設に用意したタブレットで利用者の顔を読み取って運賃や購入商品などの決済を行なう。顔認証方式に対応する交通機関と観光施設は、小豆島交通のタクシー、小豆島オリーブ園のオリーブショップ、小豆島大観音。
利用額に応じた割引きは、今回の実証実験では、1登録ユーザーあたり累計上限1000円、1決済あたり上限300円の範囲内で、路線バスの運賃以外の支払いに対して最大10%の値引きを行なう。
対象のバスや船に近づくだけでチケットを表示、降りれば自動決済。割引料金にも対応
2種類の利用方法のうち見せ券方式は、ビーコンを活用して実現している。対象施設の入場口にビーコンを設置しており、その電波をスマートフォンが受信することで施設を特定。tebu-Ride PASSアプリが自動的にその施設に対応した見せ券を表示するので、画面を乗務員や係員に見せて利用する。
例えばバスを利用する場合、バス停に近付くとバス停に設置されているビーコンの電波をスマートフォンが受信し、乗車バス停を特定するとともに、tebu-Ride PASSアプリにバス乗車用の見せ券を自動的に表示。見せ券では、乗車する大人と子供の人数を設定できるため、家族やグループで乗車する場合でもスマートフォン1台で対応可能だ。
この状態でバスに乗ると、バス車内に設置されているビーコンの電波を受信し、バスに乗車したことを検知する。
バスを下車するときは、降りるバス停に設置されているビーコンの電波を受信して下車バス停を特定。そして、見せ券を乗務員に見せて下車するだけでよい。運賃は、特定した乗車バス停と下車バス停から自動的に算出され、事後精算になる。
高速艇を利用する場合もほぼ同等で、港の桟橋と高速艇に設置されているビーコンの電波を受信して乗船と下船を特定し、乗船用の見せ券を自動的に表示するとともに運賃を事後精算。これにより、乗船券を購入することなく係員に見せ券を提示するだけで乗船できる。
二十四の瞳映画村と岬の分教場では、入場口に設置されているビーコンの電波を受信することで、入場用の見せ券を自動的に表示するので、入場人数を指定して入場口係員に見せ券を見せて入場する。なお、二十四の瞳映画村と岬の分教場の双方へ同日に入場した場合には、自動的に割引料金が設定される。
顔認証ならスマホ要らずでPINを入力するだけ
一方、顔認証方式は、利用者のスマートフォンは利用せず、施設側に用意している専用のタブレットを利用する。
タクシーや観光施設を利用して運賃精算や代金の支払いを行なう場合、利用者は「支払いにtebu-Ride PASSを使う」と告げる。すると、施設側が支払い用のタブレットを取り出して利用者に手渡すので、顔を映して顔認証を行なうとともに、tebu-Ride PASSで登録したPINコードを入力する。その後、施設側が料金を入力するので、金額を確認して承認すると決済が完了する。
この顔認証の基盤技術は、銀行の生体認証システムなどでも利用されている、日立が開発した公開型生体認証基盤「PBI」を活用。生体情報を一切保存することなく生体認証が行なえるため、プライバシーの保護とセキュリティ性を備えている点が特徴だ。
見せ券方式と顔認証方式で利用した交通機関や観光施設の利用料金は、日立が用意するクラウド上のデジタルチケッティングシステムに集約され、利用者への請求データと各事業者への入金データを作成。利用料金や施設ごとに割引きを行なったうえで、JTBの決済システムへデータが渡され、あらかじめ登録したクレジットカードで一括決済が行なわれることになる。
このほか、tebu-Ride PASSアプリで受信したビーコンのデータはリアルタイムにデジタルチケッティングシステムに送られており、利用者の行動履歴の捕捉にも利用する。観光客がどのように小豆島内を移動し観光しているのかを可視化することで、新たなサービスや旅行商品の開発を促進したいという。
どちらの方法も非常に手軽に利用できる
今回、実際に見せ券方式で利用できる路線バスの乗車と高速艇の乗船、二十四の瞳映画村への入場、顔認証方式で利用できる小豆島オリーブ園のオリーブショップでの商品購入を体験した。
路線バスの乗車では、tebu-Ride PASSアプリで乗車バス停と下車バス停が正しく認識され、スムーズな乗車が可能だった。小豆島オリーブバスは交通系ICカードでの運賃精算も可能なため、交通系ICカードの利用と比べるとそこまで大きな利便性向上ではないが、家族やグループで乗車する際に1台のスマートフォンで全員分の支払いが完了するのは便利だ。
高速艇の乗船では乗船券を購入せず乗船できるのが大きな利点だ。
通常、高速艇の乗船券は港の窓口で購入するが、その窓口が行き先ごとに異なっているため、初訪問ではどの窓口で購入すればいいのか分かりづらい。また、実証実験期間中のうち8月31日までと10月3日以降は瀬戸内国際芸術祭の開催期間と重なる。その期間は高速艇を利用する観光客が大幅に増え、窓口が混雑して乗船券の購入にかなりの時間がかかることもある。しかも乗船券は基本的に現金決済だ。
それに対しtebu-Ride PASSなら、乗船券を購入せず直接乗船でき、決済も登録したクレジットカードとなるため、大きく利便性が高まるはずだ。
二十四の瞳映画村への入場も、tebu-Ride PASSの見せ券を示すだけで簡単に入場できた。当日はそこまで入場券販売窓口が混んでいなかったが、ピーク時には入場券を購入するためにかなあり時間を要する場合もあるはず。そういった場合でも、入場券を購入せずスムーズに入場できる点はありがたい。
小豆島オリーブ園のオリーブショップでの顔認証を利用したお土産購入も、見せ券方式とは違う意味で便利に感じた。
こちらは施設に用意されている専用のタブレットで顔認証を行なうため、スマートフォンを取り出してtebu-Ride PASSアプリの画面を提示する手間がない。また、顔認証自体もタブレットに顔を映せばほぼ瞬時に認証が完了。その後、PINを入力する必要はあるが、それ以外はほぼ操作不要。財布やスマートフォンを取り出すことなく決済が行なえるのは、体験すると想像以上に快適だ。
今回のサービスは実証実験で、利用できる人はiPhoneユーザーのみ、施設も限られているが、体験した限りでは、利便性の高さや割引きが受けられるお得さはかなり魅力的だ。期間中に小豆島を訪れる機会があるなら、積極的な利用をお勧めしたい。





















































